はじめに
ガクチカとは、就職活動で聞かれる「学生時代に頑張ったこと」の略称です。
面接や履歴書では、志望動機と並んで必ずといっていいほど聞かれる定番の質問であり、面接官がもっとも重要視する項目でもあります。
アルバイトや部活・留学・ゼミ・研究室の活動などをあげる学生が多く見受けられます。
ガクチカの字数制限は400字のケースをもっとも多く見受けられますが、800字というケースも年々増えてきました。
800字という規模でうまくまとめ、採用担当者に好印象を残すコツについてお伝えします。
企業はガクチカで何を見ているか
ガクチカを通して、企業は応募者の何をチェックするのでしょうか。
企業はガクチカから学生の人柄や取り組みの際の姿勢・考え方・モチベーションの源泉をチェックしています。
さらには、すぐ辞めずに自社で長期にわたって貢献できそうか、そして自社の業務に適性がある人材かを見て、入社後のミスマッチを防ごうとしているのです。
また、ガクチカは、過去の経験を語るという点から自己PRと混同しがちな学生を多く見受けられます。
しかし、自己PRは過去の経験から得たスキルを会社でどう活かし、企業に貢献できるかをアピールするのに対し、ガクチカは学生時代に物事に取り組んだプロセスを語る場所です。
自己PRと同じ内容にならないよう注意しましょう。
800字のガクチカを出す企業のねらいとは
企業はなぜ、ガクチカに800字という多い文字数を設定するのでしょうか。
一般的な字数である400字より大幅に多い文字数を設定することで、取り組みの中にあらわれる学生の人間性を、よりしっかり見ようとしているのです。
まず、字数が多いことでエピソードの細かい描写が多くなります。
そこからより具体的に、応募者の人となりがわかるようになります。
そして、自らの体験を長きにわたる中で、応募者の人物像と自社の求める人物像が適合しているかも明確になるのです。
さらに、業務への適性があるかどうかも、物事の取り組み方や考え方からくみ取れるでしょう。
また、800字という文字数の中で不要な表現もなく、言いたいことをまとめられるかの文章構成力も採用判断の材料になっているのです。
【ベンチャーウケする800字のガクチカを書くには】800字のガクチカを書く際のコツ
企業はガクチカから学生の人間性を読み取り、それに具体性をもたせるために、標準より多い800字の文字数を設定しているとわかりました。
ガクチカを書くうえで注意すべき点はいくつかあります。
そこでもっとも大切なのは、企業の求める人物像や社風とのミスマッチがないかどうかです。
どんなに優れた人材でも、自社に合っていなければ能力を発揮できず、早期離職につながるリスクがあります。
数ある企業の中でも、ベンチャー企業の採用試験で高評価が得られるガクチカを書くためのコツをお伝えします。
多めに書いてあとから削る
800字ちょうどを目指して書くのではなく、800字を超える文字数のエピソードを書き、あとから削っていきましょう。
800字のように字数の多いガクチカになると、字数を満たすのに精いっぱいで、内容が薄くなりがちです。
無理やり引き延ばした文章というのは、プロが見れば一目瞭然であり、それだけで印象が悪くなります。
それを防ぐには、2割くらい多めに書いて、あとから削っていくやり方がおすすめです。
たとえば、文字数にとらわれず、構成に必要なエピソードや要素を詰め込み、順序立てて書き出します。
エピソードができあがったところで、採用担当者の立場になり、状況や背景を読み取るうえで不要な要素は何かを考えましょう。
必要のない形容詞や修飾語を中心に省いていき、文章の無駄を削ぎ落としていきます。
字数の増やし方
多めに書くといっても、1,000字近い文字数でガクチカを書き出すのは、多くの学生にとって至難の業でしょう。
字数を増やすべきポイントは、価値観や人柄が伝わる場所をふくらませることです。
企業はガクチカから、物事に取り組む際のプロセスを聞き取ろうとしているので、そこを重点的に説明するのです。
たとえば取り組みの動機や施策を行う際の工夫、なぜその施策を選んだかなど、応募者が物事に取り組む際の姿勢がよりわかるように深掘りすると、聞き手の印象に残るエピソードとなります。
また、深掘りしたエピソードに「そのときに自分の無力さを痛感し、努力が必要と感じました」など感情を付け加えると、より人となりがわかる厚みのあるガクチカとなります。
字数の削り方
字数を削るポイントは、言葉の使い方や表現方法を工夫することです。
たとえば語尾が「です・ます」で統一されているのであれば、すべて「だ・である」に置き換えるだけでも、字数を削減できます。
また「さっそく」を「早速」、「気をつけました」を「留意した」、「することができる」を「~られる」など、平仮名の表現を漢字に置き換えたり、幼稚な表現は言い換えたりします。
そうすると、字数が減るだけでなく、文章がより洗練された印象になるでしょう。
また、「グループ」を「班」、「コミュニケーション」を「交流」など、カタカナ語を漢字に置き換えるのも有効な手段です。
そして最後に客観的な視線で文章全体の流れを見て、なくても主旨が伝わる、不要な文章があれば、思い切って文章ごと削るのも1つの方法です。
【ベンチャーウケする800字のガクチカを書くには】800字のガクチカを書く際の注意点
800字のガクチカを書く際のコツについて、文字数を稼ぐ・削る・両方の視点から説明しました。
