気になる海運業界をまるっと解説!業界動向から今やっておくべきことまで紹介!

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はじめに

将来スケールが大きい仕事に携わるため、学生時代に「語学の勉強に力を入れた」という就活生の人もいるでしょう。

そういった場合は、海外との交易が盛んな海運業界がおすすめです。

本記事では、海運業界の概要や向いている人、求められる力について解説していますので、ぜひ参考にしてください。

【海運業界とは】海運業界とは

業界研究は、まずその業界の概要を掴むところから始まります。

大まかな仕事の内容を把握し、実際に興味のある部分をピックアップしていくことが大切です。

では、海運業界とはどのような業界なのか、事業内容や市場規模、就職難易度、ベンチャー企業の分布から見ていきましょう。

事業内容

海運業界と呼ばれる分野での主な事業内容は、船を用いた輸送事業です。

中身の内容に関わらず、コンテナなどの物資を運ぶ海上輸送がメインになります。

日本国内の輸送は内航海運、輸出入など海外との交易による輸送は外航海運と分けられており、陸地を海に囲まれている日本にとってはどちらも欠かせない仕事です。

コンテナ船のほかにも、石油を運ぶタンカーや液化ガスを運ぶLNG船、穀物船やケミカルタンカーなど、運ぶものに合わせた船が用意されていることも多くあります。

国内外の流通において、大量の物資を運べる貨物船が重宝されているのです。

また、輸送業のほかに船の貸し出しや不動産事業、貨物の種類ごとの専用ターミナルの設置、カーボンニュートラルの推進などの事業を行っている企業もあります。

市場規模

現在、海運業界の市場規模は4.9兆円と言われています。

コロナ禍により一時は売上が下がったものの、これを契機にコンテナ船の運賃が高騰し、異例の高収益を記録しました。

売上高が5,000億円を超える大手企業は3社あり、内2社が1兆円を超える売上を出しています。

また、日本国籍の海運企業の船腹量は世界の11.4%を占めており、ギリシャ、中国に次いで第3位です。

船腹とは、船に貨物をどれだけ載せられるかという能力を表す言葉であり、船腹量はその国がどれだけの船を保有しているかを指しています。

さらに、日本が海外と行う貿易において、海上輸送が占める割合は99.5%です。

国内の海運業界が持つ輸送能力の高さとスケールがよくわかる数値と言えるでしょう。

就活難易度

海運業界に従事する人の平均年収は、935万円と言われています。

これは、ほかの輸送系の業界平均と比べ高水準に位置している数値です。

給与が高くやりがいのある仕事となれば人気の業界と言えるため、その分就活難易度は高いと考えられます。

また、業界の特性上、海外の人たちと関わる仕事が多いです。

そのため、就活では英語をはじめとする語学力の高さも評価の対象に入ります。

場合によっては中国語やフランス語、ポルトガル語といった英語以外の言語の習得が求められるため、スキル面でも就職の難易度が高い業界と言えるでしょう。

業務の性質やスケールから、責任感の強さなど人柄の面でも求められるものが多いため、就活でのアピールポイントはよく考える必要があります。

【海運業界とは】海運業界のベンチャー企業

「スケールが大きく先進的な業務に携わりたい」と考えている人にとっては、業界内のベンチャー企業の分布も気になるところでしょう。

しかし、現在海運を生業としている企業には、ベンチャー企業はありません。

海運業界は信頼と実績が重視される傾向にあり、新規企業が参入しにくい土壌にあります。

一方、既存の海運企業がスタートアップ企業に対する投資を活発に行っているという側面もあり、先進的な事業にまったく携われないというわけではありません。

これは、海運企業の増収増益やデジタル技術を活用したDXの推進を目標としているためです。

ベンチャー企業やスタートアップ企業で新たに開発された技術を海運業界で取り入れ、さらなる企業の発展を狙っているということになります。

【海運業界とは】海運業界の大手企業

海運業界の大手業界についても、ある程度詳しく理解しておく必要があります。

あなたが受ける企業はこの中にないかもしれませんが、大手企業について理解していれば、就活において業界知識など問われた際に対応できるので、簡単にで良いので確認していってください。

日本郵船

日本郵船は「Bringing value to life.」を企業理念に掲げている企業です。

航空運送事業やエネルギー事業、不動産業など多岐にわたる業務を行っている企業です。

中期運営計画に沿って着実な成長を目指している企業であり、総合物流企業の枠を超え、中核事業の進化と新規事業の成長で未来に必要な価値を競争することを目標としています。

また、明確な財務指標や非財務指標を持っているのも大きな特徴であると言えます。

川崎汽船

川崎汽船は陸上運送や航空運送など幅広い物流サービスを提供している企業です。

海運業を主軸とする物流企業として、人々の豊かな暮らしに貢献することを目標としており、全てのステークホルダーから信頼されるパートナーとしてグローバル社会のインフラを支えることで、持続的成長と企業価値向上を目指している企業です。

