はじめに
中外製薬は、国内の製薬業界において、売上高・利益ともにトップクラスの実績を誇り、就活生から絶大な人気を集める企業です。
しかし、その強さの源泉は、スイスのロシュ・グループとの戦略的アライアンスという、他社にはない独自のビジネスモデルにあります。
この記事では、中外製薬の志望動機を作成するために不可欠な企業研究から、同社が特化する「アンメットメディカルニーズ」への理解、競合他社との明確な違い、そして選考突破のための具体的な例文まで、就活アドバイザーの視点から徹底的に解説します。
志望動機が完成したらAIチェッカーを使おう
志望動機を書き上げた後、客観的な視点での推敲は選考突破のために不可欠です。
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AIを活用するメリットは、誤字脱字の修正に留まりません。
特に中外製薬の選考では、「なぜ製薬業界か」「なぜ競合ではなく中外製薬か」という論理の一貫性が極めて重要です。
AIチェッカーは、あなたの経験と、中外製薬の強みである「ロシュとのアライアンス」や「抗体技術」との結びつきが弱い部分、あるいは抽象的な表現で終わっている箇所を指摘してくれます。
「薬で人を助けたい」という漠然とした思いから、「なぜ中外製薬のビジネスモデルでなければならないのか」という視点へ、論理が飛躍していないかを確認するために活用してください。
【中外製薬の志望動機】中外製薬を知ろう
中外製薬の志望動機を作成する上で、最初のステップは「中外製薬がどのような会社か」を正確に理解することです。
中外製薬は、日本の伝統ある製薬企業でありながら、2002年にスイスのロシュ・グループと戦略的アライアンスを締結し、その傘下に入りました。
これが同社を理解する上で最も重要なポイントです。
このアライアンスにより、中外製薬は独自の高い創薬力(特に抗体技術)を維持しつつ、ロシュのグローバルな開発・販売網を活用できるという、唯一無二のビジネスモデルを確立しました。
日本国内ではロシュ製品の販売も担い、強固な収益基盤を構築しています。
「アンメットメディカルニーズ(いまだ満たされていない医療ニーズ)」、特に「がん領域」に強みを持ち、革新的な医薬品の創出で世界をリードする企業です。
中外製薬の事業内容
中外製薬の事業内容は、医療用医薬品の研究、開発、製造、販売、輸出入が中心です。
そのビジネスモデルの最大の特徴は、「ロシュ・グループ」との戦略的アライアンスにあります。
これにより、事業は大きく二つの側面を持ちます。
一つ目は、中外製薬が自ら創製した医薬品(自社品)の開発・販売です。
特に独自の「抗体改変技術」は世界トップレベルであり、画期的な新薬(例:血友病治療薬「ヘムライブラ」)を生み出し、これらがロシュを通じてグローバルに展開されることで、中外製薬に莫大なロイヤルティ収入をもたらしています。
二つ目は、ロシュ・グループが開発した医薬品(ロシュ品)の日本国内における開発・販売です。
ロシュが持つ世界最先端のがん領域などのパイプラインを日本市場に導入することで、国内の強固な収益基盤を築いています。
この「自社創薬」と「ロシュ品導入」の両輪が、中外製薬の圧倒的な競争力の源泉です。
中外製薬の業績
企業研究において、業績や中期経営計画の把握は、その企業の「実力」と「未来への戦略」を知る上で不可欠です。
中外製薬の業績は、国内製薬業界において群を抜いています。
ロシュ・グループとのアライアンスによる成功、特に自社創製品のグローバル展開(ロイヤルティ収入)と、ロシュ品のがん領域などでの国内販売好調により、売上高・営業利益ともに国内トップクラスであり、特に営業利益率は驚異的な高さを誇ります。
この強固な財務基盤のもと、現在推進中の中期経営計画「TOP I 2030」では、「ロシュとの協働による世界最高水準の創薬」と、AIなどの「デジタル技術(DX)の活用によるビジネス革新」を掲げています。
