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・海運業界の特徴
・海運業界の各大手企業の特徴
・海運業界の現状・将来性
・海運業界について理解を深めたい人
・海運業界の各大手企業の特徴を知りたい人
・海運業界を志望している人
はじめに
将来スケールが大きい仕事に携わるため、学生時代に「語学の勉強に力を入れた」という就活生の人もいるでしょう。
そういった場合は、海外との交易が盛んな海運業界がおすすめです。
本記事では、海運業界の概要や向いている人、求められる力について解説していますので、ぜひ参考にしてください。
【海運業界とは】海運業界とは
業界研究は、まずその業界の概要を掴むところから始まります。
大まかな仕事の内容を把握し、実際に興味のある部分をピックアップしていくことが大切です。
では、海運業界とはどのような業界なのか、事業内容や市場規模、就職難易度、ベンチャー企業の分布から見ていきましょう。
- 事業内容
- ビジネスモデル
- 市場規模
- 就職難易度
- 海運業界の倍率・人気度の実態
事業内容
海運業界と呼ばれる分野での主な事業内容は、船を用いた輸送事業です。
中身の内容に関わらず、コンテナなどの物資を運ぶ海上輸送がメインになります。
日本国内の輸送は内航海運、輸出入など海外との交易による輸送は外航海運と分けられており、陸地を海に囲まれている日本にとってはどちらも欠かせない仕事です。
コンテナ船のほかにも、石油を運ぶタンカーや液化ガスを運ぶLNG船、穀物船やケミカルタンカーなど、運ぶものに合わせた船が用意されていることも多くあります。
国内外の流通において、大量の物資を運べる貨物船が重宝されているのです。
また、輸送業のほかに船の貸し出しや不動産事業、貨物の種類ごとの専用ターミナルの設置、カーボンニュートラルの推進などの事業を行っている企業もあります。
ビジネスモデル
海運業界は、船舶を使って大量の貨物を輸送し、運賃収入を得るビジネスモデルが基本です。
石油や穀物などを輸送する「トランスポート型」、コンテナで定期的に運航する「コンテナ輸送型」、特定企業と長期契約を結ぶ「契約輸送型」などがあります。
さらに、倉庫管理や陸送も含めた一貫物流を提供する「ロジスティクス型」や、船舶を貸し出す「オーナー型」なども存在します。
最近では、環境対応やDXの進展により、LNG燃料船の導入やAIによる運航最適化など、新たな収益モデルへの変革も進んでいます。

市場規模
現在、海運業界の市場規模は4.9兆円と言われています。
コロナ禍により一時は売上が下がったものの、これを契機にコンテナ船の運賃が高騰し、異例の高収益を記録しました。
売上高が5,000億円を超える大手企業は3社あり、内2社が1兆円を超える売上を出しています。
また、日本国籍の海運企業の船腹量は世界の11.4%を占めており、ギリシャ、中国に次いで第3位です。
船腹とは、船に貨物をどれだけ載せられるかという能力を表す言葉であり、船腹量はその国がどれだけの船を保有しているかを指しています。
さらに、日本が海外と行う貿易において、海上輸送が占める割合は99.5%です。
国内の海運業界が持つ輸送能力の高さとスケールがよくわかる数値と言えるでしょう。
就活難易度
海運業界に従事する人の平均年収は、935万円と言われています。
これは、ほかの輸送系の業界平均と比べ高水準に位置している数値です。
給与が高くやりがいのある仕事となれば人気の業界と言えるため、その分就活難易度は高いと考えられます。
また、業界の特性上、海外の人たちと関わる仕事が多いです。
そのため、就活では英語をはじめとする語学力の高さも評価の対象に入ります。
場合によっては中国語やフランス語、ポルトガル語といった英語以外の言語の習得が求められるため、スキル面でも就職の難易度が高い業界と言えるでしょう。
業務の性質やスケールから、責任感の強さなど人柄の面でも求められるものが多いため、就活でのアピールポイントはよく考える必要があります。
海運業界の倍率・人気度の実態
海運業界は就活市場において表面的な知名度こそ高くないものの、一定層の学生にとっては少数精鋭で高収入、グローバルに働ける、社会インフラを担う仕事として高く評価されており、実質的な人気は根強いです。
大手企業は採用枠が限られている上、応募者は業界研究を十分に行っている本気志望の学生が多く、倍率としては商社やインフラ業界に匹敵するほどの高さになることもあります。
特に外航海運を中心とする企業では、書類選考から高い論理性や明確な志望理由が求められ、選考を突破するには専門用語や事業理解のある程度の深さが問われます。
倍率の高さは数値的なもの以上に、志望者の“質”が高いことによる難易度の上昇と考えるべきです。
【海運業界とは】海運業界と造船業界の違いとは?
海運業界と造船業界は、いずれも“船”を扱う仕事という共通点がありますが、その役割・構造・キャリアの中身は大きく異なります。
海運業界は物資や人を「運ぶ」サービス業であり、造船業界はその船を「つくる」製造業です。
両者は連携する存在ではあるものの、就活の場では明確に区別して理解することが不可欠です。
ここでは、両業界の違いをビジネスモデル・年収・職種内容の観点から比較し、志望動機の設計で混同を防ぐためのポイントを解説します。
【海運業界とは】海運業界の大手企業5社
海運業界の大手業界についても、ある程度詳しく理解しておく必要があります。
あなたが受ける企業はこの中にないかもしれませんが、大手企業について理解していれば、就活において業界知識など問われた際に対応できるので、簡単にで良いので確認していってください。
- 日本郵船
- 川崎汽船
- 商船三井
- 飯野海運
- NSユナイテッド海運
日本郵船
日本郵船は「Bringing value to life.」を企業理念に掲げている企業です。
航空運送事業やエネルギー事業、不動産業など多岐にわたる業務を行っている企業です。
中期運営計画に沿って着実な成長を目指している企業であり、総合物流企業の枠を超え、中核事業の進化と新規事業の成長で未来に必要な価値を競争することを目標としています。
また、明確な財務指標や非財務指標を持っているのも大きな特徴であると言えます。
川崎汽船
川崎汽船は陸上運送や航空運送など幅広い物流サービスを提供している企業です。
海運業を主軸とする物流企業として、人々の豊かな暮らしに貢献することを目標としており、全てのステークホルダーから信頼されるパートナーとしてグローバル社会のインフラを支えることで、持続的成長と企業価値向上を目指している企業です。
顧客を第一に考えた、安全で最適なサービスの提供を大切にしているのが特徴であり、たゆまない課題解決への姿勢や専門性を追求した、川崎汽船ならではの価値の提供なども大切にしているのが大きな特徴であると言えます。
求める人材としては、新しい価値を提供できる人材、思考力がある人材、柔軟性がある人材などが挙げられます。
商船三井
商船三井は海外拠点を多く持っている企業です。
資源やエネルギー資源などの物資輸送をメインとしていますが、モーリシャス南東部のマエブールでNGOが運営する学校を支援するなど、さまざまな業務を行っています。
