はじめに
業界研究は後悔のない就職活動のために非常に重要ですが、各業界についてある程度の知識がなければ志望業界を絞ることは難しいでしょう。
企業説明会やインターンシップに参加してから業界を絞るのもひとつの方法ではありますが、参加できる企業の数には限りがあります。
効率良く就職活動を進めるためには、少しでも興味のある業界をいくつか調べて、企業説明会やインターンシップの募集が始まる前には業界を決めておく必要があるでしょう。
今回は、人材業界にスポットを当てて解説していきますので、ぜひ参考にしてみてください。
人材業界とは
人材業界の仕事は、ひと口で言えば企業と求職者をつなげることです。
どのような形で企業と求職者をつなぐかによって、大まかに「人材紹介」「人材紹介」「人材派遣」「人材広告」の4つの業態に分けられます。
これらの業態はそれぞれ業務内容が異なるうえ、すべての業態を総合的に展開している企業もあれば、1つの領域を専門的に行う企業もあります。
特に大手の総合人材サービス企業では、自分のやりたい仕事とまったく異なる業務に配属されて、入社後にミスマッチを感じて早期に退職してしまう人も少なくありません。
ひと口に「人材業界志望」といっても、その中でもどの業態に興味があるのかを明確にしておく必要があるでしょう。
まずは、それぞれの業態について解説しますので、自身の人材業界に対するイメージがどの業態であるのか確認しておきましょう。
人材紹介
人材紹介は、人材を求めている企業と求職者とをつなげる仕事です。
企業からは、その企業が求める人物像をはじめとする詳しい求人情報を聞き取ります。
そして、求職者からは希望の業界や職種をはじめ、その人のキャリアプランや仕事に対する価値観を聞き取り、企業と求職者双方に最適なマッチングをサポートする事業形態です。
収益は、人材を紹介した後に紹介企業から支払われる報酬となります。
株式会社リクルートホールディングスが運営する「リクルートエージェント」や、管理職や外資系企業などのハイクラス転職に特化したサービスを行う「JAC Recruitment」(ジェイエーシーリクルートメント)などが代表的です。
また、株式会社インテリジェンスから社名変更したパーソルキャリア株式会社が運営する転職サービス「doda」も人材紹介事業として有名です。
近年は成果主義を採用する企業が増え、転職しながらキャリアアップを目指す人も増えており、転職市場は拡大しています。
これを受けて、人材紹介業の存在感は増していると言えます。
人材派遣
人材派遣とは、労働派遣法のもと、労働力を必要としている企業に登録制のスタッフを派遣する事業形態を指し、近年の労働力不足により需要が高まっています。
派遣スタッフの労働時間に応じて、派遣先の企業から支払われる報酬が派遣会社の収益です。
登録スタッフが雇用契約を結ぶのは人材派遣会社であり、給料も派遣会社から支払われる一方、実際の業務に関する指揮は派遣先の企業が行います。
人材紹介と混同されがちですが、「求職者がどこと雇用契約を結ぶのか」という点で大きく異なります。
労働者にとっては、実際に働く企業と給与が支払われる会社が異なることになるのが特徴でしょう。
人材派遣業は、リクルートホールディングスのグループ会社である「株式会社リクルートスタッフィング」「株式会社パソナ」などが代表的です。
ほかに、総合人材サービスであるパーソルホールディングス株式会社(旧テンプホールディングス)の傘下にある「パーソルテンプスタッフ株式会社」「株式会社グッドウィル」「株式会社フルキャスト」「アデコ株式会社」などが挙げられます。
人材広告
人材広告とは、Webメディアをはじめ、求人情報誌など人材募集のために用いる広告のことで、主にそれらを販売するのが人材広告会社の主な仕事です。
広告の種類は正社員のほか、契約社員・派遣社員・アルバイト・パートなど多岐にわたります。
求人内容の聞き取りや原稿の制作、掲載後の採用状況の確認、改善案の提供などを行います。
報酬は広告主である企業から支払われ、求職者側への情報提供は無料で行われるのが一般的です。
基本的に求職者側との関わりがないこともあり、ほかの3つの業態と比較すると「人材業界」から遠いイメージもありますが、人材を必要とする企業と求職者とを広告などのメディアでつなげるという重要な役割を持っています。