「CHUGAI DIGITAL VISION 2030」を策定するなど、DXを駆使して創薬プロセスそのものを変革しようとする、未来への積極的な投資姿勢が鮮明です。
志望動機では、この圧倒的な「収益力」と、それに甘んじない「未来への変革意欲」を理解していることを示すのが重要です。
中外製薬の企業理念
中外製薬の企業理念(ミッション)は、「革新的な医薬品とサービスの提供を通じて、世界の医療と人々の健康に貢献します」というものです。
このミッションの根底には、「患者中心」という価値観が強く流れています。
そして、このミッションを実現するためのビジョンが「ヘルスケア産業のトップイノベーター」です。
彼らが目指すイノベーションは、単なる新薬開発に留まりません。
「アンメットメディカルニーズ」、すなわち未だ治療法が見つかっていない病気に苦しむ患者さんに、「ファーストインクラス(世界初)」や「ベストインクラス(最高水準)」の医薬品を届けるという、極めて難易度の高い挑戦を意味します。
志望動機に活かす上で重要なのは、この「患者中心」という誠実な姿勢と、「イノベーションへの飽くなき挑戦心」への共感です。
あなた自身が持つ「社会貢献への想い」と、中外製薬が挑む「革新性」を具体的に結びつけて語ることが不可欠です。
【中外製薬の志望動機】中外製薬が志望動機で見ていること
中外製薬の選考において、志望動機は候補者の「専門性」と「企業戦略への理解度」を見極めるための最重要項目です。
「革新的な医薬品」を創出し続けるというミッションの通り、同社は極めて高いレベルの科学的知見と論理的思考力を求めています。
その上で、なぜ他の製薬会社ではなく、中外製薬独自のビジネスモデル、すなわち「ロシュ・グループとの戦略的アライアンス」を選んだのかを、明確に説明できるかが問われます。
「自社の高い創薬力」と「グローバルの基盤」を融合させるという、この唯一無二の環境で、自分が何を成し遂げたいのか。
その熱意と論理性が厳しく評価されます。
なぜ「製薬業界」で働きたいのか(使命感)
まず採用担当者が見ているのは、「なぜあなたは、数ある業界の中で、特に困難で、かつ社会的責任の重い『製薬業界』を選ぶのか」という根本的な動機(使命感)です。
「人の役に立ちたい」「社会貢献がしたい」といった漠然とした理由だけでは不十分です。
「薬」という、人々の生命に直接関わるモノを通じて、社会にどのような価値を提供したいのか。
例えば、「自身の〇〇という経験(例:近親者の闘病、生命科学への探究心など)から、未だ治療法のない病気に苦しむ人々を、科学の力で救いたい」といった、あなた自身の具体的な原体験に基づいた、強い動機が求められます。
この「なぜ製薬か」という問いに対する答えの深さが、志望動機全体の説得力を左右します。
なぜ「中外製薬」でなければならないのか(独自性)
「製薬業界で働きたい」理由が明確になったら、次は「なぜ武田薬品やアステラス製薬など、他の製薬会社ではなく、中外製薬なのか」という最重要の問いに答えなければなりません。
ここで、中外製薬の独自性への深い理解が問われます。
最も強力な差別化ポイントは、「ロシュとのアライアンス」です。
「中外製薬独自の世界トップレベルの抗体技術」と、「ロシュが持つグローバルな開発・販売網」という二つの強みを併せ持つ、このハイブリッドなビジネスモデルに、なぜ自分が魅力を感じるのかを説明する必要があります。
「日本発のイノベーションを、最速で世界中の患者さんに届けられる環境」といった視点は、中外製薬でなければならない強力な理由となります。
高い専門性と「挑戦」した経験(ポテンシャル)
中外製薬は「ヘルスケア産業のトップイノベーター」を目指し、特に「アンメットメディカルニーズ」という極めて難易度の高い領域に挑戦しています。
そのため、候補者には、自身の専門分野における高いレベルの知見(専門性)と、前例のない課題にも果敢に挑む「挑戦心」が求められます。
理系であれば、自身の研究内容が中外製薬の研究領域(がん、免疫疾患、抗体技術など)とどう関連し、どう貢献できるかを明確にすべきです。