エネルギー事業や製品輸送事業など、他にもさまざまな業務を行っており、海外にも豊富な拠点を持っているのが大きな特徴であると言えるでしょう。
飯野海運
飯野海運は1899年7月に設立された企業であり、安定して収益をあげている企業です。
特に力を入れているのが外航海運業です。
海運業と不動産業、両輪のビジネスモデルを持っており、世界経済の拡大に合わせて成長を続けています。
海運業はもちろんのこと、市況の変化が少なく安定的な収益を確保できる不動産業を両輪としているので、非常に安定しつつもダイナミックな運営を続けている企業であると言えます。
いずれにおいても貨物の輸送やビルの賃貸のみにとどまらず、それらに関連する船舶やビルの管理など事業を一貫して行うことで、質の高いサービスを提供しているのが大きな魅力と言えます。
NSユナイテッド海運
NSユナイテッド海運は人を育てることに重きを置いており、仕事を通して人材の育成に注力している企業です。
原料やエネルギー資源の輸送だけではなく、さまざまな海運サービスを行っています。
鉄鋼原料輸送サービスや資源エネルギー輸送など、豊富な取り組みを行っているのが大きな特徴であると言えます。
また、内航海運事業にも取り組んでおり、効率と安全を追求している企業の一つです。
「海難事故ゼロ」を命題とし、それぞれの顧客に良質なサービスを提供するのはもちろん、地球環境保全の活動の推進にも取り組んでいます。
「安全の取り組みの4項目」を基軸とした安全運行に最大限の努力をしているのも特徴の一つであると言えるでしょう。
【海運業界とは】海運大手5社の違いを比較
本セクションでは、5社のビジネスモデルや社風、年収や働き方までを多角的に比較し、自分の志向性にマッチする企業を見極めるヒントを提供します。
志望動機作成や面接対策にも活かせる情報を網羅しています。
- ビジネスモデル比較
- 社風・働き方・年収の違い
- 海運5社比較チャート(成長性/安定性/グローバル度)
- 大手5社の内定率
大手5社ビジネスモデル比較
海運大手5社は、いずれも国際海上輸送に関わる企業ですが、扱う貨物や収益構造、リスクの取り方に違いがあります。
日本郵船はLNG船・自動車船など高付加価値な分野で安定した成長を遂げており、堅実型のリーダー企業。商船三井はエネルギー・ばら積み輸送で市況に左右されるものの、高収益性を誇ります。
川崎汽船は技術開発や環境対応の先進性が強みで、スピーディーな意思決定が特徴です。NSユナイテッド海運は鉄鋼・資源などの重量貨物を特化して扱い、荷主との長期契約を通じて安定性を確保。
飯野海運はLPG船やケミカルタンカーを軸に、ニッチ領域で着実にポジションを確立しています。
自社船の保有方針、航路展開、事業領域の違いを比較し、自分の興味や強みにマッチした企業を見極めましょう。
社風・働き方・年収の違い
社風や働き方の違いも、海運業界の企業選びにおいて非常に重要です。
日本郵船は伝統を重んじる組織で、階層的ながら丁寧な育成体制があり、安定志向の人に向いています。
商船三井は若手でも海外駐在のチャンスがあり、グローバルに挑戦したい人には理想的な環境です。
川崎汽船はフラットな組織でスピード感を重視しており、自ら裁量を持って動きたい人に合うでしょう。
NSユナイテッド海運は実直なカルチャーが根付き、特定荷主との深い関係構築を大切にする安定志向型。
一方、飯野海運は少数精鋭の組織で若手でも多くの経験を積める環境があり、環境対応にも積極的です。
年収に関しては、海上職では各社とも1000万円近く、陸上職でも30代で700〜900万円と、業界全体で高水準を維持しています。
海運5社比較チャート(成長性/安定性/グローバル度)
| 項目 | 日本郵船 | 商船三井 | 川崎汽船 | NSユナイテッド海運 | 飯野海運 |
|---|---|---|---|---|---|
| 成長性 | ◎ LNG・自動車船で堅実成長 | ◎ 不定期船・エネルギー輸送で高収益化 | ◯ 技術革新と効率経営で追随中 | ◯ 鉄鋼・資源輸送に特化し安定成長 | ◯ LPG・ケミカル船などニッチ分野で拡大中 |
| 安定性 | ◎ 長期契約多数で業界随一の安定性 | ◯ 多様なポートフォリオで市況リスクを分散 | △ 市況依存度が高くリスクも大きい | ◎ 特定荷主との取引が多く収益安定 | ◯ 中堅企業ながらリスク管理に注力 |
| 年収(目安) | 海上職:1000万超 陸上職:800〜900万円 |
海上職:1000万超 陸上職:800万円前後 |
海上職:900万〜 陸上職:700〜800万円 |
海上職:900万前後 陸上職:700万円前後 |
海上職:800〜900万円 陸上職:650〜750万円 |
| 社風 | 伝統と安定、階層的で丁寧な育成文化 | グローバル志向、挑戦を評価する文化 | フラットでスピード重視、自走型人材歓迎 | 実直で保守的、安定志向の職場環境 | 柔軟性・裁量の広さが特徴、少数精鋭 |
| グローバル度 | ◎ 世界中に拠点、海外駐在の機会も多数 | ◎ 海外事業主体、語学・海外志向が活きる | ◯ 技術・環境対応での国際展開あり | △ 国内中心だが外航契約も一部あり | ◯ LPG船などで海外運航の実績あり |
大手5社の内定率
海運大手5社の内定率は、いずれも業界全体の狭き門を象徴するような難易度の高さがあります。
特に日本郵船・商船三井・川崎汽船の「海運御三家」は、ES通過率が10〜20%前後とされ、面接やGDも含めた多段階選考が一般的です。
加えて、選考では業界研究の深さや国際感覚、論理的な志望理由が重視されるため、総合商社や外資系企業と併願するような優秀層が集中しやすい傾向があります。
一方で、NSユナイテッド海運や飯野海運は採用人数自体がさらに少なく、年によっては若干名のみの募集になることも。
募集枠が狭い分、応募者の本気度や企業への理解度がより問われる選考になります。
「なぜこの会社なのか」「他社ではなくこの社に惹かれた理由」を明確に語れることが、5社すべてに共通して内定獲得の鍵となります。
【海運業界とは】海運業界の現状・課題
海運業界の大手企業は、日本郵船と商船三井、川崎汽船の3社です。
2017年には、この大手3社がコンテナ船事業を統合し、オーシャンネットワークエクスプレス、略称ONEを設立しました。
大手企業が持つノウハウや資産、人材を相互に掛け合わせることで、世界に対する競争力を高めるのが狙いです。
日本国籍の企業といっても、海運業界の競合は国内企業だけではありません。
ほかにも世界全体でさまざまな目的により、企業同士のM&Aが行われています。
海運業界は海外の企業とやり取りしている分、事業においても対外的な評価においても世界情勢の影響を受けやすい業界です。
業界に従事する側もそれを理解し、積極的に情報を集め、柔軟に対応していく必要があります。
- コンテナ不足
- 燃料価格の高騰
- 環境問題への取り組み
- グローバル物流の要としての重要性
- 環境規制の強化と脱炭素の推進
- デジタル化と自動運転技術の導入
- 人手不足と高齢化