顧客を第一に考えた、安全で最適なサービスの提供を大切にしているのが特徴であり、たゆまない課題解決への姿勢や専門性を追求した、川崎汽船ならではの価値の提供なども大切にしているのが大きな特徴であると言えます。

求める人材としては、新しい価値を提供できる人材、思考力がある人材、柔軟性がある人材などが挙げられます。

商船三井

​​商船三井は海外拠点を多く持っている企業です。

資源やエネルギー資源などの物資輸送をメインとしていますが、モーリシャス南東部のマエブールでNGOが運営する学校を支援するなど、さまざまな業務を行っています。

エネルギー事業や製品輸送事業など、他にもさまざまな業務を行っており、海外にも豊富な拠点を持っているのが大きな特徴であると言えるでしょう。

飯野海運

飯野海運は1899年7月に設立された企業であり、安定して収益をあげている企業です。

特に力を入れているのが外航海運業です。

海運業と不動産業、両輪のビジネスモデルを持っており、世界経済の拡大に合わせて成長を続けています。

海運業はもちろんのこと、市況の変化が少なく安定的な収益を確保できる不動産業を両輪としているので、非常に安定しつつもダイナミックな運営を続けている企業であると言えます。

いずれにおいても貨物の輸送やビルの賃貸のみにとどまらず、それらに関連する船舶やビルの管理など事業を一貫して行うことで、質の高いサービスを提供しているのが大きな魅力と言えます。

