皆さんは「電子部品業界」と聞いて、どんなイメージを持ちますか?「スマホやPCに入っている、小さいけれど重要なもの」というイメージでしょうか。
それとも「なんだか難しそう」「きついって聞くけど本当?」と不安に思っているかもしれませんね。
この記事では、そんな電子部品業界のリアルについて、仕事内容から「きつい」と言われる理由、そして将来性まで、就活生の皆さんの疑問に答えていきます!
【電子部品業界はきついのか】電子部品業界はきつい?
就活を進めていると「電子部品業界はきつい」という噂を耳にすることがあるかもしれません。
確かに、この業界には特有の厳しさがあるのも事実です。
例えば、技術の進歩が非常に速いため、常に新しい知識を学び続ける必要がありますし、顧客であるメーカーからの品質や納期への要求は非常にシビアです。
また、世界中の競合と戦う必要があるため、プレッシャーも大きいでしょう。
しかし、それは裏を返せばやりがいでもあります。
この記事で、その「きつさ」の正体と、それでも多くの人がこの業界で働く魅力について、じっくり解説していきます。
【電子部品業界はきついのか】電子部品業界の仕事内容
電子部品業界の仕事は、私たちの生活を豊かにするスマートフォン、パソコン、自動車、家電、さらには医療機器や産業用ロボットなど、あらゆる製品の根幹を支える「部品」を生み出すことです。
最終製品と違って、普段皆さんが直接目にすることは少ないかもしれませんが、これらの部品がなければ現代社会は成り立ちません。
まさに「縁の下の力持ち」として、世界中のモノづくりを支える非常に重要な役割を担っています。
仕事内容は、新しい材料や技術を生み出す「研究・開発」から、具体的な製品の形にする「設計」、それを効率よく大量に作る「生産技術・製造」、そして製品の信頼性を守る「品質管理・品質保証」まで、非常に多岐にわたります。
BtoB(企業向け)ビジネスが中心となるため、顧客である企業のニーズを深く理解し、その課題を解決する部品を提供していくことが求められます。
研究・開発
研究・開発は、電子部品業界の未来を創る仕事です。
この職種では、まだ世の中にない新しい技術や、既存の製品の性能を劇的に向上させるための基礎研究や応用研究、そして新製品の開発を行います。
例えば、より小さくてもっと多くの電気を蓄えられるコンデンサの材料を探したり、今までにない機能を持つセンサーの原理を考え出したりします。
日々の業務は、地道な実験とデータの分析の繰り返しが多いです。
仮説を立て、実験し、結果を考察し、また次の仮説を立てるというサイクルを根気強く回していきます。
最新の技術動向を常に追いかけ、学会や論文で情報を収集することも欠かせません。
すぐに成果が出るとは限らない忍耐力が必要な仕事ですが、自分の研究が世界を変えるような画期的な製品に繋がった時の達成感は、何物にも代えがたい大きなやりがいとなるでしょう。
設計
設計職は、研究・開発部門が生み出した技術やアイデアを、具体的な「製品」として形にする役割を担います。
お客様(主にメーカー)の要求仕様に基づいて、「どのような構造にするか」「どの材料を使うか」「どのくらいのサイズにするか」といったことを考え、図面に落とし込んでいきます。
電子部品の設計には、電気回路の知識が不可欠な「回路設計」や、部品の形状や強度、放熱性などを考える「機構設計」などがあります。
CADと呼ばれる設計支援ツールを使いこなし、ミクロン単位(1000分の1ミリ)の精度で設計を行うことも珍しくありません。
ただ動けば良いというわけではなく、コスト(費用)、品質(Quality)、納期(Delivery)の3つ、いわゆるQCDをすべて満たす設計が求められます。
関係部署やお客様と何度も調整を重ね、試作と評価を繰り返しながら、量産可能な最適な設計を追求していく、非常に専門性の高い仕事です。
生産技術・製造
生産技術・製造は、設計された電子部品を、いかに「効率よく」「高品質に」「安定して」大量生産するかを追求する仕事です。
生産技術職は、新しい製品を量産するための製造ラインの立ち上げや、既存ラインの改善・自動化などを担当します。
例えば、どの機械を導入するか、作業員の動線をどうするか、不良品を出さないための検査方法はどうするか、といったことを考え、最適な生産プロセスを構築します。
工場の「頭脳」とも言える重要な役割です。
一方、製造職は、実際にそのラインで部品の生産オペレーションを行ったり、設備のメンテナンスを担当したりします。
電子部品の製造は、非常にクリーンな環境(クリーンルーム)で行われることが多く、小さなチリやホコリも許されない精密な作業が求められます。
モノづくりの最前線で、高品質な製品を世に送り出すための土台を支える、やりがいの大きな仕事です。