- 地政学的リスクと自然災害
コンテナ不足
海運業界の現状を厳しくしている要因として、コンテナ不足による海上輸送費の高騰が挙げられます。
これまで、世界で利用されているコンテナの9割は中国で製造されていました。
そのため新型コロナウイルスによる感染症が拡大してからコンテナの製造量が減少し、新しいコンテナの購入が難しくなってしまったのです。
人手不足によりコンテナ回転率も下がり、現在でも海上輸送費の高騰が続いています。
これにより、海運大手3社の収益は好調だったものの、輸入に頼っている製品の長期的な物価上昇など消費者への影響が懸念されている状態です。
食料品などの生活必需品や嗜好品に留まらず、製造業のための原料価格が高くなるなど海運業界の動向が他業界に与える影響も大きいと言えるでしょう。
燃料価格の高騰
船舶を動かすための燃料価格の高騰は、海運業界における現状の課題のひとつです。
大型タンカーなどの巨大船舶における1日の消費燃料は、100トンと言われています。
2022年の10月から12月にかけて、重油1トンあたりの価格は95,980円でした。
つまり、1日船舶を運行すると、約960万円消費することになります。
燃料価格は、採掘している地域や輸送経路を含め否応なくさまざまな海外情勢の影響を受けて変動する数値です。
そのため、各海運業界企業はいかに燃料消費を抑え運航できるかに重点を置き、各種業務を進めています。
業界内の企業にとっても高いコストになるうえ、輸送された製品の価格にも反映されるため、物価高に影響を与えてしまう点も考慮しなければなりません。
環境問題への取り組み
近年、世界各国で環境保全に対する関心が高まっており、海運業界への評価にも影響しています。
これに対し、IMOすなわち国際海事機関は、船舶からの温室効果ガス及び硫黄酸化物・窒素酸化物の排出削減、バラスト水規制管理条約などを採択しました。
地球温暖化や大気汚染の軽減、海洋汚染の回避などを目的としており、各企業は船舶の性能向上やメンテナンスによる達成を目指しています。
たとえば、「排ガスから粒子物質を除去するためのセラミックフィルターを採用する」「プロペラの研磨や船体の洗浄によって推進力を維持し燃料の使用を抑える」などの取り組みが特徴的です。
このように、海運業界においては大気や海洋を中心とした環境問題への取り組みも活発に行われています。
グローバル物流の要としての重要性
海運業界は、世界貿易量の約9割を担う重要なインフラであり、資源・エネルギー・食品・製品などの大量輸送において欠かせない存在です。
特に日本のような資源輸入国では、国内物流の多くも海運に依存しており、国民生活や産業活動を支える基盤となっています。
新型コロナウイルスや国際紛争などによる物流混乱を通じて、安定的な海上輸送の重要性が再認識されました。
今後は港湾インフラの整備や国際協調、輸送の効率化が一層求められ、海運業界の持続的な運営体制の強化が必要とされています。
環境規制の強化と脱炭素の推進
海運業界では、国際海事機関(IMO)を中心に温室効果ガスの排出削減に向けた国際的な規制が強化されています。
具体的には、硫黄酸化物(SOx)排出規制、EEXI(エネルギー効率指標)やCII(炭素強度指標)といった新たな評価制度も導入され、船舶の省エネ化が急務となっています。
その中で、LNGや水素、アンモニアなどの代替燃料を活用した次世代船舶の開発が進められています。
一方で、こうした技術革新に伴うコストの増加や対応の遅れが競争力低下を招くリスクもあるため、各社の戦略的な環境対応が将来の差別化要因となっています。
デジタル化と自動運転技術の導入
海運業界でもデジタルトランスフォーメーション(DX)が加速しており、AIやIoTを活用した船舶運航の最適化や、安全監視の高度化が進んでいます。
特に、自動運航船や遠隔操作による船舶運用の実証実験が各地で進行しており、将来的には省人化や労働負担の軽減、さらなる安全性向上が期待されています。
また、ビッグデータを活用した貨物追跡や需要予測の精度向上など、物流効率の最大化にも寄与しています。
しかし一方で、技術導入に対応できる専門人材の確保や、サイバーセキュリティ対策、既存システムとの統合といった課題も浮上しており、継続的な投資と育成が求められます。
人手不足と高齢化
海運業界、とくに内航海運では、船員の高齢化と若年層の採用難が深刻化しています。
厳しい労働環境や長期間の船上生活が敬遠される傾向にあり、就業者数は年々減少。
船舶の運航に支障をきたす場面も出てきています。
こうした背景から、国や業界団体は労働環境の改善や処遇向上に取り組んでおり、近年ではDXの推進や自動化技術の導入を通じた業務負担の軽減も模索されています。
また、業界の魅力を発信する広報活動や、育成プログラムを整備することで若年層の呼び込みを図っているものの、根本的な人材定着には働き方改革の推進が欠かせません。
地政学的リスクと自然災害
海運業界は国際的な政治・自然環境の影響を受けやすく、地政学的リスクや自然災害による輸送の混乱が大きな課題となっています。
たとえば、スエズ運河での座礁事故やパナマ運河の水位低下による通航制限は、グローバルサプライチェーンに甚大な影響を与えました。
加えて、気候変動による台風や洪水などの自然災害リスクも年々増加しています。
これに対処するため、輸送ルートの多様化や運航リスク管理体制の強化が求められており、港湾インフラの耐災害性の向上や保険制度の見直しなど、多方面からのリスク分散策が急務です。
【海運業界とは】海運業界の将来性
次に海運業界の今後の見通しについても詳しく紹介します。
面接においては業界研究をしっかり行っているかを確認されることも多いです。
しっかりと海運業界についてリサーチを行っている、モチベーションが高い人物であるということをアピールするためにも、簡単におさらいしておきましょう。
- DX化の進行
- 業界再編と合併
- 物流量の増加
DX化の進行
海運業界の今後の見通しとして、DXの進行がますます重要なテーマとなっていることが挙げられます。
船舶の管理や貨物の追跡においてAIやIoT、ビッグデータの導入が加速しており、これにより業務効率の向上やコスト削減が実現されます。
AIを活用した航路の最適化や、IoTデバイスを用いた船舶の状態監視が一般化しつつあるのです。
また、ビッグデータ解析により荷物の動きや需要予測をより正確に行うことができるようになりつつあります。
これらのデジタル技術の導入により、海運業界はさらに迅速かつ効率的に市場環境に対応できるようになるでしょう。
業界再編と合併
業界再編と合併もトレンドの1つといえます。
経済的な側面から、大手海運会社の統合や合併が進んでいるのです。
これにより、規模の経済から企業競争力が一層強化されることが期待されています。
統合や合併によって企業は資源を集約し、効率的な運営を実現できるようになるからです。
また、グローバルなネットワークの強化による顧客へのサービス提供がより迅速かつ効果的になります。
例えば、大手企業同士が連携することで運行スケジュールの最適化や物流コストの削減も図られます。
