はじめに
自身の性格や特徴、強みや短所といった自分のことを客観的に理解したいという場面があります。
自らを理解するという行為は、いざやってみると主観が入ってしまい難しいものです。
そこで役に立つのが他己分析という分析方法です。
今回は、就活などで役に立つ他己分析について、メリットや具体的なやり方について徹底的に解説していきます。
この内容を理解することで新たな強みを発見することや自分の本当の適性がわかるので、ぜひ参考にしてみてください。
そもそも他己分析とは
自己分析という言葉は聞いたことがある人は多いでしょう。
自分を見つめ直し、自己の理解を深めるという意味で、就活や面接などでよく耳にするフレーズでしょう。
一方で他己分析は、自分と親しい関係にある知人や家族などから自分に対する性格や長所短所などを聞くことで自分を分析する方法です。
どちらも分析する対象は自分ですが、分析する人が異なるのがわかります。
自己分析は分析するのは自分なので、判断が合っているか不安になる人もいるでしょう。
不安を残したまま満足いく結果が得られないと、就活で活用する時に自信が持てません。
そんな人こそ今回紹介する方法で分析するのをおすすめします。
では、なぜ他己分析が良い手段であるのか、その重要性について説明していきます。
他己分析をする重要性
自分を深く理解することは就活において非常に重要な役割があるのです。
たとえば、自己PRで情報の整理に使うことや仕事の適性を図るのにも便利です。
潜在的な内面や特徴などを知りたい時に他己分析を用いると良いでしょう。
多くの人は意識しないうちに、自分の信じたいように物事を判断してしまいがちです。
自己分析だとどうしても自分の主観が入り混じってしまい、客観性を重視する時には適さない場合があります。
他己分析はより客観的に自身を分析する方法なので、その心配がないのです。
自分では気付かない性格を発見できる
人は内側でしか自身を知れません。
そのため、他人から見た時の性格と本来の性格は違って見えることがあります。
自分の印象を誰かに聞いた時、予想してなかった答えが返ってくる場合があります。
逆に、性格や初対面の印象を友人に聞かれた時の返答で、驚かれた経験がある人もいるでしょう。
自身の想像する他人から見た自分と、実際に振る舞っている言動にはギャップがあります。
それは無意識のうちにしている言動や癖・特徴があるからです。
いつも冷静に振る舞っているつもりでも意外に情熱があったり、適当そうに見えて実はこだわりがあったりします。
隠された性格が大きな長所になることや自分を深く知るきっかけになります。
他己分析を通して、自分では気付かないことを新しく発見できるのです。
より洗練された自分像がわかる
では、自己分析には意味がなくて他己分析だけ行えば良いのかというと、そうではありません。
一般的には自己分析をしてから他己分析をするのが基本です。
これにより、他人を通しての印象と主観のすり合わせを行っていきます。
そうすることで、想像する自分自身と客観視された自身の性格の違いが明確になり、より洗練された自分像がわかります。
はっきりとした自分像がわかれば、自分らしさとは何かを考える時に答えを見つけやすくなるでしょう。
また、自己分析は一つのデータしか得られないのに対して、他己分析は何人にも聞くことができます。
調査した数だけデータがあるということは、統計的により正確で精度の高い分析が可能になります。
これも洗練された自分像を知るのに大きく作用するでしょう。
面接時の印象を改善できる
他己分析で得られる結果は当然ネガティブなことも含まれます。
内面的な特徴は自分でわかりますが、外面の印象はなかなか自分では気付きにくいものです。
面接において好まれない特徴や知らず知らずのうちにやってしまっている言動などもあるでしょう。
たとえば、話している時に目が泳ぐ癖がある場合や声が小さいなどです。
こういった特徴は挙動不審に見えることや自信がなさそうに映ってしまいます。
他己分析の結果、こういった特徴が見られれば未然に防ぐことや対策が可能になります。
自分では自覚がないことも気付くことができ、意識していれば面接官から負の印象を持たれることはありません。
面接における身だしなみの改善にもつながるのは大きなメリットの一つになります。
他己分析のやり方
ここまでで、他己分析の重要性やメリットを理解できたでしょう。