NSユナイテッド海運

NSユナイテッド海運は人を育てることに重きを置いており、仕事を通して人材の育成に注力している企業です。

原料やエネルギー資源の輸送だけではなく、さまざまな海運サービスを行っています。

鉄鋼原料輸送サービスや資源エネルギー輸送など、豊富な取り組みを行っているのが大きな特徴であると言えます。

また、内航海運事業にも取り組んでおり、効率と安全を追求している企業の一つです。

「海難事故ゼロ」を命題とし、それぞれの顧客に良質なサービスを提供するのはもちろん、地球環境保全の活動の推進にも取り組んでいます。

「安全の取り組みの4項目」を基軸とした安全運行に最大限の努力をしているのも特徴の一つであると言えるでしょう。

【海運業界とは】海運業界の動向

業界について詳しく知るには、現状と将来性から見た動向を把握する必要があります。

仮に現状が良かったとしても、将来性に不安がある業界では長く働くのが難しいためです。

海運業界の現状と将来性はどのようなものなのか、以下で詳しく確認していきましょう。

現状

海運業界の大手企業は、日本郵船と商船三井、川崎汽船の3社です。

2017年には、この大手3社がコンテナ船事業を統合し、オーシャンネットワークエクスプレス、略称ONEを設立しました。

大手企業が持つノウハウや資産、人材を相互に掛け合わせることで、世界に対する競争力を高めるのが狙いです。

日本国籍の企業といっても、海運業界の競合は国内企業だけではありません。

ほかにも世界全体でさまざまな目的により、企業同士のM&Aが行われています。

海運業界は海外の企業とやり取りしている分、事業においても対外的な評価においても世界情勢の影響を受けやすい業界です。

業界に従事する側もそれを理解し、積極的に情報を集め、柔軟に対応していく必要があります。

コンテナ不足

海運業界の現状を厳しくしている要因として、コンテナ不足による海上輸送費の高騰が挙げられます。

これまで、世界で利用されているコンテナの9割は中国で製造されていました。

そのため新型コロナウイルスによる感染症が拡大してからコンテナの製造量が減少し、新しいコンテナの購入が難しくなってしまったのです。

人手不足によりコンテナ回転率も下がり、現在でも海上輸送費の高騰が続いています。

これにより、海運大手3社の収益は好調だったものの、輸入に頼っている製品の長期的な物価上昇など消費者への影響が懸念されている状態です。

食料品などの生活必需品や嗜好品に留まらず、製造業のための原料価格が高くなるなど海運業界の動向が他業界に与える影響も大きいと言えるでしょう。

燃料価格の高騰

船舶を動かすための燃料価格の高騰は、海運業界における現状の課題のひとつです。

大型タンカーなどの巨大船舶における1日の消費燃料は、100トンと言われています。

2022年の10月から12月にかけて、重油1トンあたりの価格は95,980円でした。

つまり、1日船舶を運行すると、約960万円消費することになります。

燃料価格は、採掘している地域や輸送経路を含め否応なくさまざまな海外情勢の影響を受けて変動する数値です。

そのため、各海運業界企業はいかに燃料消費を抑え運航できるかに重点を置き、各種業務を進めています。

業界内の企業にとっても高いコストになるうえ、輸送された製品の価格にも反映されるため、物価高に影響を与えてしまう点も考慮しなければなりません。

環境問題への取り組み

近年、世界各国で環境保全に対する関心が高まっており、海運業界への評価にも影響しています。

これに対し、IMOすなわち国際海事機関は、船舶からの温室効果ガス及び硫黄酸化物・窒素酸化物の排出削減、バラスト水規制管理条約などを採択しました。

地球温暖化や大気汚染の軽減、海洋汚染の回避などを目的としており、各企業は船舶の性能向上やメンテナンスによる達成を目指しています。

たとえば、「排ガスから粒子物質を除去するためのセラミックフィルターを採用する」「プロペラの研磨や船体の洗浄によって推進力を維持し燃料の使用を抑える」などの取り組みが特徴的です。

このように、海運業界においては大気や海洋を中心とした環境問題への取り組みも活発に行われています。

将来性

業界の将来性を測るためには、今後考えられる課題に対する取り組みを確認すると良いでしょう。

海運業界の場合、これから迫ってくるとされる課題は大きく2つあります。

それは、化石燃料の枯渇に伴うエネルギー問題と国内外の人材不足です。

エネルギー問題に関しては、ゼロエミッション燃料としてカーボンリサイクルメタン・水素・アンモニアへの転換が有力視されています。

また、風力を用いた船舶の開発が進められており、化石燃料に頼らない持続可能な動力源の研究が盛んに行われている分野です。

人材不足に関しては、船舶の自動運転技術の開発・実験などが進められています。

さらに商船三井が全額出資しているCVC「MOL PLUS」は、これからの海運業界の変革を実現するため、新しいテクノロジーやアイデアを持つスタートアップ企業に幅広く投資している状態です。

時代の変化とそれに伴って明らかになる課題に合わせ、柔軟な対応を模索する企業が多いと言えるでしょう。

【海運業界とは】海運業界の業種

海運業界の業種は、船舶を用いて何を輸送しているかによって分かれています。

市場で消費される原料や製品のほか、客船として人の移動を助けるのも海運業界の仕事です。

また、なかには海上輸送以外の事業にも力を入れている企業もあります。

海運業界の業種について、以下で詳しく見ていきましょう。

資源輸送

海運業界の中でも市場に対して特に影響力が強い業種は、製品の原材料を輸送する資源輸送業です。

鉄鉱石や石炭といった鉱物、小麦や大豆、トウモロコシなどの穀物といった多種多様な資源をドライバルク船、別名「ばら積み船」と呼ばれる船舶によって日本へ輸送しています。

この船舶は、梱包されていない貨物を運びやすいように設計された船です。

また、複数の資源を同時に輸送できる船舶もあります。

ほかにも木材を運ぶ木材専用船や、プラスチックの原料を運ぶケミカルタンカーなどが使用されており、用途に合わせた多様な船舶が使用されているのです。

国内に工場などの生産拠点を構える多種多様な産業の原材料を輸送しているため、あらゆる産業を支えている業種と言えるでしょう。

製品輸送

消費者の目に見えやすい形で市場に影響を与えるのは、すでに完成した製品を運ぶ製品輸送業と言えるかもしれません。

この業種は、さまざまな工業製品、一般消費財を輸送しています。

具体的には、自動車を運ぶ自動車船や、日用品や電化製品を運ぶコンテナ船がこれにあたる船舶です。

自動車船は、一度に500〜1,500台の船を運ぶことができ、国産の自動車の輸出、海外産の自動車の輸入などに活躍しています。

一方のコンテナ船は、一般的な貨物を運ぶのに広く活用されている船舶で、主にスチール製の巨大なコンテナに製品を積み込んで輸送します。

市場の動向に応じてさまざまな物資を輸送するため、それぞれの製品に必要な輸送ニーズや物流パターンに対応しサービスを提供している業界と言えるでしょう。

エネルギー輸送

工場などの製造業にも、一般的な消費者にとって馴染み深く重要な物資を運ぶ業界として、エネルギー輸送業界が挙げられます。

自動車や飛行機など移動手段の燃料源や、私たちの生活に欠かせない電力・石油・LPガス・天然ガスなどのエネルギー資源の輸送を担っている業界です。

現在では非常に重要な事業ですが、今後化石燃料と呼ばれるエネルギー資源は枯渇していくと考えられています。

そのようなエネルギー資源の枯渇化に伴い、海底油田などの新しい海洋資源の開発・拡大に取り組んでいる企業も少なくありません。

液化天然ガスを運ぶLNG船や、石油を運ぶオイルタンカーなどが用いられています。

一度海上事故が起きると深刻な海洋汚染を引き起こす可能性があるため、特に環境問題に気を配っている業界とも言えるでしょう。

ロジスティクス

海運業界の企業は、海上輸送事業だけでなく、陸上輸送にも力を入れているところが多いです。

これは貨物の輸出入や管理、輸送経路を一本化したワンストップサービスのニーズに対応するためであり、このような取り組みをロジスティクスと呼びます。

国内にいくつも拠点を持ち、倉庫業や流通加工業なども取り入れることで、それぞれの過程で発生するコストをカットし、自社サービスのシェアを拡大していくのが主な狙いです。

