はじめに
ITの技術の進歩は、ありとあらゆるビジネスに多くの革命を起こしました。
医療での分野も、このIT技術の進歩によって変わってきており、電子カルテなどがその一例です。
最近になって、Med Tech(メドテック)を活用した技術やサービスが注目されてきています。
医療の分野でも、ますますの進化が期待されることでしょう。
ここでは、Med Tech(メドテック)がいったいどういうものか、国内市場の状況や、日本・アメリカでの例などを紹介していきます。
Med Tech (メドテック)とは
Med Tech (メドテック)とは、「Medical」(医療)と「Technology」(技術)を掛け合わせた造語であり、loTなどの技術を医療に活用させるものです。
IoTのほかにも、AIやVRなどにも活用されます。
Med Tech はただ医療の仕事を効率化できるものではありません。
過去に実現することが困難であった手法を使うことが可能になり、日々の診療や診断をするのにも大変多くのメリットがあります。
そして、医療従事者の仕事の負担を減らせるのも、メリットの1つといえるのです。
また、同時に患者の負担も大きく減らすことができます。
つまりMed Techは医療を進化させて、革命をもたらすものといえるでしょう。
Med Tech (メドテック)が注目される背景にある国内の現状
日本では約20年もの間、経済の停滞期があり、経済を軌道に戻すことが課題です。
日本では経済の成長を軌道に乗せることや人口の減少、世界での技術革新の競争激化などが、今後の課題となっており、生産性の向上がこの課題を解決するカギになります。
メドテックはその生産性の向上に役立つと注目されています。
つまり日本の経済を助け、日本経済の競争力や生産力を取り戻すことが期待されているのです。
近年の日本企業ではメドテックへの参入に注力しており、今後の展開が注目されています。
医療機器の需要は拡大傾向
医療機器として例をあげるのであれば、内視鏡やX線診断装置、MRIなどがあります。
また、意外にも視力を補正するメガネやコンタクトレンズ・ばんそうこう・体温計も医療機器の一部なのです。
一口「医療機器」に言っても、それは多岐にわたって私たちの生活を支えているのです。
また、少子高齢化が進んで、特に怪我や病気をしやすい高齢者への医療機器の使用が今後も増加していく見通しになっています。
経済産業省によれば、医療機器市場は拡大しており、特に治療系の機器の需要が高いといわれています。
世界においての医療機器市場の動向は、2020年からの新型コロナウィルスによって不要不急の受診控えや手術の延期などがあり、一定期間は落ち込みましたが、中長期的に見れば拡大傾向です。
医療・介護用ロボットの市場規模も拡大傾向に
医療や介護などの場面でロボット化が進んでいます。
たとえば、リハビリ支援や移乗介護のサポート、手術中に患者・医者の負担を軽減するロボットなどです。
これらは革新的なIT技術によって、さらに市場が拡大していくと期待されています。
また新型コロナウィルスの感染拡大以降、オンライン診療の規制の緩和などがあり、遠隔モニタリング機器の需要が増え、医療機関のデジタルヘルス化が進みました。
そして日本では、今のままだと2040年になると、現役世代は1.5人あたりに1人の高齢者を支えることになります。
こういったことが医療崩壊にもつながりかねません。
医療崩壊を起こさないためにも、医療や介護の現場でロボットを使うなど、革新的なIT技術の進歩が求められています。
国内のメドテック業界にも十分な成長チャンスがある
日本のメドテックに取り組む企業は、グローバル基準で見ても研究開発への投資や技術力で高い評価を受けています。
また、イノベーション競争で海外でも優位に立てると見込まれています。
なぜならば日本の企業は、医療技術に革新をもたらす技術力や戦力的なニーズの把握、投資の能力が備わっているといえるからです。
また日本は世界最大の医療市場で、これまでは医療機関が分散しており、なおかつ薬事承認に長い時間を必要としていましたが、それも変わってきています。
政府は2014年に革新的な医療機器を対象にして、素早く承認し、支援するための制度を導入しました。
長期的には、医療機関の統合が進み、新たな医療機器や医療技術を生み出すことができると考えられ、日本は期待されています。
Med Tech (メドテック)で期待されていること
日本は世界有数の医療大国で、医師たちの技術も高く、医療機器や薬などの品質にも問題はありません。
それではメドテックには何を期待すればいいのでしょうか。
また、メドテックはどういった革新をもたらしてくれるのでしょうか。
たとえば、がんの早期認知や介護職における人材不足の解消、診断の正確性向上やリモート化、個人での健康維持などがあげられます。
どれを取っても、大切なことばかりです。
以下の項目で詳細に説明していきます。
がんの早期認知
メドテックで期待されていることの一つ目に「がんの早期認知」があげられます。
AIによる画像診断でがんの発見が容易になり、今までより手軽にがん検診が受けられるようになりました。
これらの影響は、がん検診の時間の短縮や、検診での痛み軽減にもつながります。
また、ディープラーニングにより、精度を高めることが可能になりました。