文系であっても、学生時代の活動(ゼミ、留学、部活動など)において、自ら高い目標を設定し、困難な状況を論理的に分析し、粘り強く行動して乗り越えた経験を具体的に示すことで、イノベーションを担う人材としてのポテンシャルをアピールすることが不可欠です。
【中外製薬の志望動機】中外製薬の求める人物像
中外製薬が求める人物像は、そのミッションである「革新的な医薬品とサービスの提供」を、自ら主体的に担える人材です。
中核となるのは、「自ら考え、行動する」主体性と、その行動を支える「高い専門性と倫理観」です。
また、ロシュ・グループというグローバルな環境で働く上で、多様性を尊重し、国境や組織の壁を越えて協働できる「コミュニケーション能力」も不可欠です。
これらを兼ね備え、常に「患者さんのために」という視点を持ち続けられる人物こそが、中外製薬で活躍できる理想像となります。
自ら考え、主体的に行動する人
中外製薬は「トップイノベーター」を目指す企業であり、社員一人ひとりに高いレベルでの主体的な行動を求めています。
前例のない「アンメットメディカルニーズ」に応える創薬活動は、指示された業務をこなすだけでは決して達成できません。
常に「患者さんのために何ができるか」を自ら考え、課題を発見し、その解決に向けて自ら行動を起こせる「当事者意識」が不可欠です。
学生時代の研究活動やプロジェクトにおいて、他者からの指示を待つのではなく、自ら仮説を立て、試行錯誤し、周囲を巻き込んで推進した経験を持つ人材は、中外製薬の文化にフィットすると高く評価されるでしょう。
高い専門性と倫理観を持つ人
中外製薬は、人々の生命に直結する医薬品を扱う企業として、社員に「高い専門性」と「高い倫理観」を求めます。
「専門性」とは、自身の担当領域(研究、開発、MR、生産など)において、常に最新の知識を学び続け、プロフェッショナルとして質の高い仕事を提供できる能力です。
そして、それ以上に重要なのが「高い倫理観」です。
いかなる状況でも、法令遵守はもちろんのこと、社会的な規範や「患者中心」という価値観に基づき、誠実かつ公正に判断・行動できることが、中外製薬の社員であるための大前提となります。
多様性を尊重し、協働できる人
中外製薬のビジネスは、ロシュ・グループとの戦略的アライアンスというグローバルな枠組みの中で行われています。
社内には多様な国籍やバックグラウンドを持つ人材が在籍し、日常的に海外のロシュのメンバーと連携(協働)する機会も多くあります。
そのため、自分とは異なる文化、価値観、意見を尊重し、受け入れる「多様性(ダイバーシティ)」の意識が不可欠です。
そして、その多様なメンバーとオープンに議論し、共通の目標に向かってチームとして成果を出せる「協働力」が求められます。
グローバルな環境で活躍するための基盤となる資質です。
成長への意欲と挑戦心を持つ人
製薬業界を取り巻く環境は、科学技術の進歩や薬価制度の変更など、極めて速いスピードで変化しています。
中外製薬が「トップイノベーター」であり続けるためには、社員一人ひとりがこの変化に適応し、常に新しい知識やスキルをどん欲に学び、成長し続けることが不可欠です。
現状維持に甘んじることなく、自身の専門性を高め、未知の領域や困難な課題にも果敢に「挑戦」していく意欲。
こうした前向きな姿勢こそが、中外製薬の未来の成長を支える原動力となります。
【中外製薬の志望動機】中外製薬の志望動機に入れ込むべきポイント3選
中外製薬の志望動機を作成する際、多くの就活生が「がん領域に強い」「新薬開発力がある」といった一般的な理由に留まりがちです。
しかし、採用担当者に「この学生は中外製薬の本質を理解している」と印象付け、他者と明確に差別化するためには、同社独自の戦略と強みに焦点を当てた、より深い論点が不可欠です。
なぜ「アンメットメディカルニーズ」に応えたいのか
まず明確にすべきは、「なぜ数ある製薬会社の中でも、特に困難な『アンメットメディカルニーズ(いまだ満たされていない医療ニーズ)』の領域に挑戦したいのか」という問いへの答えです。