陸上の輸送だけでなく航空輸送も行っており、さまざまな手段を用いてより輸送を効率化する試みが実施されています。

荷主企業の依頼に応じて最適化された輸送サービスを提供する必要があり、また親会社からロジスティクスを任されている子会社でもその立場にとらわれないニュートラルな姿勢を貫くことが求められます。

客船

海運業界の事業には、人の移動に関わる客船事業も含まれています。

大手の海運企業は、BtoBが中心の貨物輸送事業だけでなく、直接消費者と関わるBtoC事業も展開していることが多いです。

近年のコロナ禍により客船事業は衰退気味であるものの、海上輸送事業の増収増益で経営状況が改善したということもあり、コロナ後の需要復活を見越してクルーズ船造船にも意欲的になっています。

国内の港を回る国内クルーズや海外まで出向くクルーズまでさまざまな航路を用いて客船事業が行われており、単なる人の移動だけでなく船での移動そのものがレジャーになるようなサービスを提供しているところがほとんどです。

ただし、国内の港では旅客船用の岸壁が限られており、貨物船用の岸壁を利用することも多く貨物輸送業との兼ね合いが課題のひとつとなっています。

【海運業界とは】海運業界の職種

就職先を探すためには、業界だけでなく、どのような仕事をするかという職種も重要です。

海運業界の場合は、主に陸上で船舶の運航を助ける陸上職と、実際に船舶に乗り込み海に出る海上職の2つがあります。

それぞれの職種にどのようなものがあるのか、次項から詳しく見ていきましょう。

陸上職

海運業界の陸上職は、メインの事業である海上輸送を滞りなく進めるためのサポート業務を行っています。

船の整備を行う整備士や仕事を取ってくるための営業職など、船舶の安全を守り海運業界を盛り立てていくのに欠かせない職種です。

陸上職がどのような仕事を担っているのか、それぞれ詳しく見ていきましょう。

事務系

海運業界にも事務職は存在しますが、一般的にイメージされる事務職と比べて専門性の高い業務を扱います。

輸送する貨物の種類や量など、案件ごとに最適な船を手配する船舶調達をはじめ、燃料・気候変動・海賊情報などさまざまな要因を考えながら最適でコストパフォーマンスの良い航路計画を立案する運行管理を手がける職種です。

