はじめに
大学の講義やビジネス書で、ラテラルシンキングという言葉を耳にしたことはありませんか。
問題解決やアイデア創出に役立つ重要な思考法として注目されていますが、具体的にどのようなものか、どうすれば身につけられるのか、よくわからないという方も多いでしょう。
この記事では、そんな大学生の皆さんのために、ラテラルシンキングの基本から、他の思考法との違い、具体的な例題、そして効果的な鍛え方まで、網羅的にわかりやすく解説します。
ラテラルシンキングの基本概念
ラテラルシンキング、日本語では水平思考と呼ばれるこの考え方は、行き詰まった状況を打破するための強力な武器になります。
私たちは普段、無意識のうちに常識や過去の経験といった枠の中で物事を考えがちです。
しかし、この思考法は、その枠を意図的に取り払い、全く新しい視点から物事をみることで、革新的な発想を生み出します。
これからの時代に不可欠な、創造的な問題解決の第一歩として、まずはその基本的な考え方から学んでいきましょう。
ラテラルシンキングとは何か
ラテラルシンキングとは、ある問題を解決する際に、既存の論理や常識的な思考の道筋からあえて外れ、水平方向に発想を広げていく思考法です。
一つの前提から深く掘り下げていくロジカルシンキングとは対照的に、多様な視点から物事を捉え、これまで見過ごされていた可能性を探求します。
例えば、ある問題に対して、常識的な解決策ではなく、全く異なる分野の知識や突飛なアイデアを結びつけてみる、といったアプローチを取ります。
この思考法の目的は、誰もが思いつくような当たり前の結論ではなく、革新的で創造的な解決策や新しいアイデアを生み出すことにあります。
水平思考の重要性
変化が激しく、複雑な問題が次々と現れる現代社会において、水平思考の重要性はますます高まっています。
この思考法は、新しい製品やサービスを生み出すイノベーションの源泉となり、ビジネスの世界では企業の競争力を左右するほどのインパクトを持ちます。
例えば、ある企業が業界の常識を覆すような新しいサービスを始めた場合、その裏には水平思考的な発想が隠れていることが多いのです。
個人にとっても、ありきたりな発想から抜け出し、ユニークなアイデアを出す力は、学業や将来のキャリアにおいて大きな強みとなります。
水平思考は、現状を打破し、新しい価値を創造するための不可欠なスキルと言えるでしょう。
他の思考法との違い
ラテラルシンキングを理解するためには、他の代表的な思考法との違いを知ることが有効です。
まず、ロジカルシンキング(垂直思考)は、一つの前提から筋道を立てて論理的に深く掘り下げ、唯一の正しい結論を導き出す思考法です。
一方、ラテラルシンキングは、前提そのものを疑い、発想を拡散させて多様な可能性を探ります。
次に、クリティカルシンキング(批判的思考)は、物事の前提や根拠を疑い、本当に正しいのかを客観的に検証する思考法です。
ラテラルシンキングが新しいアイデアを生み出すための発散的な思考であるのに対し、クリティカルシンキングはアイデアを評価・分析するための収束的な思考と言えます。
これらは対立するものではなく、場面に応じて使い分けることが重要です。
ラテラルシンキングのメリット
ラテラルシンキングを身につけると、私たちの思考にはどのような良い変化がもたらされるのでしょうか。
この思考法は、単にユニークなアイデアを生むだけでなく、問題解決のプロセスそのものを効率化し、より質の高い結論へと導いてくれます。
ここでは、ラテラルシンキングを実践することで得られる具体的なメリットを3つの側面に分けて紹介します。
これらのメリットを知ることで、この新しい思考法を学ぶモチベーションがさらに高まるはずです。
新たなアイデアの創出
ラテラルシンキングの最大のメリットは、これまでにない新しいアイデアを生み出す能力が高まることです。
私たちは普段、無意識のうちに常識や固定観念という思考の壁を作ってしまいがちです。
ラテラルシンキングは、その壁を意識的に取り払い、自由な発想を促します。
例えば、ブレインストーミングやマインドマッピングといった手法を活用し、質より量を重視してアイデアを拡散させることで、自分でも驚くような発想が生まれることがあります。
また、全く異なる分野の知識や事例をヒントにすることで、既存の枠組みを超えた革新的なアイデアを創出するきっかけにもなります。
問題解決のスピード向上
一見、遠回りに見えるラテラルシンキングですが、結果的に問題解決のスピードを向上させることがあります。
ロジカルシンキングだけで問題に取り組むと、既存のやり方に行き詰まった際、思考が停止してしまうことがあります。
しかし、ラテラルシンキングを併用することで、行き詰まったら視点を変えてみるという柔軟な対応が可能になります。
多様な角度から解決策の可能性を素早く探り、その中から最も効果的と思われるものを直感的に選択して試してみる、というアプローチが取れるためです。
