はじめに
理系生は大手企業だけでなく、ベンチャー企業にも就職する実態はあるのでしょうか。
ベンチャー企業といっても、業種やジャンルも幅広く、職種もさまざまです。
理系生がベンチャー企業に就職するとしたら、どのようなベンチャー企業を志望し、どのような仕事をしたいと思っているのでしょうか。
ベンチャー企業へ理系生が就職する利点・大手との違いも含めて、ベンチャー企業へ理系生の就職の実態を紐解いていきます。
【理系生のベンチャー就職】理系生が就職する業界
ベンチャー企業というとITベンチャーがイメージされがちですが、実際にはさまざまな業界で活躍する企業があります。
理系生が就職するのはどのような業界があるのでしょうか。
大きく分けると大学で学んだ知識や研究した内容、身につけたスキルなどが活かせる業界、そして、理系とは関係ない業界に分けられます。
理系が有利な業界では、ベンチャーに多いIT系のほか、新たな商品を生み出すメーカーや近年注目されている医療系ベンチャーも人気です。
エンジニア
理系でベンチャーに就職する方で最も多いのが、ITベンチャーです。
エンジニアとして大学での専攻や独学で磨いたIT技術を駆使して、システム開発やプログラミング、保守サービスなどの仕事を行います。
理系生の就職の実態としてエンジニア職に就く方は、圧倒的に多くなっています。
知識や技術を活かせるのはもちろん、国をあげてのDX推進やフィンティックなど将来性が期待でき、AIなど新しい技術もどんどん進化し続ける分野だからです。
もっとも、エンジニアといっても1種類ではなく、システムエンジニアやネットワークエンジニア、オープン系など幅広い職種があります。
プログラマーの職種も扱える言語によって、向いている企業が異なるので、自分の強みをどう活かせるかが就活のポイントです。
メーカー
メーカーも機械や自動車、家電製品からデジタル機器、建築資材から日用品、食品に至るまで幅広い分野があります。
独自のアイディアや技術に基づき商品開発や販売を行うベンチャー企業では、家電系やデジタル機器系、インテリア系や日用雑貨系、利便性に優れた建築資材系などが多いです。
ベンチャーは小規模な企業が多いため、小型の製品開発が多く、製造はOEMなどで委託しているケースも少なくありません。
理系で学んだ知識や技術を活かして、新たな商品の開発や改良に携わっていくのがベンチャー就職の実態です。
柔軟な発想力とスピードを活かして革新的な商品を世に打ち出していくのはおもしろさもあり、得意のハードウェアなども活用しながら開発設計を実施します。
医療系は理系が強い
高齢化やライフスタイルの多様化、ニーズの多様化などで、医療機関や介護施設をサポートするサービスや電子カルテサービスを提供するベンチャー、オンライン診療や訪問医療をサポートする医療系ベンチャーが続々と誕生してきました。
医師が起ち上げたファストドクターサービスや、海外の医療機器などを販売するベンチャーなど、ジャンルも多角化しています。
医療系職種は理系生にとって専門的な領域となるため、理系生のベンチャー就職に有利です。
医学部や薬学部だけでなく、薬品や成分の知識を持つ化学系や医療機器などの機器の知識がある工学系をはじめ、医療とITの関わりも欠かせないのでIT系の理系生にも人気の分野です。
【理系生のベンチャー就職】理系生の就職例
理系生に人気のベンチャー企業の業界を見てきましたが、理系生の就職の実態として、どんな就職例があるのでしょうか。
情報処理学部やデジタル学科などIT系を専攻してきた理系生がIT系に進むのはもちろんですが、他学部や他学科でも就職している例は少なくありません。
大学で学んだのとは異なる分野への就職を決める人もいます。
先輩たちが、どのような考えのもと、ベンチャー就職をしたのか覗いてみましょう。
大学生物学専攻からITベンチャーに
理系は理系でも、生物学というITとは一見無関係な専攻からITベンチャーに就職した先輩がいます。
なぜ、ITベンチャーに就職したかというと、就活にあたって自己分析をする中で、研究職に就くことに違和感を感じたからです。
生物学専攻者は大学院に進学して研究を続ける場合や環境保護や生物保護に携わる研究機関や公的機関への就職、中高の生物学の教員、医薬品や化粧品、食品メーカーの研究所の研究員などになる人が多いです。
ですが、0からさまざまなものを作りたいと感じて、将来性もあるITベンチャーを選びました。
ITは独学でもプログラミング言語などの習得がしやすく、理系生はもともとPCの扱いが得意なので、鞍替えは比較的スムーズです。
理系大学から文系職へ
理系だから理系職しか就職できないわけではありません。
アルバイトを通して、人と関わることに魅力を感じ文系職へ就職した人もいます。
学生時代のアルバイトの文系職というと、接客・サービス系やオフィスワーク系、理系的な製品以外の営業職などです。
そのほか、コンサルティング職や出版、編集といったメディア系や商社も人気です。
ベンチャー企業の中には、不動産投資分野で成長している企業も少なくありません。
営業職として活躍する理系出身者も意外に多いです。
不動産営業というと文系職に思えますが、文系出身者でも学生時代に不動産の販売について学ぶわけではありませんから、競争相手としては対等です。
就活で特に不利になるわけではありません。
【理系生のベンチャー就職】ベンチャー就職するメリット
では、理系生がベンチャーに就職すると、どんなメリットがあるのでしょうか。
主なメリットは「文系と差別化できる」、「1年目から裁量権が与えられる」、「多くの経験を望める」、「幅広い仕事ができる」です。
大手企業との違いも含めて、見ていきましょう。
文系と差別化できる
ベンチャー企業の中でも、将来的な成長が期待できるIT系や医療系は人気です。
