はじめに
皆さんは「マーケティング」と聞くと、どんなイメージを持ちますか？華やかで、最先端の仕事というイメージがある一方、「マーケティング業界はきつい」という噂を聞いて不安に感じている人も多いのではないでしょうか。
この記事では、なぜマーケティング業界がきついと言われるのか、その実態と仕事のやりがい、そして皆さんが自分に合っているかを見極める方法について、詳しく解説していきます。
業界研究の一環として、ぜひ最後まで読んでみてくださいね。
【マーケティング業界はきついのか】マーケティング業界はきつい？
「マーケティング業界はきつい」という言葉は、残念ながらよく耳にします。
これは、成果（数字）に対するプレッシャーが常にかかることや、トレンドの変化が激しく常に学び続ける必要があること、そして業務範囲が広く多忙になりがちであることなどが主な理由です。
特に新卒のうちは、覚えることも多く、スピード感についていくのが大変だと感じる場面も多いかもしれません。
しかし、その「きつさ」は、大きなやりがいや自己成長と表裏一体でもあります。
この業界のリアルを知ることで、自分に合うかどうかを判断する材料にしてください。
【マーケティング業界はきついのか】マーケティング業界の仕事内容
マーケティング業界と一口に言っても、その仕事内容は非常に多岐にわたります。
共通しているのは、「商品やサービスが売れ続ける仕組みを作ること」をミッションとしている点です。
皆さんが普段何気なく目にしている広告や、新商品のニュース、お店での陳列方法まで、その裏側には緻密なマーケティング戦略が隠されています。
企業が利益を生み出し、成長していくためには欠かせない、まさにビジネスの心臓部とも言える役割を担っています。
ここでは、マーケティング活動の代表的な仕事の流れを、大きく4つのステップに分けて解説していきます。
自分の興味がどの部分にあるのかを考えながら読み進めてみると、具体的なイメージが湧きやすくなるはずですよ。
市場調査・分析（リサーチ）
マーケティング活動の第一歩は、顧客や市場を「知る」ことから始まります。
市場調査・分析（リサーチ）は、まさにその根幹を担う仕事です。
「今、世の中では何が流行っているのか」「ターゲットとなる顧客はどんなことに困っているのか」「競合他社はどんな動きをしているのか」といった情報を集め、分析します。
具体的な手法としては、アンケート調査、インタビュー、Web上のデータ解析、文献調査など様々です。
集めたデータをただ眺めるのではなく、その背後にある消費者の本音（インサイト）を読み解き、次の戦略立案に活かせる「意味のある情報」に変えることが重要です。
地道な作業も多いですが、ビジネスの方向性を決めるための羅針盤を作る、非常にやりがいのある仕事と言えます。
商品・サービス企画（プロダクトマーケティング）
市場調査・分析によって得られた情報をもとに、「どんな商品やサービスがあれば顧客の課題を解決できるか」「どうすれば競合と差別化できるか」を考え、形にしていくのが商品・サービス企画（プロダクトマーケティング）の仕事です。
ターゲット層のニーズを満たす機能やデザイン、そして企業が利益を出せるような価格設定（プライシング）まで、幅広く担当します。
開発部門やデザイナー、営業部門など、社内の多くの関係者と連携しながらプロジェクトを進めていく調整力も求められます。
自分が企画した商品が世に出て、多くの人に使ってもらえる喜びは格別です。
ゼロからイチを生み出す創造性と、それをビジネスとして成立させる論理性の両方が試される、魅力的な仕事です。
広告・宣伝（プロモーション）
どれだけ良い商品やサービスを作っても、その存在や魅力がターゲット顧客に伝わらなければ売れません。
広告・宣伝（プロモーション）は、商品・サービスの価値を「伝える」役割を担います。
テレビCM、Web広告（リスティング広告、SNS広告など）、雑誌広告、イベント開催、プレスリリース配信など、使える手段は無限にあります。
大切なのは、「誰に」「何を」「どのチャネルで」伝えるかを戦略的に設計することです。