リクルートが提供する「リクナビ」や、エン・ジャパン株式会社が運営する「エン転職」などの求人情報サイトが代表的です。
比較的新しい会社が多く、Web媒体を主とするベンチャー企業が多いのも特徴です。
なお、この業態では、自社の求人メディアのみを取り扱う場合と、人材広告代理店としてさまざまな媒体を扱う場合の2パターンがあります。
人材コンサルティング
人材コンサルティングは、主に人事に関する課題を抱える企業の現状をよりよくする手助けを行うという仕事になります。
具体的には、採用に関して効果的な採用方法を構築します。
また、人事に必要な施策や効果的な研修プランを提案したり、企業の人事課題を分析し、これを解決するための施策を打ち出したりすることも珍しくありません。
さらに、総合的なサポートを行う企業や、人材派遣を専門としている企業もあります。
かつて中小ベンチャー企業向けに特化し、優秀な人材を新卒で採用するノウハウを提供することで話題になった「ワイキューブ」は、後に民事再生法の適用を申請したものの、日本初の採用コンサルティング会社として有名です。
リクルートグループでは、株式会社リクルートマネジメントソリューションズが「人材採用」「人材開発」「組織開発」「制度構築」の4つの領域で各種サービスを展開しています。
代表的な企業としてはほかに、心理学や行動経済学などを基盤とした組織変革技術に強みを持つ「株式会社リンクアンドモチベーション」「タワーズワトソン株式会社」「レジェンダコーポレーション株式会社」などがあります。
人材業界の魅力
就職活動では、自分が働くことにマッチした業界・企業を見つけることが重要です。
何に魅力を感じるかは人それぞれですが、業界研究の際にはまず、一般的に言われているその業界の魅力を知っておきましょう。
ここでは、人材業界の魅力を紹介します。
・感謝の言葉をいただける
・多くの人と出会える
・就職・転職という大事な節目に関わることができる
感謝の言葉をいただける
就職や転職は、人生においての重大イベントです。
自分にとって最適な職場を得られることで、求職者から感謝の言葉をもらえることが、人材ビジネスに従事することの大きな魅力と言えます。
特にエージェントとして求職者を担当する場合には、担当する求職者と深く関わることになりますから、希望の企業へ採用が叶ったことで直接感謝の言葉を聞けることが大きなやりがいにつながるでしょう。
人と関わり、人に喜んでもらうことが、自身の仕事へのモチベーションになる人には合っている業界と言えるでしょう。
多くの人と出会える
人材業界は、人材を求める企業側の担当者や求職者など、基本的に人とコミュニケーションを取る仕事が基本になります。
そのため、多くの人と関わることができるのが魅力のひとつです。
企業側からのヒアリングでは、さまざまな職種の人や、ほかの仕事では普段関わることのできないような企業の代表と対面する機会もあります。
また、求職者の個性や価値観に触れることができるのも特徴です。
人と関わることが好きな人や、「人と出会うことで成長したい」と考えている人には魅力的な業界でしょう。
就職・転職という大事な節目に関わることができる
就職や転職は求職者にとっては、大事な人生の節目です。
特に転職エージェントとして仕事をする場合には、うまくマッチさせることができなかった場合には、その人のその後の人生を左右してしまうこともあるため、非常に責任が重い仕事とも言えます。
しかし、それだけに成功に導けた場合は達成感も大きく、同時に非常にやりがいの感じられる仕事です。
人の大切な節目に関われる仕事はそう多くはありませんから、これも人材業界の魅力のひとつでしょう。
人材業界の懸念点
志望業界を絞る際には、魅力やメリットだけでなく、懸念店やデメリットについても把握しておく必要があります。
就職してから「こんなはずではなかった」と後悔することのないように、人材業界で働く際の懸念点も確認しておくようにしましょう。
・仕事内容が多岐に渡る
・離職率が高い
・景気に左右される
仕事内容が多岐にわたる
一般的に人材業界の仕事は、業務内容が多岐にわたることが知られています。
ベンチャー企業の場合には、メインのマッチング業務のほか、新規開拓の営業や広告の管理やマーケティング、インターネットサイトの運営といった多くの業務を兼務することもあるでしょう。
また、さまざまな事業を手がける総合人材大手の企業では、業務が細分化されている場合が多いです。