さらに、合併後の企業は新たな技術や設備への投資を行いやすくなり、長期的には成長戦略を推進する上で有利な立場に立てるでしょう。
物流量の増加
物流量が増加することも見逃せないポイントの1つです。
特にコロナ禍以降、オンラインショッピングの利用が急増し、これにより海運を利用する物流の需要が大きく拡大しました。
さらに、越境ECの台頭による国際的な物流の需要も増加しています。
消費者が世界中から商品を取り寄せることが一般化する中で、海運業界はその物流を支える重要な役割を担っているのです。
今後もこのトレンドが続くと予測され、海運業界の持続的な成長が期待されます。
また、物流量の増加に対応するために船舶の大型化なども進められています。
船舶を大型化することで効率的な輸送が可能となり、さらに多くの荷物を迅速かつ安全に運ぶことができるようになるのです。
【海運業界とは】海運業界の業種
海運業界の業種は、船舶を用いて何を輸送しているかによって分かれています。
市場で消費される原料や製品のほか、客船として人の移動を助けるのも海運業界の仕事です。
また、なかには海上輸送以外の事業にも力を入れている企業もあります。
海運業界の業種について、以下で詳しく見ていきましょう。
- 資源輸送
- 製品輸送
- エネルギー輸送
- ロジスティクス
- 客船
- フェリー・RORO船輸送
- 内航海運(国内輸送)
- タグボート業
- 船舶管理業
- 海難救助・サルベージ業
- 湾岸運送・通関・荷役
資源輸送
海運業界の中でも市場に対して特に影響力が強い業種は、製品の原材料を輸送する資源輸送業です。
鉄鉱石や石炭といった鉱物、小麦や大豆、トウモロコシなどの穀物といった多種多様な資源をドライバルク船、別名「ばら積み船」と呼ばれる船舶によって日本へ輸送しています。
この船舶は、梱包されていない貨物を運びやすいように設計された船です。
また、複数の資源を同時に輸送できる船舶もあります。
ほかにも木材を運ぶ木材専用船や、プラスチックの原料を運ぶケミカルタンカーなどが使用されており、用途に合わせた多様な船舶が使用されているのです。
国内に工場などの生産拠点を構える多種多様な産業の原材料を輸送しているため、あらゆる産業を支えている業種と言えるでしょう。
製品輸送
消費者の目に見えやすい形で市場に影響を与えるのは、すでに完成した製品を運ぶ製品輸送業と言えるかもしれません。
この業種は、さまざまな工業製品、一般消費財を輸送しています。
具体的には、自動車を運ぶ自動車船や、日用品や電化製品を運ぶコンテナ船がこれにあたる船舶です。
自動車船は、一度に500〜1,500台の船を運ぶことができ、国産の自動車の輸出、海外産の自動車の輸入などに活躍しています。
一方のコンテナ船は、一般的な貨物を運ぶのに広く活用されている船舶で、主にスチール製の巨大なコンテナに製品を積み込んで輸送します。
市場の動向に応じてさまざまな物資を輸送するため、それぞれの製品に必要な輸送ニーズや物流パターンに対応しサービスを提供している業界と言えるでしょう。
エネルギー輸送
工場などの製造業にも、一般的な消費者にとって馴染み深く重要な物資を運ぶ業界として、エネルギー輸送業界が挙げられます。
自動車や飛行機など移動手段の燃料源や、私たちの生活に欠かせない電力・石油・LPガス・天然ガスなどのエネルギー資源の輸送を担っている業界です。
現在では非常に重要な事業ですが、今後化石燃料と呼ばれるエネルギー資源は枯渇していくと考えられています。
そのようなエネルギー資源の枯渇化に伴い、海底油田などの新しい海洋資源の開発・拡大に取り組んでいる企業も少なくありません。
液化天然ガスを運ぶLNG船や、石油を運ぶオイルタンカーなどが用いられています。
一度海上事故が起きると深刻な海洋汚染を引き起こす可能性があるため、特に環境問題に気を配っている業界とも言えるでしょう。
ロジスティクス
海運業界の企業は、海上輸送事業だけでなく、陸上輸送にも力を入れているところが多いです。
これは貨物の輸出入や管理、輸送経路を一本化したワンストップサービスのニーズに対応するためであり、このような取り組みをロジスティクスと呼びます。
国内にいくつも拠点を持ち、倉庫業や流通加工業なども取り入れることで、それぞれの過程で発生するコストをカットし、自社サービスのシェアを拡大していくのが主な狙いです。
陸上の輸送だけでなく航空輸送も行っており、さまざまな手段を用いてより輸送を効率化する試みが実施されています。
荷主企業の依頼に応じて最適化された輸送サービスを提供する必要があり、また親会社からロジスティクスを任されている子会社でもその立場にとらわれないニュートラルな姿勢を貫くことが求められます。
客船
海運業界の事業には、人の移動に関わる客船事業も含まれています。
大手の海運企業は、BtoBが中心の貨物輸送事業だけでなく、直接消費者と関わるBtoC事業も展開していることが多いです。
近年のコロナ禍により客船事業は衰退気味であるものの、海上輸送事業の増収増益で経営状況が改善したということもあり、コロナ後の需要復活を見越してクルーズ船造船にも意欲的になっています。
国内の港を回る国内クルーズや海外まで出向くクルーズまでさまざまな航路を用いて客船事業が行われており、単なる人の移動だけでなく船での移動そのものがレジャーになるようなサービスを提供しているところがほとんどです。
ただし、国内の港では旅客船用の岸壁が限られており、貨物船用の岸壁を利用することも多く貨物輸送業との兼ね合いが課題のひとつとなっています。
フェリー・RORO船輸送
フェリー・RORO(ローロー)船輸送は、自動車やトラックなどの車両を貨物としてではなく、自走でそのまま船に積み込み輸送する方式です。
フェリーは旅客と貨物の両方を扱い、RORO船は貨物専用であることが多いです。
積み下ろしの効率が高く、物流の迅速化に貢献しています。
近年では、ドライバー不足や環境負荷軽減の観点から、長距離トラック輸送の代替手段として需要が高まっており、陸上輸送と組み合わせたモーダルシフトの中心的役割も期待されています。
内航海運(国内輸送)
内航海運は、日本国内の港と港を結ぶ海上輸送で、建設資材、石油製品、食品、雑貨など幅広い貨物を運びます。
トラックや鉄道に比べて一度に大量の貨物を運搬できるため、物流の効率化と環境負荷の軽減に貢献しています。
とくに離島への物資供給や都市間の中長距離輸送においては、なくてはならない存在です。
しかし現在、船員の高齢化や人手不足が深刻で、働きやすい環境整備や若年層への魅力発信が課題となっています。
タグボート業
タグボート業は、大型船舶が港に入出港する際の操船を補助する業務です。
タグボートは小型ながら非常に高出力で、接岸・離岸時の方向転換や減速を助け、安全な運航を支えます。
狭い港湾や混雑した海域での船舶誘導において不可欠な存在であり、操船ミスによる事故の防止にも寄与しています。
また、悪天候時や緊急時には迅速な対応が求められ、高い操船技術と判断力が必要とされる専門性の高い業種です。
船舶管理業
船舶管理業は、商船や貨物船の保守、点検、運航スケジュールの管理、乗組員の手配、安全・環境基準の順守などを船主に代わって担う業務です。