しかし、字数をコントロールさえすれば、好印象を残すガクチカが作れるわけではありません。
一生懸命に作成したエピソードも、肝心なポイントをつかめていなければ常識がない、相手の立場で物事を考えられない人間だと判断されてしまいます。
ベンチャー企業の採用活動に臨む際、注意すべきポイントを2つピックアップしましたのでご覧ください。
字数はぎりぎりまで埋める
字数は、ぎりぎりまで埋めてください。
大幅にも字数があまっていると、やっつけ仕事のような印象を与え、熱意が欠けているように受け取られかねません。
最低でも指定文字数の8割、できたら9割以上が理想的です。
企業によっては、8割でも「志望理由を感じない」とマイナス評価を下されるケースもあるため、可能な限り9割以上を目指しましょう。
800字の字数制限だと、720字以上が最適な文字数といえます。
もちろん「やる気を見せよう、文章が多い分にはいいだろう」と指定文字数をオーバーするのも厳禁です。
指定されたルールを守れず自己アピールに躍起になる人は、社会人としての常識に欠けるため、評価のラインにも並べません。
少なすぎず多すぎずのバランスを意識しましょう。
一文を長くしない
一文が長くならないように注意しましょう。
字数を稼ごうとすると、一文が長くなりがちになります。
しかし、人が一度に記憶できる単語数は7~9個といわれているため、文章が長くなると、相手が内容を理解できなくなってしまいます。
ついつい読点が多くなってしまうので、一文が簡潔な文章を意識しましょう。
読み手がわかりやすい文章にするためには、構成に沿って書くことが大切です。
(1)結論→(2)動機→(3)目標や課題→ (4) 取り組み→(5)結果→(6)学びの順に書くと良いでしょう。
先に結論を述べ、これから話す内容を明確にすることで、読み手の関心をひきつけ「結局何が言いたいのだかわからない」文章になることを回避します。
特に800字という字数制限の場合は、その後の (2) ~ (4) の取り組みに至った動機や背景、そして取り組みの部分に字数を割いて書くと、行動や結果だけでなく思考の過程も明確になります。
そうすれば、採用担当者に仕事に向き合う姿勢や、求める人物像にマッチしていることをアピールできます。
実際に面接官に質問で深掘りされるのも、動機や目標、取り組みの部分であることが非常に多いのです。
自分を知らない人間に自分を売り込むためのガクチカです。
与えられた字数を有効活用できるように、構成に沿って、自分の人となりを最大限にアピールしてください。
【ベンチャーウケする800字のガクチカを書くには】800字のガクチカの例文
ガクチカは以下のように書くと企業側に伝わりやすいです。
先にお伝えした結論→動機→目標や課題→取り組み→結果→学び がどのように書かれているかを例文で確認し、それをもとにご自身でもガクチカを書いてみてください。
「(例文)私は学生時代、野球部のキャプテンとして弱小であった部を、1部昇格に導くことに尽力いたしました。
大学3年生のときに指名され、キャプテンを務めることになったのです。
しかし、私がキャプテンになってからは、思うようにいかないことばかりでした。
既存のメンバーをうまくまとめることも、新入生の指導も思うようにできず、そのまま挑んだ最初の試合では格下であったチームに負けてしまったのです。
そのとき私は悔しさと、信頼してキャプテンの引導を渡してくれた先輩や、チームのメンバーに申し訳ないという気持ちでいっぱいになりました。
負けた原因は何か、どうするべきかを書き出すうちに、メンバー間のコミュニケーションが足りていないことに気がついたのです。
そして、パンデミックでコミュニケーションが取りづらいため、オンラインでミーティングを開く機会を設けました。
先輩がいると率直な意見を言いづらいと判断し、1年生から学年ごとに機会を分けてオンラインミーティングを開催したところ、キャプテンの視点では見えない不満や意見を受け取れました。
そして、同級生からは、自分のキャプテンとして不足しているのは積極性だと指摘され、今までの自信のない態度を改めるきっかけとなったのです。
そのあと、全体でのミーティングを開催し、学年ごとの意見をまとめ、問題点を提示しそれに対しての意見交換を行いました。
そして、その意見を監督に伝えメンバーの意見を取り入れたトレーニング体制に組み替えたのです。
その結果、先輩後輩間の風通しが良くなり、不満が解消されたせいか皆のモチベーションも上がり、自主練習をするメンバーも増えました。
そして、この春には誰もが無理だと思っていた1部に昇格できたのです。
私はこの経験から、リーダーには物事や問題解決に意欲的に取り組む積極性と、メンバー一人ひとりと向き合い、マネジメントするコミュニケーション力が大切であることを学びました。」
まとめ
800字のガクチカを作るのは、簡単ではありません。
しかし、見方を変えれば、企業に自分をアピールするためのチャンスが多く与えられているとも考えられます。
そして、これらは成長段階にあり新しいことにチャレンジしていくベンチャー企業では上昇志向があり、粘り強く何かをやり抜く能力のある人材が求められる傾向にあります。
物事に取り組むプロセスをアピールするガクチカは、それらをアピールするのに最適な場所です。
800字という文字数を消費するのではなく、目いっぱい活用して、内定へ大きく一歩リードできるガクチカを作りましょう。