早速実践したい人のために、やり方について説明します。
やみくもに聞いていけば良いのではなく、まずは質問内容を具体的にします。
次に目的に合わせ、誰に聞くかを整理してリストアップしましょう。
最後に得られた結果と自己分析を照らし合わせ、精度を上げていきます。
基本的にはこの流れで進行していきます。
流れを理解しないと非効率である場合や正確性が失われるので、より効果的な結果を得るためにもきちんとした手順で取り組みましょう。
誰に聞くかを決める
流れを理解したところで実際に一人ひとりに聞いていきましょう。
なるべく多くの人に聞くと良いでしょう。
あらゆる視点からの印象を取り入れることで、共通点やさまざまな強みが見つかる確率が上がることがあるからです。
ですので、情報は多いほうが良く、それが正確な分析を行ううえでのポイントになってきます。
しかし、やみくもに誰にでも聞けば良いというわけではありません。
それぞれの関係によって、抱く印象は違ったものになるはずです。
同じ回答でも、その人との間柄によって意味が変わってくるということを理解しておかなければいけないのです。
では、誰に聞けば期待した回答が得られるかわからない人もいるでしょう。
関係性の違いによって、何を知ることが可能なのか詳しく見ていきます。
家族
多くの人が、家族は人生の中で最も長い時間を過ごした関係でしょう。
親は一番身近な理解者でもあります。
普段感情を表に出さない人も、親の前だけは素を出せるところもあるでしょう。
遺伝で似ている部分も多く、性格の深い部分を知ることが可能です。
兄妹は共通の環境下で同じように成長してきた存在です。
親ですら知らないエピソードの中には、隠れた特徴を知るきっかけになるでしょう。
また、幼少期に熱中していたことや好きだったものは、現在の自分の根底をなす要素の場合もあります。
忌憚なく意見を述べてくれるので、分析の信憑性も高いものになります。
気軽に聞けるのもあり、最初に調査するのに最適な人選であると言えます。
人選に迷ったらまず家族を対象にして始めると良いでしょう。
親しい友人
親しい友人に聞くのも良い手段です。
遠慮せずストレートな意見を言ってくれる友人を選ぶと良いでしょう。
小さい頃から付き合いのある友人だと、いろいろなことを相談し合うことや語り合います。
よく言っていた言葉など、自分でも忘れていたようなことを覚えてくれていることもあります。
その経験から自分の意外な一面を知れて、たくさんの良いところを理解しているでしょう。
また、喧嘩や衝突した過去から短所や悪い癖など、見直すべき性格も分析しやすいのも良いでしょう。
一緒に就活をしている友人の場合、お互いに他己分析を依頼しやすい利点もあります。
気心知れた相手と接する時、気が緩み無意識にしてしまう行動も含まれています。
そういったことを知りたい場合は親しい友人が適しているでしょう。
就活経験者
分析をした後はそれを就活に活用するために落とし込まないといけません。
中には就活に関係なさそうな回答をもらうこともあるでしょう。
就活を終えた先輩や大学のキャリアセンターに分析してもらうことで、就活目線での意見を聞くことが可能です。
就活後の先輩などの経験者やその道に長けているキャリアセンターの意見は、多くが実用的なものです。
実際に面接を受けたことがあると、より新鮮な分析やアドバイスを聞けることがあります。
自分の性格や長所が職場でどう活かせるかや、就活への結びつけ方を理解する手助けにもなります。
就活が終わった先輩は時間や精神面でも余裕がある人が多いです。
真摯に考えてくれたり、俯瞰した意見をもらえたりするので、交流がある先輩を選ぶのは良い方法でしょう。
面識が浅い人
実は他己分析では面識が浅い人に依頼することも必要でしょう。
自分の内面だけでなく、第一印象や外面のイメージを鮮明に持っているからです。
初対面の時の記憶が新しいため、比較的覚えていることや思い出すことが可能です。
しかし、なぜその時の情報が必要なのでしょうか。
面接官が知り合いである場合はまずないです。
ということは、面接では第一印象が最も大事であると言えるでしょう。
本来の自分の性格がどうであれ、初見で抱く印象がすべてになります。
そのため、初対面で相手にどういった印象を与えているかはできるだけ知っておきたいのです。
ですので、面識が浅い人の意見というのは、大変貴重な材料になります。