キャリアにより担当できる業務が異なるため、自分がイメージしていた仕事とはまったく異なる業務を担当する部署に配属される可能性もあります。
離職率が高い
人材業界は比較的若く新しい企業が多いこともあり、労働力が十分でないことも珍しくありません。
そのため、一人あたりの業務量も多くなりがちです。
先述したように、業務内容が多岐にわたることに加え、業務量が多く、仕事のハードさから早期に退職する人も多いことが人材業界のネックのひとつになっているのです。
しかし、ハードな仕事であるからこそ、自身に合った仕事であればやりがいも大きくなります。
重要なことは、仕事に対する自身の適性を事前にしっかりと見極めることでしょう。
景気に左右される
景気の良し悪しに影響されるのは、どの業界でも同じですが、人材業界は特に大きく影響される傾向にあります。
派遣社員がかつて「景気の調整弁」と言われたように、企業では景気が良くなれば人手が不足し派遣社員の需要が増しますが、不景気下では大きく需要が減少します。
景気が悪くなれば、人材派遣だけでなく企業の新規採用の縮小にもつながるでしょう。
人材派遣事業のみならず、人材広告、人材紹介、人材コンサルティング業界すべてに影響が及びます。
人材業界のベンチャー企業
人材業界は、ほかの業界と比較すると比較的若い業界であり、また参入障壁が低いことからベンチャー企業も多く存在します。
ここからは、ベンチャー企業を就職先として視野に入れている人に向けて、人材業界の主なベンチャー企業を紹介していきます。
ビズリーチ
テレビコマーシャルでも目にすることが多く、広く知られている株式会社ビズリーチは2007年に「インターネットの力で、世の中の選択肢と可能性を広げていく」という企業理念によって設立された会社です。
2009年から高年収帯に特化した転職プラットフォームとして、即戦力人材と企業をつなぐ転職サイト「ビズリーチ」のサービスを提供開始後急成長し、持株会社であるビジョナル株式会社は、2021年東京証券取引所グロース市場に上場しています。
また、インターネットを活用したビジネスは「ビズリーチ」以外にも多くあります。
具体的には、人財活用システムである「HRMOSタレントマネジメント」や採用管理システム「HRMOS採用」、勤怠管理システム「HRMOS勤怠」、経費精算システム「HRMOS経費」などです。
若い会社ながら創業から成長を続けている注目の人材ベンチャーのひとつと言えるでしょう。
レバレジーズ
レバレジーズ株式会社は、システムエンジニアリングサービスを主軸に2005年に設立された会社です。
2007年には看護師紹介事業をスタートしており、ITやメディカル分野での人材事業に強みを持っています。
創業以来黒字経営を継続し、積極的に新規事業に参入を続け、直近6年間で事業数は5倍にまで拡大させています。
戦略から実行まですべてを自社で行っており、1000人以上の社員が40もの事業に分散し、ベンチャー企業の集合体のような組織構造が特徴的な会社です。
企業理念は「顧客の創造を通じて関係者全員の幸福を追求し、各個人の成長を促す」としています。
「国、業界をまたいで素早くかつ健全に拡大し、参入した業界において最も競争優位性のある会社になる。」というミッションのもと、「スキルの成長」と「マインドの成長」の2つの軸に重きを置き、社員個人の価値の向上を目指しています。
ネオキャリア
ネオキャリアは『「ヒト」と「テクノロジー」で一人ひとりの価値ある未来を実現する』をミッションに掲げ、2000年に設立されました。
成長に重きを置いた社風のもと、人材ビジネスのほか、ヘルスケア領域などでも事業を展開する会社であり、意思決定の早さや新規事業の成長の早さに定評があります。
新卒採用コンサルティング事業領域では、自社サービスだけでなく、多くの企業と協同することで、採用に必要な支援として業界最大級の100サービスを取り扱い支援する「採用インテグレーションサービス」が特徴的です。
また、中途採用コンサルティング事業では、求人広告の総合代理店として企業の採用支援を行うほか、求職者とLINEでやり取りができる採用コミュニケーションツール「MOCHICA」の運営も行っています。
プロコミット
株式会社プロコミットは、2005年に設立されたベンチャー企業・スタートアップ企業への転職サポートに特化した人材紹介会社です。
