【業界研究】M&A業界はきついのか?理由や向いていない人の特徴を徹底解説!

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柴田貴司
監修者

明治大学院卒業後、就活メディア運営|自社メディア「就活市場」「Digmedia」「ベンチャー就活ナビ」などの運営を軸に、年間10万人の就活生の内定獲得をサポート

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はじめに

今回は、就活生の中でも特に優秀層から人気を集める「M&A業界」について、その実態を深掘りします。

高年収で華やかなイメージがある一方、「きつい」「激務」といった声も聞かれますよね。

この記事では、M&A業界がなぜ「きつい」と言われるのか、具体的な仕事内容から必要な適性まで、皆さんの疑問に徹底的に答えていきます。

ぜひ、業界研究や自己分析に役立ててください。

【m&a業界はきついのか】m&a業界はきつい?

M&A業界が「きつい」と言われる背景には、その仕事の特性が深く関係しています。

結論から言えば、仕事の負荷は非常に高い傾向にあるのは事実です。

企業の将来や経営者の人生を左右するほどの重大な決断に関わるため、精神的なプレッシャーは計り知れません

また、案件のスケジュールは非常にタイトで、深夜や休日を問わない長時間労働が常態化しやすい環境でもあります。

高い専門知識も常に求められるため、楽な仕事ではないことは確かです。

【m&a業界はきついのか】m&a業界の仕事内容

M&A業界と一口に言っても、その業務は多岐にわたります。

M&A(Mergers and Acquisitions)とは、企業の合併や買収のことで、これを専門的にサポートするのが彼らの仕事です。

企業の成長戦略や事業承継など、経営の根幹に関わる重要なプロジェクトを、初期段階の相談から最終的な契約締結まで一貫して支援します。

このプロセスは非常に複雑で、多くのステップを踏む必要があります。

例えば、買収先や売却先の探索から始まり、企業の価値を算定し、相手方との交渉、そして法務や財務の詳細な調査(デューデリジェンス)を経て、ようやく契約に至ります。

各フェーズで高度な専門性と緻密な作業が求められるのが、この仕事の大きな特徴です。

ここでは、M&Aのプロセスにおける具体的な仕事内容を、主要な4つのステップに分けて詳しく見ていきましょう。

皆さんがイメージする華やかな交渉だけが仕事ではないことが分かるはずです。

案件の開拓(ソーシング)

M&Aアドバイザーの仕事は、まず「案件」を見つけることから始まります。

これを「ソーシング」と呼びます。

具体的には、「会社を売りたい」と考えている経営者や、「会社を買って事業を拡大したい」というニーズを持つ企業を探し出し、M&Aの提案を行います。

これは簡単なことではありません。

企業の経営戦略や業界動向を深く理解した上で、どの企業とどの企業が組み合わされば相乗効果が生まれるかを考え、仮説を立ててアプローチする必要があります。

日頃からの地道な情報収集や、経営者との信頼関係構築が欠かせません。

特に中堅・中小企業のM&A仲介では、後継者不足に悩む経営者に対して、事業承継の一つの選択肢としてM&Aを提案することも重要な役割です。

まさにM&Aプロセスのスタート地点であり、高度な営業力と分析力が問われるフェーズと言えるでしょう。

企業価値評価(バリュエーション)

M&Aを進める上で欠かせないのが、対象企業の「価値」を算出する「企業価値評価(バリュエーション)」です。

これは、M&Aの取引価格を決めるための非常に重要な根拠となります。

単に「資産がいくらあるか」といった単純な計算ではなく、その企業が将来どれくらいの収益を生み出す力があるか(将来キャッシュフロー)を予測したり、似たような上場企業の株価と比較したりと、専門的な手法を用いて行われます。

代表的な手法には、DCF法(ディスカウンテッド・キャッシュフロー法)や類似会社比較法(マルチプル法)などがあります。

この評価額が売り手と買い手の交渉の土台となるため、客観的かつ論理的な分析が求められます。

評価額一つでディール(取引)が成立するかどうかが決まることもあるため、非常に責任の重い仕事です。

交渉・調整(エグゼキューション)