限られた予算の中で最大の効果を出すために、メディアの選定やクリエイティブ（広告のデザインやキャッチコピー）の制作にも深く関わります。
時代のトレンドや人々の心の動きに敏感であることが求められ、自分の仕掛けた広告が話題になった時の達成感は大きいでしょう。
効果測定・改善（PDCA）
マーケティング活動は「やって終わり」ではありません。
実施した施策（プロモーションなど）が、実際にどれくらいの効果（売上、認知度向上など）をもたらしたのかを客観的なデータに基づいて測定・分析することが不可欠です。
これが効果測定です。
例えば、Web広告であれば「何回表示されて、何回クリックされたのか」、新商品の売上であれば「目標に対してどれだけ達成できたのか」を詳細に追跡します。
そして、その結果をもとに「なぜうまくいったのか」「なぜ目標に届かなかったのか」を考察し、次の打ち手を考える「改善」につなげます。
この一連の流れ（Plan-Do-Check-Action）を「PDCAサイクル」と呼び、これを回し続けることで、マーケティング活動はより洗練されていきます。
【マーケティング業界はきついのか】マーケティング業界の主な職種
マーケティング業界には、その専門性によって様々な職種が存在します。
業界のイメージとして「広告代理店」や「メーカーの商品企画」を思い浮かべる人が多いかもしれませんが、実際にはもっと多様なキャリアパスがあります。
例えば、Webの専門家であるWebマーケター、データ分析のプロであるリサーチャー、企業の顔として情報発信を担う広報・PRなど、それぞれの分野で高度なスキルが求められます。
自分がどの領域で力を発揮したいのか、どんな働き方をしたいのかによって、目指すべき職種も変わってきます。
ここでは、新卒の皆さんがキャリアをスタートさせる可能性のある、代表的な5つの職種について、それぞれの役割と特徴を解説していきます。
Webマーケター
Webマーケターは、その名の通り、Web（インターネット）空間におけるマーケティング活動全般を担当する職種です。
現代のビジネスにおいて、Webの活用は不可欠であり、非常に需要が高まっています。
具体的な仕事内容としては、自社サイトへの集客を増やすためのSEO（検索エンジン最適化）、リスティング広告やSNS広告の運用、メールマガジンの配信、Webサイトのデータ分析と改善提案など、多岐にわたります。
この職種の特徴は、行った施策の結果が「数字」として明確に出やすいことです。
どの広告から何件の問い合わせがあったか、どのページがよく見られているかがリアルタイムで分かるため、スピーディーなPDCAサイクルを回す力が求められます。
デジタル技術やツールの進化も早いため、常に新しい知識を学ぶ意欲も必要です。
広告代理店（アカウントプランナーなど）
広告代理店は、クライアント（広告主である企業）のマーケティング課題を解決するために、広告戦略の立案から実行までをサポートする会社です。
その中で「アカウントプランナー（営業）」は、クライアントの窓口となり、課題をヒアリングし、社内の専門チーム（クリエイティブ、メディア担当など）と連携しながら、最適な広告プランを提案・実行する役割を担います。
多様な業界のマーケティングに携われることが最大の魅力であり、短期間で幅広い経験を積むことができます。
一方で、クライアントと社内の板挟みになることや、複数の案件を同時に進めるハードな側面もあります。
コミュニケーション能力とプロジェクト管理能力が非常に重要とされる職種です。
メーカーのマーケティング担当
メーカー（自社で商品やサービスを製造・提供する企業）のマーケティング担当は、「事業会社マーケター」とも呼ばれます。
広告代理店が「他社の商品」を扱うのに対し、こちらは「自社の商品・ブランド」を担当するのが大きな違いです。
市場調査から商品企画、プロモーション戦略の立案、販売チャネルの管理、そして売上管理まで、一つのブランドや商品に深く、長期間携わります。