「Progress」に「Commit」することを事業コンセプトとし、社名には、成長企業とポテンシャルの高いビジネスパーソンの双方が「Progress(進歩発展)」することにコミットするという想いが込められています。
ベンチャー企業のビジネスモデルや経営課題をしっかりと把握し、求職者と優良成長企業双方の希望に叶う支援を実現しています。
また、人材紹介事業だけでなく、企業自身が採用情報を発信するダイレクトリクルーティングツールの提供も行う会社です。
コロナ禍を経て、チャットワーク・クラウドサイン・RPAなどをフル活用し、働く場所や時間の制約の少ない仕事環境となっています。
ポテンシャライト
2017年設立の株式会社ポテンシャライトは、「スタートアップ企業にスポットがあたる世の中を」をミッションに掲げ、人材支援事業、採用支援ソリューション事業、人材紹介事業を展開している会社です。
創業5年目で160社以上のベンチャー・スタートアップ企業の採用コンサルを実現しており、これがマッチング事業の大きな強みになっています。
採用コンサルティング事業を通じて企業の内情や採用方針などを詳細に把握することで、個々人のキャリアプランに合ったスタートアップ企業とのマッチングの実現を可能にしているのです。
また、「スタートアップ志向の人口を増やすことで日本の成長に寄与していきたい」との想いから、スタートアップ企業への転職を考えていない求職者に向けて、スタートアップ企業の魅力を訴える活動も続けています。
Goodfind Career
「Goodfind Career」は、ベンチャー企業・スタートアップ企業に特化した転職エージェントサービスです。
運営はスローガン株式会社が行っており、求職者のキャリアや個性にマッチした厳選ベンチャー・スタートアップが見つかることにこだわりを持っています。
特徴的なのは、「これからベンチャー企業で働くためにどのようなスキルを身につけるべきか」など、今すぐ転職するつもりではない場合の相談も歓迎していることです。
また、転職を前提としないキャリア相談も可能で、これによって転職だけではないキャリアプランを見つける方も少なくありません。
スローガン株式会社では、ほかに厳選就活プラットフォーム「Goodfind」、社会人3年目までの人材向けキャリア支援サービス「G3」も展開しています。
また、若手イノベーション人材向けビジネスメディア「FastGrow」などの運営も手がけています。
キープレイヤーズ
株式会社キープレイヤーズは、「人を繋ぎ、人を活かす」で2005年に設立されたベンチャー、スタートアップ転職求人の専門人材紹介会社です。
代表は、30社以上の社外役員を務めるかたわら、これまでに4000人以上の経営者に採用アドバイスを行ってきました。
さらに、国内と海外の双方でエンジェル投資も行っており、これらの経験から得た知見を活かして経営的な視点から企業の採用活動をサポートしています。
求職者に対しては、スタートアップ転職・ベンチャー企業転職のメリットだけでなく、客観的視点からのリスクやデメリットの提供も行っています。
なお、オンラインコミュニティ「ベンチャー・スタートアップサロン」の運営も行っており、ベンチャー・スタートアップに関してのトレンドや、キャリアアップで大事にすべきことなどを代表自らが発信しているのも特徴です。
for Startups
フォースタートアップス株式会社は、2013年にウィルグループ子会社のセントメディア(現:株式会社ウィルオブ・ワーク)の「ネットジンザイバンク事業部」として発足しました。
その後、会社分割によりウィングループの完全子会社としての株式会社ネットジンザイバンクを経て、2018年に現在のフォースタートアップス株式会社に社名変更しています。
成長産業領域に特化した情報プラットフォーム「STARTUP DB」を国内最大級の成長企業データベースに成長させ、2020年には東京証券取引所マザーズに上場しました。
その後、2022年の市場区分再編に伴い、現在はグロース市場に移行しています。
「世界で勝負できる産業、企業、サービス、人を創出し、日本の成長を支えていくこと」をミッションに掲げ、タレントエージェンシー事業、起業支援など幅広く展開しています。
人材業界の動向
業界研究では、その業界におけるトレンドや、今後の見通し、その業界の抱える課題ついて調べることも重要です。