さらに、BtoB事業における契約に関する業務も行います。

貨物の輸送は1回のスケールが大きく、1つの契約で大きな金額が動きます。

そのため、適切なサービスを提供するにはさまざまな部門の連携が欠かせません。

また、陸上職と海上職が力を合わせて顧客の期待に応えるための橋渡しも役割に含まれています。

なお、港の管理や情報システムの管理なども事務系の部門で行っていることが多いです。

技術系

航行の安全性を守るためには、技術系の職種も欠かせません。

技術系の職種は、新造船のための計画から船価交渉、建造現場での監督業務など業務幅が広いのが特徴です。

主に運行中の船舶の保守を行い、船舶の機能維持や安全な航行のための業務を担っています。

さらには、環境保全のための機能やより効率的な貨物輸送技術の研究など、これからの社会的なニーズに合った技術開発などを行うことも珍しくありません。

海運企業の技術職が船の仕様や搭載機器を決め、それをもとに造船会社が図面を作成し、再度海運企業の技術職が図面を確認して承認した後に新造船を建造します。

船のトラブル解決や保守、新技術開発など、海運業界の技術面の業務を支える重要な職種と言えるでしょう。

営業

海上輸送の業務は、何もせずとも転がり込んでくるわけではありません。

さまざまな企業と契約を交わし、価格など細かな条件を擦り合わせるための営業職が必要です。

海運業界の営業職は、荷主がいる場所に足を運んで諸々の条件の交渉を担当します。

貨物の輸出入を行っている企業の場合、顧客が外国人ということも珍しくありません。

そのため、母語だけでなく英語などの外国語に精通し、海外でも通用するビジネスマナーを身につけることが求められます。

数十年単位の契約期間で数億円という規模の契約もあるため、責任が重くやりがいのある仕事です。

新規契約の獲得のほか、既存契約の更新なども行います。

短期的な利益に飛びつくだけでなく、長期的なスパンで採算性を考える視野と思考力が求められる職種です。

海上職

海運業界の海上職は、メインの事業に直接携わる職種です。

海上職として企業に入社した後は、2年間海技大学校で勉強し海技士免状を取得する必要があります。

実際に海に出てからの業務は24時間体制の3交代制です。

海上職の仕事について、それぞれ詳しく見ていきましょう。

航海士

船の運航の中心となるのは、免許を持った航海士です。

航海士は船の操縦や見張り、航海計画の策定と確認、船体の保守整備、積荷の管理などを行います。

初めは三等航海士として乗船し、3年間従事したのち二等航海士に、さらに5年で一等航海士として業務を行うのが一般的です。

一等航海士になって7年後以降、最終的には船長として乗船します。

三等航海士は、消火や救命設備など有事の初動を左右する機能の整備や、船員の福利厚生に関わる業務がほとんどです。

また、二等航海士は航海計器の観測や海図の確認、改正を担当します。

そして一等航海士は、ほかの航海士や船員への指示や労務管理、貨物の積み下ろしの監督などが主な業務です。

船長はその船の業務すべてに対して責任を負っており、陸との通信や対外的な交渉なども行っています。

機関士

造船などを担当する陸上の技術職に対し、運航中の船舶の整備を行う海上の技術職が機関士です。

船舶のエンジンや発電機、ボイラーなどその船を動かすために必要な機械のメンテナンスや、トラブル発生時の対応を行います。

初めは三等機関士として乗船し、3年で二等機関士に、さらに5年で一等機関士に、そこから7年で最終的には機関長として乗船することがほとんどです。

三等機関士は、空調関連など航行の基幹部分にはあまり関連のない設備の整備を行います。

また、二等機関士は発電機やボイラーなど、船全体の機能に関わる設備の担当です。

そして一等機関士は、ほかの機関士への指示や労務管理、エンジンの整備などを行っています。

機関長は整備関係の業務に全責任を負い、機関士を統括するのが役目です。

【海運業界とは】海運業界に向いている人

就活では自分のスキルや性質を把握し、それに向いている職業を選ぶことが大切です。

もちろん、海運業界にも向き不向きは存在します。

海運業界に向いている人の特徴を知り、自分に当てはまる条件があるか確認してみましょう。

グローバルな環境で働きたい人

海運業界の主な舞台は国内外をつなぐ広い海洋であり、海外を股にかける仕事です。

そのため、荷主であるクライアントや船舶の乗組員が外国人であることも珍しくありません。

国籍をはじめ、育ってきた文化や信仰する宗教など、それぞれ異なるバックグラウンドを持った人と仕事をしなければなりません。

そのため、異文化への理解が深い人や、自分と異なる考え方の人とも円滑にコミュニケーションが取れる協調性のある人が適性のある人材と言えるでしょう。

また、陸上職であっても海外の人と関わる機会が多いため、国内だけで通用するマナーだけでは足りない可能性があります。

海外で求められるマナーや仕事に興味があり学び続けられる人、グローバルに活躍したい人にこそ向いている業界と言えます。

縁の下の力持ち的な存在として働きたい人

「国内の産業や消費者を支え、縁の下の力持ちとして働きたい」と考えている人は、海運業界に向いています。

周囲を海に囲まれ、狭く資源に乏しい環境ゆえに輸入大国である日本は、外国から購入する資源がなければ存続できません。

そのため、食料品や原材料、エネルギー資源を運ぶ海上輸送がストップすると、日本全体に多大な影響を及ぼすおそれがあります。

このことから、海運業界には社会的なインフラを担う側面があり、日本を支えている業界であると言えるでしょう。

