はじめに
専門職の中でもエンジニアはセカンドキャリアとして人気を集めています。
IT業界の拡大化にエンジニアの供給が追い付いていないため、慢性的な人手不足が見られるからです。
未経験からエンジニアを始めるのにはさまざまな方法がありますが、転職後すぐにエンジニアとして企業で活躍したいのであれば、ある程度自分でスキルをつけることをおすすめします。
転職の際にエントリーシートのほかにポートフォリオがあると望ましいでしょう。
今回はエンジニアのポートフォリオについてさまざまな視点で説明していきます。
エンジニアのポートフォリオとは
ポートフォリオとは、実績や能力を証明するための資料です。
一般的にはデザイナーが就職・転職に使用することや営業資料として作成するものですが、近年ではエンジニアも名刺のような役割で作成するケースが増えました。
エンジニアの業界経験者の場合は、今までに参加したプロジェクトや携わったサービスなどを紹介するのが一般的です。
作品のレベルだけではなく、どれだけのユーザーに利用されたかなどの実績も評価の対象になります。
一方で、未経験者の場合は自身が開発したアプリやWebサイトなどを載せるのが主流です。
コーディング技術がどれほどのものか、どれだけのレベルのものが作れるかということが見られます。
今やポートフォリオはエンジニアの転職には欠かせない資料となっているのです。
エンジニアでポートフォリオが重要な理由
エンジニアの転職でポートフォリオがあるかないかでは、合否にかなりの開きがあると言われています。
特に未経験者からエンジニアを目指す場合は、履歴書や職務経歴書だけでは応募者のレベルを十分に理解してもらえないことも多いため、エンジニア経験者と比較された場合就職でどうしても不利になりがちです。
技術職であるエンジニアにとってポートフォリオは、なぜそれほどまでに重要視されるのでしょうか。
3つに分けて理由をご紹介します。
自身のスキルをアピールできる
何よりも、ポートフォリオを作成することで自身のスキルをアピールできます。
いくら履歴書や職務経歴書でどれだけのコーディング技術がある、作品が作れるとアピールしても実物がなければ説得力はありません。
ポートフォリオに、自分の作ったアプリやwebサイトを載せることで、自分の技術やセンスの裏付けになるのです。
優れた技術と経験値があっても、流通しているサービスの類似品しか作れないエンジニアよりも、未経験でも面白いサービスを生み出せる人材に可能性を見出す企業もあるでしょう。
人気企業のエンジニアの募集にはかなりの応募が殺到します。
その中で未経験者でも人事の担当者の目に留まるためには、スキルの証明となるポートフォリオが必須と言えるのです。
入社後のミスマッチを減らせる
ポートフォリオを用いることで、入社後のミスマッチを減らせるというメリットもあります。
プログラミングは技術のレベルが高ければ良しというわけではなく、ビジネスや業界によって、必要な言語や求めるセンスはさまざまなためマッチングが重要視されます。
また、急速に変化し続けるIT業界ではプログラミングの動向も日々変わっていくために、プログラミングスクールで学んだ技術が企業によってはまったく役に立たないというケースも見られるのです。
そのため、履歴書に使用可能言語やスキルを書くだけではなく、ポートフォリオで自分の作品をまとめることが推奨されています。
応募者がどれだけの技術を持って、どのように活用できるかを企業が一目でわかるために、求める人物像に合致するか否かを判断しやすいのです。
面接のネタになる
ポートフォリオは面接の質問材料にもなり得ます。
面接の資料として、履歴書とともにポートフォリオが用いられるケースがあります。
その際、工夫した点や苦労した点などをあらかじめ考えておくことで、面接のネタにできるのもポートフォリオが重要視される一つの理由です。
企業がエンジニアに聞きたいことは、どれだけのものが作れるか、使用可能言語はどれかだけではありません。
作品の作成意図もエンジニアを評価するうえでとても重要なポイントなのです。