それにより、その業界で働く自分自身を具体的にイメージできるようになります。
では、人材業界の動向について詳しく見ていきましょう。
市場は大きくなっている
2008年頃には、リーマンショックの影響から世界的不況が本格的になり、人材業界も大きく影響を受けました。
しかし、景気の回復や人材紹介サービスの認知度が高まったことを背景に、2009年以降の人材業界は成長を続けています。
株式会社矢野経済研究所の調査では、2021年度は人材派遣業だけで市場規模は前年比6.6兆円増の9兆2000億円でした。
人材ビジネスの要となる3業態である人材派遣業・人材紹介業・再就職支援業の3つを合わせると、9兆5281億円を記録し、6.9%増となっています。
人材ビジネス市場は、コロナ禍を経てなお拡大していると言えるでしょう。
特に転職市場は、それまでの日本の終身雇用制度から欧米型の実力主義の働き方が根付き始めたことで、転職をしながらキャリアを構築していくスタイルが広がっており、市場はますます拡大していくと予想されています。
市場が大きい
人材業界は比較的新しい業界であり、新規参入もしやすい環境にあります。
また、利益率も高いため市場は大きく成長傾向にあります。
日経業界地図2012年版を見ると、この時点ですでに人材サービス業の市場規模は約9兆円となっていました。
これは、6兆円の広告業界を上回っており、規模の大きさがうかがえます。
また、電力は約17兆円、鉄道は約13兆円ですから、これらインフラ事業と比較してもその規模の大きさがわかるでしょう。
近年のインターネットの広がりとともに、人材をマッチさせる手法が変化しており、IT業界とも親和性の高い業界になりつつあります。
また、IT化に向けて専門性の高い人材を求める企業も増えています。
これらのことから考えれば、ベンチャー企業やスタートアップ企業の参入とともに、人材業界はさらに拡大していくと考えて良いでしょう。
雇用形態も多様化している
日本では、経済産業省が「DX推進ガイドライン」を公表し、国を挙げてDX推進を訴えています。
DXは、「Digital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)」の略で、デジタル技術を活用することで生活のあらゆる場面を豊かに変革していくという概念です。
このDXの推進を背景に、IT人材の確保は企業が生き残るための課題となりつつあります。
そのため、専門知識やスキルを持つ人材確保のために、人材業界に新たな期待が高まっているのです。
また、コロナ禍の影響から、リモートワークをはじめ、働き方も多様になってきています。
副業解禁の流れも手伝い柔軟な働き方を臨む求職者も多くなっており、企業の状況に応じて人材を確保できる人材サービスの需要は伸びていると言えるでしょう。
グローバル化の動きは一時ストップ
近年は、海外に事業を広げる企業が増えたことにより、グローバルに活躍できる人材の紹介や斡旋の需要が高まりました。
人材業界においてもこの動きに応えるため、海外企業を買収したり、海外企業との提携に乗り出したりとグローバルに展開する企業が増えることになりました。
この動きは新型コロナウィルスの流行により一時的に休止状態となりましたが、グローバル化縮小の動きは、感染拡大の懸念による一時的なリスク回避の動きであると考えられます。
日本の現状では、まだまだグローバルに活躍できる人材が不足している状況であり、多くの企業がアフターコロナを見据えて積極的に活動することになるでしょう。
これに伴い、人材業界のグローバル化の流れも活発になると考えられます。
人材業界の業種
就職活動では、さまざまなサイトを参考にして業界・企業研究を行うことになりますが、このとき検索をかけるときに使うのが「業種」と「職種」です。
「職種」はわかりやすいのですが、人材業界の業種は何に分類されるのか悩む人も少なくないでしょう。
求人情報の掲載サイトにより分類方式に違いはありますが、ハローワークで使われる日本標準産業分類によると、職業紹介業や労働派遣業は、「大分類 R-サービス業(他に分類されないもの)」に該当します。
人材業界の職種
志望通り人材業界で働けることになったとしても、どの職種に就くかによって担う仕事の内容は大きく異なります。