この試行錯誤のサイクルを高速で回すことが、最終的な解決への近道となるのです。
多様な視点からのアプローチ
ラテラルシンキングは、一つの視点に固執せず、多様な視点から物事をみることを奨励します。
この習慣が身につくと、問題の本質をより深く、多角的に理解できるようになります。
例えば、チームで問題に取り組む際には、自分とは異なる専門分野やバックグラウンドを持つメンバーの意見を積極的に取り入れることで、一人では決して気づけなかったような解決の糸口が見つかることがあります。
このように、意識的に視点を切り替えることで、思い込みによる間違いを減らし、より網羅的で質の高い解決策を見出すことが可能になります。
ラテラルシンキングのデメリット
多くのメリットがある一方で、ラテラルシンキングには注意すべき点、つまりデメリットも存在します。
この思考法は万能ではなく、その特性を理解せずに使うと、かえって混乱を招く可能性もあります。
ここでは、ラテラルシンキングを活用する際に陥りがちな二つの課題について解説します。
これらのデメリットをあらかじめ知っておくことで、適切な場面で効果的にこの思考法を活用できるようになります。
結論の不確実性
ラテラルシンキングは発想を拡散させる思考法であるため、生み出されるアイデアが必ずしも正しく、実行可能であるとは限りません。
ロジカルシンキングのように唯一の正しい結論を目指すわけではないため、多様な解釈やアイデアが乱立し、最終的にどの案を採用すべきか、その結論に至る過程が不透明になる場合があります。
そのため、ラテラルシンキングでアイデアを出した後は、そのアイデアの実現可能性や効果を、ロジカルシンキングやクリティカルシンキングを用いて慎重に評価・検証するプロセスが不可欠です。
アイデアの斬新さだけに飛びつかない冷静な判断が求められます。
課題からの逸脱
自由な発想を重視するあまり、本来解決すべき課題の本質から思考が大きく逸脱してしまうリスクがあります。
多様な視点からアプローチすることは重要ですが、拡散しすぎた思考は、的外れな解決策を生み出してしまう可能性があります。
例えば、ある製品の売上不振という課題に対し、議論が製品とは全く関係のない壮大なテーマに飛躍してしまい、結局、具体的な打ち手が見つからずに終わってしまうケースです。
目的意識を常に持ち、議論が逸れた際には本来の課題に立ち返るよう軌道修正する意識が、ラテラルシンキングを活用する上では重要になります。
ラテラルシンキングの実践例
ラテラルシンキングの概念を理解したところで、次は具体的な例題に挑戦してみましょう。
ここでは、水平思考クイズとして有名な問題を3つ紹介します。
これらの問題には、論理的に考えるだけではたどり着けない意外な答えが隠されています。
頭を柔らかくして、常識にとらわれずに考えてみることがポイントです。
答えを知ることよりも、答えにたどり着くまでの思考プロセスそのものを楽しんでみてください。
ウミガメのスープ問題
これは、出題者に対してYESかNOで答えられる質問を繰り返すことで、物語の真相を解き明かす有名な水平思考クイズです。
例えば、こんな問題があります。
レストランである男がウミガメのスープを注文した。
彼はそれを一口飲むと、シェフを呼び、これは本当にウミガメのスープかと尋ねた。
シェフがはいと答えると、男は青ざめて店を飛び出し、自ら命を絶ってしまった。
一体なぜか。
この問題の鍵は、男の過去や状況など、問題文に書かれていない背景を自由に想像し、質問を通じて仮説を検証していくことです。
固定観念を捨て、あらゆる可能性を探る思考の訓練になります。
オレンジの分け方
これもまた、ラテラルシンキングの練習に適した有名な問題です。
ここにオレンジが一つあります。
このオレンジを、3人でケンカにならないように公平に分けるにはどうすればよいでしょうか。
多くの人は、オレンジを包丁で三等分することを考えるでしょう。
これはロジカルな発想です。
しかし、ラテラルシンキングでは視点を変えます。
例えば、オレンジをジュースにして3つのコップに均等に注ぐという方法はどうでしょうか。
あるいは、オレンジを売ってお金を三等分する方法も考えられます。
このように、公平に分けるという目的を達成するための手段は一つではないと考えることが、この問題のポイントです。
マカロニの測り方
日常的な場面を題材にした、創造性を試される問題です。
あなたは今、料理をしています。
レシピには茹でる前の乾燥マカロニを100グラム使うと書かれていますが、残念ながらキッチンにはかりがありません。
しかし、身の回りには様々な調理器具や日用品があります。
さて、どうやっておよそ100グラムのマカロニを測り出しますか。
例えば、500mlのペットボトルがあれば、その重さを利用して簡易的な天秤を作る方法が考えられます。
あるいは、マカロニの袋に内容量(例:500g)が書かれていれば、袋全体を均等にならして目分量で5分の1を取り分ける方法もあります。