これは、中外製薬が「患者中心」の理念のもと、最も注力している領域です。
例えば、「自身の〇〇という経験から、既存の治療法では救えない患者さんに、希望となる『ファーストインクラス』の薬を届けたい」という強い使命感を語ることが重要です。
一般的な疾患の薬ではなく、あえて難病や希少疾患、難治性がんといった領域にこだわる理由を、自身の原体験や価値観と結びつけて具体的に説明してください。
なぜ「ロシュとのアライアンス」に魅力を感じるのか
これが、中外製薬の志望動機における最重要かつ最大の差別化ポイントです。
「なぜ、武田薬品のような日系メガファーマや、外資系の日本法人ではなく、中外製薬独自の『ロシュとの戦略的アライアンス』というビジネスモデルを選ぶのか」を明確に論じる必要があります。
このモデルの最大の強みは、「中外製薬の独自創薬力(抗体技術など)」と「ロシュのグローバル基盤(開発・販売網)」の融合にあります。
このシナジーに着目し、「日本発の優れたイノベーションを、最速・最大の規模で世界中の患者さんに届けられる、最も合理的かつ強力な仕組みだ」といった、ビジネスモデルそのものへの深い理解と共感をアピールすることが、極めて有効です。
競合他社との比較して優れた点を盛り込む
「なぜ中外製薬か」という問いに、最も強力な説得力を持たせる手段が、競合他社との比較です。
この比較を志望動機に盛り込む最大のメリットは、あなたが製薬業界全体(武田薬品、第一三共、アステラス製薬など)を深く研究した上で、明確な意志を持って中外製薬を選んだという「志望度の本気度」を採用担当者に明確に示せる点にあります。
採用担当者は、あなたが当然、競合他社も見ていることを理解しています。
その上で、「武田薬品のグローバルな規模感も魅力的だが、私は中外製薬のように『抗体技術』といった特定の分野で世界をリードする高い専門性」に惹かれる、あるいは「第一三共のADC技術も素晴らしいが、私は中外製薬が持つ『ロシュとのシナジー』によるパイプラインの豊富さと成長戦略」に将来性を感じるといった、具体的な比較に基づいた論理を展開することで、あなたの志望理由は「明確な意志を持った選択」へと昇華されます。
【中外製薬の志望動機】競合他社との比較しよう
中外製薬の志望動機の説得力を決定づけるのは、競合他社との明確な比較です。
「国内製薬メーカー」と一口に言っても、各社には戦略、強み、企業文化に大きな違いがあります。
「どの製薬会社でも良い」という態度は、選考において最も評価されません。
ここでは、中外製薬を志望する上で比較対象となる主要な競合他社を取り上げ、それぞれの違いを明確にするための比較軸を解説します。
武田薬品工業との違い
武田薬品工業は、シャイアーの買収を経て、日本発の「グローバルメガファーマ」としての地位を確立しました。
消化器系、希少疾患、血漿分画製剤、オンコロジー(がん)、ニューロサイエンス(神経精神疾患)の5分野に注力し、圧倒的なグローバル展開力(特に米国市場での強み)と幅広い事業領域が特徴です。
対して中外製薬は、武田薬品ほどの規模や自社販売網の広がりはありませんが、「ロシュ・グループ」とのアライアンスにより、グローバル展開を実現しています。
最大の違いは「選択と集中」の度合いであり、中外製薬は「がん領域」と「抗体医薬」という特定分野に経営資源を極度に集中させ、世界トップレベルの技術力と、ロシュ製品導入による国内での圧倒的な収益性(営業利益率)を誇っている点です。
アステラス製薬との違い
アステラス製薬は、「特定の臓器・疾患」「特定の技術(モダリティ)」を掛け合わせた「Focus Areaアプローチ」を戦略の核に据えています。
例えば「がん」「泌尿器」「細胞医療」「遺伝子治療」といった、将来性の高い特定の分野に経営資源を集中し、イノベーションを追求しています。
中外製薬も「がん領域」や「抗体技術」に集中している点では似ていますが、決定的な違いはやはり「ロシュとのアライアンス」の有無です。