また、ベンチャー企業やスタートアップ企業などでは、複数の職種を兼任する可能性もあるので、以下で人材業界の代表的な職種を確認しておきましょう。
営業職
営業は、自社のサービスや製品を、ほかの企業や個人消費者に売るのが主な仕事です。
ほとんどの企業では営業職を多く募集しているので、比較的採用が叶いやすい職種と言えます。
人材業界の場合には、「人材紹介」「人材派遣」「人材広告」「人材コンサルティング」と主な業態により提供するサービスが異なり、営業職の業務内容も大きく変わります。
以下に、4つの人材業界の形態について詳しく解説していきますので、自分の希望する業態がどの業態なのか確認しておきましょう。
ただし、たとえ同じ業態の営業職であっても、総合人材大手の企業と専門領域のみを行う中小企業やベンチャー企業などでは、業務範囲も大きく異なることが考えられるため注意が必要です。
入社した際に希望する仕事ができるかどうか、企業研究をしっかりと行う必要があるでしょう。
人材紹介
人材紹介の営業は、求職者を紹介するリクルーティングアドバイザー(RA)として企業側とコミュニケーションを取り、採用活動をサポートします。
人材を求める企業の経営者や人事担当者から、その企業の経営戦略や経営理念、社風などを聞き取り、その企業に合った求職者を紹介することが主な仕事です。
そのほかにも、「営業職」のイメージ通りの業務である新規開拓や既存企業へのフォローも行います。
また、企業によって異なりますが、求職者に対応するキャリアアドバイザー・キャリアコンサルタントの業務を兼任することもあります。
人材派遣
人材派遣の営業は、自社に登録している派遣スタッフを企業に派遣することが仕事です。
派遣した後は、長期的に業務を続けられるよう、派遣スタッフのフォローを行うことも大切な仕事です。
具体的には、派遣先に出向き定期的に面談を行います。
また、業務効率の向上のため研修を行うなどスキル面のサポートを実施するほか、メンタル面でのケアも行います。
さらに、既存の派遣先に出向いて派遣枠を増やしてもらうことや、派遣先企業の新規開拓も大事な仕事です。
なお、派遣先開拓のために、人材派遣の活用を含めた組織コンサルティングを行うこともあります。
人材広告
人材広告業の営業職は、主に自社で取り扱っているWebメディアや紙面に求人広告を掲載してもらうための営業を行います。
コミュニケーションを取るのは主に広告主となる企業であり、基本的に求職者との接触はありません。
新規開拓営業の方法は、電話やメールなど企業によりさまざまです。
業務範囲も企業によってそれぞれ異なり、求める人材や採用計画を聞くことのほか、広告のデザインや執筆を担当する場合もあります。
また、広告の反響の分析や人材採用後のアウターフォローも行うことも多いです。
人材コンサルティング
企業の人事に関するサポートを行うことが、人材コンサルティング業における営業職の主な仕事です。
新規開拓の営業のほか、企業とコミュニケーションを取ることで、コンサルタントとして企業の抱える課題を見つけ出し、それを解決に導く提案を行います。
企業の経営戦略として人事に関する課題解決に向けた提案をし、さらにその実行をサポートするには、卓越した交渉力が求められます。
コミュニケーション能力に自信があれば、一度チャレンジしてみても良いかもしれません。
キャリアアドバイザー(CA)/コンサルタント職
求職者側のサポートを行うのが、キャリアアドバイザーやキャリアコンサルタントと呼ばれる職種です。
キャリアコンサルタントは、職業選択や能力開発に関する相談・助言を行う専門職として、2016年職業能力開発法に規定された国家資格です。
一方、キャリアアドバイザーは、資格を所有する人と区別をするための呼び方であり、これら2つの仕事の内容に明確な違いはありません。
どちらも人材ビジネスにおいては求職者との面談を行い、キャリアに関する願望を聞き取り、求職者に合った求人案件を紹介することが主な仕事です。
就職や転職は、求職者にとってその後の人生を大きく左右しかねない大切な節目ですから、責任がある仕事である一方、やりがいも大きい仕事です。
求職者に最適なサポートをするために、面談では求職者の話をじっくりと聞き、求職者自身の自己理解を促します。
進むべき方向を一緒に探っていくため、求職者と信頼関係を構築することが第一です。
また、応募書類のサポートや内定後のフォローも行います。