もし周りで協力してくれそうな人がいたら、積極的に声をかけていきましょう。
質問をする
印象や長所、短所など自分の性格を理解するのに役立つ質問をしましょう。
抽象的な質問は相手の裁量によるところが大きいので、回答に統一性がなくなってしまいます。
後に分析しやすくするため、できるだけ具体的な質問を心がけましょう。
そうすることで、相手も答えやすいうえに、回答がバラけるのを防ぐことが可能です。
質問をする時は最初に就活で使う旨を伝えておくと、スムーズにやりとりができるでしょう。
忌憚なく意見を言ってもらえるように伝えるのも大切です。
遠慮や配慮をされ、本心とは違う回答をもらっては意味のないものになってしまうおそれがあります。
相手の回答が本心か判断できないようであれば、遠慮せず意見をくれるような人選をしましょう。
他己分析の質問例
具体的な質問内容についていくつか例を挙げていきます。
シンプルに内面的なことが聞きたい時は「性格は?」「長所は?」「短所は?」などの質問をすると良いでしょう。
「第一印象は?」という質問はその時の記憶がまだ新しい、面識が浅い人にすると最も効果的です。
「どんな業界/職業が向いている?」この質問は誰に対しても有効ですが、いろいろな職種の経験がある、または知っている人に向いています。
親しい友人に「記憶に残っているエピソードは?」と質問してみましょう。
付き合いが長い人ほど効果が出るので、家族にしても良いでしょう。
遠慮せず意見を言ってもらえる人には「私に足りないものは?」とストレートに聞いてみても良いでしょう。
「ほかの人に紹介するならどのように紹介する?」という質問には間接的にどういう印象を持たれているかを知ることができます。
「動物に例えるなら何?」と質問してもおもしろいでしょう。
動物はそれぞれ特徴が顕著に出るので、自分の印象と似ている動物にヒントが隠されているでしょう。
得られた回答と自己分析を照らし合わせる
ここまでのことを実践するとさまざまな関係性、視点からの回答が得られたはずです。
この時点で有意義な結果が得られ、満足して終わってしまう人もいるでしょう。
しかし、ここで終わってしまっては本当の成果は得られません。
せっかく時間と労力をかけたても、これだけでやめてしまうのは大変もったいないでしょう。
データを集めただけでは情報が整理されていませんので、精査する必要があります。
自己分析と集めた他己分析の回答を照らし合わせてみましょう。
すると、共通する部分と異なる部分があることに気付くはずです。
それらの要素を理解することで他己分析の真価を発揮することが可能になります。
共通する回答は自他共に認める性格で、異なった部分は内面と外面の違いがあるため改善する必要があります。
自己分析と他己分析の結果が同じ場合
自己分析と他己分析の回答が一致する場合があるはずです。
その部分は自分とほかの人が共に認める特徴であり、説得力が強いものであると言えます。
これを面接やESに活かすためにさらに深掘りをしていきましょう。
ほかの自己分析や他己分析と関連付く要素があるはずです。
たとえば、「競争心が強い」という一致する性格があります。
「どんな業界/職業が向いている?」という質問に営業職という回答が返ってきたとします。
営業職には競争心や向上心といった性格の人に適性がある職業です。
これは性格と仕事の相性がマッチしています
このように、いろいろな要素を結びつけていき裏付けを固めることで、より説得力が増していきます。
面接でもしっかりとした根拠があると発言に深みと自分らしさが生まれるのです。
自己分析と他己分析の結果が異なる場合
分析の結果が異なるのは、自分が思う自身の特徴と客観的に見た自身の特徴が異なっているためです。
強みや弱みとして使うと、浅い印象を持たれる可能性があるので、そのまま使わないほうが良いでしょう。
他己分析の結果をもとに、もう一度自己分析をする必要があります。
他人の評価を受けて自身を冷静に再分析すると、違った見方ができるはずです。
また、自分の理想像と他人の評価に乖離があるという捉え方もできます。
これは理想とする自分になりたい、そのためにするべきことふさわしい行動は何か、という風に論理的な考え方ができます。
結果が異なることで落ち込むのではなく、近づくための糧とする捉え方もできるはずです。