品質管理・品質保証
品質管理・品質保証は、お客様に信頼される製品を届けるための「最後の砦」とも言える重要な仕事です。
品質管理(QC:Quality Control)は、製造途中の製品や完成した製品が、定められた規格や基準を満たしているかを検査・測定し、不良品が市場に出回るのを防ぐ役割を担います。
もし不良が見つかれば、その原因を特定し、製造部門にフィードバックして再発防止策を講じます。
一方、品質保証(QA:Quality Assurance)は、製品の企画・開発段階から関わり、そもそも不良品が出ないような仕組みづくりや、品質を維持・向上させるための体制構築を行います。
お客様からのクレーム対応や、国際的な品質基準(ISOなど)の認証取得・維持も担当します。
電子部品の品質は最終製品の性能や安全性に直結するため(例えば自動車や医療機器など)、その責任は重大ですが、自社製品の信頼を根底から支える、誇りの持てる仕事と言えるでしょう。
【電子部品業界はきついのか】電子部品業界の主な職種
電子部品業界には、ここまで紹介した仕事内容を実現するために、様々な職種の人々が関わっています。
理系のイメージが強いかもしれませんが、実は文系出身者が活躍できる職種もたくさんあります。
例えば、最先端の技術を生み出す「研究・開発職」や、具体的な製品図面を描く「設計職」、効率的な生産ラインを構築する「生産技術職」、製品の信頼性を守る「品質管理・品質保証職」などは、主に電気電子、機械、物理、化学、材料工学といった理系の専門知識が求められることが多いです。
しかし、それらの製品をお客様である企業に提案し、技術的なサポートも行う「営業・技術営業(FAE)」や、会社全体の戦略を考えたり、ヒト・モノ・カネを管理したりする「企画・管理部門(人事、経理、法務など)」では、文系出身者も大いに活躍しています。
自分の専攻や強みをどの職種で活かせるか、幅広い視野で見てみることが大切です。
研究・開発職
研究・開発職は、電子部品メーカーの競争力の源泉となる、新しい技術や製品を生み出す花形の職種です。
主な活躍の場は、大学で学んだ電気電子、物理、化学、材料工学などの専門知識を活かせる理系の学生さんたちです。
基礎研究では、将来の製品化を見据えて、新しい材料の物性を探求したり、未知の現象を解明したりします。
応用研究・製品開発では、それらの基礎技術をもとに、顧客のニーズや市場のトレンドを先取りした具体的な新製品を開発します。
地道な実験と分析、試作と評価を繰り返す根気強さが求められる一方で、世の中を変えるイノベーションを生み出す可能性を秘めた、非常にやりがいのある仕事です。
常に最新の技術動向にアンテナを張り、学び続ける姿勢が不可欠となります。
回路設計・機構設計職
設計職は、お客様の要求や仕様に基づき、電子部品の具体的な「かたち」を創り出す仕事です。
回路設計は、部品が意図した通りに電気的に動作するよう、回路の構成や部品の配置などを設計します。
電気電子工学の知識が中心となります。
一方、機構設計は、部品の形状、サイズ、強度、耐久性、放熱性などを考慮し、機械工学的な観点から設計を行います。
どちらもCADと呼ばれる設計ソフトを駆使して、ミクロン単位の精密な図面を作成していきます。
設計職の難しさは、単に機能を実現するだけでなく、量産時の作りやすさ(生産性)やコストといった、相反する要求を高いレベルで両立させなければならない点にあります。
自分の設計した部品が、世界最先端の製品に搭載される喜びを味わえる職種です。
生産技術職
生産技術職は、設計部門が作成した図面を基に、高品質な製品を「効率よく」「安定して」「低コストで」量産するための生産体制を構築・改善する、モノづくりのプロフェッショナルです。
工学系の幅広い知識、特に機械工学や電気工学、情報工学などの素養が活かせます。
新製品の立ち上げ時には、どのような製造装置を導入するか、作業手順(プロセス)をどうするか、自動化・省人化をどう進めるかなどを検討し、最適な生産ラインを設計します。
また、既存のラインで発生する問題(不良率の悪化、生産効率の低下など)の原因を究明し、改善策を実行するのも重要な役割です。
工場全体の生産性を最大化することがミッションであり、自分の工夫次第で会社の収益に大きく貢献できる、ダイナミックな仕事と言えるでしょう。
品質管理・品質保証職
品質管理・品質保証職は、お客様に安心して製品を使ってもらうために、その「品質」を守り、保証する重要な役割を担います。
理系全般の知識が求められますが、特に統計学的なデータ分析や、材料・化学分析の知識が役立つこともあります。
品質管理(QC)は、製造工程で規格通りの品質が保たれているかをチェックし、不良品の流出を未然に防ぎます。
