はじめに
半導体という言葉は知っていても、その業界や詳しい仕事内容を知っている人は、あまり多くありません。
ただ近年では半導体ベンチャーも数々登場し、就活生にとっても注目すべき相手となりました。
事実、半導体は現代社会になくてはならないとても重要な存在であり、日本だけでなく世界中で需要の高まりを見せる産業です。
ここでは半導体ベンチャーへの就職に興味を惹かれている就活生に向けて、今後も規模拡大が予想される業界の実態、仕事内容、将来性などについて詳しく解説します。
【半導体ベンチャーって何するの?】そもそも半導体とは?
半導体とは、スマートフォンやパソコンなど電子機器に利用されている物質であり、主に記憶や演算を行っています。
誰もが毎日使っている電子機器の中に確実にあるもので、電気や電波を当たり前に利用している現代社会では欠かせないものです。
家庭内ではデジタル家電はもちろん電気・水道・ガスの制御、社会インフラでは電車のシステムや金融機関の業務システムに至るまで、非常に幅広く半導体が使われています。
まさに今の人の文化を支えているものであり、今の生活を維持するためには半導体は不可欠ですし、これから先ITで発展する社会を見据えれば、さらにその重要は増すばかりです。
すでに世界中で大量の半導体が必要となっており、半導体市場は世界中で急拡大しています。
【半導体ベンチャーって何するの?】半導体ベンチャーの仕事内容
半導体ベンチャーがどのような仕事をしているかを理解するために、まずは半導体業界の仕事をまとめておきましょう。
半導体業界には、技術職である半導体メーカーと、営業職である半導体商社とに大別することができます。
一口で「半導体の会社」といっても、それぞれはまったく異なる仕事をしているので、就活にあたってはきちんと理解しておきましょう。
また、半導体メーカーの仕事はさらに「前工程」と「後工程」の2つにわけられていますので、その点も重要です。
就活生にとっては、自身の専攻なども踏まえてどの位置付けの企業を目指すのか、どういった職種を希望するのかが重要になってきます。
毎年人気の高い業界ではありますが、希望どおりに就職するためには大切なポイントです。
研究開発
半導体メーカーは技術職であり、半導体の研究開発を行っている企業です。
半導体の研究開発は2段階にわたって行われるため、一般的に前工程と後工程という2つに大別して仕事をしています。
前工程は設計や研究、後工程は評価検証という役割を担っていますが、まずは詳しく見ていきましょう。
前工程
前工程は、半導体の設計やウェーハの開発製造を担当しますが、ウェーハとは半導体の元になるものです。
ICチップの材料となる円形の薄い板で、現在はシリコーンの単結晶でできたシリコーンウェハが主流となっています。
研究開発部門では半導体の次世代製品を生み出し、半導体製造装置の設計や基盤技術の確立などを主な仕事としているため、一般的には技術系総合職として理系の学部卒や修士了、博士了の募集となります。
後工程
後工程では、開発されたICチップの回路パターンを正確に切り出していくダイシングという作業を行う場合もありますが、半導体メーカーによっては、ダイシングまでを前工程に入れる場合もあります。
回路パターンは肉眼では追えない詳細なものであり、ダストの混入が許されないため、徹底管理されたクリーンな環境下で仕事を行います。
切り出されたチップを組み立てたり、精度の検査を行ったりするのが後工程のメイン業務で、特性や外観、寿命などの試験を行い、信頼性を確立するのが主な仕事です。
営業・マーケティング
営業・マーケティングは自社製品を売り出してくのが主な仕事ですが、国内だけでなく海外でも顧客のニーズを聞き入れ、自社製品を提案する必要があります。
近年ではとくに、中国や東南アジアなどでの営業が盛んですので、語学も必要です。
取引先は半導体商社メーカーや半導体メーカー、電子機器、精密機器メーカーなどとなり、それぞれに自社ならではの技術を提案できる力が求められます。
【半導体ベンチャーって何するの?】半導体ベンチャーの特徴
2018年ころから、日本の半導体ベンチャーが独自のAIチップ開発に挑戦するニュースなどが取り上げられるようになりました。
それまで世界のITベンダーになかなか追従できていなかった日本が、若いベンチャーのパワーで独自路線を打ち出しはじめたことには、業界内外から大きな期待が寄せられています。
新しい半導体の応用や新しい半導体産業の育成を狙う日本の半導体ベンチャーへの期待は大きく、とくに大量生産だけに特化した工場では実現できない、新たな半導体チップの進化が注目されています。
市場の活発化