売り手と買い手の間で、具体的な条件を詰め、M&Aを成立(クロージング)に導くプロセスを「エグゼキューション」と呼びます。

このフェーズでは、M&Aアドバイザーが両者の間に立ち、取引価格はもちろんのこと、従業員の処遇、買収後の経営方針など、細かな条件について交渉・調整を行います。

多くの場合、売り手はより高く売りたいと考え、買い手はより安く買いたいと考えるため、両者の利害は対立します。

双方の言い分を丁寧に聞き取り、客観的なデータやロジックに基づいて着地点を探る高度な交渉力が求められます。

また、M&Aのプロセスには、弁護士や公認会計士、税理士といった外部の専門家も多く関わります。

彼らと円滑に連携し、法務・財務・税務上の問題点をクリアにしながら、プロジェクト全体を前に進めていく管理能力も不可欠です。

契約締結・クロージング

交渉が大筋で合意に至ると、買い手は対象企業に重大な問題が隠されていないかを詳細に調査します。

これを「デューデリジェンス(DD:買収監査)」と呼びます。

M&Aアドバイザーは、買い手側(または売り手側)が依頼した会計士や弁護士によるDDがスムーズに進むよう、必要な資料の準備や質疑応答の仲介を行います。

DDの結果、もし大きな問題(例えば、帳簿に載っていない多額の負債など)が見つかれば、最悪の場合、取引が中止(ブレイク)になることもありますし、取引価格の再交渉が行われることもあります。

この最終局面での調整は非常にシビアです

全ての調査と条件調整が完了すると、ようやく最終契約書(SPA)を締結し、株式や事業の譲渡が行われ、「クロージング(取引の完了)」となります。

案件のスタートからゴールまで、息つく暇もないのがM&Aの仕事です。

【m&a業界はきついのか】m&a業界の主な職種

M&A業界には、その専門性や扱う案件の規模によって、さまざまなプレイヤーが存在し、それぞれに異なる職種があります。

大きく分けると、グローバルな超大型案件を扱う外資系投資銀行、日系大手証券会社の投資銀行部門、戦略立案から実行まで幅広く手がけるコンサルティングファーム、中堅・中小企業の事業承継を得意とするM&A仲介会社(ブティックファーム)、そして会計事務所系のFAS(Financial Advisory Service)などがあります。

それぞれの企業や部門によって、求められる役割や働き方、キャリアパスも大きく異なります

例えば、投資銀行では財務モデリングやバリュエーションのスキルが重視されますし、仲介会社では経営者との関係構築力や案件開拓力が強く求められます。

自分の強みや志向性がどこにあるのかを考えながら、これらの職種の違いを理解することは、M&A業界を目指す上で非常に重要です。

M&Aアドバイザリー(投資銀行・証券会社)

投資銀行や大手証券会社のM&Aアドバイザリー部門は、主に大企業同士の大型M&Aやクロスボーダー(国境を越えた)M&Aを手がけます。

彼らは、企業のM&A戦略の立案から、相手先の選定、交渉、資金調達のアドバイスまで、包括的なサービスを提供します。

多くの場合、売り手か買い手のどちらか一方の「専属アドバイザー」として契約し、クライアントの利益を最大化するために働きます(これをFA:フィナンシャル・アドバイザー業務と呼びます)。

扱う案件の規模が数百億円から数兆円に上ることも珍しくなく、経済に与えるインパクトも非常に大きい仕事です。

その分、求められる財務・法務の知識レベルは極めて高く、激務であることでも知られています。

新卒で入社するには最難関の一つであり、トップクラスの学歴と論理的思考力、タフネスが要求されます。

M&Aコンサルタント(コンサルティングファーム)

戦略系や総合系のコンサルティングファームにも、M&Aを専門に扱うチームがあります。

彼らの強みは、M&Aを「戦略実行の一手段」として捉える点にあります。

単にM&Aを成立させるだけでなく、そもそも「なぜM&Aが必要なのか」という戦略の策定から関与し、買収後の統合プロセス(PMI:Post Merger Integration)までを支援することが多いのが特徴です。

特にPMIはM&Aの成功を左右する重要なプロセスであり、異なる企業文化を持つ組織をいかにスムーズに融合させ、相乗効果を生み出すかという難易度の高い課題に取り組みます。

投資銀行のアドバイザリーが財務的な側面に重きを置くのに対し、コンサルタントは事業戦略やオペレーションの側面からM&Aをサポートする傾向があります。

M&A仲介(M&Aブティック・仲介会社)

M&A仲介会社や「ブティックファーム」と呼ばれる専門会社は、主に中堅・中小企業のM&Aを専門に扱います。

特に近年、後継者不足に悩むオーナー経営者の事業承継を支援するという社会的な役割が大きくなっています。

彼らの特徴は、売り手と買い手の「両方」の間に立って、中立的な立場でM&Aの成立をサポートする「仲介」業務を行う点です(両手取引とも呼ばれます)。

投資銀行が扱うような大型案件は少ないですが、その分、経営者個人に寄り添い、会社の存続という非常にデリケートな問題解決に深く関わります。

仕事の成果がインセンティブ(成果報酬)として給与に反映されやすい給与体系を持つ会社も多く、若手でも実力次第で高い報酬を得られる可能性があります。

FAS(Financial Advisory Service)