がんの専門家でさえも見逃すような小さながんでも見つけられます。
大手のIT企業が開発した乳がんの発見システムでは、専門家よりも高い確率でがんを発見したそうです。
将来、がんの兆候までも見つけられれば、がんのおそろしさも小さくなるでしょう。
このような影響をメドテックに対して期待しているのです。
介護職における人材不足の解消
メドテックで期待されていることの2つ目に「介護職における人材不足の解消」があげられます。
介護職は昔から「3K」と言われる職種で、人材が不足していました。
そして、少子高齢化により、介護職はますます人材の不足が予想されます。
人材不足による、介護サービスの低下は免れたいものです。
しかし、ロボットによる介護が推進されることで、人に代わって3Kの仕事を行ってくれるようになります。
例をあげると、高齢者の方と話し、認知症を予防するロボットはすでに開発されています。
ロボットの開発がどんどん進んでいけば、会話だけでなく、ほかのこともロボットができるようになるので、高齢者の介護をロボットに任せられる可能性があるのです。
診断の正確性向上やリモート化
メドテックで期待されていることの3つ目に「診断の正確性向上やリモート化」があげられます。
高齢者や医師不足の問題が重なると医療従事者の負担が大きくなってしまい、医療崩壊につながってしまう可能性もあり、それは避けたいものです。
物理的に近くに医師がいなくとも、診察を受けられるようにすれば、正確な診断やその高速化、医療従事者の負担軽減につながります。
また、「都市部では高度な医療を受けられるのに」という地方在住の方でも、メドテックを活用すれば、地方でも充実した医療を受けられ、患者・医師ともに負担が少なくなります。
そして、医療が行き届いている現場では、早期発見や治療につながり、入院の患者の抑制や医療費の削減にもなるのです。
個人での健康維持
メドテックで期待されていることの4つ目に「個人での健康維持」があげられます。
少子高齢化が進む現在の日本では、患者の方は高齢者が多く、対応できる医師や看護師が限られているために、将来十分な医療を受けることができなくなるかもしれません。
もし、スマートフォンやパソコンなどでAI診断が可能になれば、患者の方が病院へ行く回数を減らすことができ、医療従事者の負担が減らすとともにきちんとした医療を受けることが可能です。
また、個人で気になるところがあれば、どこにいてもすぐに診断できます。
つまり、地方で病院が少ない地域に住んでいる方でも、高水準の医療サービスを受けることが病気の早期発見につながり、入院の抑制にもつながるのです。
Med Tech (メドテック)の事例紹介
ここからはメドテックの事例を紹介していきましょう。
世界の国々では医療制度がそれぞれ異なります。
たとえば、日本は「国民保険」という、医療に重点的なコストをかけた制度が取られています。
ほかの国では、そういった制度があるところとないところがあるのです。
メドテックの成長も、その国の法律や制度なども関わってくるので、比較することが必要です。
日本の事例とアメリカの事例をあげていきます。
それぞれが行っている研究や開発、特徴などをくわしく見ていきましょう。
日本の事例
日本の事例をあげると、日本では新しい乳がんの診断装置を研究・開発したベンチャー企業が存在します。
このベンチャー企業ではリング型超音波振動子を使用し、新しい乳がん診断装置を開発しました。
この新しい乳がん診断装置のメリットは3つあります。
1つ目は、診断の際はベッドの穴に乳房を入れるだけで検査が可能なため、検診の不安を取り除くことが可能になりました。
2つ目は、超音波振動子を使うため、痛みを感じない点です。
3つ目は乳房を押しつぶすことなく、検査できるため、自然な乳房の形を撮影できるところです。
このような乳がんの診断装置を開発することで、検査の受診率が上がり、乳がんの早期の発見や、早期の治療などに結びつけられます。
アメリカの事例
アメリカの事例をあげていきましょう。
アメリカではGoogleの元幹部が設立した「快適でスマートな医療を提供する、アップルストアのような医療施設」を目的としたサービスが存在します。
これにより、古いアメリカの医療システムから新しい医療システムへの変化を目指しているのです。
アメリカの医療システムは診察の回数によって、医師の収入が変わってきます。
そうなると、医師たちはなるべく多くの診察をしようとするのです。
そういった制度からは離れて、新しく設立したサービスでは会員制で毎月約150ドルを支払い、そのサービス下の医療機関に受診すれば追加の料金は発生せず、24時間いつでも何か不安なことがあれば質問ができます。
こういったサービスは病気を未然に防ぐことも可能です。
おわりに
ここまで、メドテックとは何か、国内市場の状況やメドテックに期待されていること、日本とアメリカの事例を紹介してきました。
メドテックは今まで医療では対応が困難だったことを可能にできる、実に革新的な技術であるといえます。
医療従事者と患者双方の負担を減らせるのはとても良いことです。
これから、メドテックはますます成長することが見込まれています。
成長にともない、メドテックは医療の分野でなくてはならないものとなるでしょう。