品質保証(QA)は、さらに上流の開発・設計段階から品質を作り込み、クレーム対応や再発防止、国際規格(ISO)の運用などを通じて、会社全体の品質に対する信頼を構築します。
電子部品のわずかな不具合が、自動車や医療機器などの重大な事故に繋がる可能性もあるため、非常に責任の重い仕事ですが、その分、会社の「信頼」という見えない資産を守る、誇り高い仕事です。
営業・技術営業(FAE)
電子部品業界の営業職は、単に製品を売るだけではありません。
特にお客様である企業の開発・設計担当者とやり取りすることが多いため、高い専門性が求められます。
一般的な営業職に加え、「技術営業(FAE:Field Application Engineer)」と呼ばれる職種があるのが特徴です。
FAEは、営業担当者と同行し、自社の製品に関する技術的な説明や、お客様が抱える技術的な課題(「こういう機能を実現したい」「この部分で困っている」など)に対して、自社製品を使った解決策を提案します。
そのため、電気電子や機械などの理系的な知識が非常に重要となり、理系出身者が配属されることも多いです。
文系出身者であっても、入社後に製品知識や技術知識を猛勉強する必要がありますが、お客様と深く関わり、最先端のモノづくりをサポートできる魅力的な職種です。
【電子部品業界はきついのか】電子部品業界がきついとされる理由
電子部品業界が「きつい」と言われる背景には、いくつかの具体的な理由があります。
これらは、この業界が最先端の技術を扱い、グローバルな競争にさらされていることの裏返しでもあります。
例えば、技術の進歩が非常に速いため、常に学び続けなければならないプレッシャーがあります。
また、顧客であるメーカーからの品質や納期に対する要求は極めて高く、それに常に応え続けなければなりません。
景気の波によって業績が左右されやすい側面や、BtoBビジネス特有の分かりにくさが、人によっては「きつい」と感じる要因になることもあるでしょう。
ただし、これらの「きつさ」は、企業や部署、個人の感じ方によって大きく異なります。
どのような点が「きつい」と言われるのかを具体的に知ることで、自分にとってそれは乗り越えられるものか、あるいはやりがいに繋がるものかを見極める材料にしてください。
景気変動の影響を受けやすい(シリコンサイクル)
電子部品業界は、その製品の多くが半導体に関連しているため、「シリコンサイクル」と呼ばれる景気の波の影響を受けやすいという特徴があります。
シリコンサイクルとは、半導体市場が好況と不況を数年単位で繰り返す現象のことです。
新しいスマートフォンやゲーム機が発売される時期、あるいはデータセンターの増設が相次ぐ時期などは需要が急増し、業界全体が活気づきます。
しかし、ひとたび需要が落ち着くと、一転して在庫調整や設備投資の抑制が始まり、業績が悪化することもあります。
こうした景気の波に、企業の業績や個人の業務量、場合によってはボーナスなどが左右される可能性があり、その不安定さを「きつい」と感じる人がいるのは事実です。
厳しい品質・納期要求
電子部品は、スマートフォンから自動車、医療機器、果ては航空宇宙分野まで、非常に幅広い最終製品に使われます。
特に自動車のブレーキ制御や医療機器のペースメーカーなど、人命に関わるような重要な部分に使われる部品も少なくありません。
そのため、顧客(メーカー)から求められる品質レベルは「不良品ゼロ」が当たり前という、非常にシビアな世界です。
万が一、不良品を出してしまうと、大規模なリコール(製品回収)に発展し、会社の信頼や業績に甚大な影響を与えかねません。
また、納期(Delivery)に対する要求も非常に厳しく、顧客の生産ラインを止めないよう、決められた日時に正確に納品することが絶対です。
この常に高い品質と納期を守り続けなければならないプレッシャーは、大きな「きつさ」の一つと言えるでしょう。
技術革新のスピードが速い
電子部品業界は、技術革新(イノベーション)のスピードが非常に速い業界です。
昨日まで最先端だった技術が、今日にはもう古くなっている、ということも珍しくありません。
「ムーアの法則(半導体の集積密度は1年半~2年で2倍になる)」に象徴されるように、製品は常に「より小さく」「より高性能に」「より安く」なることを求められ続けています。
このため、エンジニアはもちろん、営業職や企画職であっても、常に最新の技術動向や市場のニーズをキャッチアップし、自分の知識をアップデートし続ける必要があります。
学生時代に学んだ知識だけではすぐに通用しなくなり、入社後も絶えず勉強し続ける姿勢が求められます。
この「学び続ける」ことを「きつい」と感じるか、「知的好奇心が満たされる」と捉えるかで、この業界への向き不向きが分かれるかもしれません。
BtoB中心でやりがいを感じにくい?