自分の育てた商品が市場に受け入れられ、ブランドが成長していく過程を間近で見られることは、大きなやりがいにつながります。
社内の関連部署（開発、営業、生産管理など）との調整が非常に多く、自社のビジネス全体を俯瞰する視点と、関係者を巻き込むリーダーシップが求められます。
リサーチャー
リサーチャーは、市場調査・分析を専門に行う職種です。
マーケティングの意思決定に必要な「根拠」となるデータを提供する、重要な役割を担います。
主にリサーチ会社に所属し、クライアント企業からの依頼に応じて調査を設計・実施・分析します。
アンケート調査やグループインタビュー、統計データの解析など、専門的な調査手法や分析スキルが求められます。
また、調査結果をただ報告するだけでなく、そこから「何を意味するのか」「次に何をすべきか」といった示唆（インサイト）を導き出し、クライアントに提言することまでが仕事です。
地道なデータと向き合う時間も長いですが、論理的思考力や仮説構築力を鍛えたい人にとっては、非常に専門性の高いキャリアを築ける職種です。
広報・PR
広報・PR（Public Relations）は、企業やその商品・サービスと、社会（消費者、メディア、株主など）との間で、良好な関係性を築くためのコミュニケーション活動全般を担う職種です。
広告が「お金を払って情報を発信する」のに対し、広報・PRは「メディア（テレビ、新聞、Webニュースなど）に取り上げてもらう」ことで、社会的な信頼や共感を得ることを目指します。
具体的な仕事としては、プレスリリースの作成・配信、記者会見の運営、メディア関係者との関係構築、社内報の作成、危機管理対応（不祥事などの対応）などがあります。
華やかなイメージもありますが、実際には地道な情報発信や関係構築が重要であり、企業の「顔」としての責任感も求められる仕事です。
【マーケティング業界はきついのか】マーケティング業界がきついとされる理由
マーケティング業界が「きつい」と言われる背景には、この仕事ならではの特性がいくつかあります。
華やかなイメージの裏で、多くのマーケターが日々プレッシャーや多忙さと戦っているのも事実です。
しかし、これらの「きつさ」は、見方を変えれば市場価値の高いスキルが身につく環境であるとも言えます。
例えば、成果へのこだわりは目標達成能力を、多忙さはマルチタスク能力を、トレンドの変化は学習意欲を鍛えてくれます。
自分がこれらの環境を「成長のチャンス」と捉えられるか、それとも「過度なストレス」と感じるかが、適性を見極める上で非常に重要になります。
具体的にどのような点が「きつい」と感じられやすいのか、主な理由を掘り下げて見ていきましょう。
成果（数字）へのプレッシャーが大きい
マーケティング活動の多くは、最終的に「売上」や「利益」といった企業の業績に直結します。
そのため、かけた費用に対してどれだけの成果（ROI：投資対効果）が出たのかを、常に数字で厳しく問われることになります。
例えば、多額の予算を投じて広告キャンペーンを実施しても、売上が伸びなければその責任を問われます。
常に「結果を出さなければならない」というプレッシャーは、精神的にきついと感じる大きな要因の一つです。
しかし、自分の仕事の成果が数字として明確に見えることは、達成感や正当な評価にもつながりやすく、それをやりがいに感じる人も多いのが特徴です。
業務範囲が広く、多忙になりがち
マーケティングの仕事は、前述の「仕事内容」で解説した通り、リサーチから企画、プロモーション、効果測定まで非常に幅広いです。
特に人手が限られている企業や、広告代理店などで複数のクライアントを同時に担当する場合、一人で多くのタスクを並行して進めなければなりません。
新商品のリリース前や、大きなキャンペーンの実施期間中は、残業や休日出勤が続くことも珍しくありません。
業務の優先順位付けや効率的な時間管理ができないと、膨大な仕事量に圧倒されてしまう可能性があります。
体力的なきつさとともに、常に頭をフル回転させなければならない大変さもあります。
常に新しい情報のキャッチアップが必要