船主が所有する船舶の運航を円滑かつ効率的に行うために、専門知識を持った管理会社が業務を請け負うケースが増加しています。
近年では、国際規制への対応や脱炭素化の進展に伴い、管理業務の複雑化が進み、より高度な知識やシステム対応が求められています。
海難救助・サルベージ業
海難救助・サルベージ業は、海上事故や自然災害で沈没・座礁した船舶や貨物の引き揚げ、修復、環境保全を担う専門業務です。
高い潜水技術や特殊機材を必要とするため、高度な専門性と緊急対応力が求められます。
また、油流出などの海洋汚染リスクへの迅速な対応も重要な任務の一つです。
国際海運の安全と環境保護を支える役割を果たしており、平時には目立たないながらも非常に価値のある業種といえます。
湾岸運送・通関・荷役
湾岸運送・通関・荷役は、港湾において貨物を船から降ろし、倉庫に搬入・搬出し、輸出入にかかる通関手続きを行う業務です。
港湾労働者やフォークリフト、クレーンオペレーターが連携し、短時間で大量の貨物を処理する高度なオペレーションが求められます。
また、物流システムのIT化が進む中で、データ処理や貨物管理の精度も重要視されています。
海上輸送の最終工程を担う重要な現場であり、国際物流の円滑な流れを支える役割を果たしています。
【海運業界とは】海運業界の職種・仕事内容
就職先を探すためには、業界だけでなく、どのような仕事をするかという職種も重要です。
海運業界の場合は、主に陸上で船舶の運航を助ける陸上職と、実際に船舶に乗り込み海に出る海上職の2つがあります。
それぞれの職種にどのようなものがあるのか、次項から詳しく見ていきましょう。
- 陸上職
- 海上職
陸上職
海運業界の陸上職は、メインの事業である海上輸送を滞りなく進めるためのサポート業務を行っています。
船の整備を行う整備士や仕事を取ってくるための営業職など、船舶の安全を守り海運業界を盛り立てていくのに欠かせない職種です。
陸上職がどのような仕事を担っているのか、それぞれ詳しく見ていきましょう。
事務系
海運業界にも事務職は存在しますが、一般的にイメージされる事務職と比べて専門性の高い業務を扱います。
輸送する貨物の種類や量など、案件ごとに最適な船を手配する船舶調達をはじめ、燃料・気候変動・海賊情報などさまざまな要因を考えながら最適でコストパフォーマンスの良い航路計画を立案する運行管理を手がける職種です。
さらに、BtoB事業における契約に関する業務も行います。
貨物の輸送は1回のスケールが大きく、1つの契約で大きな金額が動きます。
そのため、適切なサービスを提供するにはさまざまな部門の連携が欠かせません。
また、陸上職と海上職が力を合わせて顧客の期待に応えるための橋渡しも役割に含まれています。
なお、港の管理や情報システムの管理なども事務系の部門で行っていることが多いです。
技術系
航行の安全性を守るためには、技術系の職種も欠かせません。
技術系の職種は、新造船のための計画から船価交渉、建造現場での監督業務など業務幅が広いのが特徴です。
主に運行中の船舶の保守を行い、船舶の機能維持や安全な航行のための業務を担っています。
さらには、環境保全のための機能やより効率的な貨物輸送技術の研究など、これからの社会的なニーズに合った技術開発などを行うことも珍しくありません。
海運企業の技術職が船の仕様や搭載機器を決め、それをもとに造船会社が図面を作成し、再度海運企業の技術職が図面を確認して承認した後に新造船を建造します。
船のトラブル解決や保守、新技術開発など、海運業界の技術面の業務を支える重要な職種と言えるでしょう。
営業
海上輸送の業務は、何もせずとも転がり込んでくるわけではありません。
さまざまな企業と契約を交わし、価格など細かな条件を擦り合わせるための営業職が必要です。
海運業界の営業職は、荷主がいる場所に足を運んで諸々の条件の交渉を担当します。
貨物の輸出入を行っている企業の場合、顧客が外国人ということも珍しくありません。
そのため、母語だけでなく英語などの外国語に精通し、海外でも通用するビジネスマナーを身につけることが求められます。
数十年単位の契約期間で数億円という規模の契約もあるため、責任が重くやりがいのある仕事です。
新規契約の獲得のほか、既存契約の更新なども行います。
短期的な利益に飛びつくだけでなく、長期的なスパンで採算性を考える視野と思考力が求められる職種です。
海上職
海運業界の海上職は、メインの事業に直接携わる職種です。
海上職として企業に入社した後は、2年間海技大学校で勉強し海技士免状を取得する必要があります。
実際に海に出てからの業務は24時間体制の3交代制です。
海上職の仕事について、それぞれ詳しく見ていきましょう。
航海士
船の運航の中心となるのは、免許を持った航海士です。
航海士は船の操縦や見張り、航海計画の策定と確認、船体の保守整備、積荷の管理などを行います。
初めは三等航海士として乗船し、3年間従事したのち二等航海士に、さらに5年で一等航海士として業務を行うのが一般的です。
一等航海士になって7年後以降、最終的には船長として乗船します。
三等航海士は、消火や救命設備など有事の初動を左右する機能の整備や、船員の福利厚生に関わる業務がほとんどです。
また、二等航海士は航海計器の観測や海図の確認、改正を担当します。
そして一等航海士は、ほかの航海士や船員への指示や労務管理、貨物の積み下ろしの監督などが主な業務です。
船長はその船の業務すべてに対して責任を負っており、陸との通信や対外的な交渉なども行っています。
機関士
造船などを担当する陸上の技術職に対し、運航中の船舶の整備を行う海上の技術職が機関士です。
船舶のエンジンや発電機、ボイラーなどその船を動かすために必要な機械のメンテナンスや、トラブル発生時の対応を行います。
初めは三等機関士として乗船し、3年で二等機関士に、さらに5年で一等機関士に、そこから7年で最終的には機関長として乗船することがほとんどです。
三等機関士は、空調関連など航行の基幹部分にはあまり関連のない設備の整備を行います。
また、二等機関士は発電機やボイラーなど、船全体の機能に関わる設備の担当です。
そして一等機関士は、ほかの機関士への指示や労務管理、エンジンの整備などを行っています。
機関長は整備関係の業務に全責任を負い、機関士を統括するのが役目です。
【海運業界とは】海運業界に向いてる人3選
就活では自分のスキルや性質を把握し、それに向いている職業を選ぶことが大切です。
もちろん、海運業界にも向き不向きは存在します。
海運業界に向いている人の特徴を知り、自分に当てはまる条件があるか確認してみましょう。
- グローバルな環境で働きたい人
- 縁の下の力持ち的な存在として働きたい人
- 規模間の大きいことに携わりたい人
グローバルな環境で働きたい人
海運業界の主な舞台は国内外をつなぐ広い海洋であり、海外を股にかける仕事です。
そのため、荷主であるクライアントや船舶の乗組員が外国人であることも珍しくありません。
国籍をはじめ、育ってきた文化や信仰する宗教など、それぞれ異なるバックグラウンドを持った人と仕事をしなければなりません。