FAS(ファズ)とは、大手会計事務所(BIG4など)のグループに属し、M&Aに関連する専門サービスを提供する部門や会社のことです。

彼らの主な業務は、M&Aプロセスにおける財務デューデリジェンス(DD)や企業価値評価(バリュエーション)です。

会計のプロフェッショナルとして、対象企業の財務諸表を詳細に分析し、隠れたリスクや正確な企業価値を算定します

投資銀行やコンサルタントがM&Aプロセス全体の戦略や交渉を主導するのに対し、FASは特に「財務・会計」という専門領域でディールを支える重要な役割を担います。

公認会計士の資格を持つメンバーも多く在籍しており、高度な会計知識を活かしたいと考える人にとっては魅力的なキャリアパスの一つです。

事業会社のM&A担当

M&A業界というと、上記のようなアドバイザー側(セルサイド)をイメージしがちですが、実際にM&Aを行う「買い手」である事業会社(メーカー、IT企業、商社など)の内部にもM&A担当部署があります。

彼らは「コーポレート・デベロップメント(CD)」や「経営企画室」などに所属し、自社の成長戦略に基づいてM&A案件を発掘し、実行します。

アドバイザーとは異なり、自社の戦略としてM&Aを「当事者」の立場で推進するのが特徴です。

M&Aの実行だけでなく、買収した会社を自社グループに統合し、事業を成長させていくプロセス(PMI)までを一貫して担当します。

自社の事業を深く理解した上で、M&A戦略を考える必要があるため、アドバイザーとはまた違ったやりがいと難しさがあります。

新卒でいきなりこの部署に配属されるケースは稀ですが、将来的なキャリアとして知っておくと良いでしょう。

【m&a業界はきついのか】m&a業界がきついとされる理由

M&A業界が「きつい」と評されるのには、その華やかなイメージとは裏腹の、非常に過酷な業務実態が関係しています。

高い報酬と引き換えに、時間的、精神的、知的な面で極めて高いレベルのアウトプットを求められるのがこの業界です。

ディール(案件)が動き出すと、クライアントの期待に応えるため、そして競合他社に勝つために、文字通りすべてを捧げる覚悟が必要になる場面も少なくありません。

この厳しさは、関わる案件の金額の大きさや、企業の命運を左右するという仕事の重責に直結しています。

しかし、この「きつい」環境だからこそ、他では得られない圧倒的なスピードで成長できるという側面も併せ持っています。

なぜそこまで過酷になるのか、その具体的な理由を6つの側面から詳しく解説していきます。

労働時間が長く激務

M&A業界の「きつさ」の象徴として、まず挙げられるのが労働時間の長さです。

特に案件が佳境に入ると、その業務量は膨大になります。

例えば、クライアントへの提案資料の作成、企業価値評価のための複雑な財務モデルの構築、デューデリジェンスでの膨大な資料の読み込み、そして深夜に及ぶ関係者とのミーティングや交渉など、やるべきことは尽きません。

ディールのスケジュールは非常にタイトであり、相手方や市場の動向によって左右されるため、自分のペースで仕事をコントロールすることが困難です。

「平日は終電、土日も出勤」といった状況が数ヶ月続くことも珍しくありません。

プライベートの時間を確保することが難しくなることは、この業界を目指す上であらかじめ覚悟しておくべき点の一つです。

プレッシャーが大きい

M&Aは、関わる金額が数十億円、数百億円に上ることも珍しくない、非常にスケールの大きな仕事です。

その取引の成否は、クライアント企業の将来を大きく左右します。

また、中小企業の事業承継案件であれば、それは創業者の人生そのものを引き継ぐことにも等しい重みがあります。

このような重大な決断をサポートする立場として、アドバイザーにかかる精神的なプレッシャーは計り知れません

一つのミスがディール全体を破綻させる可能性もあり、常に完璧なアウトプットを求められます。

クライアントである経営トップと直接対峙し、彼らの高い要求に応え続けなければならない緊張感も、この仕事の厳しさの一部です。

高い専門知識が求められる

M&Aを成功させるためには、財務、会計、税務、法務といった領域の高度な専門知識が不可欠です。

例えば、企業価値評価(バリュエーション)を行うには複雑なファイナンス理論を理解し、使いこなす必要がありますし、契約交渉では会社法や金融商品取引法などの法律知識が問われます。