アステラス製薬が自前でのグローバル展開やM&Aによって成長を目指すのに対し、中外製薬はロシュという強力なパートナーとのシナジーを最大限に活用する、独自のビジネスモデルを採っている点が異なります。
第一三共との違い
第一三共は、近年、「ADC(抗体薬物複合体)」という特定の技術領域に経営資源を劇的に集中させ、世界的な注目を集めている企業です。
「エンハーツ」に代表されるADC技術を核に、「がん領域のグローバル・トップ10イノベーター」を目指すという明確なビジョンを掲げています。
中外製薬も「抗体技術」に強みを持ち、がん領域が主力である点は共通しています。
両社の違いは、第一三共が「ADC」という一つの技術に社運を賭けている側面が強いのに対し、中外製薬は「SMART-Ig」など多様な抗体改変技術を持ちつつ、ロシュ・グループからもたらされる豊富なパイプライン(新薬候補)により、より多角的で安定した収益基盤を持っている点です。
エーザイとの違い
エーザイは、「神経領域(特にアルツハイマー型認知症)」と「がん領域」を戦略的な重点領域としています。
特に、認知症治療薬「レカネマブ」の開発成功により、世界中から注目を集めています。
最大の特徴は、企業理念として「ヒューマン・ヘルスケア(hhc)」を掲げ、社員が就業時間の1%を患者さんと共に過ごす「共同化」を制度化するなど、徹底した患者中心主義を貫いている点です。
中外製薬も「患者中心」を掲げていますが、エーザイほど制度化されたアプローチとは異なります。
また、中外製薬の強みがロシュとのアライアンスによる「グローバルな効率性」にあるとすれば、エーザイは「認知症」という特定の疾患領域への、執念とも言える長期的なコミットメントに独自の強みがあります。
【中外製薬の志望動機】中外製薬のES通過者の志望動機の共通点
中外製薬のES選考を通過する志望動機には、いくつかの明確な共通傾向が見られます。
最も重要なのは、「なぜ製薬か」という問いへの答えが、自身の原体験に基づいて明確であることです。
その上で、数ある製薬会社の中から中外製薬を選んだ理由として、「ロシュ・グループとの戦略的アライアンス」という唯一無二のビジネスモデルの本質を深く理解している点です。
通過者の多くは、「中外製薬独自の高い創薬力(特に抗体技術)」と「ロシュのグローバル基盤」のシナジーに着目し、「日本発のイノベーションを最速で世界に届けられる」といった、この仕組みならではの価値に強く惹かれていることを論理的に説明しています。
また、「アンメットメディカルニーズ」への挑戦という同社の姿勢に、自身の研究内容や価値観を重ね合わせているケースも目立ちます。
【中外製薬の志望動機】中外製薬の志望動機を作成する際の4つの注意点
中外製薬の志望動機を作成する際、その高い業績や技術力に惹かれつつも、本質を外したアピールになってしまうケースが後を絶ちません。
特に「ロシュとの関係性」の誤解は、企業研究不足と見なされる致命的なミスに繋がります。
ここでは、就活生が陥りがちな典型的な失敗例を4つの注意点として解説します。
「ロシュの日本法人」という誤解
最も陥りやすい失敗が、「中外製薬=ロシュの日本支社」という短絡的な理解です。
中外製薬はロシュの傘下ではありますが、独立した上場企業であり、独自の創薬研究機能(特に抗体技術)を保持し、そこから生まれた革新的な新薬をロシュのネットワークを通じてグローバルに導出しています。
単にロシュの薬を日本で売っているだけの会社ではありません。
この「自主独立性」と「協働」のハイブリッドな関係性を理解せず、ロシュに依存しているかのような表現を使うと、企業研究の浅さを露呈してしまいます。
「安定志向」や「高収益」が透けて見える
中外製薬は国内トップクラスの営業利益率を誇る、極めて高収益な企業です。
しかし、その「安定性」や「高待遇」だけを志望動機として前面に出すのは厳禁です。
その高収益は、「アンメットメディカルニーズ」という極めて困難な領域に挑戦し、イノベーションを創出し続けた「結果」に過ぎません。