完璧な正解を求めるのではなく、今あるものでどうにかする工夫を楽しむ思考が重要です。
ラテラルシンキングを鍛えるための方法
ラテラルシンキングは、才能ではなく、トレーニングによって誰もが後天的に鍛えることができるスキルです。
特別な道具は必要なく、日々のちょっとした意識や習慣を変えることで、あなたの思考はどんどん柔軟になっていきます。
ここでは、ラテラルシンキングを効果的に鍛えるための具体的な方法を3つ紹介します。
継続は力なり。
楽しみながらこれらの方法を実践し、新しい思考の回路を作っていきましょう。
全体を疑う習慣
ラテラルシンキングの第一歩は、自分が当然だと思っている前提を疑うことです。
私たちの思考は、知らず知らずのうちに常識や固定観念、過去の成功体験に縛られています。
まずは、日常生活の中で、これはこういうものだと受け入れている事柄に対し、本当にそうだろうか、なぜそうなっているのだろうかと問い直す習慣をつけましょう。
例えば、いつも通る道は本当に最短ルートなのか、この会議の目的はそもそも何なのか、といった具合です。
このように、あらゆる物事をゼロベースで考える癖をつけることが、思考の枠を外し、新しい視点を得るための基礎トレーニングになります。
多様な視点を持つ
自分の思考パターンから抜け出すためには、自分とは異なる多様な視点に触れることが非常に効果的です。
最も手軽な方法は、異なる学部やサークル、バックグラウンドを持つ人々と積極的に交流し、彼らの考え方や価値観を学ぶことです。
また、普段読まないジャンルの本を読んだり、様々な国のニュースや映画に触れたりすることも、自分の視野を広げるのに役立ちます。
ある問題を考える際には、登場人物の立場になりきってみる、あるいは自分が全くの専門外の人間だったらどう考えるか、といったように、意図的に視点を切り替えてみるトレーニングも、柔軟な思考を育てる上で有効です。
練習問題を活用する
思考の筋トレとして、ラテラルシンキングの練習問題を定期的に解くことも非常に効果的です。
先ほど紹介したような水平思考クイズは、書籍やウェブサイトでたくさん見つけることができます。
これらの問題に挑戦することで、楽しみながら思考の柔軟性を高めることができます。
一人で考えるだけでなく、友人や家族と問題を出し合い、それぞれの考え方や解答に至るプロセスを共有するのも良いでしょう。
他人のユニークな発想に触れることは、自分自身の思考の癖に気づき、新たな発想のパターンを学ぶ絶好の機会となります。
ラテラルシンキングの日常の取り入れ方
ラテラルシンキングは、特別な課題やクイズを解く時だけに使うものではありません。
その本質を理解すれば、普段の大学生活や友人との会話、チームでの活動など、あらゆる場面で活用することができます。
ここでは、この思考法を日常に溶け込ませ、自然に使いこなすための具体的なヒントを紹介します。
意識的に実践することで、ラテラルシンキングはあなたの強力な思考ツールの一つになるはずです。
日常生活での実践方法
日常生活はラテラルシンキングを試す宝庫です。
例えば、アルバイト先でいつもやっている作業の効率を上げるために、全く新しい手順を考えてみるのはどうでしょうか。
あるいは、サークルの新歓イベントの企画で、他のサークルがやっていないようなユニークな方法を考えてみるのも良い実践になります。
ポイントは、これが当たり前というやり方を一度リセットし、目的を達成するための他の方法はないかと考えることです。
友人や家族との会話の中で出た悩み事に対して、常識的なアドバイスではなく、あえて突飛な解決策を提案してみるのも、楽しみながら思考を広げる良いトレーニングになります。
チームでの取り組み
ラテラルシンキングは、個人だけでなく、チームで取り組むことでその効果を最大限に発揮します。
グループワークやサークルのミーティングなどで、アイデア出しに行き詰まった際には、ブレインストーミングのルールを活用しましょう。
つまり、どんな意見も否定せず、質より量を重視して、自由な発想を歓迎する環境を作るのです。
この際、進行役や書記など、役割を分担することで、各メンバーが自分の強みを活かしながらアイデア創出に貢献できます。
そして、出揃ったアイデアに対して、これは面白い、これを組み合わせたらもっと良くなる、といったポジティブなフィードバックを重視することで、チーム全体の創造性が高まります。
おわりに
ここまで、ラテラルシンキングの基本概念からメリット・デメリット、具体的な例題、そして鍛え方までを網羅的に解説してきました。
ラテラルシンキングは、これからの予測困難な時代を生き抜く上で、ますます重要になる思考法です。
論理的に考えるロジカルシンキングと、発想を広げるラテラルシンキング、この両方を使いこなすことで、あなたはより複雑な問題を解決し、新しい価値を創造できる人材になれるはずです。
まずは楽しみながら、日常の小さな問題でこの思考法を試してみてください。