これらの知識は一度学べば終わりではなく、法制度の改正や新しいM&Aの手法(スキーム)など、常に最新情報をキャッチアップし続ける学習意欲が求められます。

新卒で入社した場合、まずはこれらの基礎知識を猛烈な勢いでインプットしなければならず、業務と並行して勉強を続ける知的なタフさも必要とされるのです。

成果主義・競争が激しい

M&A業界は、極めて成果主義的な世界です。

特に投資銀行やM&A仲介会社では、どれだけ大きな案件を成立させたか、どれだけの収益を会社にもたらしたかが、個人の評価や報酬に直結します。

若手であっても結果を出せば高い報酬を得られる可能性がある一方で、成果を出せなければ評価は厳しくなります。

また、案件を獲得するためには、他の投資銀行や仲介会社との熾烈なコンペティション(競争入札)に勝たなければなりません。

常に「勝つか負けるか」の世界に身を置くことになるため、競争環境を楽しむくらいの気概がなければ、精神的に疲弊してしまう可能性もあります。

関係者との調整が多い

M&Aのプロセスは、決して一人で完結できるものではありません。

クライアント企業の経営陣はもちろんのこと、相手先の企業、弁護士、公認会計士、税理士、時には銀行団など、非常に多くのステークホルダー(利害関係者)が関わります。

それぞれの立場や思惑は異なり、時には利害が真っ向から対立することもあります。

M&Aアドバイザーは、その中心に立って、各方面との緻密なコミュニケーションと利害調整を行わなければなりません。

例えば、価格交渉が難航している際に、双方の着地点を見出すための論理的な説得材料を準備したり、法務的な論点を整理して弁護士と議論したりと、高度なコミュニケーション能力と調整力が日常的に求められるのです。

案件が途中で頓挫する(ブレイクする)ことも多い

M&Aは「生き物」と例えられるように、非常に不確実性が高いものです。

数ヶ月にわたって心血を注いできた案件でも、最後の最後で条件が折り合わなかったり、デューデリジェンスで想定外の問題が発覚したりして、取引が成立しない(ディール・ブレイク)ことも頻繁に起こります。