企画・マーケティング職
企画職は、一般的に企業の花形のイメージがあり、就活生には人気のある職種です。
形ある商品を作るメーカーの場合と異なり、「人材業界の企画職やマーケティング職はイメージしづらい」という人もいるでしょう。
では、人材業界における企画・マーケティング職の業務について詳しく見ていきましょう。
企画
人材業界の企画職は、主に自社で提供するサービスや運営するメディアについての立案・開発を行います。
これらの立案・開発はさまざまなデータの分析に基づいて行われるため、データ解析などマーケティング業務も含まれていることも多いです。
大手総合人材会社の募集サイトでは、同じ企画職だけでも「事業企画」「営業企画」「経営企画」「DX企画」「CS企画」などさまざまな企画職の募集がされています。
規模の大きな会社では、このように目的や対象に応じて業務が細分化されていることが多いうえに、業務の分け方も企業ごとに異なるため注意しましょう。
マーケティング
人材業界の中でもとりわけ人材派遣業においては、利益を出すために大量の登録派遣労働者を確保し、かつ大量に派遣することが必要であり、そのためマーケティングは非常に重要な役割を果たします。
人材市場の調査・分析を駆使して業界にどのような需要があるかを把握し、派遣先の新規開拓などに活かすことが人材業界のマーケティングです。
また、登録派遣労働者の獲得のためには、情報を発信して自社の認知度を高めることが重要なポイントになります。
具体的には、アクセス数やページの視聴回数などの分析を通じて、自社メディアのコンバージョン率を高める施策・改善を行います。
人材業界に向いている人
人材業界は激務になることも多く、離職率も高めです。
そのため、業界にマッチしているかどうかの確認は慎重に行うべきと言えるでしょう。
以下に、人材業界に向いている人はどのような人なのか、一般的に考えられる特徴をまとめたので確認してみましょう。
体育会系の人
体育会系の学生は、人材業界以外でも高く評価される傾向にあります。
体力がありそうなイメージはもとより、「目標に向かって努力する根性がある」「チームワークを大切にする」「フットワークが軽い」なども、体育会系の人から受ける印象です。
激務になりがちな人材業界では、特に体力があってエネルギッシュな人が求められます。
また、上下関係の厳しい体育会に身を置いていた経験から、顧客に対する礼儀正しさも期待されます。
これらのことから、体育会系の人は人材業界に向いていると言えるでしょう。
コミュニケーション能力がある人
人材業界の仕事は、とにかく人とコミュニケーションを取ることが求められる業務が多いため、コミュニケーション能力の高さが強く求められます。
企業と求職者をうまくマッチングさせるには、いかに企業側の求める人物像を正確に掴むかにかかってきます。
また、求職者の仕事に対する価値観や人柄も把握しなければなりません。
どちら側からも詳細なニーズを引きだす必要があり、そのためには相手にいかに話をしてもらうかがカギとなります。
自分が話すだけでなく、傾聴力を含めた高度なコミュニケーション能力が必要なのです。
ポジティブ思考の人
特に企業と求職者の間に立つ仕事では、個人の人生を背負っているという責任の重さから、失敗できないというプレッシャーに耐えられずに退職してしまう人も少なくありません。
基本的に、仕事に失敗はつきものです。
仕事に対する責任をしっかり感じられることは大切なことですが、失敗を思い悩んで精神的に弱ってしまう人にはきつい仕事でしょう。
責任を持って業務にあたり、もし失敗したとしてもそれを糧として成長できるポジティブ思考の人は、人材業界向きと言えるでしょう。
目標を達成することが好きな人
人材営業は、特に労働集約型の仕事と言えます。
たとえば、人材紹介を行う企業では、求職者と連絡を取ることから始まります。
その後、面談やカウンセリングを行い、その人に合った会社を探してその旨を報告するなど、これらの業務はすべて1人で行うのが基本です。
そのため、どうしても業務量が多くなりがちです。
そのため多くの場合、ノルマが厳しく常に数字と向き合いながら仕事を進めていくことになります。
ノルマという目標を達成することに大きな達成感を覚える人は、人材業界に向いていると言えるでしょう。
人材業界の選び方