そのため、異文化への理解が深い人や、自分と異なる考え方の人とも円滑にコミュニケーションが取れる協調性のある人が適性のある人材と言えるでしょう。
また、陸上職であっても海外の人と関わる機会が多いため、国内だけで通用するマナーだけでは足りない可能性があります。
海外で求められるマナーや仕事に興味があり学び続けられる人、グローバルに活躍したい人にこそ向いている業界と言えます。
縁の下の力持ち的な存在として働きたい人
「国内の産業や消費者を支え、縁の下の力持ちとして働きたい」と考えている人は、海運業界に向いています。
周囲を海に囲まれ、狭く資源に乏しい環境ゆえに輸入大国である日本は、外国から購入する資源がなければ存続できません。
そのため、食料品や原材料、エネルギー資源を運ぶ海上輸送がストップすると、日本全体に多大な影響を及ぼすおそれがあります。
このことから、海運業界には社会的なインフラを担う側面があり、日本を支えている業界であると言えるでしょう。
物流が経済の発展にとって重要な存在であると認識し、社会の一員としてそれを支える仕事に興味があれば、適性があると言えます。
また、日々の仕事の成果は、日常的に目に入ることはほとんどないため、「陰ながら誰かの役に立つ働き方がしたい」と望んでいる人にも適しているかもしれません。
規模感の大きいことに携わりたい人
船舶の建造や維持には莫大な金額がかかるほか、海運業界では1つの契約で数億円が動くこともあり、一つひとつの案件の規模感が大きい傾向にあります。
陸路や空路と比べ、船舶には大量の貨物を載せることができるため、スケールが大きくなるのです。
金額の大きさのみならず、契約期間が長いケースもあり、数十年単位の契約も珍しくありません。
また、契約の更新時に次年度の輸送量や収支がほとんど決定してしまうなど、交渉能力も求められる業界です。
そのため、規模の大きい仕事をやり遂げる責任感や遂行力のある人材が適任と言えるでしょう。
1回のミスが大きな損害につながる可能性もあるため、それに怯えて仕事がままならなくなってしまう人には向きません。
ある種の豪胆さが求められる業界でもあります。
【海運業界とは】海運業界に向いてない人3選
海運業界はグローバルでスケールの大きな仕事ができる一方で、人によってはミスマッチとなる特性も持っています。
特に「スピード感を重視する人」「個人プレーで動きたい人」「安定した環境を好む人」にとっては、海運特有の長期志向・集団行動・変化対応力が負担になるケースも少なくありません。
ここでは、海運業界を目指す前に知っておくべき“向いていない人”の特徴を3つに分類して紹介します。
自己分析や企業選びのヒントとして、ぜひ参考にしてください。
- 短期的な成果やスピード感を重視する人
- 独立志向が強く、個人プレーを好む人
- 曖昧な環境や変化にストレスを感じやすい人
短期的な成果やスピード感を重視する人
海運業界の業務は、大型契約や国際物流のプロジェクトなど、完結までに長い時間を要するものが大半です。
1つの航路開拓や設備投資には数カ月〜数年のスパンが必要となり、即時的な成果が求められる環境とは真逆といえます。
評価制度も、短期的な数字よりも中長期のプロセスや関係構築が重視される傾向があり、「すぐに結果を出したい」「早く昇進したい」と考える人にはストレスになりやすいです。
また、成果が見えづらい分、達成感を感じるまでに時間がかかる点もネックになるでしょう。
粘り強く長期的に関係を築くスタンスが求められるこの業界では、持続的な成長にやりがいを見出せるかどうかが適性を左右します。
独立志向が強く、個人プレーを好む人
海運業界は、個人プレーよりもチームでの連携を重視する風土が根付いています。
船を動かすためには、営業・運航・荷主・港湾・海外拠点など多くの関係者と綿密な調整が必要であり、単独行動ができる業務はほぼありません。
また、大手企業が中心となる業界構造のため、安定した組織の中でコツコツと成果を積み上げる姿勢が好まれます。
独立志向が強い人や、自分の裁量で仕事を進めたいタイプにとっては、組織の承認フローや調整コストの多さにフラストレーションを感じやすいでしょう。
将来フリーランスや起業を視野に入れている場合、海運業界のキャリアはやや閉鎖的に映る可能性もあります。
集団の中で信頼を築くことに価値を見出せるかが問われます。
曖昧な環境や変化にストレスを感じやすい人
海運業界は、外部環境の影響を強く受ける不確実性の高い業界です。
為替や燃料価格の変動、戦争やストライキ、天候による遅延など、業務は常に予測不可能な事象にさらされています。
こうした状況に柔軟に対応し、臨機応変に判断・行動できることが求められます。
逆に言えば、「決まった仕事をルーティンで進めたい」「変化の少ない安定した環境で働きたい」という人にとっては、大きなストレス要因になる可能性があります。
さらに、国際物流の現場では、文化や言語の違いによる摩擦も日常茶飯事です。
トラブルが起きても冷静に対処できるストレス耐性や、前向きに変化を受け止める思考がないと、長期的な活躍は難しいといえます。
【海運業界とは】海運業界で求められる力
海運業界の現場で求められる人材の性質だけでなく、必要なスキルについても確認しておきましょう。
スキルに関しては、就活までに磨くことができるものもあります。
海運業界への就職を目指すにあたって身につけておくべきスキルの内容を見ていきましょう。
- 語学力
- リーダーシップ
- 向上心
- 分析力
- 責任感
- コミュニケーション能力
語学力
先述したように、海運業界ではグローバルな環境で英語を使って仕事をする機会が多いです。
日本に籍を置く企業であっても、従業員や取引先には海外出身の人が多くいます。
メールや書類など文書作成時に英語を使うシーンが多く、リーディング力やライティング力が特に強く求められます。
スピーキングについては、最低限の英会話ができれば問題ありませんが、相互理解を心がける姿勢として英語を身につけるための努力をすることが大切です。
特に営業や海上職は海外の顧客や外国籍を持つ乗員、現地の人々とやり取りする可能性が高いため、語学力を高めておく必要があります。
学生時代に留学する、TOEICなど実用的でわかりやすい評価基準のテストを受けておくなどの対策をしてみましょう。
リーダーシップ
海運業界で働くならば語学による交流の円滑化はもちろん、リーダーシップによってバックグラウンドの異なる集団をまとめ上げる力が必要です。
自分と相手の相互理解だけでなく、チーム全体がお互いのことを理解し受け入れることができるよう環境を整えてサポートする力が求められます。
特に狭い船内で対人関係のトラブルが起きると、現場の雰囲気が悪くなりプロジェクト全体に悪影響を及ぼすことになるでしょう。
そのためトラブルを解決してチームの団結力を高める能力が必要とされるのです。
アルバイトやサークルなど、学生時代にチームでリーダーシップを発揮したエピソードなどを取り入れて就活に臨むと効果があります。
チームにとっての緩衝材となる力、マネジメント力や全体を引っ張っていく牽引力などをアピールしてみましょう。
向上心
海運業界で働くならば、常に学び続ける向上心も欠かせません。