それまでの努力が水泡に帰す経験は、精神的に大きな負担となります

特にM&A仲介会社などで、報酬が成功報酬型(ディールが成立して初めて報酬が発生する)の場合、ブレイクが続くと直接的に収益にも響きます。

結果が出なくても腐らずに、すぐに次の案件に向けて気持ちを切り替えられる精神的なタフさがなければ、長く続けるのは難しい仕事と言えるでしょう。

m&a業界の現状・課題

現在の日本において、M&A業界は非常に重要な役割を担っています。

特に深刻化しているのが、中堅・中小企業の「後継者不足」問題です。

優れた技術やサービスを持ちながらも、経営者の高齢化や後継ぎがいないために廃業を選択せざるを得ない企業が増加しており、これは日本経済全体にとって大きな損失です。

こうした中、M&Aは事業承継の有効な手段として急速に注目を集めており、M&Aの件数は年々増加傾向にあります。

また、業界再編やグローバル化の進展に伴い、大企業による成長戦略として、あるいは異業種への進出手段としてのM&Aも活発です。

このように市場が拡大する一方で、業界特有の課題も浮き彫りになっています。

需要の急増に対して、M&Aを適切にサポートできる専門人材が不足していることなどがその一例です。

後継者不足による事業承継型M&Aの増加

日本社会の大きな課題である少子高齢化は、企業の経営にも直結しています。

多くの中小企業の経営者が高齢化し、引退の時期を迎えていますが、親族内や社内に適切な後継者が見つからないケースが後を絶ちません。

帝国データバンクの調査などでも、後継者不在率は依然として高い水準で推移しています。

こうした企業が廃業を選べば、長年培われてきた技術やノウハウ、そして従業員の雇用が失われてしまいます

この社会課題の解決策として、第三者への事業承継、すなわちM&Aが非常に重要な選択肢となっています。

「会社を売る」ことへのネガティブなイメージも薄れ、むしろ積極的に事業の存続と発展のためにM&Aを選ぶ経営者が増えているのが、現在のM&A市場の大きな特徴です。

M&A専門人材の不足

事業承継型M&Aのニーズが急速に高まる一方で、そのM&Aを専門的に支援できる人材の数は、市場の拡大スピードに追いついていないのが現状です。

M&Aは前述の通り、財務、会計、法務、税務、そして業界知識など、非常に幅広く高度な専門性が求められる業務です。

特に、中小企業の経営者に寄り添い、複雑なプロセスを最後まで導ける経験豊富なアドバイザーは依然として不足しています。

この人材不足は、M&A仲介会社やアドバイザリーファームにとって、優秀な人材の採用・育成が急務であることを示しています。

就活生の皆さんにとっては、専門性を身につければ若いうちから活躍できるチャンスが大きい市場であるとも言えるでしょう。

クロスボーダーM&Aの複雑化

日本企業が国内市場の縮小を見据え、海外に成長機会を求めて行う「クロスボーダーM&A(国境を越えたM&A)」も活発です。

しかし、クロスボーダーM&Aは国内案件に比べて格段に難易度が上がります。

各国の法律や税制、会計基準が異なることはもちろん、商慣習や文化、言語の壁も乗り越えなければなりません。

また、近年は各国の安全保障や経済安全保障の観点から、外資による買収規制が強化される傾向にあり、M&Aを実行する上でのハードルは高まっています。

こうした複雑な環境下で、グローバルな視点を持ってM&Aを成功に導けるアドバイザーの価値はますます高まっています。

m&a業界の今後の動向

M&A業界は、前述した「事業承継ニーズの継続」と「専門人材の不足」という大きな流れの中で、今後も変化を続けていくことが予想されます。

特に、テクノロジーの活用による業務効率化や、M&Aの「質」への注目が高まっていくでしょう。

これまでのM&Aは、案件を発掘し、契約を締結させる「ディール・メイキング」の側面に光が当たりがちでした。

しかし、これからはそれだけでは不十分です。

M&Aが本当に成功したかどうかは、買収後にどれだけ想定した相乗効果(シナジー)を生み出せたかにかかっています。

そのため、M&Aのプロセス全体、特に買収後の統合プロセス(PMI)への関心が高まっており、業界のサービスもそちらへシフトしていく可能性があります。

AIやプラットフォームの活用も、この業界の働き方を大きく変える要因となるでしょう。

IT・テクノロジーの活用(M&Aテック)

人材不足や業務の複雑化という課題を背景に、M&A業界でもITやAIを活用する「M&Aテック」という領域が急速に成長しています。

例えば、AIを用いて膨大なデータの中から最適なM&Aの候補先をリストアップする技術や、オンライン上で売り手と買い手を直接マッチングさせるプラットフォームサービスなどが登場しています。

これにより、従来は属人的なネットワークに頼りがちだった案件の開拓(ソーシング)が効率化される可能性があります。

また、デューデリジェンスのプロセスでAIが契約書や財務データを分析し、リスクを自動で検出するといった活用も進んでいます。

テクノロジーが人間の仕事を全て奪うわけではありませんが、定型的な作業を効率化し、アドバイザーがより高度な交渉や戦略立案に集中できる環境が整っていくでしょう。

中小企業M&A市場のさらなる活性化

後継者不足の問題は一朝一夕に解決するものではなく、今後も中小企業のM&Aニーズは高い水準で続くと予想されます。

これまでは「M&Aは大企業のもの」というイメージがありましたが、M&A仲介会社やマッチングプラットフォームの台頭により、小規模な事業者にとってもM&Aが身近な選択肢となりつつあります。

政府も事業承継を後押しする税制優遇措置などを講じており、市場の活性化を支えています。

今後は、これまでM&Aの対象としてあまり注目されてこなかった、さらに小規模な個人事業主やフリーランスの事業譲渡なども増えてくる可能性があり、M&Aアドバイザーが活躍するフィールドはますます広がっていくと考えられます。

PMI(Post Merger Integration)の重要性の高まり

M&Aは「契約したら終わり」ではありません。

むしろ、そこからが本当のスタートです。

買収した企業と自社の組織、システム、企業文化などをうまく融合させるプロセス、すなわち「PMI(Post Merger Integration)」が成功しなければ、M&Aに期待した効果を得ることはできません。

「買ったはいいが、うまく統合できずに失敗した」という事例は数多く存在します

そのため、近年はM&Aの実行段階からPMIを見据えた計画を立てることの重要性が強く認識されるようになりました。

これに伴い、M&Aアドバイザーやコンサルタントに対しても、ディール・メイキングだけでなく、PMIのフェーズまで一貫してサポートする能力が求められるようになっています。