異なった結果だったから使えない材料だと諦めるのではなく、どう活かせるかを考えましょう。
効果的な他己分析にするコツ
具体的な他己分析について理解できたでしょう。
しかし、早速聞き込みを実行するのは少し待ってください。
なぜなら、効果的に他己分析を行うコツがあるからです。
手探りでやっていくとどうしても忘れていることがある場合やああしておけば良かったと後悔もあるでしょう。
得られる効果も効率も違うので、コツを最初に知っておくのは重要なのです。
最高率で取り掛かればそれだけ時間や労力の削減につながります。
以下を押さえ、より効果的に分析を進めていきましょう。
なるべく早めに行う
先述したように他己分析は聞いて終わりではありません。
そこから分析をして再び自分像を考える必要があります。
いろいろな人への聞き込み自体も、意外と大変で時間を要するものになると予測できます。
時間に追われ、焦って行うのはやめたほうが良いでしょう。
十分な効果が見込めないうえ、並行して行っていることが疎かになってしまう危険性があるからです。
自己分析や他己分析はいつ始めても良いので、余裕があるうちに済ませておくと良いでしょう。
まだ就活が先な人も、大学3年生の3月までを目標に終わらせておきましょう。
ESやインターンのエントリーなど、多くの人が就活の準備を始め、忙しくなる時期でもあるからです。
まだ終わっていない人は急いで取り組みましょう。
回答を素直に受け入れる
他己分析では予期せぬ回答が返ってきます。
たとえば、短所や欠点などが良い例です。
ある程度自分の短所については理解しているつもりでも、別の角度から指摘されることがあります。
自分で予想をしていなかったことを言われると、反論や否定をしてしまいがちです。
また、いざ面と向かって言われると落ち込んだりするものです。
しかし、欠点やネガティブな要素は必ず誰にでも当てはまります。
誰しも多面性を持っているので、もらった意見はただの一面にすぎないと言えます。
そこに一喜一憂する必要はなく、素直に受け入れることが大切でしょう。
相手も自分のために意見をくれているので、貴重な意見をくれるのはありがたいことです。
相手との良好な関係を保つためにも、どんな回答であれまずは受け入れましょう。
事前準備をしっかりする
事前準備をしておくことは他己分析をスムーズに行えるだけでなく、調査項目の抜けを防ぐのにも役立ちます。
まず他己分析をやる目的を明確にしておきましょう。
職業適性を見極める、自分の強みを理解し深める、自己PRでの話題など人によって就活に向け足りないものがあります。
その足りないものを補う形で他己分析をする、という目的意識を持って取り組みましょう。
目的に合わせて質問内容をリストアップしておきましょう。
目的に応じて、必要となる質問はそれぞれ違います。
項目としてまとめておけば、脳内も整理され後の比較の時にも見やすくなります。
また、事前に自己分析を済ませておくと良いでしょう。
後で必ず照合するので、先に終わらせられるものは済ましておきましょう。
ベンチャー企業にも他己分析は役立つ!
ベンチャー企業の就活にも、もちろん他己分析は役立ちます。
というのも、ベンチャー企業ではやる気や人柄が特に重視される傾向があるからです。
スタートアップの会社の特徴として、大手と比べ新人育成の機構が未発達なことが多いです。
そういった会社は、育成にかかるコストをできるだけ抑えたいというのが本音でしょう。
自主的に学習してくれるやる気がある人材というのは、ベンチャー企業にとっても特に重宝される存在なのです。
少人数体制なところも多く、コミュニケーションが取れ一緒に頑張れそうな人も選ばれます。
その企業と相性の良い人柄であることは、採用に大きくプラスされる要因になります。
他己分析により自分を深く理解して、ベンチャー就活にも役立てましょう。
まとめ
他己分析の重要性や手順が詳しく理解できたのではないでしょうか。
個性が重要視される就活の場において、自身を深く追求することで周りと差別化することが可能です。
また、効果を最大限引き出すには、自己分析と併用しましょう。
時間がかかるので自己分析は先に済ませておき、しっかりとした事前準備が大切です。
他己分析はいつでもできるので、就活の準備に入る3年の夏前には終わらせておきましょう。
具体的な目的を持ち、効果的な分析をして就活に役立てましょう。