半導体が活かされる分野は非常に幅広く、全世界で大幅な供給不足が叫ばれているのが現状です。
もちろん誰もが知るとおり、スマートフォンやパソコンなどが普及し、市場が一気に拡大したこともその理由です。
また、次世代通信規格5Gや自動車運転技術の導入、ARやVRなどの仮想空間技術の進化、遠隔医療やロボット産業など、新しい分野においても半導体は必須の物質となっています。
こうした市場の急激な活発化に対応できるのは、ベンチャーのように若く意欲的で成長パワーを秘めた企業が最適だといえます。
半導体ベンチャーはこうした市場の変化にいち早く気づけること、そしていち早く行動に移せることがもっとも大きな特徴であり、強みでもあります。
市場に対する柔軟性を持つ
もともと活性化しつつあった半導体業界の注目度を、さらに上げることになった半導体ベンチャーもあります。
このコロナ禍において、生物の持つ能力や性質を活用しながら医療や食糧確保に貢献するバイオベンチャーが、世界の注目を浴びることは至極当然でしょう。
ところがヒトゲノム解析の普及拡大のため、データ処理をより高速かつ安価に実現できる開発に乗り出したのは、日本の半導体ベンチャーです。
このように、今まさに世の中で求められている技術に対して迅速かつ柔軟に対応できるというのは、ベンチャーの一番の強みであり存在意義でもあります。
人材不足が加速している
日本の半導体ベンチャーは現在非常に画期的な試みを行っており、前述したように従来の半導体業界の枠組みを超えるような画期的な研究開発にも携わりはじめています。
ただ、たとえばバイオに携わるためには相応の専門知識が必要となりますし、世界からの需要は高まっているものの人材は不足しているのが実情です。
未踏の地に踏み入り、人々が求める解決をつかみ取る努力を続けるベンチャーは現代社会の期待の星ともいえますが、もちろんそれを支えるのは、1人1人の人間です。
半導体ベンチャーに限らず多くのベンチャーでは人材不足が加速しており、意欲をもって挑戦できる人のパワーを常に求めているのも、ひとつの特徴といえるでしょう。
【半導体ベンチャーって何するの?】半導体ベンチャーの事業例
それでは、日本で注目したい半導体ベンチャーの事業例を紹介しましょう。
実にさまざまな半導体ベンチャーが新しい試みをはじめていますので、ぜひ企業研究をしてみてください。
メガチップス
1990年に日本で初めて操業したシステムLSIのファブレスメーカーであり、開発から設計までを行う研究開発に特化した独自技術が強みです。
車載分野や産業機器分野、通信インフラ分野、エネルギー制御分野、ロボット分野で事業展開を進めており、すでにベンチャーの域は超えつつある企業といえるでしょう。
従来は複数のチップで構成していた機能をひとつのLSIに集積したものをシステムLSIと呼んでいますが、こうした技術革新により、スマートフォンの小型軽量化が実現したのも事実です。
複雑な機能を実現する、機器の頭脳を設計開発する実力をもつ企業といえます。
フロスフィア
創業者は京都大学工学部卒業の人羅 俊実 代表取締役CEOで、日本の大学が生み出す新しい材料の応用開発を行い、誰より早く事業化することにチャレンジしています。
水から半導体を作る技術により電源・車載・動力領域でのイノベーション実現への貢献を目指していますが、新規応用展開はコーティング分野です。
金属めっきや有機膜の成膜、ハイブリッド材料合成による電子材料・電池材料・コーティング・加飾・めっきなどへの展開も目指しています。
Mitate Zepto Technica(MZT)
ヒトゲノム解析はDNAの読み取り速度が5分程度にまで高速化されたにも関わらず、データの後処理に50分程度かかり、普及を妨げる要因となっていました。
同社はこのデータ処理を高速で安価に実現することに挑み、2020年9月に創業したベンチャーです。
2021年10月ころには試作チップ生産に入る予定となっており、従来の解析時間を10分の1である5分程度に、システム導入コストを200万円程度にすることを目指し、注目されています。
【半導体ベンチャーって何するの?】まとめ
半導体は現代社会の生活に欠かせない存在であり、世界中からニーズが高騰している物質です。
日本企業は長らく諸外国に取り残される状況にありましたが、近年、独自の技術と着眼点で新たな価値を生み出す半導体ベンチャーが数々登場し、世界の注目を集めています。
ベンチャーである以上、人的リソースが不足する企業も多いですが、間違いなく将来性のある産業といえるでしょう。
仕事内容によっては専門知識を求められる場合がありますが、例年就活生からは高い人気を誇るベンチャーです。 しっかり事前研究を行って就活に励んでください。