海上職として働くためには、船舶職員養成課程を修め、海技免状を取得しなければなりません。
そのため、入社後二年間は学生時代と同じく勉強の毎日になります。
また、資格を得て船での勤務が始まった後も、海外情勢や海上に関する専門知識を身につけなければならないため、向上心が求められます。
もちろん、たとえ陸上職であっても向上心が必要ないわけではありません。
海外情勢や物流の事情は目まぐるしく変化するため、その時々の状況に合わせた事業を進めるためには、船に乗らない人員も情報を取得し続ける必要があります。
技術系の職種は研究・開発を行っている部門もあるため、より新技術へのアンテナを張っておく必要があるでしょう。
分析力
海運業界で働くためには、言われたことをインプットするだけでなく、自分で考えるための分析力や結果をアウトプットする力が必要です。
荷主との契約や造船などは基本的に莫大なお金がかかるため、短期の利益だけでなく数年後の未来まで見通す力が求められます。
「計画している事業のコストは何年で回収できるのか」「今後の市場に与える影響はどれくらいか」など、しっかり見定めて推進しなければなりません。
これには積み重ねられた過去のデータから分析し、増収につながる事業か見極める力が必要です。
そして、それを具体的な根拠をもとに説明する力があれば、チーム内での分析結果の共有が可能になります。
事業全体を見渡す広い視野と分析力、他社を説得できるアウトプットの力が求められるでしょう。
責任感
当然ながら、海運業界で働くにあたっては責任感が重要であると言えるでしょう。
物資と乗務員を安全に運ぶという責任感が非常に重要であると言えます。
時には悪天候に見舞われたり、危険な物質を運んだりすることもあるため、注意が必要ではありますが、責任感がある人ならばこういった苦境も乗り越えることができるでしょう。
コミュニケーション能力
コミュニケーション能力はどのような業界でも求められる能力なので、あえて海運業界で求められるものであると強調する必要もないかもしれませんが、自分が備えているかについては確認しておく必要があると言えます。
特に、国内外さまざまな人とコミュニケーションを取る機会があるので、異文化に対しての理解も必要です。
実際に会って人と話す以外にも、メールや電話などを通じて話すことも多いので、仕事を円滑に進めるために、多少なりともコミュニケーション能力を持っていく必要があると言えます。
これまでさまざまな場面でコミュニケーション能力を発揮してきた人は、積極的にアピールすることができる場合良いでしょう。
【海運業界とは】海運業界の魅力
働きたいと考えている人はすでに理解していることも多いかもしれませんが、より就活へのモチベーションを高めるために、海運業界の魅力についても理解しておきましょう。
海運業界で働くにあたっては下記のような魅力が存在しています。
- 大きい仕事に関わることができる
- 社会に役立っている実感が持てる
- グローバルに活躍できる
- 安定した需要と社会インフラとしての重要性
- 高収入・待遇の良さ
- 技術革新の最前線に立てる
大きい仕事に関わることができる
海運業界で働くことにおける大きな魅力の一つとして、大きい仕事に関わることができるということが挙げられます。
海運業界は市場の規模が大きいため、必然的に大きい仕事に関わる機会が増えます。
よって、大きな規模の仕事を務めたいと考えている人にはぴったりの業界であると言えるでしょう。
また、世界情勢の理解なども重要であると言えるため、社会の勉強などが好きな人にもぴったりの業界です。
社会に役立っている実感が持てる
海運業界は物流のインフラを保つために非常に重要な役割を担っています。
物を運ぶことで社会の役に立っていることを実感することができるのが大きな魅力の一つと言えるでしょう。
給料を「社会に提供した価値を定量的に表したもの」という考え方を持っている人には特に向いている、社会に貢献している実感が持てる仕事です。
目に見えて誰かの役に立っていることを実感できるので、常にやりがいを持って業務を行うことができるでしょう。
グローバルに活躍できる
海運業界は日本以外にも活躍の場を設けることが多いので、グローバルに活躍したいと思っている人材におすすめできます。
外交海運の場合は海外で働くことも多く、グローバルに活躍できるチャンスも数多く得られます。
また、海外で働くに当たっては当然ながら多文化理解や英語力が必要となってくるため、英語力が全くない人はなかなか働くことが難しくなってしまいます。
よって、海運業界を目指す人はある程度TOEICなどで勉強しておくことをおすすめします。
安定した需要と社会インフラとしての重要性
海運業界は、世界の貿易量のおよそ9割を担うインフラ産業として、国際社会における物流の根幹を支えています。
特に、エネルギー資源や生活必需品、工業製品など、私たちの暮らしや産業活動に不可欠な物資を大量かつ効率的に輸送できる手段として、海運の役割は非常に大きいです。
さらに、世界情勢や災害時にも一定の安定性を保てる輸送手段としての強みがあり、景気の影響を受けにくい点も特長です。
社会や経済の基盤を支えるという使命感を持ちながら働けることは、業界で働くことの大きなやりがいにつながっています。
高収入・待遇の良さ
海運業界は、他業種に比べて平均年収が高めに設定されており、特に海上職では収入に加えて充実した手当や福利厚生が魅力です。
航海ごとにまとまった休暇が確保できる長期休暇制度や、食費・住居費がかからない勤務環境なども、経済的な安定に寄与しています。
また、特殊な勤務環境に配慮した保険制度や訓練体制が整備されており、労働者が安心して働ける環境が整っています。
職務の専門性と責任が高い分、正当に評価される報酬体系があるため、高いモチベーションで長期的なキャリア形成が可能な業界といえます。
技術革新の最前線に立てる
海運業界は、近年の環境規制や人手不足への対応を背景に、技術革新が急速に進んでいる分野です。
たとえば、自動運航船や遠隔操縦システムの実用化、AI・IoTによる運航管理の最適化、ビッグデータを活用した航路分析などが実際に導入されつつあります。
さらに、LNGや水素など環境負荷の少ない代替燃料を搭載した次世代船舶も開発が進み、業界全体がカーボンニュートラルに向けて動いています。
社会課題に直結する問題を最先端の技術で解決するという使命感のもと、変化を楽しみながら働ける点が大きな魅力です。
【海運業界とは】海運業界が求める人物像
海運業界は、世界中の物流を支えるグローバルなインフラ産業です。
日々、国際的な環境の中で業務が行われるため、語学力や異文化理解力はもちろん、変化への柔軟な対応力や冷静な判断力が必要です。
さらに、環境規制やデジタル化の進展を背景に、新しい技術や知識を学び続ける成長意欲も強く求められます。
こうした多様な資質を備えた人材が、海運業界では活躍できるとされています。
- グルーバル志向・語学力のある人
- 責任感が強く、冷静に対応できる人
- 柔軟性がある人
- 継続的な成長意欲・技術への関心がある人
グローバル志向・語学力のある人
海運業界では、業務の多くが海外とのやり取りで成り立っており、英語を中心とした語学力が不可欠です。