物流が経済の発展にとって重要な存在であると認識し、社会の一員としてそれを支える仕事に興味があれば、適性があると言えます。

また、日々の仕事の成果は、日常的に目に入ることはほとんどないため、「陰ながら誰かの役に立つ働き方がしたい」と望んでいる人にも適しているかもしれません。

規模感の大きいことに携わりたい人

船舶の建造や維持には莫大な金額がかかるほか、海運業界では1つの契約で数億円が動くこともあり、一つひとつの案件の規模感が大きい傾向にあります。

陸路や空路と比べ、船舶には大量の貨物を載せることができるため、スケールが大きくなるのです。

金額の大きさのみならず、契約期間が長いケースもあり、数十年単位の契約も珍しくありません。

また、契約の更新時に次年度の輸送量や収支がほとんど決定してしまうなど、交渉能力も求められる業界です。

そのため、規模の大きい仕事をやり遂げる責任感や遂行力のある人材が適任と言えるでしょう。

1回のミスが大きな損害につながる可能性もあるため、それに怯えて仕事がままならなくなってしまう人には向きません。

ある種の豪胆さが求められる業界でもあります。

【海運業界とは】海運業界で求められる力

海運業界の現場で求められる人材の性質だけでなく、必要なスキルについても確認しておきましょう。

スキルに関しては、就活までに磨くことができるものもあります。

海運業界への就職を目指すにあたって身につけておくべきスキルの内容を見ていきましょう。

語学力

先述したように、海運業界ではグローバルな環境で英語を使って仕事をする機会が多いです。

日本に籍を置く企業であっても、従業員や取引先には海外出身の人が多くいます。

メールや書類など文書作成時に英語を使うシーンが多く、リーディング力やライティング力が特に強く求められます。

スピーキングについては、最低限の英会話ができれば問題ありませんが、相互理解を心がける姿勢として英語を身につけるための努力をすることが大切です。

特に営業や海上職は海外の顧客や外国籍を持つ乗員、現地の人々とやり取りする可能性が高いため、語学力を高めておく必要があります。

学生時代に留学する、TOEICなど実用的でわかりやすい評価基準のテストを受けておくなどの対策をしてみましょう。

リーダーシップ

海運業界で働くならば語学による交流の円滑化はもちろん、リーダーシップによってバックグラウンドの異なる集団をまとめ上げる力が必要です。

自分と相手の相互理解だけでなく、チーム全体がお互いのことを理解し受け入れることができるよう環境を整えてサポートする力が求められます。

特に狭い船内で対人関係のトラブルが起きると、現場の雰囲気が悪くなりプロジェクト全体に悪影響を及ぼすことになるでしょう。

そのためトラブルを解決してチームの団結力を高める能力が必要とされるのです。

アルバイトやサークルなど、学生時代にチームでリーダーシップを発揮したエピソードなどを取り入れて就活に臨むと効果があります。

チームにとっての緩衝材となる力、マネジメント力や全体を引っ張っていく牽引力などをアピールしてみましょう。

向上心

海運業界で働くならば、常に学び続ける向上心も欠かせません。

海上職として働くためには、船舶職員養成課程を修め、海技免状を取得しなければなりません。

そのため、入社後二年間は学生時代と同じく勉強の毎日になります。

また、資格を得て船での勤務が始まった後も、海外情勢や海上に関する専門知識を身につけなければならないため、向上心が求められます。

もちろん、たとえ陸上職であっても向上心が必要ないわけではありません。

海外情勢や物流の事情は目まぐるしく変化するため、その時々の状況に合わせた事業を進めるためには、船に乗らない人員も情報を取得し続ける必要があります。

技術系の職種は研究・開発を行っている部門もあるため、より新技術へのアンテナを張っておく必要があるでしょう。

分析力

海運業界で働くためには、言われたことをインプットするだけでなく、自分で考えるための分析力や結果をアウトプットする力が必要です。

荷主との契約や造船などは基本的に莫大なお金がかかるため、短期の利益だけでなく数年後の未来まで見通す力が求められます。

「計画している事業のコストは何年で回収できるのか」「今後の市場に与える影響はどれくらいか」など、しっかり見定めて推進しなければなりません。

これには積み重ねられた過去のデータから分析し、増収につながる事業か見極める力が必要です。

そして、それを具体的な根拠をもとに説明する力があれば、チーム内での分析結果の共有が可能になります。

事業全体を見渡す広い視野と分析力、他社を説得できるアウトプットの力が求められるでしょう。

責任感

当然ながら、海運業界で働くにあたっては責任感が重要であると言えるでしょう。

物資と乗務員を安全に運ぶという責任感が非常に重要であると言えます。

時には悪天候に見舞われたり、危険な物質を運んだりすることもあるため、注意が必要ではありますが、責任感がある人ならばこういった苦境も乗り越えることができるでしょう。

コミュニケーション能力

コミュニケーション能力はどのような業界でも求められる能力なので、あえて海運業界で求められるものであると強調する必要もないかもしれませんが、自分が備えているかについては確認しておく必要があると言えます。

特に、国内外さまざまな人とコミュニケーションを取る機会があるので、異文化に対しての理解も必要です。

実際に会って人と話す以外にも、メールや電話などを通じて話すことも多いので、仕事を円滑に進めるために、多少なりともコミュニケーション能力を持っていく必要があると言えます。