電子部品メーカーのほとんどは、BtoB(Business to Business)、つまり企業を相手にビジネスを行っています。
一般の消費者(Consumer)向けに製品を売るBtoC企業と違い、自分たちの作った製品が消費者の目に直接触れる機会はほとんどありません。
「このスマホの、この小さな部品を作っているのがウチの会社なんだ」と友人に説明しても、なかなか伝わりにくいかもしれません。
自分の仕事の成果が社会にどう役立っているのか、その手応えを実感しにくい側面があります。
「縁の下の力持ち」であることに誇りを持てる人であれば問題ありませんが、「自分が作った製品で、消費者を笑顔にしたい」という思いが強い人にとっては、やりがいを感じにくく、「きつい」と感じてしまう可能性があります。
専門知識の習得が大変
電子部品業界で働くには、電気電子工学、機械工学、物理学、化学、材料工学など、高度で専門的な知識が求められる場面が多々あります。
特に研究・開発職や設計職、生産技術職といった技術系の職種では、これらの知識がなければ仕事になりません。
理系の学生さんであっても、大学での専攻と直結しない分野に配属された場合は、ゼロから猛勉強する必要があります。
もちろん、文系出身者が営業職や管理部門で活躍する道もありますが、その場合でも、自社がどのような技術で、どのような製品を作っているのかを理解しなければ、お客様や技術者と対等に話をすることはできません。
入社後も続くこの専門知識のキャッチアップを「大変だ」「きつい」と感じる人も少なくないでしょう。
勤務地が郊外や地方の可能性
電子部品メーカーの多くは、製品を製造するための大規模な工場(マザー工場)や、広大な敷地を必要とする研究所を持っています。
こうした施設は、地価の高い都心部ではなく、土地を確保しやすい郊外や地方に立地していることが非常に多いです。
もちろん、本社機能や営業拠点が都心部にある企業もありますが、特に理系の技術職(研究開発、設計、生産技術、品質管理など)を希望する場合、配属先が地方の工場や研究所になる可能性は十分にあります。
「都心でバリバリ働きたい」というイメージを持っている学生さんにとっては、希望するライフスタイルとのギャップが生まれ、「きつい」と感じる一因になるかもしれません。
企業研究の段階で、主な事業所や工場の所在地をしっかり確認しておくことが大切です。
電子部品業界の現状・課題
日本の電子部品業界は、世界的に見ても非常に高い技術力を持ち、特に特定の分野では圧倒的なシェアを誇っています。
例えば、スマートフォンやPCに不可欠な「積層セラミックコンデンサ(MLCC)」や、デジタルカメラ・スマートフォンの「目」となる「CMOSイメージセンサー」などは、日本のメーカーが世界をリードしている代表例です。
これらの製品は、5G、IoT、AI、自動車の電装化といった新しい技術トレンドの波に乗り、需要は堅調に推移しています。
しかし、一方でグローバルな競争は年々激しさを増しており、韓国、台湾、中国といった海外メーカーの猛烈な追い上げを受けています。
こうした厳しい競争環境の中で、いかに技術的な優位性を保ち、利益を確保し続けるか、また、次世代の技術革新を担う優秀な人材をいかに確保・育成していくかが、業界全体の大きな課題となっています。
高い技術力と世界シェア
日本の電子部品メーカーの最大の強みは、長年にわたって培われてきた「すり合わせ技術」に代表される、非常に高い技術力にあります。
材料の開発から製品設計、そして精密な量産技術に至るまで、その総合力は世界トップレベルです。
特に、小型化・高機能化が求められる最先端の分野で強みを発揮しています。
例えば、スマートフォン1台に数百個から千個以上も搭載されている「積層セラミックコンデンサ(MLCC)」や、高画質な映像を捉える「CMOSイメージセンサー」、モーターの精密な制御などに使われる高性能な「センサー」といった分野では、日本の特定企業が世界シェアの大部分を占めているケースも少なくありません。
この高い技術力と品質が、世界中のメーカーから信頼され、日本の電子部品業界を支える基盤となっています。
グローバル競争の激化
日本の電子部品メーカーが高い技術力を持つ一方で、グローバルな競争環境は非常に厳しさを増しています。
特に、汎用的な(コモディティ化した)電子部品の分野では、韓国、台湾、中国といった東アジアのメーカーが、大規模な設備投資と低コストを武器に、急速にシェアを拡大しています。
これらの海外メーカーは、単なる価格競争だけでなく、技術力も年々向上させており、日本のメーカーが得意としてきた高付加価値な分野においても、強力なライバルとなりつつあります。
この激化する国際競争の中で、日本のメーカーが生き残り、成長を続けるためには、常に他社には真似できない最先端の技術を生み出し続けるか、あるいは生産効率を極限まで高めてコスト競争力を維持するといった、絶え間ない努力が求められています。
