はじめに
環境ベンチャーがどのような存在かといった定義は確定していませんが、主に「環境ビジネス」をメイン事業とするベンチャーが該当すると理解できます。
環境省が提唱する環境ビジネスの定義は以下の通りです。
「水、大気、土壌等の環境に与える悪影響と廃棄物、騒音、エコ・システムに関連する問題を計測し、予防し、削減し、最小化し、改善する製品とサービスを提供する活動」
こうした環境問題に関わる環境ベンチャーの仕事はどんなもので、どのような事業を行っているのでしょうか。
【環境ベンチャーって何してる?】環境ベンチャーの現状は?
ご存じの通り、現代、環境問題は世界的に重大な問題として取り上げられています。
こうした動きの中、環境問題解決を目的とするベンチャーも増えてきており、日本国内もその流れに乗っています。
特にサステナビリティが叫ばれる現在、再生可能エネルギーの開発や環境保全に関するソリューションを提供するベンチャーがたくさん活躍する時代に突入しました。
環境問題への関わり方は企業ごとに千差万別ですが、総じて見れば環境ビジネスは非常に活性化しているジャンルであり、環境ベンチャーの優位性も上がっていることは間違いありません。
【環境ベンチャーって何してる?】環境ベンチャーの仕事内容は?
一言で環境ベンチャーといってもその仕事内容は実に多岐にわたります。
メインとする事業としても、環境コンサルタントからリサイクル、エコ商品の販売に至るまで、実にさまざまな展開が見られます。
就活生にとっては、企業研究をしてもなかなか実態を掴みにくい業界でしょう。
環境ビジネスはもともと事業形態が多様化しているうえ、いくらでも新しい切り口があるためこのような状況になっています。
ここでは主な環境ベンチャーの仕事内容を、なるべく一般的な分野に集約して紹介しましょう。
研究開発(環境保全エンジニア)
環境保全エンジニアは、所属は機械メーカーや研究機関、環境調査会社など多岐にわたりますが、環境保護に役立つ機器や技術を開発する仕事です。
たとえば、大気汚染や水質汚染を防止する装置を開発したり、廃棄物処理装置を開発したりする仕事で、主に機器の設計や製作、メンテナンスを実施するプロフェッショナルといえます。
開発するだけでなく実際に現場へ出ていって環境調査や機器設置を手がけることもあります。
機械エンジニアの専門知識や技術、環境問題を自身の技術で解決するという志がとても大切な仕事だといえるでしょう。
生産技術
環境エンジニアが開発した製品を、いかに効率的に高品質に生産できるかを研究し、現場の改善を行っていく業務を担うのが生産技術です。
いかに素晴らしい装置ができても、量産できる体制へ持っていけなければ宝の持ち腐れになってしまいます。
設計や製作のスキルも持ちながら、開発部署と意見を戦わせ、製品として市場に出せるラインに乗せるのが腕の見せ所です。
生産技術の存在がなければビジネスは成り立ちませんので、経営にも関係する重要な役どころといえます。
営業・マーケティング
開発と生産技術が製品化した商品を、効果的に売り出していくために必要な部署が営業やマーケティングです。
非常に画期的で有効な機器ができても、営業が動かなければ、世の中にその存在すら知ってもらうことはできません。
また、その製品をどこでどう使用すれば活かせるのか、どういった状況や問題のソリューションになるのかを的確に導き出すのはマーケティングの仕事です。
特にベンチャーは社会的地位や信用を構築していくために、大手以上にアピールしていかなければなりませんので、営業やマーケティングの働きは非常に重要です。
【環境ベンチャーって何してる?】環境ベンチャーの特徴は?
環境ビジネスに興味を持っている就活生は、環境ベンチャーにはベンチャーならではのどういった特徴があるかが非常に気になるところでしょう。
ほかにも、環境ビジネスを手がける企業がある中、あえて環境ベンチャーを選ぶポイントはどこにあるのでしょうか。
もちろんベンチャーであることには若く新しい企業という魅力もありますし、環境ビジネスならではの魅力もあります。
企業ごとにさまざまな魅力がありますが、ここでは総じて環境ベンチャーが持っている特徴をまとめておきましょう。
世界でも環境問題は注目を集めている!