この点、メガベンチャーを中心にITベンチャーは文系生からも人気があり、独学やIT系の専門学校などに通ってITスキルを習得して就職を目指す人も少なくありません。
もちろん、文系生でも理系職に就くことは可能ですが、能力的に理系生の方が有利となる業務が多いです。
就活においても、ベンチャー企業は即戦力重視なので、細かく教えなくてはならない新卒より、素養がある理系出身者の新卒を選ぶ傾向が強いです。
そのため、同期入社に文系と理系がいた場合、任される仕事が違う場合や先陣を切って成長していくこともできます。
小さい企業なので能力次第で、大手に比べて同期や同僚との差別化を図りやすいのがメリットです。
1年目から裁量権が与えられる
人数が少ないため、1人の裁量権が大きく、新卒1年目でも裁量権が与えられる場合が少なくありません。
自分の能力やアイディアを活かし、柔軟かつ自由度の高い仕事ができるのもメリットです。
もっとも、裁量権が大きいことは、責任が重いことの裏返しでもあります。
任された仕事を、使命感を持って取り組める人は成長が期待できます。
企業から求められていることを理解し、自分で目標を定め、成果をあげ、評価されようと頑張れる人は成長スピードも速く、高収入も目指せるのがメリットです。
ベンチャー企業は成果主義、実力主義なので、成果をあげれば上げるほど評価され、若くしても高収入が期待できます。
多くの経験を望める
人数が少ないうえ、成長のスピードが速いので、さまざまな経験を積むことができます。
時に自分が携わっている職種や業務以外の仕事を振られることもありますし、次々に新しいプロジェクトが進行することや新たな事業に乗り出すこともあるため、多くの経験が積めます。
大手企業のように伝統や信頼の継承や、型にはまった仕事、多くの決裁が必要な時間のかかる仕事ではなく、新しいビジネスに一から取り組める機会が多いのもメリットです。
一から携われると、ベンチャー企業においての成長はもとより、他の企業に転職することや独立起業することがあっても、経験やノウハウが活かせます。
幅広い仕事ができる
成長のスピードが速く、次々に新しいビジネスプロジェクトが生み出されるうえ、人数が少ないので、自分が担当するITなどの業務以外にもさまざまな仕事を任されます。
時に雑用的なこともありますが、取引先へのプレゼンなど営業的な仕事や顧客向けのサポート業務、社長など経営陣に同行しての仕事などの機会も少なくありません。
大手企業と異なり、経営陣との距離も近く、新卒であっても、常に同じフロアでデスクを並べて仕事をする企業も多いです。
社長不在中はベテランの社員に業務を任せ、新人を同行させて現場を見せてくれる社長も多いです。
自分が望んだ仕事ではないなどと思わず、小さな仕事から思いがけない仕事まで対応し、マルチな成長を遂げられるのもメリットと言えるでしょう。
【理系生のベンチャー就職】ベンチャー就職するデメリット
では、ベンチャー就職には、どんなデメリットがあるのでしょうか。
大手企業と比べた場合、「仕事・給料が安定しない」、「教育環境が整っていない」といったデメリットが挙げられます。
詳しく見ていきましょう。
仕事・給料が安定しない
大企業に比べ、経営も安定しておらず、給料や仕事は安定していない点がデメリットです。
ベンチャー=すでに成功しているメガベンチャーをイメージしてしまうと、思わぬリスクがあります。
ベンチャーの中には事業を軌道に乗らせることに失敗する場合や一発屋で終わってしまい、早期に撤退、倒産するケースも少なくありません。
新卒を採用するレベルのベンチャー企業では、それなりに事業が安定してきたケースは多いものの、最初の事業が成熟してしまうと、それ以上の伸びが期待できなくなる場合や他社に買収される可能性もあります。
買収されてリストラとなる可能性もあるので、注意が必要です。
万が一、ベンチャー企業がなくなるリスクも踏まえて、能力を高めていかなくてはなりません。
教育環境が整っていない
ベンチャー企業は創業からの年数も少なく、人材育成のためのノウハウも蓄積されていないうえ、人数不足などにより、教育環境が整っていないことが多いです。
全体的に若手が多く、指導できる立場のベテランがいない企業も少なくありません。
そのため、新卒で入っても、ビジネスマナーや基本的な研修もなく、いきなり初日から普通に業務を任されることも多いです。
電話の取り方や取引先との対応の仕方、メールの文面の作り方など、独学やほかのスタッフのやり方を見て学びながら習得していく必要があります。
自分なりに頑張って成長したい方やアルバイトやインターンで社会人の基礎は身についているという人には向いていますが、教育をしっかり受けたい人にはデメリットです。
【理系生のベンチャー就職】どちらに行くかはやりたいこと次第
理系生がベンチャーと大手いずれを志望するか、理系が有利な職種と文系と競合する職種と、どちらに行くかは、結局のところ自分のやりたいこと次第です。
理系出身だから理系職でないと不利、つまらない、せっかく理系で専門性を身につけたのだから、安定している大手にいくべきといったべき論ではなく、自分の考えや将来の希望を重視して選びましょう。
そのためには、自己分析などを通じて、自分がやりたいことをしっかりと見極めていくことが大切です。
なんとなく、そっちがいいといった選び方では就職しても早期離職につながるおそれがありますので、自分と向き合うことは重要です。
理系生は文系就職も可能なので、自分から情報を取りに行く姿勢が大切になります。
【理系生のベンチャー就職】まとめ
理系生だから専門性を活かして大手企業に就職すべく、理系職種に就くべきと考えを固定するのではなく、自己分析などを通じて、自分が本当にやりたい仕事や将来目指す姿を検討しましょう。
そのうえで望むならベンチャー就職や文系職種も、あなたにマッチした就活先になります。