人材確保と育成
多くの日本の製造業と同様に、電子部品業界においても優秀な人材の確保と育成は大きな課題となっています。
特に、AI、IoT、データサイエンスといった新しい分野や、半導体設計、先端材料開発といった高度な専門知識を必要とする分野では、世界的に技術者の需要が高まっており、人材の獲得競争が激化しています。
また、少子高齢化に伴い、将来のモノづくりを支える若手の技術者が不足していくことも懸念されています。
さらに、グローバルな競争が激化する中で、海外の顧客や拠点と円滑にコミュニケーションできる、グローバル人材の育成も急務です。
高い専門性を持ち、かつ広い視野を持って新しい価値を生み出せる人材をいかに惹きつけ、育てていくかが、業界全体の持続的な成長に向けた鍵となっています。
電子部品業界の今後の動向
電子部品業界の将来は、非常に明るいと言えるでしょう。
なぜなら、私たちの社会が今後ますますデジタル化、スマート化していく上で、電子部品の役割はさらに重要性を増していくからです。
例えば、これからの社会インフラとなる「5G(第5世代移動通信システム)」や、あらゆるモノがインターネットにつながる「IoT」、人工知能「AI」の進化、そして地球環境問題への対応から加速する「自動車のEV(電気自動車)シフト」や「自動運転」など、時代の大きなトレンドが、高性能・高機能な電子部品の需要を強力に牽引しています。
これらの分野が成長すればするほど、そこに使われるセンサー、コンデンサ、半導体、通信モジュールといった電子部品の市場も拡大していきます。
技術革新のスピードは速く、競争も激しいですが、社会の変革を根底から支えることができる、将来性豊かな業界であることは間違いありません。
5G/IoT/AIの普及による需要拡大
今後の電子部品業界の成長を牽引する最大のドライバーの一つが、5G、IoT、AIといった先端技術の普及です。
超高速・大容量・低遅延な通信を実現する5Gが普及すれば、スマートフォンだけでなく、工場、医療、エンターテイメントなど、あらゆる場面で扱われるデータ量が爆発的に増加します。
また、身の回りのあらゆるモノにセンサーが搭載され、インターネットに接続されるIoT社会が到来すれば、そこから収集される膨大なデータをAIが解析し、新しいサービスや価値を生み出します。
こうした社会の実現には、高性能な通信モジュール、高感度なセンサー、大容量のデータを処理する半導体、そしてそれらに安定して電力を供給するコンデンサやインダクタといった、多種多様な電子部品がこれまで以上に必要となります。
この巨大な需要の波が、電子部品業界の大きな追い風となっています。
自動車の電装化・EVシフト
もう一つの大きな成長エンジンが、自動車業界で起きている「CASE(ケース)」と呼ばれる地殻変動です。
CASEとは、Connected(つながる)、Autonomous(自動運転)、Shared & Services(シェアリング)、Electric(電動化)の頭文字をとったもので、自動車が単なる移動手段から、情報端末やエネルギーデバイスへと進化していることを示しています。
特に、ガソリン車から電気自動車(EV)へのシフトや、自動運転技術の進展に伴い、自動車1台あたりに搭載される電子部品の数と価値(単価)は飛躍的に増大しています。
例えば、EVには大量の電力を制御するための「パワー半導体」や、バッテリーの充放電を支える「大容量コンデンサ」が必要です。
また、自動運転には、周囲の状況を検知する「センサー(カメラ、レーダー、LiDARなど)」や、それらの情報を処理する「高性能なECU(電子制御ユニット)」が不可欠です。
サステナビリティへの対応
近年、世界的に関心が高まっているサステナビリティ(持続可能性)やESG(環境・社会・ガバナンス)への対応も、電子部品業界にとって重要なテーマとなっています。
電子部品メーカーは、自社の工場で使用するエネルギーを再生可能エネルギーに切り替えたり、製造プロセスでのCO2排出量や水の使用量を削減したりするなど、環境負荷の低減に向けた取り組みを強化しています。
また、製品そのものを通じても、社会のサステナビリティに貢献することが求められています。
例えば、よりエネルギー効率の高い(省エネ性能の高い)電子部品を開発することは、それらが使われる最終製品(スマートフォンや家電、データセンターなど)の消費電力を削減し、社会全体のカーボンニュートラル達成に貢献します。
今後は、こうした環境や社会に配慮した製品や技術を持つ企業が、お客様や投資家から選ばれる時代になっていくでしょう。
【電子部品業界はきついのか】電子部品業界に向いている人
ここまで電子部品業界の仕事内容や「きつい」と言われる理由、将来性について見てきました。