ご存知の通り、現在世界中が環境問題に注目しています。
人々の意識が環境保全に向くのはとても良いことですが、それは同時に実際に地球で環境問題が進行していることも意味しますので、環境ビジネスに携わる企業には大きな責任も伴います。
多くの環境ベンチャーが、社会的意義のある事業として使命感を持ってビジネスを展開しているのは、実に頼もしいことです。
環境省が2020年2月21日に実施した「環境経済観測調査」によると、12月調査の確定結果で環境ビジネスの業況は好調を維持し、半年先も10年先も好調を維持する見通しとされました。
中でも事業として注目されていたのは再生可能エネルギーの開発であり、リサイクル素材の開発と並んで今後のトレンドを示す手掛かりになっています。
ただ、環境ベンチャーは独創的な目のつけ所で独自ビジネスを展開するところが魅力ですので、各社とも実にバラエティに富んだ事業を行っているのが大きな特徴です。
市場に迅速に対応できる
環境ベンチャーに限りませんが、ベンチャーにはスピード感が必要ですし、同時にそれが大きな強みでもあるため、求められている技術に対して迅速に対応できるのが特徴です。
少しでも可能性があればそこへ向かって瞬時に舵を切れるのが環境ベンチャーの魅力であり、市場の変化にフレキシブルに対応できる自由さもあります。
これは大手にはない特徴ですので、莫大な資金で大掛かりな機器開発や社会インフラ構築などがなかなかできないベンチャーにとっては、スピードが最大の武器ともいえるでしょう。
経営判断の早さ、担当者レベルの裁量権の大きさにより、時期を逃さず即座に動ける組織体制を敷いている企業が非常に多いのが特徴です。
【環境ベンチャーって何してる?】環境ベンチャーの事業例
環境ビジネス自体、とても幅の広いジャンルのため、環境ベンチャーにも実にさまざまな企業が名を連ねています。
環境ベンチャーの多くは、社会的に意義がある事業であり、将来性があると考えて環境ビジネスへ参入しています。
環境問題から環境ビジネスが立ち上がり始めた2002年頃は、まだまだ消費者の意識も低い状況でしたが、その実情もここ近年大きく変化しました。
日本国内ではまだまだスタートを切ったばかりのベンチャーも多いですが、追い風の吹く中、特に世界で注目されている環境ベンチャーについて事業例を紹介します。
Pivot Bio
農業では肥料の一つとして窒素が不可欠ですが、Pivot Bioの微生物は環境に配慮した発酵生産プロセスにより、合成肥料による水質汚染などを防ぐ手法を提供しました。
現代の農業は、最も困難な課題の一つとして合成窒素の問題を抱えています。
Pivot Bioの微生物は、穀物の成長期間中に無駄なく植物の根に窒素を供給し、持続的に栄養を与えられる窒素源を与えるのです。
より生産的で収益性が高く、しかも環境に悪影響を及ぼすことのない持続可能な窒素の直接供給という新しい切り口で、Pivot Bioは複数の土壌タイプ、気象条件に合致するバイオマス製品を開発しています。
GNE
企業は環境対策やコストにおいてシビアな電力マネジメントが求められていますが、顧客ごとに節電効果の高いシステムや設備を提案することで、省エネ対策をサポートする事業を展開しています。
特徴は、システムや設備面だけでなく、トータルマネジメントを提供している点です。
特に事業規模やエリアに応じた適正な補助金申請の提案など、コンサルタントとしてサポートをしているのが特徴といえるでしょう。
Lilac Solutions
リチウムは埋蔵されているほとんどが塩水に含まれており、抽出するには膨大なコストがかかります。
主に南アメリカが採掘場になっていますが、天候に左右され、場所によっては採掘許可が取れないなどさまざまな問題を抱えていました。
しかも、従来のプロセスではリチウムの回収率もグレードも低いため非効率な事業でしたが、それを新しいイオン交換技術の開発で解決したのがLilac Solutionsです。
独自の処理システムでさまざまなリソースから濃縮高純度リチウム溶液を生成することに成功し、世界中にビジネスのパートナーシップを構築しています。
Biosciences
普段、パーム油はアブラヤシから採取するため、現地では油を得るため森林伐採を行っています。
これまでに世界的ニーズの高まりで生産量が増え続け、熱帯雨林の破壊を引き起こしたとして世界的な環境問題に発展していました。
同社の代替油なら、フードロス問題にとっても森林伐採問題にとっても光明になります。
ビールを造るような発酵プロセスで人工パーム油を製造し、現在流通しているパーム油より20%も安く、環境を破壊しない製品を提供する直前までこぎ着けました。
2020年にビル・ゲイツ氏が立ち上げた投資機関から2,000万ドルの融資を受けたことで事業がスピードアップし、商品化も近いと予測されています。
enVerid Systems
大気汚染やエネルギーの効率的な利用に貢献しており、世界をよりクリーンで健康的な場所にすることを目指しています。
同社のモジュールは、建物内の空気を浄化して室内の空気を安全に再循環させるというものです。
このことは外気のように建物内の空気を洗浄することにより、建物の二酸化炭素排出量を減らすという環境効果があります。
建物から排出される二酸化炭素量は全体の約40%を占めており、特に暖房と冷房はそれに大きく関与しています。
建物の運用コストを削減し、中にいる人の健康と生産性を向上させ、地球環境にも負荷をかけない画期的なシステムといえるでしょう。
【環境ベンチャーって何してる?】まとめ
環境ベンチャーはまだまだこれから伸びていく状況にあり、世界が注目する環境問題に取り組み、社会貢献を目指す次世代のチャレンジャーともいえる存在です。
環境ビジネスは非常に幅の広いジャンルのため、環境ベンチャーと一言でいっても実にさまざまな企業や事業があります。
就職を目指すなら、どのような分野でどのように関わりたいのか、自分の専攻やスキルもあわせて企業研究を行ってください。