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はじめに
ベンチャーとスタートアップの違いを明確に説明できますか。
ベンチャー企業は日本でも長く使われてきた言葉ですが、近年になってスタートアップという言葉も見聞きするようになってきました。
日本でベンチャー企業というと冒険的な事業をする新しい企業のイメージがあります。
一方、スタートアップは言葉の響きから設立間もない企業とか、ベンチャーの中で設立したばかりの企業と思われるケースが少なくありません。
ですが、これらの認識は間違っている可能性があります。
本来の意味や位置づけ、違いを詳しく確認していきましょう。
【ベンチャーとスタートアップ】ベンチャーとスタートアップの由来とは?
ベンチャーとスタートアップは由来がそもそも異なっています。
ベンチャーというと英語であることもあり、アメリカなど海外から伝わってきた呼び名に思われますが、実は和製英語であり、海外では基本的に通用しません。
ベンチャーといっても、日本で使われているのと同じ意味では伝わらないので注意が必要です。
一方、スタートアップはアメリカ発祥の言葉で、日本人が考えるベンチャーの意味合いに近いです。
間違えやすい原因が発祥の段階でも潜んでいるので、注意しなくてはなりません。
和製英語の”ベンチャー企業”
ベンチャー企業というとアメリカなど海外から伝わってきたイメージを持たれやすいですが、実は日本人が作った和製英語です。
アメリカではベンチャー というと企業の形ではなく、ベンチャーキャピタルという意味になることが一般的です。
ベンチャーキャピタルとは、日本でいうベンチャー企業、新しいビジネスにチャレンジするスタートアップ企業に資金を出資する投資家団体のことを指します。
日本でベンチャー企業という場合、これまでの歴史ある大手企業や中小企業に比べて、若い経営者などによって設立された小さな企業などを意味します。
新しいアイディアや最新の技術をもとに、大企業では対応しにくい小回りの利くビジネスを行う企業というニュアンスが強いです。
アメリカ発祥の”スタートアップ”
スタートアップという言葉は、アメリカのシリコンバレーで使われ始めました。
GoogleやAmazon、Facebookなどの会社を呼んだのがキッカケです。
これらのIT企業やネット系のビジネスの新しい会社は、日本ではベンチャー企業と認識されやすいですが、正式にはスタートアップと呼びます。
日本では日本生まれのベンチャー企業という概念に対して、さらにアメリカからスタートアップという概念が入ってきたので、混同されやすくなっています。
さらにこれまでベンチャーと呼んでいた新しいビジネスに挑戦する企業を、アメリカに倣ってスタートアップと呼ぶようになってきたため、余計に混乱が生じているのが現状です。
違うものは発祥地だけではない
ベンチャーという言葉は日本で生み出され、スタートアップはアメリカで生み出されたことがわかりました。
発祥地が違うものの、日本においては現在どちらも使われているのが現状です。
しかも、厄介なのはベンチャーとスタートアップでニュアンスが使い分けられていることです。
とはいえ、アメリカでいうスタートアップが日本でいうベンチャーと勘違いされることも少なくありません。
発祥地以外の違いも理解することで、使い分けができるようになります。
【ベンチャーとスタートアップ】ベンチャーとスタートアップの主な違い
ベンチャーとスタートアップの主な違いは発祥地だけでなく、大きく4つの事柄が挙げられます。
それは、ビジネスモデルの違い、設立年、最終的な目標、収益性の違いです。
もっとも、成長するにしたがってスタートアップがベンチャー化し、メガベンチャーに成長することもあるので、一概に分けられるわけではありません。
ですが、ベンチャーとスタートアップの違いを棲み分けるうえでは、4つの事柄の違いをまずは押さえておくことがおすすめです。
ビジネスモデルの違い
ベンチャー企業のビジネスモデルは、新しいことへのチャレンジと思われがちですが、実は既存のビジネスモデルに少し変化を与えたものが基本となります。
これに対して、スタートアップは今まで世の中にない新しいものを作り出し、世の中に革新をもたらすのがビジネスモデルです。