輸出入業務や国際航路の調整、現地スタッフとの連携など、日常的に多国籍な関係者とのコミュニケーションが求められます。
しかし、単に語学ができるだけではなく、異なる価値観や文化を尊重し、柔軟に協働できる「グローバルマインド」も同様に重要視されます。
国際的なビジネス環境で主体的に動ける人、世界を舞台に活躍したいという志を持つ人にとって、海運業界は非常にやりがいのあるフィールドといえるでしょう。
責任感が強く、冷静に対応できる人
海運業界では、数万トン単位の貨物や船舶を扱うため、一つのミスが大きな損害につながることがあります。
特に海上では天候やトラブルなど予期せぬ事態が頻発するため、常に冷静さを保ち、状況に応じた正しい判断を下せる能力が不可欠です。
また、船舶の運航管理や貨物輸送、港湾業務などでは、チームでの連携と同時に、一人ひとりが自分の役割に責任を持つことが求められます。
プレッシャーのある環境でも確実に業務を遂行し、社会インフラを守るという強い責任感を持てる人材が、海運業界では信頼され、重宝されます。
柔軟性がある人
海運業界では、日々の業務において多くの不確定要素が発生します。
例えば、悪天候や港湾設備のトラブル、国際情勢の変化によって航路が変更されることも珍しくありません。
こうした状況においては、計画通りに物事が進まないことを前提とした柔軟な思考と行動が求められます。
また、各国の法制度や文化の違いに合わせた対応も重要であり、常に変化を前向きに受け入れられる人ほど活躍の幅が広がります。
新たな課題にも積極的に取り組み、チームの中で柔軟に役割を変えながら貢献できる人材は、業界において高く評価されます。
継続的な成長意欲・技術への関心がある人
海運業界は今、環境規制やDX(デジタルトランスフォーメーション)に対応する大きな転換期を迎えています。
AIやIoTによる運航の最適化、遠隔監視、自動運航船の実用化など、技術革新が急速に進んでおり、業界全体が新しい知識や技術への対応力を必要としています。
また、LNGや水素といった環境配慮型燃料の導入も進められており、エンジニアだけでなく、事務・企画職でもこれらの変化に柔軟に対応する力が求められています。
学びを継続し、時代の流れに合わせて自らをアップデートできる人材は、海運業界の持続的発展を支える重要な存在となります。
【海運業界とは】海運業界に就職するためにすべきこと
「海運業界に就職したい」という場合、就活までにやっておくべきことがいくつかあります。
特に重要なのは、業界に関する詳細な情報を集めることです。
また、海運業界で求められるスキルを磨くのも良いでしょう。
海運業界への就職のためにやっておくべきことについて、以下で詳しく解説します。
- 企業・業界研究をする
- インターンシップに参加する
- OB/OG訪問をする
- 資格を取る
企業・業界研究をする
業界・企業研究を行い、業務内容やビジネスモデルなどについて理解を深めましょう。
業界の特徴や、各企業の強み、競合他社との違いなども確認しておくことで、他の就活生とも差別化を図ることができます。
また業界・企業研究は、エントリーシートやグループディスカッション、面接といった選考対策にもつながるため、入念に行いましょう。
業界・企業研究に不安を抱えている方は、ぜひ以下の記事も併せて確認してみてください。
インターンシップに参加する
業界及び企業の理解を深めたい方は、ぜひインターンシップにも参加するようにしましょう。
インターンシップでは実際の業務に即したワークを体験できるため、業界・企業についての理解をより深く理解することができます。
また実際の業務に触れることで、「自分が現段階で通用する部分」と「まったく通用しなく、能力や考え方が不足している部分」なども把握することができます。
加えて実際に第一線で活躍されている社員の方々と交流をすることもできるため、インターネットでは手に入れる個tができないような情報も入手することができます。
OB/OG訪問をする
OB/OG訪問を行い、業界・企業についての理解をより一層深めましょう。
OB/OG訪問では実際に現場で働いている社員の方々のリアルな声や職場の雰囲気、業務の進め方ができるため、インターネットや公開資料だけでは知ることができない情報を獲得することができます。
これらの情報は、「自分が将来その業界・企業で働くか」をより鮮明にイメージすることができます。
またOB/OG訪問で得た情報をエントリーシートや面接時に活用することで、他の就活生と差別化を図れるとともに、志望動機などに説得力を持たせることにもつながります。
資格を取る
海運業界に就職するためには、語学力や海外感度を磨いておく必要があります。
陸上職でも海上職でも、外国籍を持つ人と直接もしくはインターネット上でやり取りすることが日常茶飯事です。
相手は日本語が使えるとは限らず、多くの場合は英語でのやり取りが中心となります。
そして、国籍が違えば文化も異なるため、何が相手にとって失礼にあたるかも学び直さねばなりません。
そのため、英語をはじめとする語学力はもちろん、異なる文化、バックグラウンドを持った人と適切に接するための能力を身につける必要があるのです。
また、海運業界は世界情勢の影響を受けやすいため、世界各地で何が起きているか、国際ニュースやさまざまな媒体から情報を得られるようにしておくと良いでしょう。
適職診断ツールを用いる
ここまで海運業界について詳しく紹介しましたが、果たして自分が本当に海運業界に向いているのかどうかについて疑問を持つ人も多いでしょう。
そこでおすすめなのは、適職診断ツールを用いることです。
プロが選定した質問にLINEで答えるだけで、あなたがどのような仕事に向いているのか、向いていないかなどついて的確に判断してくれます。
自己分析などにも活用できるため、ぜひ気になる方は以下のリンクから登録してみてください。
完全無料で利用できるため、アルバイトをする余裕がない、忙しい方にもおすすめです。
【海運業界とは】海運業界の就活をする上で困ったら
海運業界への就活を進めるうえで、疑問に思うことや困ったことがある場合は就活エージェントを頼るのもひとつの手です。
これまでに多くの就活生を見てきたアドバイザーが、就活の1から10まで一貫してサポートを行ってくれます。
また、内定後の手続きに関するサポートも行っているため、これまで利用してきた就活生からの満足度も高いサービスです。
さらに、面接対策を何度も行ってくれるため、本番も自信を持って臨むことができます。
就活エージェントについて詳しく知りたい方は、こちらからどうぞ。
まとめ
現在、運航にかかる費用の急騰で黒字の海運業界ですが、コロナ禍などの社会情勢に影響されやすく動向が読みにくい業界でもあります。
しかし、輸入大国である日本には欠かせない存在であり、今後もなくなることはない仕事です。
また、世界を舞台に規模感が大きくやりがいのある仕事ができるという特徴もあります。
海運業界に就職するためには、語学やバックグラウンドの異なる相手を理解する姿勢、責任感などが求められます。
業界に関する理解を深め、海運業界への就職を目指しましょう。