マーケティングの世界は、技術の進歩や社会の変化とともに、常に新しくなっています。
特にWebマーケティングの分野では、検索エンジンのアルゴリズム変更や、新しいSNSプラットフォームの登場、広告技術のアップデートなどが日常茶飯事です。
昨日まで正解だった手法が、今日には通用しなくなることもあります。
そのため、マーケターは業務時間外でも自主的に勉強し、最新のトレンドやツールに関する情報をインプットし続ける必要があります。
この「学び続ける姿勢」が求められる環境を、知的好奇心が満たされると楽しめるか、終わりなき勉強がきついと感じるかで、向き不向きが分かれるでしょう。
トレンドの変化が激しく、対応が大変
消費者の価値観やライフスタイル、流行は、驚くほどの速さで移り変わっていきます。
マーケターは、こうした世の中の空気感や「兆し」をいち早く察知し、それを戦略に活かさなければなりません。
例えば、SNSで突然話題になった事柄に迅速に対応したり、社会的な問題意識の高まり（例：サステナビリティなど）を商品開発に取り入れたりする必要があります。
常にアンテナを高く張り、世の中の動きに敏感でなければ、すぐに時代遅れのマーケティングになってしまいます。
このスピード感と変化への柔軟な対応が求められる点が、精神的な疲労につながることもあるでしょう。
クライアントワーク（対人折衝）の難しさ
広告代理店やリサーチ会社など、クライアント（顧客企業）の課題解決を支援する立場の場合、対人折衝の難しさも「きつさ」の一因となります。
クライアントの要望は時に曖昧であったり、無茶な要求であったりすることもあります。
そうした要望を的確に汲み取り、専門家として「言うべきことは言う」というバランス感覚が求められます。
また、社内の制作チームや関係部署との調整役も担うため、様々な立場の人の間に立ってプロジェクトを円滑に進めるコミュニケーション能力も不可欠です。
多くの人を巻き込む仕事だからこそ、人間関係のストレスを感じやすい側面があります。
論理的思考とクリエイティブ思考の両方が求められる
マーケティングの仕事は、左脳的な「論理」と右脳的な「感性」の両方を高いレベルで使いこなす必要があります。
市場データを分析して戦略を立てる際は、徹底した論理的思考（ロジカルシンキング）が求められます。
一方で、消費者の心を動かす広告コピーや企画を考える際は、常識にとらわれない柔軟な発想力（クリエイティブシンキング）が必要です。
この両極端とも言えるスキルを、一つの仕事の中で切り替えながら使わなければならない点が、この仕事の難しさであり、きついと感じるポイントかもしれません。
どちらか一方だけが得意という人にとっては、両立させるのに苦労する場面があるでしょう。
マーケティング業界の現状・課題
マーケティング業界は今、デジタル化の波によって大きな変革期の真っ只中にあります。
従来のテレビCMや雑誌広告といったマスマーケティングの影響力が相対的に低下し、インターネットやSNSを中心としたデジタルマーケティングの重要性が急速に高まっています。
この変化に伴い、業界全体としていくつかの大きな課題に直面しています。
例えば、膨大なデータをどう活用するかという問題や、多様化する消費者のニーズにどう応えていくかといった点です。
こうした現状と課題を理解することは、皆さんがこれから業界で活躍するために、どんなスキルや視点が必要になるかを考える上で非常に重要です。
デジタル化の急速な進展と対応
最大の課題は、デジタル化への対応です。
スマートフォンやSNSの普及により、消費者が情報に触れる接点が激変しました。
企業は、Webサイト、SNS、アプリ、動画プラットフォームなど、無数にあるデジタルチャネルを駆使して顧客とコミュニケーションを取る必要があります。
しかし、これらのチャネルを効果的に使いこなすためのノウハウや、デジタル技術に精通した人材が多くの企業で不足しているのが現状です。
従来のマーケティング手法に慣れた企業ほど、この変化への対応に苦戦しており、業界全体としてデジタルシフトをどう加速させるかが問われています。