会社が求めているのは、その「安定」に安住する人材ではなく、その収益をさらなるイノベーションに再投資し、次の挑戦を担う人材です。
「挑戦」ではなく「安定」を求める姿勢が透けて見えると、カルチャーミスマッチと判断されます。
「がん領域」への言及が浅い
中外製薬の強みが「がん領域」にあることは多くの就活生が知っています。
しかし、「がん患者さんを救いたい」という熱意だけを語っても、「それは他の製薬会社(第一三共、アステラスなど)でもできるのでは?」という疑問しか残りません。
なぜ、中外製薬の「がん領域」なのか。
例えば、「ロシュという世界トップクラスのがん領域のパイオニアと連携し、最先端のパイプラインに日本からアクセスできる点」や、「中外製薬独自の抗体技術を活かしたがん免疫療法」など、競合と比較した際の「強みの源泉」にまで踏み込んで説明する必要があります。
「MR不要論」など、浅いDX理解
中外製薬は「CHUGAI DIGITAL VISION 2030」を掲げ、DX(デジタルトランスフォーメーション)に注力しています。
だからといって、「AIが創薬するから研究者は不要になる」「DXでMRはいらなくなる」といった、表層的で極端な未来予測を語ることは危険です。
中外製薬が目指すDXは、AIやデジタル技術を「活用」して、研究開発のスピードと成功確率を上げ、MRの情報提供活動をより「高度化・効率化」することです。
現場の仕事を否定するのではなく、デジタル技術によって「人」の力をいかに最大化できるか、という視点で自身の貢献意欲を語るべきです。
【中外製薬の志望動機】インターンに参加して有利に本選考を進めよう
中外製薬の内定獲得を目指す上で、インターンシップ(特にMR職や研究職、開発職)への参加は、極めて有効な戦略です。
最大のメリットは、本選考への優遇措置や早期選考に繋がる可能性が高い点です。
中外製薬は、高い専門性と「患者中心」の理念への共感を重視するため、インターンというプログラムを通じて、学生のポテンシャルとカルチャーフィットをじっくりと見極めたいと考えています。
また、それ以上に重要なのが、「ビジネスモデルの理解」です。
「ロシュとのアライアンス」という唯一無二の仕組みが、現場でどのように機能しているのか、また「アンメットメディカルニーズ」に応えるとは具体的にどのような仕事なのかを、現役社員との濃密なディスカッションを通じて肌で感じることができます。
この経験こそが、志望動機に圧倒的なリアリティと熱量を持たせるための、何物にも代えがたい材料となります。
【中外製薬の志望動機】中外製薬の志望動機例文
中外製薬の志望動機は、自身の専門性や経験と、同社の核である「ロシュとのアライアンス」「アンメットメディカルニーズへの挑戦」を論理的に結びつけることが鍵です。
「患者中心」の理念への共感と、イノベーションへの挑戦意欲を示すことが重要です。
ここでは、異なる5つのアプローチから、評価されやすい志望動機の構成例を紹介します。
例文①:生命科学の研究(スキルベース・理系研究職志望)
私は、大学院で免疫学を専攻し、特に自己免疫疾患の分子メカニズム解明に取り組んできました。
研究を通じて、未だ根本治療法が確立されていない疾患に苦しむ患者さんが多く存在することを痛感し、自身の研究知見を「アンメットメディカルニーズ」に応える創薬に活かしたいと強く願っています。
貴社は、世界トップレベルの抗体改変技術を基盤に、「ヘムライブラ」のような画期的な新薬を創出し続けています。
特に、貴社独自の「ロシュとの戦略的アライアンス」に強く惹かれています。
この仕組みは、貴社の優れた創薬技術と、ロシュのグローバルな開発基盤が融合し、日本発のイノベーションを最速で世界中の患者さんに届けることを可能にしています。
私の強みである「粘り強さ」と「論理的分析力」を活かし、貴社の研究員として、免疫疾患領域の新たな治療薬創出に挑戦したいです。
例文②:「患者中心」への共感(価値観ベース・MR職志望)