【m&a業界はきついのか】m&a業界に向いている人

ここまでM&A業界の仕事内容や厳しさについて解説してきましたが、では一体どのような人がこの業界で活躍できるのでしょうか。

「きつい」環境であることは間違いありませんが、それを上回るやりがいや成長を実感できる人にとっては、最高の職場となり得ます。

求められるのは、単に頭が良いことだけではありません。

むしろ、プレッシャーのかかる状況下でも冷静さを失わず、地道な努力を続けられる精神的な強さや、クライアントである経営者から信頼される人間性が非常に重要です。

M&Aの仕事は、企業の未来を創るダイナミックな側面と、膨大な資料を読み解く泥臭い側面の両方を併せ持っています。

自分自身がどちらの側面にも魅力を感じられるかを、ここで紹介する特徴と照らし合わせながら考えてみてください。

知的好奇心が強く、学習意欲が高い人

M&Aの仕事は、知的好奇心の塊のような人に向いています。

なぜなら、案件ごとに扱う業界が変わり、その都度、新しいビジネスモデルや業界動向をゼロから猛勉強する必要があるからです。

今日はIT企業、明日は製造業、次は医療系、といった具合です。

加えて、財務、会計、法務、税務といった専門知識も、法改正などに合わせて常にアップデートし続けなければなりません

新しいことを学ぶのが好きで、それを苦としない人、むしろ楽しめると感じる人でなければ、この業界のスピード感についていくのは難しいでしょう。

知的な刺激を常に求める人にとっては、これ以上ない環境と言えます。

精神的・体力的にタフな人

M&A業界の「きつさ」の根幹である、激務とプレッシャーに耐えられるタフネスは必須条件です。

案件が佳境に入れば、連日の徹夜や休日出勤も覚悟しなければなりません。

体力的な限界が近づく中で、クライアントの期待を超える質のアウトプットを出し続けることが求められます。

また、ディールが破談になるストレスや、経営者の人生を背負う重圧にも打ち勝つ精神的な強さが必要です。

学生時代にスポーツや研究などで、極限まで自分を追い込み、何かを成し遂げた経験がある人は、この業界で求められるタフネスの素養があるかもしれません。

論理的思考力と交渉力が高い人

M&Aのプロセスは、論理の積み重ねです。

「なぜこの企業価値になるのか」「なぜこのM&Aは双方にメリットがあるのか」を、客観的なデータとロジックを用いて明快に説明できなければ、クライアントも相手先も納得させることはできません。

複雑に絡み合った情報を整理し、問題の本質を見抜き、解決策を導き出す高度な論理的思考力が求められます。

さらに、そのロジックを武器に、利害が対立する相手と粘り強く交渉し、合意点を形成していく交渉力も不可欠です。

議論で相手を説得するのが得意な人や、物事を構造的に考えるのが好きな人は向いているでしょう。

責任感が強く、誠実な人

M&Aアドバイザーは、企業の経営者から非常に深い悩みや秘密情報を打ち明けられる存在です。

その信頼に応えるためには、まず人としての誠実さが大前提となります。

クライアントの利益を第一に考え、たとえ耳の痛いことであっても、プロフェッショナルとして言うべきことを率直に伝える責任感が求められます。

また、案件の規模が大きくなると、多くの関係者が関わりますが、その中で「自分が最後までやり遂げる」という強い当事者意識と責任感がなければ、プロジェクトを推進することはできません。

人から頼られることにやりがいを感じる人や、物事を途中で投げ出さない誠実さを持つ人に向いています。

高い成果報酬をモチベーションにできる人

M&I&A業界は激務である一方、その対価として高い報酬が得られることでも知られています。

特に成果主義の傾向が強い企業では、20代で数千万円の年収を得ることも夢ではありません。

ただし、それはあくまで激務とプレッシャーに見合う対価です。

単に「楽して稼ぎたい」という人には絶対に向きません

自分の能力と努力が、明確な「成果」と「報酬」という形で返ってくることに強いモチベーションを感じる人、厳しい競争環境に身を置き、実力で評価されることにやりがいを見出せる人にとっては、非常に魅力的な業界です。