データ活用の高度化と人材不足
デジタル化に伴い、企業が収集できる消費者のデータ（Web閲覧履歴、購買履歴など）は爆発的に増加しました。
これらのビッグデータを分析・活用することで、より精度の高いマーケティングが可能になると期待されています。
しかし、実際には「データを集めたものの、どう分析していいか分からない」「分析結果をどう具体的な施策に結びつければいいか分からない」という企業が少なくありません。
データを読み解き、戦略に活かせる「データサイエンティスト」や「データアナリスト」といった専門人材は、業界全体で深刻なほど不足しており、その育成と確保が急務となっています。
消費者ニーズの多様化と複雑化
現代の消費者は、価値観が非常に多様化しており、「みんなが欲しがるモノ」が生まれにくい時代になっています。
また、SNSなどで自ら情報を発信し、他の消費者の購買行動に影響を与えるなど、その行動も複雑化しています。
従来の「性別・年齢」といった単純な分類（デモグラフィック）だけでは、ターゲットを正確に捉えることが難しくなっています。
企業は、個々の消費者の興味・関心やライフスタイル（サイコグラフィック）にまで踏み込み、より細分化されたニーズに応えていく必要があります。
この「個」に寄り添うマーケティングの難易度が上がっていることも、業界の大きな課題です。
マーケティング業界の今後の動向
現状の課題を踏まえ、マーケティング業界は今後さらに大きく変化していくことが予想されます。
特にテクノロジーの進化が、その変化を強力に後押しするでしょう。
キーワードは「AI」「データ連携」「個別最適化」です。
これまでのマーケティングが「多くの人に、いかに効率よく届けるか」を重視していたとすれば、これからのマーケティングは「一人ひとりに、いかに最適な体験を届けるか」が中心になっていきます。
こうした未来のトレンドを予測し、今から必要なスキルを意識しておくことは、皆さんのキャリアにとって大きな強みとなります。
ここでは、特に注目すべき3つの動向について解説します。
AI（人工知能）の活用拡大
AI（人工知能）の進化は、マーケティングの世界を根本から変えようとしています。
これまで人間が時間と労力をかけて行っていたデータ分析や広告運用の最適化、さらには広告コピーの生成といったクリエイティブな領域まで、AIが担えるようになりつつあります。
これにより、マーケターはより戦略的な思考や、AIには難しいとされる「共感」や「創造性」が求められる仕事に集中できるようになると考えられています。
AIを使いこなすスキルは、今後のマーケターにとって必須となるでしょう。
AIに仕事を奪われるのではなく、AIを「優秀なアシスタント」として活用する視点が重要です。
OMO（Online Merges with Offline）の進展
OMOとは「Online Merges with Offline」の略で、オンライン（Webやアプリ）とオフライン（実店舗）の垣根をなくし、顧客データを統合して最適な体験を提供しようとする考え方です。
例えば、アプリで注文した商品を店舗で受け取ったり、店舗での購買履歴に基づいてオンラインで最適なクーポンを配信したりする取り組みがこれにあたります。
これにより、企業は顧客とのあらゆる接点で一貫したコミュニケーションが可能になります。
今後は、オンラインとオフラインの両方を熟知し、それらを連携させたマーケティング戦略を設計できる人材の価値がますます高まっていくでしょう。
パーソナライゼーション（個別最適化）の重視
消費者ニーズの多様化に対応するため、「パーソナライゼーション（個別最適化）」の重要性が高まっています。
これは、「すべての人に同じ情報」を届けるのではなく、データ分析に基づき、「一人ひとりの顧客に最適な情報や商品」を提案する手法です。
皆さんも、ECサイトで「あなたへのおすすめ」が表示されたり、興味に合わせたWeb広告が表示されたりした経験があるでしょう。
今後はAIの活用などにより、この動きがさらに加速します。