私は、製薬企業のMRとして、単に薬の情報を伝えるだけでなく、その先にある患者さんの生活そのものに貢献したいという強い思いがあります。
貴社が掲げる「患者中心」の理念と、それを実現する「アンメットメディカルニーズ」への挑戦に深く共感し、志望いたしました。
私の祖父は希少疾患を患っており、有効な治療法が見つからない中で家族全員が不安を抱えていた経験があります。
この経験から、「治療法がない」という絶望を「希望」に変える新薬の価値を痛感しました。
貴社は、ロシュ・グループの強力なパイプラインと自社の創薬力により、がん領域や希少疾患など、まさにそうした患者さんが待ち望む革新的な医薬品を数多く有しています。
アルバートで培った傾聴力を活かし、医療関係者と誠実な信頼関係を築き、貴社の革新的な薬の価値を正しく、深く伝えることで、一人でも多くの患者さんの「希望」に貢献したいです。
例文③:DX・情報工学の知見(スキルベース・DX/データサイエンス職)
私は、大学で情報工学を専攻し、特にAI(機械学習)を用いた画像解析技術を研究しています。
この技術を、人々の生命に直結するヘルスケア領域で活用したいと考え、貴社の「CHUGAI DIGITAL VISION 2030」に強く惹かれました。
貴社が、製薬ビジネスのバリューチェーン全体にDXを導入し、特に創薬プロセスの革新に本気で取り組んでいる点に、業界のトップイノベーターとしての気概を感じます。
貴社は、ロシュ・グループとの連携により、膨大な臨床データやリアルワールドデータにアクセスできるという、他社にはない圧倒的な強みを持っています。
私の強みであるデータ分析スキルとプログラミング能力を活かし、貴社のデータサイエンティストとして、創薬ターゲットの探索や臨床開発の効率化に貢献し、革新的な医薬品を一日でも早く患者さんに届けるというミッションに挑戦したいです。
例文④:グローバル志向とアライアンスへの理解(将来ビジョンベース)
私は、「日本発の優れた技術や医薬品を世界中に広め、人々の健康に貢献したい」という強い目標があり、それを実現できる唯一無二の環境が貴社にあると確信し、志望いたしました。
貴社の「ロシュとの戦略的アライアンス」は、日系企業の「自主独立した創薬力」と、外資系企業の「グローバルな基盤」という、双方の「良いとこ取り」を実現した理想的なビジネスモデルだと考えます。
私は留学経験を通じて、異なる文化背景を持つ人々と協働し、一つの目標を達成することの難しさとやりがいを学びました。
貴社でなら、日常的にロシュのメンバーと連携し、グローバルな視点を養いながら働くことができます。
留学で培った語学力と異文化適応力を活かし、貴社とロシュの架け橋となる人材として、日本発のイノベーションの最大化に貢献したいです。
例文⑤:開発職としての専門性(別角度のアプローチ)
私は、臨床開発職として、科学的かつ倫理的に質の高い臨床試験を推進し、革新的な医薬品を一日でも早く患者さんに届けることに貢献したいです。
貴社は、「アンメットメディカルニーズ」に応えるため、「ファーストインクラス」や「ベストインクラス」の医薬品開発に特化しており、臨床開発の難易度もやりがいも極めて高い環境だと認識しています。
特に、ロシュ・グループとの連携によるグローバル共同開発(治験)が活発であり、若いうちから世界最先端の開発戦略に携われる点に強く惹かれています。
私は、大学の研究活動において、教授や共同研究者と粘り強く議論を重ね、緻密な実験計画を立案・実行してきた経験があります。
この「計画性」と「粘り強さ」を活かし、貴社の開発職として、複雑なグローバル開発プロジェクトの成功に貢献したいです。
【中外製薬の志望動機】よくある質問
中外製薬は、「ロシュとのアライアンス」という独自のビジネスモデルを持つため、就活生の皆さんから多くの質問が寄せられます。
ここでは、特に多い疑問を取り上げ、不安を解消し、企業理解を深めるための一助となる回答をします。
ロシュ・グループとの関係は?「外資系」なのですか?