なぜこのサービスを作ったのか、自分の意思をどのように反映したか、どんなユーザー層に向けてどのような狙いがあるのかをなど、作品に対しての意図をさまざまな面から言語化できるようにしておくと良いでしょう。
エンジニアのポートフォリオ作成方法
エンジニアにとってポートフォリオは、自らの技術を証明するだけのものではなく、企業とマッチングを図ることや面接の判断材料となる非常に大切な資料です。
実績を持たない未経験者こそ、力を入れて作成することで合格率が大きく上がるでしょう。
しかし、ポートフォリオを作るといっても、どれほどのレベルになれば作れるのか、またどこから手をつければ良いかわからないという方も多いでしょう。
そこで、ここからは一般的なポートフォリオを作成する流れについて説明します。
アプリやプログラムの作成
まずは技術を証明するために、アプリやプログラムを作成しましょう。
当然、ただなんでも作れば良いというわけではありません。
希望する企業が求めるサービスに適した言語を使うことが望ましいですが、自分の得意なものを使用して最大限の技術を発揮するのも良いでしょう。
作成する際は、CRUDが備わっているかどうかを意識してください。
CRUDとは、永続的なデータベースを作成する際に不可欠な要素の、以下4つの頭文字を合わせた造語です。
・データの作成(Create)
・読み出し(Read)
・更新(Update)
・削除(Delete)
これらがあることで、システムのデータや管理が初めて自在にできると言われています。
この4つを満たしていれば、それ以上の複雑な機能は求められないので、シンプルで実用的なものを作成しましょう。
ソースコードを公開
アプリを作成して自分の技術を証明したら、次にソースコードを公開することをおすすめします。
ソースコードとは、プログラミング言語をはじめとするコンピュータへの指示や一連の処理手順などを、プログラミング言語によって文字データの羅列として表記したもののことです。
いわば、ソースコードの公開は自分の作品のレシピと材料を明かすようなものと考えてください。
そうすることで、担当者にスキルレベルを明確に伝えられるでしょう。
ソースコードを公開する際は、GitHubというプログラムコードの保存や公開無料でできるプラットフォームを用いるのが一般的です。
READMEというGitHub 内で作成できるファイルにアプリやWebサイト開発の意図がわかるように概要や目的、ターゲット層などを書いておくと、システムの取り扱い方法のシェアが容易です。
スキルシートの作成
ソースコードをGitHubで公開し自分のスキルを証明したら、スキルシートを作成してください。
スキルシートは作成した成果物やスキルをA4サイズ1~2枚程度の情報量を目安にまとめるものです。
そのほかには、今までの職務経験、基本的な自己紹介から自分の習得言語、使用可能なツール、開発実績などを記載するのが一般的です。
実際のスキルの羅列だけでも構いませんが、応募する企業の募集内容に沿った技術をフォーカスできていればなお良いでしょう。
未経験の場合は、現在習得中のツールやこの先やりたいことなどを記述すると、伸びしろとやる気をアピールできます。
履歴書と重複しないようならば、最後に自己PRを掲載することで仕事に対するマインドや人柄も企業に伝えられます。
ポートフォリオ公開
成果物や自分の経歴を載せたスキルシートの準備ができたら、ポートフォリオとあわせて早速公開しましょう。
採用担当者が確認できれば後悔するサイトはどのようなものでも構いませんが、載せる場としてWantedllyという求職サイトをおすすめします。
Wantedlyは転職エージェントではなく、転職サービスを謳うサイトであり、エージェントを介さず自ら企業を探しアプローチするスタイルが特徴です。
応募前に企業と気軽にコンタクトできる、SNSと連携できる、価値観がマッチする企業からスカウトが直接来るなどのメリットがあり、現在のライフスタイルに合った独自のサービスは「転職SNS」と称されるなどして注目を集めています。
履歴書不要、スーツ不要で、堅苦しい今までの習慣を飛び越えてありのままの姿で転職活動ができるサービスをぜひ覗いてみてください。
エンジニアのポートフォリオを作成する際の注意点