顧客との長期的な信頼関係を築くためにも、一方的な押しつけではない、本当にその人が求めている情報を見極める力が求められます。
【マーケティング業界はきついのか】マーケティング業界に向いている人
ここまでマーケティング業界の仕事内容や「きつさ」の理由、将来性について解説してきました。
「きつい」側面がある一方で、それを上回るやりがいや成長機会があることも事実です。
では、具体的にどのような人がこの業界で活躍できるのでしょうか。
大切なのは、知識やスキル以前の「土台」となる資質です。
華やかなイメージだけでなく、地道な分析や変化への対応といった側面も含めて、「自分に合っているかも」と思えるかどうかが重要です。
ここでは、マーケティング業界で特に求められる5つの人物像を紹介します。
自分自身の特徴と照らし合わせながら、適性をチェックしてみてください。
好奇心旺盛で、情報収集が好きな人
マーケティング業界は、トレンドや新しい技術、消費者の心理など、常に「新しい情報」を追いかける仕事です。
そのため、世の中の動き全般に対する強い好奇心は必須の資質と言えます。
普段から「なぜこれが流行っているんだろう？」「あの企業の新しいCMの狙いは何だろう？」と考えるのが好きな人は、マーケターの素質があります。
言われたことだけをやるのではなく、自ら進んで情報をキャッチアップし、それを「仕事にどう活かせるか」と考えるクセがついている人は、この業界で楽しみながら成長していけるでしょう。
論理的思考力（ロジカルシンキング）が高い人
マーケティングは「感性」や「ひらめき」だけで成り立つ仕事ではありません。
むしろ、その土台には「なぜ、その施策を行うのか」を説明できる強固な「論理」が必要です。
市場データを分析し、課題を発見し、解決策としての仮説を立て、実行し、結果を検証する。
この一連のプロセスは、すべて論理的思考力（ロジカルシンキング）に基づいています。
物事を構造的に捉え、データや事実に基づいて「だから、こうすべきだ」と筋道を立てて説明できる力は、マーケターにとって最も重要なスキルの一つです。
変化を楽しみ、柔軟に対応できる人
「常に新しい情報のキャッチアップが必要」「トレンドの変化が激しい」といった「きつさ」の理由は、裏を返せば、この業界が「変化に富んでいて飽きない」ということでもあります。
決まりきった仕事を毎日繰り返すよりも、新しい課題に挑戦したり、未知の状況に対応したりすることにワクワクする人にとっては、最適な環境です。
昨日までの常識が通用しなくなることを恐れるのではなく、「新しいことを試せるチャンス」と前向きに捉えられる柔軟性が、この業界で長く活躍するためには不可欠です。
数字やデータから仮説を立てるのが得意な人
マーケティングの成果は、最終的に「数字」で評価されます。
そのため、数字やデータに対するアレルギーがないことは大前提です。
ただ数字を眺めるだけでなく、「この数字が上がった（下がった）背景には、どんな理由があるのだろう？」とデータから意味を読み解き、仮説を立てる力も求められます。
例えば、「Webサイトの訪問者数は増えたのに、売上が伸びない」というデータから、「もしかしたら、商品の魅力が伝わるページにうまく誘導できていないのではないか？」といった次のアクションにつながる「気づき」を得られる人が向いています。
粘り強く、成果にこだわれる人
マーケティングの施策は、最初からすべてがうまくいくとは限りません。
むしろ、失敗や試行錯誤の連続であることの方が多いでしょう。
立てた仮説が外れたり、キャンペーンの反応が予想より悪かったりした時に、「やっぱりダメだ」と諦めてしまう人には務まりません。
なぜうまくいかなかったのかを冷静に分析し、「どうすれば次はうまくいくか」を考え、粘り強く改善を続けられる「成果への執着心」が重要です。
この地道なPDCAサイクルを回し続ける先に、大きな成功が待っています。
【マーケティング業界はきついのか】マーケティング業界に向いていない人