これまでさまざまな場面でコミュニケーション能力を発揮してきた人は、積極的にアピールすることができる場合良いでしょう。

【海運業界とは】海運業界の魅力

働きたいと考えている人はすでに理解していることも多いかもしれませんが、より就活へのモチベーションを高めるために、海運業界の魅力についても理解しておきましょう。

海運業界で働くにあたっては下記のような魅力が存在しています。

大きい仕事に関わることができる

海運業界で働くことにおける大きな魅力の一つとして、大きい仕事に関わることができるということが挙げられます。

海運業界は市場の規模が大きいため、必然的に大きい仕事に関わる機会が増えます。

よって、大きな規模の仕事を務めたいと考えている人にはぴったりの業界であると言えるでしょう。

また、世界情勢の理解なども重要であると言えるため、社会の勉強などが好きな人にもぴったりの業界です。

社会に役立っている実感が持てる

海運業界は物流のインフラを保つために非常に重要な役割を担っています。

物を運ぶことで社会の役に立っていることを実感することができるのが大きな魅力の一つと言えるでしょう。

給料を「社会に提供した価値を定量的に表したもの」という考え方を持っている人には特に向いている、社会に貢献している実感が持てる仕事です。

目に見えて誰かの役に立っていることを実感できるので、常にやりがいを持って業務を行うことができるでしょう。

グローバルに活躍できる

海運業界は日本以外にも活躍の場を設けることが多いので、グローバルに活躍したいと思っている人材におすすめできます。

外交海運の場合は海外で働くことも多く、グローバルに活躍できるチャンスも数多く得られます。

また、海外で働くに当たっては当然ながら多文化理解や英語力が必要となってくるため、英語力が全くない人はなかなか働くことが難しくなってしまいます。

よって、海運業界を目指す人はある程度TOEICなどで勉強しておくことをおすすめします。

【海運業界とは】海運業界に就職するためにすべきこと

「海運業界に就職したい」という場合、就活までにやっておくべきことがいくつかあります。

特に重要なのは、業界に関する詳細な情報を集めることです。

また、海運業界で求められるスキルを磨くのも良いでしょう。

海運業界への就職のためにやっておくべきことについて、以下で詳しく解説します。

海運業界の動向を調査

海運業界の動向や課題は、決して1つ2つではありません。

上記に述べた動向のほかにも、「どういう社会課題に直面して解決に向けた行動をしているのか?」などを考え調べてみると良いでしょう。

企業や業界関係者が執筆しているWeb上の記事や冊子、行政からの情報などをもとに、海運業界の取り組みや傾向について調べるのがおすすめです。

また、インターンシップやOB訪問などを活用するのも有効です。

実際に従事している社員の方から直接業界の話が聞くことができるので、ぜひチャレンジしてみてください。

各海運企業の違いを調査

業界全体に共通する傾向や事業内容もありますが、基本的に企業ごとに特徴や性質は異なります。

そのため、海運業界に属する複数の企業に対して企業研究を行い、企業ごとの違いを把握しておくことが重要です。

各企業の書類選考や面接を受けるうえで、志望動機の作成は欠かせません。

そういったときには、「なぜあなたがこの企業に入りたいのか?」ということを必ず聞かれます

そのため、各企業の特徴を押さえて回答を差別化できるように準備しておきましょう。

語学力・海外感度を磨く

海運業界に就職するためには、語学力や海外感度を磨いておく必要があります。

陸上職でも海上職でも、外国籍を持つ人と直接もしくはインターネット上でやり取りすることが日常茶飯事です。

相手は日本語が使えるとは限らず、多くの場合は英語でのやり取りが中心となります。

そして、国籍が違えば文化も異なるため、何が相手にとって失礼にあたるかも学び直さねばなりません。

そのため、英語をはじめとする語学力はもちろん、異なる文化、バックグラウンドを持った人と適切に接するための能力を身につける必要があるのです。

また、海運業界は世界情勢の影響を受けやすいため、世界各地で何が起きているか、国際ニュースやさまざまな媒体から情報を得られるようにしておくと良いでしょう。

チームの中でリーダーシップを発揮した経験を積む

海運業界への就職を目指すならば、学生時代の間にリーダーシップを発揮する経験を積んでおくと良いでしょう。

特に海上職を目指す場合は、等級が上がるごとにマネジメントの仕事の割合が増えるため、リーダーシップの有無が評価基準となります。

また、陸上職でも海上職でも、企業が求めているのは将来的に会社を引っ張っていける人材です。

そこで、大学在学中にアルバイトや部活、サークルなどを通して積極的にチームのリーダーに挑戦してみると良いでしょう。

就活で強みをアピールする際に、ただ「リーダーシップがあります」と主張するだけよりも、実際の経験に基づく根拠を出せる方が説得力が高まります。

人をまとめる経験をしてみることで、自分にその適性があるかどうかもわかるでしょう。

【海運業界とは】例文紹介