大変な側面もありますが、それを上回る大きなやりがいと将来性があることも感じていただけたのではないでしょうか。
では、具体的にどのような人がこの業界で活躍できるのでしょうか。
まず何よりも、新しい技術やモノづくりそのものに強い興味やワクワク感を持てる人です。
また、製品の品質や性能を追求するため、地道な作業や分析をコツコツと続けられる忍耐力や探求心も非常に重要です。
技術の進歩が速いため、常に新しいことを学び続ける意欲も欠かせません。
一つの製品は多くの人の協力によって生まれるため、チームで働く力も求められます。
こうした特徴に「自分も当てはまるかも」と感じる人は、この業界で大きく成長できる可能性を秘めています。
モノづくりや最先端技術に興味がある人
電子部品業界は、最先端のモノづくりの現場そのものです。
自分の研究や設計が、世界中の人々が使うスマートフォンや自動車、社会を支えるインフラなどに組み込まれ、その性能を左右することになります。
目には見えない小さな部品であっても、それがなければ製品は動かない、そんな「縁の下の力持ち」としての役割に誇りを持てる人、「自分が関わった製品が世の中を動かしている」という事実に喜びを感じられる人は、この業界に非常に向いています。
テレビやネットニュースで見るような新しい技術トレンド(AI、自動運転、メタバースなど)に対して、「それはどんな仕組みで動いているんだろう?」「どんな部品が必要なんだろう?」と自然に興味が湧くような、知的好奇心が旺盛な人には、まさに天職と言えるかもしれません。
探求心があり、地道な努力を続けられる人
電子部品の研究開発や品質管理の現場では、「なぜ?」を突き詰める探求心が何よりも重要です。
「なぜこの材料だと性能が上がるのか?」「なぜこの工程で不良品が出るのか?」といった疑問に対し、仮説を立て、地道な実験やデータ分析を繰り返し、その本質的な原因を解明していく必要があります。
華やかな成果の裏には、膨大な量の試行錯誤と、コツコツとした努力の積み重ねがあります。
すぐに結果が出なくても諦めずに粘り強く取り組める忍耐力や、ミクロン単位の細かな違いを見逃さない集中力、そして論理的に物事を考えて原因を特定する力が求められます。
このような地道なプロセスそのものを「面白い」と感じ、楽しめる人にとっては、非常にやりがいのある環境でしょう。
継続的に学び続ける意欲がある人
先ほども触れたように、電子部品業界は技術革新のスピードが非常に速い世界です。
そのため、「一度覚えた知識で、定年まで安泰」ということはあり得ません。
入社後も、自分の専門分野の最新技術はもちろん、関連する他の分野の知識、市場の動向、お客様のニーズの変化など、常に新しい情報をキャッチアップし、学び続ける姿勢が不可欠です。
会社が提供する研修制度なども活用できますが、それ以上に、自ら進んで勉強する(学会に参加する、専門書を読む、外部のセミナーに参加するなど)主体的な意欲が求められます。
学生時代の「勉強」とは異なり、その学んだ知識がすぐに仕事に活き、新しい製品や価値の創造につながる、実感を伴った「学び」です。
変化を楽しみ、自分自身の成長に貪欲な人に向いていると言えます。
チームで協力して物事を進められる人
電子部品という一つの製品を世に送り出すまでには、非常に多くの人々が関わります。
例えば、研究部門が基礎技術を生み出し、開発・設計部門が製品化し、生産技術部門が量産ラインを構築し、製造部門が生産し、品質管理部門が検査し、営業部門がお客様に届ける、といった具合です。
これらの部門がバラバラに動いていては、良い製品は決して生まれません。
それぞれの部門が自分の役割を果たすと同時に、関係部署と密にコミュニケーションを取り、情報を共有し、時には意見をぶつけ合いながら、共通のゴール(=お客様に良い製品を届ける)に向かって協力していく必要があります。
「自分一人の力で完結する仕事がしたい」という人よりも、「多様な専門性を持つ人々と協力し、大きなことを成し遂げたい」というチーム志向の人の方が、この業界で力を発揮しやすいでしょう。
グローバルな視野を持つ人
日本の電子部品メーカーにとって、今やビジネスの舞台は「世界」が当たり前です。
製品を販売するお客様(顧客)も世界中にいますし、競合となるライバル企業も世界中にいます。
また、生産拠点を海外に置いている企業も多く、海外の現地スタッフと協力して仕事を進める機会もあります。
そのため、国内の動向だけでなく、世界で今何が起きているのか、どのような技術や市場が伸びているのかといった、グローバルな視野を持つことが非常に重要です。
もちろん、英語や中国語などの語学力があれば、活躍の場はさらに広がりますが、それ以上に、異なる文化や価値観を持つ人々と積極的にコミュニケーションを取り、理解しようとする姿勢や、世界を舞台に挑戦したいというマインドを持っていることが大切です。