一方で、マーケティング業界の特性が、どうしても自分の性格や志向と合わないという人もいます。
適性がない業界で無理に頑張ろうとすると、心身ともに疲弊してしまい、「きつい」と感じる度合いが人一倍強くなってしまいます。
大切なのは、良い・悪いではなく、「合う・合わない」で判断することです。
自分が「向いていない人」の特徴に多く当てはまるからといって落ち込む必要はありません。
それは、あなたが別の環境でこそ輝ける可能性が高いというサインでもあります。
自分に嘘をつかず、客観的に自己分析するためにも、ぜひ参考にしてみてください。
ルーティンワークを好む人
マーケティングの仕事は、日々状況が変化し、新しい課題が次々と発生します。
毎日決まった手順で、決まった作業を正確に行うようなルーティンワークは非常に少ないです。
むしろ、前例のないことに挑戦したり、同時に複数の異なるプロジェクトを管理したりすることが求められます。
「毎日同じことの繰り返しの方が安心する」「マニュアル通りにきっちり進めたい」という志向性の人は、変化の多いマーケティングの環境をストレスに感じてしまう可能性が高いでしょう。
数字やデータ分析に苦手意識がある人
「向いている人」の裏返しになりますが、数字やデータを見るだけで頭が痛くなるという人には、マーケティング業界は正直かなりきつい環境です。
マーケティングの戦略立案から効果測定まで、あらゆる場面で数字やデータに基づいた判断が求められます。
「なんとなく、これが良さそう」といった感覚的な判断だけでは通用しない世界です。
もちろん、入社後にスキルとして学ぶことは可能ですが、根本的に数字やロジックよりも「感情」や「直感」を優先したいタイプの人にとっては、苦痛に感じる場面が多いかもしれません。
プレッシャーに弱い人
マーケティングは「成果（数字）へのプレッシャーが大きい」仕事です。
自分の仕事が会社の売上に直結するため、常に結果を出すことを求められます。
また、広告代理店などでは、クライアントからの期待というプレッシャーもかかります。
こうした緊張感の中で、「失敗したらどうしよう」と過度に不安になってしまう人や、プレッシャーがかかると本来の力が出せなくなってしまう人は、精神的に追い詰められやすいかもしれません。
適度なプレッシャーを「やりがい」に変えられる強さが必要です。
新しいことを学び続けるのが苦手な人
この業界は、トレンドも技術も猛スピードで進化しています。
そのため、「一度覚えたら、あとはそれを使うだけ」という働き方はできません。
大学で学んだ知識があっという間に古くなることもあります。
仕事が終わった後や休日にも、自ら進んで新しい情報をインプットし、学び続ける意欲がなければ、すぐに周りから取り残されてしまいます。
「勉強は学生時代までで十分」と考えている人や、新しいツールの操作方法などを覚えることに抵抗がある人にとっては、継続的な学習が苦痛になるでしょう。
自分のアイデアに固執しがちな人
マーケティングの企画は、一人の天才的なひらめきで決まることは稀です。
チームのメンバーやクライアント、時にはデータ分析の結果に基づいて、自分のアイデアを修正・変更していく柔軟性が求められます。
「これが絶対に正しい」と自分の考えに固執し、他人の意見や客観的なデータを受け入れられない人は、チームでの仕事がうまくいかなくなってしまいます。
良いアイデアを生み出すことも大切ですが、それ以上に、多様な意見を取り入れて「より良い答え」を導き出す協調性が重要です。
マーケティング業界に行くためにすべきこと
マーケティング業界が自分に合っているかもしれない、挑戦してみたいと思ったなら、次はいよいよ具体的な準備を始める段階です。
マーケティング職は専門性が高いイメージがあるため、新卒にはハードルが高いと感じるかもしれませんが、そんなことはありません。
学生時代からできる準備はたくさんあります。
大切なのは、「マーケティングに興味があります」という言葉だけでなく、「そのために、こんない行動をしてきました」という具体的な根拠を示すことです。