中外製薬は、スイスのロシュ・グループが議決権の過半数を保有する「子会社」ですが、同時に東京証券取引所プライム市場に「上場」している独立した企業でもあります。
外資系企業の「日本法人」とは異なり、日本に本社を置き、独自の経営・研究開発機能を持っています。
ロシュとは「戦略的アライアンス」という対等に近いパートナー関係であり、中外製薬が創製した薬をロシュが世界で販売し、ロシュの薬を中外製薬が日本で販売する、という相互補完関係にあります。
したがって、「日系企業の自主独立性」と「外資系企業のグローバル基盤」の両方を併せ持つ、ハイブリッドな企業と理解するのが最も正確です。
英語力はどれくらい必要ですか?
職種によりますが、高い英語力があれば活躍のフィールドは格段に広がります。
特に研究職、開発職、本社部門などでは、ロシュ・グループの海外メンバーとのメール、電話会議、レポート作成が日常的に英語で行われる部署も多く存在します。
MR職(営業)であっても、最新の医学論文やグローバルな開発情報を理解するために英語力は重要です。
ただし、選考段階で完璧な英語力を求めているわけではありません。
それ以上に、入社後に猛勉強して習得する意欲や、専門性、論理的思考力が重視されます。
英語学習への意欲は強くアピールすべきです。
MR職の強みや特徴は何ですか?
中外製薬のMR(医薬情報担当者)の最大の特徴は、「がん領域」と「アンメットメディカルニーズ」に応える、極めて専門性の高い革新的な医薬品を扱える点です。
ロシュ・グループの製品も含め、世界最先端の薬剤に関する高度な医学・薬学知識が求められます。
単なる薬の紹介ではなく、医師に対して治療戦略のパートナーとして議論できるレベルの専門性が要求される、非常にやりがいのある仕事です。
また、高い倫理観に基づいた「患者中心」の活動が徹底されている点も特徴です。
研究職はどのような研究が中心ですか?
中外製薬の研究の最大の強みは、「抗体医薬」です。
独自の抗体改変技術(SMART-Ig、Sweeping抗体技術など)を駆使し、従来では難しかった標的に対する医薬品創出を目指しています。
研究領域としては、「がん(免疫療法含む)」「免疫疾患」「神経疾患」「希少疾患」といった、「アンメットメディカルニーズ」の高い分野に特化しています。
また、「CHUGAI DIGITAL VISION 2030」のもと、AIやデジタル技術を駆使した創薬研究(モダリティ研究、データサイエンス)にも積極的に取り組んでおり、伝統的なバイオ研究と最先端のデジタル研究が融合している点が特徴です。
まとめ
中外製薬は、「ロシュとの戦略的アライアンス」という唯一無二のビジネスモデルを武器に、「アンメットメディカルニーズ」という困難な課題に挑み、世界トップクラスの収益性とイノベーションを実現している企業です。
その選考を突破する鍵は、この独自の仕組みと「患者中心」の理念への深い共感です。
「日本発のイノベーションを世界へ」というダイナミズムと、「患者さんを救う」という使命感を両立させたいという、あなたの熱意と論理性を志望動機に込めてください。