基本的なポートフォリオの作成方法について説明しました。
サービスを作成してから、使用したツールを公開し、さらにスキルシートで自分のプロフィールを開示するのが大まかな流れです。
しかし、ポートフォリオは作れば良いというわけではありません。
イマイチな出来にならないためにエンジニアに注意してほしいポイントがあります。
採用を後押ししてくれる強力なポートフォリオにするためには、以下の3点を心がけるようにしてください。
可読性の高いソースコードにする
ソースコードを可読性の高いものにしましょう。
ソースコードをきれいにしていれば、もし後からバグが起きるなどのトラブルがあってもメンテナンスが容易になります。
また、企業が見た時も整然としたソースコードであれば、パッと見てどのような意図で制作されているか理解できるために評価がされやすくもなるのです。
可読性の高いコードにするためには、コードなるべく簡潔にして、ほかの行への依存や参照を減らすと効果的です。
また、情報度が多く自由度の低い構文を、なるべく共通認識通りに使用することで、情報密度が高いコードをミスリードなく使用できるでしょう。
個々が情報を絞り出さないでも解読できる、読み手に判断を委ねないシンプルなコーディングを目指してください。
独自性を持たせる
コーディングにはシンプルさが求められますが、作品には独自性を持たせてください。
既存のサービスやWeb上にあるポートフォリオの見本をコピーして、コーディングを少し変えただけの作品をポートフォリオに載せる人が見受けられます。
そのような模造品で作られた作品には個性がなく、作品の制作意図も感じられません。
有名なサンプルコードは、採用担当のエンジニアであれば概ね把握しているため、Web上のサンプルを加工することは特に避けるべきです。
ポートフォリオは自分の個性と技術と独創性を訴求するための資料です。
ありきたりなものと企業に判断されないためにも、なるべく実力でできるオリジナルの作品を作成して企業の目を惹く工夫をしましょう。
複雑にしすぎない
作品自体を複雑にしすぎないように心がけてください。
独自性を追い求めるあまり、システムが複雑化して、企業に作成意図が伝わりづらくなるケースもよく見受けられます。
大衆が求めるのは、使いやすくわかりやすいサービスです。
また、企業も未経験者には最初から高度な技術は求めておらず、最低限の技術があるかどうかを確認するためにポートフォリオの提出を求めているということも忘れないでください。
企業の採用担当者も限られて時間で多くの志願者のポートフォリオを確認するために、アニメーションなどの凝った演出よりも、一目でわかるもののほうが評価を得やすいでしょう。
シンプルな作品を作成することで、企業にスキルとセンスを伝えられるのです。
ポートフォリオは作成して終わりではない
ポートフォリオは、作成すれば終わりの単なる作品ではありません。
定期的にメンテナンスをして、作成した成果物がエラーやバグがなく、正常に動作するかどうかを確認することも忘れないようにしてください。
サイトやアプリを実際に公開して、ユーザーに使用してもらうのも良いでしょう。
さらに、サービス公開後にユーザーの声を聞き、良かった点だけでなく、改善してほしい点や付帯してほしい機能などの意見を取り入れてサービスの改善に役立てるのもおすすめです。
また、面接で作品について聞かれた際、どんな質問にも答えられるように準備してください。
作成意図だけではなく、訴求したいユーザー層やエラーが起きた時はどのように対処するかなどの質問もよく見受けられるため、回答を用意しておきましょう。
まとめ
未経験者からエンジニアを目指す際、企業に受け入れてもらう際にはポートフォリオを添付が求められるケースが増えています。
ポートフォリオはスキルを証明するために欠かせない資料です。
未経験者でもより良い環境や条件でエンジニアとしてキャリアをスタートさせたいのであれば、即戦力として働けることをアピールしなければなりません。
また、実際にサービスを一から作ることでプログラミングスキルを体系的に学べ、自分に適性があるかも判断しやすくなるでしょう。
単純なもので構いませんので、自分だけのサービスを作り出してください。