ひと口に人材業界といっても、先述したようにさまざまな業態・企業があります。
そのため、具体的にどこで働くことが自分に合っているのかをしっかりと確認しておく必要があると言えるでしょう。
ここでは、人材業界にある多くの企業の中から自分に合った企業を選ぶための4つのポイントをお伝えします。
自分が携わりたい職種があるか
人材業界にはさまざまな業務が存在するため、希望の仕事ではない仕事に配属されて退職してしまう人も多いです。
「選考が進んでから自分の携わりたい職種がなかったことに気がついた」ということのないように、その企業に希望の職種があるかどうかは必ず確認しておきましょう。
また、人材事業を総合的に展開している企業の場合には、就職が叶っても希望の職種に配属されない場合も考えられます。
将来的に、希望の職種への配属が叶うのかも含めて企業研究を行いましょう。
スタッフが話しやすいか
就職活動では、一般的に会社説明会などで学生に対応する人事の担当者のイメージがそのままその企業のイメージにつながり、企業選びに少なからず影響することになります。
「人事担当者の雰囲気に惹かれて入社してみたら、実際の配属先の雰囲気はまったく違っていた」というのはよくある話です。
派遣会社であるなら、人事担当者ではなく実際に働くスタッフの対応を見るために、登録して実際に活用してみるのもひとつの方法です。
入社後自分の働く姿が想像しやすくなるというメリットがあるので、ぜひ実践してみてください。
利用者の評判は良いか
利用者の評判も気にしておきたいポイントのひとつです。
インターネットなどには、企業のサービスに関する利用者のクチコミのほか、実際にその企業で働く人のクチコミを見ることができるサイトもあります。
また、SNSで評判を検索してみる方法もあります。
人それぞれ企業との相性は異なるので、個人のクチコミを鵜呑みにするのは考えものですが、少なからず雰囲気くらいは掴むことができるでしょう。
もちろん、評判はあくまでも検討材料のひとつなので、最後は自分で考えてから決めるようにしてください。
情報量か専門性を重視するか
求職者と企業のマッチングに関して言えば、より多くの企業、より多くの求職者から選んだ方がマッチ度は高くなることが考えられます。
そのため、この点に関して言えば情報量が多い企業の方にメリットがあります。
しかし、志望業界に特化したサービスの提供を求める求職者や、専門性を重視した人材を求める企業も多いです。
その場合には、登録者数が少なくても専門分野に強みを持つ人材サービス会社が圧倒的に優位性を持ちます。
どちらの企業が自分に合っているかを考えると、おのずと企業が絞れてくるでしょう。
人材業界に就職するためにすべきこと
人材業界を志望する際に、必須となる資格は特にありません。
ただし、基本的に人と関わる仕事なので、コミュニケーション能力やビジネスマナーについては重要視されますから、社会人として基本的なマナーは身につけておく必要があります。
特に言葉遣いは日頃から注意して、正しい敬語の使い方に慣れておきましょう。
また、人材業界は残業も多いので、それに耐えるバイタリティを養っておくことも重要です。
また、今後の人材業界の課題であるDX推進のためITに関する知識も備えておくことも必要と言えるでしょう。
就活に悩んだら!
人材業界では、専門性に特化したベンチャー企業の参入が目立ちます。
大手企業のみに優秀な人材が集中する時代から、近年はベンチャー企業やスタートアップ企業を希望する方が増えてきています。
企業選びで悩んだら、ベンチャー企業にも視野に広げてみるのもひとつの方法です。
以下の記事では、ベンチャー企業に関するさまざまな情報を紹介しています。
「大手以外の企業も視野に入れている」などと考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。
まとめ
人材業界は、どの業態でどんなサービスを行っているかはもとより、企業規模によっても業務範囲や内容が異なるため、入社してからの仕事内容は企業により大きく異なります。
人材サービスを行う企業のほとんどは、業務量が多く激務になることが予想されますが、それだけやりがいのある仕事とも言えるでしょう。
また、人材業界には多くのベンチャー企業が参入しています。就職活動を成功させるために、ベンチャー企業も視野に入れつつ自分に合った企業を見つけましょう。