【m&a業界はきついのか】m&a業界に向いていない人

一方で、M&A業界の特性が、どうしても自分の価値観や働き方の希望と合わないという人もいるはずです。

それは決して能力が劣っているという意味ではなく、単に「相性」の問題です。

この業界は、向き不向きが非常にハッキリと分かれる世界でもあります。

入社後に「こんなはずではなかった」とミスマッチを起こしてしまうのは、皆さんにとっても企業にとっても不幸なことです。

M&A業界の華やかなイメージや高い給与水準だけに目を奪われるのではなく、自分の本質的な性格や、人生で何を大切にしたいかを冷静に自己分析することが重要です。

ここでは、M&A業界に向いていない可能性のある人の特徴を挙げてみます。

自分に当てはまるものがないか、正直に胸に手を当てて考えてみてください。

ワークライフバランスを最優先したい人

M&A業界で働く以上、残念ながら「定時で帰って、平日の夜や週末は必ず自分の時間」という生活を実現するのは非常に困難です。

ディールはクライアントや相手先の都合、市場の動向によって進むため、自分のスケジュールをコントロールしにくいのが実情です。

仕事とプライベートを明確に分けたい、家族や友人との時間、趣味の時間を何よりも大切にしたいという価値観を持つ人にとっては、大きなストレスを感じる環境でしょう。

もちろん、案件と案件の間(ディール・ブレイク中)に長期休暇を取る文化がある企業もありますが、日常的なワークライフバランスを最優先に考える人には、ミスマッチとなる可能性が高いです。

プレッシャーに弱い人

責任の重圧に押しつぶされそうになる、人前で意見を言うのが極度に苦手、といったタイプの人は、M&A業界の環境に適応するのが難しいかもしれません。

この仕事は、日常的に数億円、数百億円という金額を扱い、クライアント企業の経営トップに対して堂々と意見を述べ、議論を交わすことが求められます。

自分の分析や発言が、企業の将来を左右するというプレッシャーの中で、冷静にパフォーマンスを発揮し続けなければなりません。

適度な緊張感は良い結果を生みますが、過度なプレッシャーが心身の不調につながってしまう人は、別の業界を検討する方が賢明かもしれません。

継続的な学習が苦手な人

M&A業界で求められる知識は、一度身につけたら終わりではありません。

財務や法務の専門知識はもちろん、担当する業界のトレンド、景気の動向、新しい金融手法など、常にアンテナを高く張り、学び続ける姿勢が不可欠です。

仕事が忙しいからといって勉強を怠れば、あっという間にプロフェッショナルとしての価値は下がってしまいます。

「学生時代の勉強で手一杯だった」「社会人になったらもう勉強したくない」と考えている人にとって、仕事時間外にも自己研鑽を求められるこの業界は厳しい環境に感じるでしょう。

チームより個人で完結させたい人

M&Aの仕事は、一見すると個人の能力が際立つように見えますが、実際は究極のチームプレーです。

プロジェクトは通常、シニア(上司)とジュニア(若手)がチームを組み、さらに弁護士や会計士といった外部の専門家と緊密に連携しながら進めます。

自分一人の力で仕事を完結させたい、自分のペースで進めたいという志向が強い人にとっては、多くの関係者との頻繁な調整や議論はストレスになるかもしれません。

チーム全体の成果を最大化するために、自分はどの役割を担うべきかを考え、協調性を持って動けることが求められます。

地道な作業が苦手な人

M&Aというと、経営者同士のトップ会談や、華やかな契約調印式をイメージするかもしれません。

しかし、その裏側には、膨大な量の地道な作業が存在します。

例えば、企業価値を算出するための財務モデルをエクセルで緻密に組み上げたり、提案資料を作るために何百ページもの業界レポートを読み込んだり、デューデリジェンスのために膨大な契約書を一枚一枚チェックしたりといった、泥臭い作業が業務の大半を占めることもあります。

こうした地道な作業を正確に、かつ迅速にこなすことが、最終的な成果の質を左右します。

派手な仕事だけをしたい人には向いていません。

m&a業界に行くためにすべきこと

M&A業界、特に投資銀行や戦略コンサルティングファームのM&A部門は、新卒の就職活動において最難関の一つとされています。

その厳しさや専門性の高さから、採用基準も非常に高く設定されています。

「きつい」環境であることを理解した上で、それでも挑戦したいと考える皆さんは、学生時代から戦略的に準備を進める必要があります。

単に「興味があります」と言うだけでは、内定を勝ち取ることはできません。

なぜM&Aなのか、なぜ他ならぬ自分なのかを、論理的に説明できるだけの裏付けが必要です。

ここでは、新卒でM&A業界を目指すために、具体的に取り組むべきことを3つのステップに分けて解説します。

付け焼き刃ではない、本質的な準備が合否を分けます。

財務・会計の基礎知識習得(簿記など)

M&Aの仕事の共通言語は「会計」です。

企業の価値を評価するにも、財務リスクを分析するにも、会計知識は絶対に欠かせません。

選考の段階で「財務三表(貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書)の関係を説明できるか」といった基礎的な質問をされることも多くあります。