【電子部品業界はきついのか】電子部品業界に向いていない人
一方で、電子部品業界の特性が、自分の価値観や働き方の希望と合わない場合もあるかもしれません。
例えば、変化のスピードが速い環境よりも、決まったルールや手順の中で安定的に働きたいという人にとっては、少し慌ただしく感じられるかもしれません。
また、仕事の多くは非常に精密で、細かい部分への注意力や地道な分析が求められるため、大雑把な性格の人や、すぐに目に見える成果を求める人には、ストレスに感じる場面もあるでしょう。
BtoBビジネスが中心であるため、一般消費者に直接製品を届けることに強いやりがいを感じたい人にも、ミスマッチが起こる可能性があります。
これらに当てはまるからといって「絶対に向いていない」と決める必要はありませんが、自己分析と照らし合わせて、自分が仕事に何を求めるのかを考えるきっかけにしてみてください。
変化を好まず、安定志KOが強すぎる人
電子部品業界は、技術革新と市場の変化が非常に激しい業界です。
昨日までの常識が今日には通用しなくなることも、ライバル企業の新しい技術によって自社のシェアが一夜にして脅かされることもあり得ます。
こうした変化の激しい環境の中で、会社も個人も常に変わり続けることが求められます。
もし「一度やり方を覚えたら、あとは同じことの繰り返し(ルーティンワーク)が良い」「新しいことを学ぶのは苦手だ」「安定していて、あまり変化のない環境でのんびり働きたい」という安定志向が強すぎる場合、この業界のスピード感についていくのが「きつい」と感じる可能性が高いです。
変化を「脅威」ではなく「チャンス」と捉え、それに適応していける柔軟性が求められます。
細かい作業や地道な分析が苦手な人
電子部品の多くは非常に小さく、その製造や設計にはミクロン単位(1000分の1ミリ)の精度が求められます。
研究開発や品質管理の現場では、顕微鏡を覗き込んだり、膨大なデータを分析したりといった、非常に細かく、地道な作業が日常的に発生します。
少しのミスや見落としが、製品の品質に大きな影響を与えてしまう可能性もあります。
そのため、「物事を大枠で捉えるのは得意だが、細かい部分に注意を払うのは苦手」「コツコツと地道な作業を続けるのは飽きてしまう」というタイプの人にとっては、電子部品業界の仕事はストレスに感じやすいかもしれません。
もちろん、すべての職種がそうではありませんが、業界全体の特性として、精密さや根気強さが求められる場面が多いことは理解しておきましょう。
最終製品(BtoC)に直接関わりたい人
電子部品業界の仕事は、そのほとんどがBtoB(企業向け)であり、最終製品を作るメーカーを支える役割です。
自分が関わった部品が、最終的にどのような製品(例えば、最新のスマートフォンや自動車)に使われ、世の中の役に立っているのかを知ることはできますが、一般の消費者(BtoC)のように、「自分が作った製品を、街で見かけた」「お客様から『ありがとう』と直接言われた」といった手応えをダイレクトに感じる機会は少ないです。
もし、あなたが「自分の名前が表に出る仕事がしたい」「一般消費者に直接、製品の魅力を伝えたい」という思いが非常に強いのであれば、電子部品業界の「縁の下の力持ち」という役割に、物足りなさや「きつさ」を感じてしまうかもしれません。
勉強や新しい知識のインプットが嫌いな人
これは「向いている人」の裏返しになりますが、「学生時代の勉強で、もうこりごりだ」「仕事は仕事、プライベートでまで勉強したくない」と考えている人にとって、電子部品業界はかなり「きつい」環境と言わざるを得ません。
技術の進歩が速いため、入社後も常に新しい知識や情報をインプットし、自分自身をアップデートし続けることが「当たり前」として求められるからです。
会社の研修やOJT(実務を通じた指導)もありますが、それだけでは追いつきません。
週末に専門書を読んだり、業界のニュースをチェックしたりといった、自主的な学習意欲がなければ、すぐに周りから取り残されてしまいます。
学ぶこと自体に喜びを感じられない人にとっては、この「常に学び続ける」環境は、大きなプレッシャーとなるでしょう。
電子部品業界に行くためにすべきこと
ここまで読んで、電子部品業界に「挑戦してみたい!」と感じた方も多いのではないでしょうか。
この業界は、専門性が高い分野であると同時に、日本のモノづくりを支える非常にやりがいのある仕事です。
では、就活生として今から何を準備すればよいのでしょうか。
まずは、理系・文系問わず、「なぜ電子部品業界なのか」を深く掘り下げることが大切です。
その上で、理系の方はご自身の専門知識がどう活かせるか、文系の方はこの業界でどのような役割を果たしたいかを具体的に考えていきましょう。
業界研究や企業研究を徹底的に行い、各企業が持つ強みや特徴を理解することも欠かせません。
面接で自信を持って「この会社で働きたい」と伝えるための準備を、今からしっかり進めていきましょう。