ここでは、就職活動本番に向けて、皆さんが今から取り組むべきことを3つのステップで紹介します。
業界・企業研究の徹底
まずは、敵を知ることから始めましょう。
マーケティング業界と一口に言っても、「メーカー（事業会社）」「広告代理店」「リサーチ会社」「Webマーケティング支援会社」など、様々なプレイヤーが存在し、それぞれビジネスモデルや働き方が全く異なります。
自分がどの領域に興味があるのか、どんな働き方がしたいのかを明確にするためにも、徹底的な業界研究が必要です。
さらに、気になる企業があれば、その企業が「どんなマーケティング戦略」で成功（あるいは失敗）しているのか、競合他社と比べてどんな強みがあるのかを自分なりに分析してみましょう。
関連する知識のインプット（書籍、Web、資格学習など）
マーケティングの基礎知識は、学生のうちからでも十分に学べます。
まずは、マーケティングの入門書を1〜2冊読んでみましょう。
フレームワーク（3C分析、SWOT分析、4Pなど）と呼ばれる基本的な考え方を理解するだけでも、業界研究や企業分析の質が格段に上がります。
また、Webマーケティングに興味があるなら、関連するWebメディアを読んだり、「マーケティング検定」や「Webアナリスト検定」などの資格学習に挑戦してみるのも良いでしょう。
知識があることは、それだけで熱意の証明になります。
実践経験を積む（インターンシップ、SNS運用など）
知識のインプTプットと並行して、ぜひ「実践」にも挑戦してみてください。
最も効果的なのは、マーケティング関連の長期インターンシップに参加することです。
実際の現場で社員の方と働く経験は、他の何にも代えがたい学びになります。
それが難しくても、例えば「自分自身でブログやSNSアカウントを立ち上げ、フォロワーを増やすために試行錯誤する」ことも立派な実践経験です。
「なぜ、この投稿は反応が良かったのか」を分析し、改善するプロセスは、まさにマーケティングのPDCAそのものです。
適職診断ツールを用いる
「マーケティング業界がきついかどうか」は、結局のところ、その人の「適性」次第な部分が大きいです。
自分では「向いている」と思っていても、客観的に見たらそうでもなかったり、逆に「向いていない」と思っていた強みが活かせたりすることもあります。
そこで役立つのが、適職診断ツールです。
こうしたツールは、いくつかの質問に答えるだけで、あなたの性格的な強みや弱み、どんな仕事環境で力を発揮しやすいかを客観的に分析してくれます。
自分一人で自己分析を進めるのが難しいと感じる時や、自分の考えが偏っていないかを確認したい時に、ぜひ活用してみてください。
【マーケティング業界はきついのか】適性がわからないときは
ここまで読んでも、「やっぱり自分にマーケティング業界が合うのかどうか、確信が持てない」と不安に思う人もいるでしょう。
それは当然のことで、まだ社会に出て働いた経験がないのですから、完璧に適性を判断するのは難しいです。
大切なのは、わからないまま放置しないことです。
適性がわからない時は、まず「自己分析」をもう一段階深掘りしてみましょう。
なぜマーケティングに興味を持ったのか、その「きつい」とされる部分（例：数字へのプレッシャー、変化の速さ）を自分は許容できそうか、過去の経験（部活、アルバイトなど）と照らし合わせて考えてみてください。
それでも迷う場合は、大学のキャリアセンターや、私たちのような就活アドバイザーに相談するのも一つの手です。
おわりに
マーケティング業界が「きつい」と言われる理由と、その実態について解説してきましたが、いかがでしたか？確かに、プレッシャーや多忙さ、常に学び続ける姿勢が求められる大変な仕事です。
しかし、それらは自分の力で市場を動かし、世の中に影響を与えるという、この仕事ならではの大きなやりがいの裏返しでもあります。
もし皆さんが、この記事を読んで「きつそうだけど、面白そう！」と少しでも感じたなら、ぜひ挑戦する価値のある業界だと思います。
皆さんの好奇心と論理的思考力を武器に、就職活動を乗り切ってください。
応援しています！