学生のうちに、最低でも日商簿記2級レベルの知識を身につけておくことは、大きなアドバンテージになります。

これは、単に知識があることをアピールするためだけでなく、入社後にスタートダッシュを切るためにも不可欠です。

会計が分からないと、M&Aの議論についていくことすらできないため、本気で目指すなら最優先で取り組みましょう。

戦略コンサルや投資銀行のインターンシップ参加

M&A業界は、本選考の前にインターンシップ(ジョブ)経由で内定者の多くが決まる傾向があります。

特に外資系の投資銀行や戦略コンサルではその傾向が顕著です。

インターンでは、実際のM&A案件に近いケーススタディが課され、数日間にわたって財務モデルの構築や提案資料の作成に取り組みます。

このプロセス自体が、M&A業務の適性を測る厳しい選考の場となっています。

インターンに参加できれば、社員の方から直接フィードバックをもらえるだけでなく、実務の「きつさ」と「面白さ」を肌で感じることができます。

選考突破が難しいからこそ、早期から情報収集を行い、万全の対策で臨む必要があります。

高い論理的思考力を示す経験(ガクチカ)

M&A業界の面接では、学生時代に力を入れたこと(ガクチカ)や自己PRを通じて、その人の「地頭の良さ」、すなわち論理的思考力(ロジカルシンキング)を厳しくチェックされます。

なぜなら、複雑な情報を整理し、仮説を立て、検証し、結論を導き出すという、M&A業務の根幹をなす能力だからです。

「サークルの代表として課題を解決した」という経験を話す場合でも、どのような課題があり、なぜその打ち手が最適だと考え、結果どうなったのかを、誰が聞いても納得できるように論理的に説明する必要があります。

華々しい経験である必要はありません

自分がいかに深く考え、行動したかを構造的に伝えられるよう、自己分析を徹底的に行いましょう。

適職診断ツールを用いる

M&A業界について知れば知るほど、「本当に自分に向いているのだろうか?」と不安になる人もいるかもしれません。

特に「きつい」と聞くと、自分のタフネスや適性に自信が持てなくなることもあるでしょう。

そんな時は、客観的な視点で自分を見つめ直す手助けとして、「適職診断ツール」を活用してみるのも一つの手です。

適職診断は、あなたの性格的な傾向や価値観、思考のクセなどを分析し、どのような仕事環境や職種で能力を発揮しやすいかを示してくれます。

もちろん、診断結果が全てではありませんし、それだけで進路を決めるべきではありません。

しかし、自分では気づかなかった強みや、逆に目を背けていた弱みを客観的なデータとして突きつけられることで、自己分析を深める良いきっかけになります。

M&A業界に求められる「プレッシャー耐性」や「論理的思考性」といった項目が、自分の診断結果とどう合致するか、あるいは異なるかを確認してみましょう。

【m&a業界はきついのか】適性がわからないときは

適職診断ツールを使ってみたり、自己分析を重ねてみたりしても、なお「M&A業界が自分に本当に合うのか、適性があるのかわからない」と悩むのは当然のことです。

特にM&Aのような専門性が高く、情報が限られている業界については、イメージだけで判断してしまう危険性があります。

そんな時は、机の上で悩んでいるだけでは答えは出ません

最も効果的なのは、その業界で実際に働く「生身の人間」に触れることです。

M&A業界は「きつい」と言われますが、その「きつさ」の感じ方は人それぞれです。

OB・OG訪問を積極的に行い、投資銀行やM&A仲介会社で働く先輩社員に、仕事のリアルなやりがいと厳しさの両面を聞いてみましょう

インターンシップに参加するのが一番ですが、それが難しくても、説明会やイベントで社員の方に直接質問をぶつけることで、自分がその環境で働く姿を具体的にイメージできるようになるはずです。

おわりに

今回は、M&A業界が「きつい」と言われる理由から、具体的な仕事内容、求められる適性までを詳しく解説してきました。

M&Aの仕事は、確かに激務であり、大きなプレッシャーが伴います。

しかし、それと同時に、企業の未来を創り、時には社会課題の解決にも貢献できる、非常にダイナミックでやりがいの大きな仕事でもあります。

この記事を読んで、「きつそうだけど、面白そうだ」と心が躍った人は、この業界に挑戦する価値が十分にあるはずです。

圧倒的な成長環境に身を置き、若いうちから市場価値の高いプロフェッショナルを目指したいという熱意ある皆さんの挑戦を、心から応援しています!

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