ベンチャー企業の場合、既存の市場においてある程度受け入れられているビジネスを、既存のビジネスモデルをベースに少し形を変えて展開していきます。
小さな企業ながら、消費者に新しいと思わせる価値を加えることやサービスの提供の仕方などを変えることで、大手企業に追いつき、しのぐような成長を目指そうとします。
スタートアップはこれまでにない革新的な技術や商品、サービスの開発や提供を行い、世の中に大きな影響をもたらそうとするのがビジネスモデルです。
これまでにないビジネスモデルのため、成功すれば独り勝ち状態となり、一気に急成長も期待できます。
設立年
アメリカでスタートアップという場合、設立年の浅さや若さは関係なく、ビジネスモデルの革新性や成長した際に企業売却を検討しているなど、EXIT戦略があるかどうかで判断されるのが一般的です。
これに対して日本においては、スタートアップという場合、設立3年以内で、社員数が少ない、会社の規模が小さい場合をスタートアップと呼ぶことが少なくありません。
ベンチャー企業が成長するとメガベンチャーと呼ばれることがありますが、メガスタートアップ企業は日本の定義では存在しないことになります。
日本ではスタートアップ企業は設立が間もないベンチャー企業を指す場合もあるので、注意が必要です。
一方、ベンチャー企業は設立後の年数が経ってもベンチャー企業であり、中小企業へと変化することはありません。
もっとも、設立当初は社員数が少なく、会社の規模も小さく、成功できれば、大手企業と比肩するようなメガベンチャーへと成長することもあります。
最終的な目標
ベンチャーは既存の商品やサービスに新しい価値をプラスすることや最新の技術を利用しながら大きくなり、いずれは株式公開や上場を目指すなど、長期的な視点で成長を目指す企業が基本です。
これに対して、スタートアップは短期間で成長を遂げ、事業売却を行って利益を得るというEXIT(エグジット)を目指しているケースが少なくありません。
もっとも、アメリカのスタートアップ企業の代表であるGoogleやAmazon、Facebookは短期間での事業売却どころか、アメリカ社会を圧倒し、世界進出もして世界的な企業に成長しているだけに、短期成功による売却という最終目標とはかけ離れているのが現実です。
日本でいうと、ベンチャー企業は利益拡大を目指して成長を遂げ、新興市場への上場、最終的には一部上場を目指し、知名度も信頼度も高いメガベンチャーへと成長することを目指します。
スタートアップは継続的に事業を維持するとしても、創業社長は途中で事業を他者に売却するなどし短期での利益を確定しているケースがあります。
収益性
ベンチャーは既存市場に参入することや既存のビジネスモデルをベースに収益性を高める工夫をしていくのが基本です。
堅実に収益を上げていき、上場を目指すなど経営の安定を図るための努力をしていく企業です。
そのためのコストダウンや利益の内部留保、融資の取り付けなどの努力も怠りません。
これに対して、スタートアップはこれまでになかったものを一から開発することや世の中に送り出す企業です。
開発のために多額の投資をしている場合やリリースしても、なかなか人々に受け入れられないなど利益が得られるまでに時間がかかり、死の谷とも呼ばれる赤字の時間が続くことになります。
とはいえ、多くのスタートアップはEXITまでが短いのも特徴的です。
アメリカにおいてはEXITを目的に起業し、企業を急成長させ、市場価値を高めて事業売却や企業売却というEXITすることを繰り返す起業家も少なくありません。
これまでにないイノベーションを起こして、新しいビジネスモデルを手探りで構築していくスタートアップにおいては、堅実に収益を重ねていくベンチャー企業とは、リスクの取り方も、成長スピードも大きく違うというのが特徴です。
【ベンチャーとスタートアップ】まとめ
今回はベンチャーとスタートアップの違いについてご紹介してきました。
発祥地が異なり、ベンチャーは和製英語であり、スタートアップはアメリカ生まれであること、ビジネスモデルの違い、設立年、最終的な目標、収益性の違いに特徴があることがわかりました。
もっとも、人によっても認識が違っていたりと、境界線が曖昧なケースは少なくありません。
企業を表す言葉は数多くありますが、正しく理解することでニュースの読解や就職活動などにも役立つこと間違いなしです。