ここまで海運業界について詳しく紹介してきましたが、ここからはいよいよ例文について紹介していきます。

本記事で紹介した内容のおさらいという意味でも重要なので、ぜひ確認してください。

例文①

貴社を志望する最大の理由は私の英語力を活かして海運業界で活躍したいと考えているからです。

海運業界はグローバルな業界であり、異文化間コミュニケーションや国際取引が日常的に発生します。

このような環境で、私の英語力は大きな強みとなると信じています。

この英語力を身につけるために、私は留学経験をはじめとする多くの機会を活用してきました。

留学中、さまざまな国籍の人々とのコミュニケーションを通じて、文化の違いを超えた効果的なコミュニケーション方法を学びました。

また、多国籍のチームでプロジェクトを進める中で、英語を使った交渉やプレゼンテーションスキルを磨くことができました。

これらの経験を活かし、貴社では英語を駆使して国際取引をスムーズに進め、新たなビジネスチャンスを創出することに貢献できると考えています。

また、グローバルな視点を持って業務に取り組むことで、貴社の国際的な事業展開にも貢献したいと思います。

例文②

貴社を志望する理由は、船を通して社会に貢献したいからです。

海運業界は世界経済の基盤を支え、人々の生活や産業に不可欠な役割を果たしています。

この業界で働くことは、世界中の人々の生活を豊かにするという大きな意義を持っていると私は考えています。

この思いは、以前参加した港湾でのボランティア活動から生まれました。

そこでは、船舶がどのようにして国際貿易や地域経済に貢献しているのかを目の当たりにしました。

特に、災害時には救援物資を運ぶ重要な役割も担っていることを知り、海運業界への興味が一層深まりました。

貴社では、私のこのような社会への貢献したいという思いを活かし、効率的かつ環境に配慮した船舶運用で、持続可能な社会の実現に貢献できると信じています。

また、私はチームワークを重視し、常に新しい知識を追求する姿勢を持っており、貴社の一員としてさまざまなプロジェクトに貢献できるとも考えています。

例文③

貴社を志望する理由は、私の分析力を存分に発揮し、海運業界の更なる発展に貢献したいからです。

海運業界は、複雑な国際関係や経済動向に大きく影響を受けるため、先見性と高度な分析力が求められます。

私はこれまでの学業やインターンシップを通じて、データ分析スキルを鍛えてきました。

大学での経済学の勉強中に、海運業界の市場動向を分析するプロジェクトに取り組んだ経験があります。

その際、世界各国の貿易量や海運料金のデータを収集・分析し、業界の成長ポテンシャルや課題を発見しました。

この経験から、業界特有の課題解決に向けた分析力の重要性を実感しました。

貴社は革新的な取り組みと持続可能な経営戦略で知られています。

このような環境で私の分析力を活かすことで、効率的な運航管理やコスト削減、新たなビジネス機会の発見に貢献できると確信しています。

例文④

貴社を志望する理由は、私の責任感とリーダーシップを活かして、海運業界でのチャレンジに貢献したいからです。

海運業界は、グローバルなサプライチェーンを支える重要な役割を担っており、この分野で活躍するには強い責任感とリーダーシップが求められます。

大学時代に学生団体のリーダーを務めた経験がこの思いの根拠です。

私はプロジェクトの計画から実行までをリードし、メンバー間のコミュニケーションの橋渡し役として、団体の目標達成に貢献しました。

この経験を通じて、困難な状況においても冷静に判断を下し、チームをまとめ上げる力を身に付けました。

貴社が持続可能な海運業界の発展を目指し、環境に配慮した運航や革新的な技術の導入に取り組んでいる点に大きな魅力を感じています。

貴社での勤務を通じて、責任感とリーダーシップを発揮し、チームの目標達成に向けて貢献したいと考えています。

【海運業界とは】海運業界の就活をする上で困ったら

海運業界への就活を進めるうえで、疑問に思うことや困ったことがある場合は就活エージェントを頼るのもひとつの手です。

これまでに多くの就活生を見てきたアドバイザーが、就活の1から10まで一貫してサポートを行ってくれます。

また、内定後の手続きに関するサポートも行っているため、これまで利用してきた就活生からの満足度も高いサービスです。

さらに、面接対策を何度も行ってくれるため、本番も自信を持って臨むことができます。

就活エージェントについて詳しく知りたい方は、こちらからどうぞ。

まとめ

現在、運航にかかる費用の急騰で黒字の海運業界ですが、コロナ禍などの社会情勢に影響されやすく動向が読みにくい業界でもあります。

しかし、輸入大国である日本には欠かせない存在であり、今後もなくなることはない仕事です。

また、世界を舞台に規模感が大きくやりがいのある仕事ができるという特徴もあります。

海運業界に就職するためには、語学やバックグラウンドの異なる相手を理解する姿勢、責任感などが求められます。

業界に関する理解を深め、海運業界への就職を目指しましょう。

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