専門知識の基礎固め(理系の場合)
理系の学生さんにとって、大学で学んだ専門知識は、電子部品業界で働く上で最も強力な武器となります。
電気電子、機械、物理、化学、材料、情報など、ご自身の専攻分野の基礎的な知識は、就職活動が本格化する前に、もう一度しっかりと復習しておきましょう。
特に、自分が大学(または大学院)で取り組んでいる研究内容については、専門外の人(例えば文系の面接官)にも分かりやすく、その面白さや難しさ、工夫した点などを説明できるように整理しておくことが非常に重要です。
その研究が、直接的に志望企業の製品と結びつかなくても構いません。
研究を通じて培った「論理的思考力」「課題設定能力」「仮説検証能力」「粘り強さ」といったプロセスこそが、企業が評価したいポイントなのです。
業界研究と企業研究の徹底
電子部品業界と一口に言っても、扱っている製品は多岐にわたります。
コンデンサや抵抗器といった受動部品に強い企業、センサーに強い企業、半導体に強い企業、コネクタ(接続部品)に強い企業など、それぞれの会社に得意分野があります。
まずは、業界地図や企業のウェブサイト、就活情報サイトなどを活用して、どのような企業が、どのような製品分野で、世界の中でどのようなポジション(シェア)にいるのか、全体像を把握しましょう。
その上で、興味を持った企業については、なぜその企業が強いのか(技術力、コスト競争力、顧客基盤など)、最近はどのような分野に力を入れているのか、競合他社と何が違うのか、といった点まで深く掘り下げて研究します。
この「企業研究の深さ」が、志望動機の説得力に直結します。
志望動機の明確化
面接で必ず聞かれるのが「志望動機」です。
「なぜ、他の業界(例えば、完成品メーカーやIT業界)ではなく、電子部品業界なのですか?」「そして、数ある電子部品メーカーの中で、なぜ当社なのですか?」という質問に、自分自身の言葉で、具体的に答える準備が必要です。
「社会を縁の下から支えたいから」といった抽象的な理由だけでは不十分です。
例えば、「大学で学んだ○○の知識を活かして、貴社の△△という技術(製品)のさらなる高性能化に貢献したい」「グローバルに事業を展開する貴社で、日本の高い技術力を世界に広める仕事がしたい」といったように、「業界研究・企業研究」と「自己分析(自分の強みや価値観)」とを結びつけた、説得力のあるストーリーを構築しましょう。
適職診断ツールを用いる
「電子部品業界に興味はあるけれど、本当に自分に向いているか自信がない…」そう感じる人もいるかもしれません。
そんな時は、客観的に自分の特性を知るために、適職診断ツールを活用してみるのも一つの方法です。
就活市場が提供しているような診断ツールは、いくつかの簡単な質問に答えるだけで、あなたの性格的な強みや弱み、どのような仕事のスタイルや環境を好むかといった傾向を分析してくれます。
もちろん、診断結果がすべてではありませんし、それがあなたの可能性を限定するものでもありません。
しかし、自分では気づかなかった意外な側面や、無意識に大切にしていた価値観に気づくきっかけになるかもしれません。
電子部品業界が求める人物像(例えば「探求心がある」「地道な努力が得意」など)と、診断結果を照らし合わせることで、自己分析をさらに深める手助けになるでしょう。
【電子部品業界はきついのか】適性がわからないときは
適職診断ツールを使ってみても、インターンシップに参加する機会がなくても、「やっぱり自分に電子部品業界が合っているか分からない」と不安に思うのは、ある意味当然のことです。
働いた経験がないのですから、完璧に「分かる」人はいません。
大切なのは、分からないからと諦めるのではなく、分かるための行動を少しでも取ることです。
例えば、自己分析をもう一度深く行い、「自分は仕事を通じて何を実現したいのか」「どのような環境なら力を発揮できそうか」を徹底的に考えてみることです。
また、OB・OG訪問が難しければ、企業のオンライン説明会に積極的に参加し、先輩社員の雰囲気や仕事内容について質問してみるのも良いでしょう。
少しでも「面白そう」「挑戦してみたい」という気持ちが湧くのであれば、まずは選考に進んでみる、という勇気も大切です。
おわりに
今回は、電子部品業界について、「きつい」と言われる理由から、仕事内容、将来性、向いている人の特徴まで、幅広く解説してきました。
確かに、技術革新のスピードが速く、常に学び続ける姿勢が求められるなど、厳しい側面もあります。
しかし、それは世界最先端の技術に触れ、社会の根幹を支えるという、他では得難い大きなやりがいと将来性に満ちた業界であることの裏返しでもあります。
この記事を読んで、少しでも「面白そう」「挑戦してみたい」と感じたなら、ぜひさらに深く業界研究・企業研究を進めてみてください。
皆さんの挑戦を応援しています!