はじめに
製薬会社といえば古くからある大手企業ないし、外資系の資金力がある企業を思い浮かべる人も少なくありません。
しかし、最近では世界情勢もあいまって、業界としてかなり収益が出ています。
そのなかで次々と新しい、いわゆる製薬ベンチャーなる企業が新しく登場しています。
この記事は、製薬ベンチャーの仕事内容やコロナ禍での事業例についてまとめた記事です。
これから就職活動で製薬系の業界に行きたいと考える人はぜひ参考にしてください。
【製薬ベンチャーって何するの?】そもそも製薬とは?
製薬会社は社名が知られていることもあり、業務内容が想像しやすいものです。
しかし、製薬ベンチャーの事業内容についてはいくらか疑問が残ります。
まずは製薬ベンチャー改め、製薬業界全体の理解を深めるために2つの軸をもとに業界の内情を見ていきます。
・製薬ベンチャーの現状は?
・製薬ベンチャーのこれから
飛ぶ鳥を落とす勢いで著しく発展を遂げる業界であることは説明せずともわかりますが、課題点などをあげられると就活にも役立つでしょう。
製薬ベンチャーの現状は?
製薬ベンチャーの現状は、大規模な発展が見込まれ、新規参集を目論む企業にとって注目の的であることはいうまでもありません。
ところが昔の製薬会社における研究開発は、「広くあまねく万人に使える汎用性の高い薬の製造」がキーワードでした。
つまり、大規模な研究開発コストを注ぎながら、どうにかして安全性の確保に奔走していました。
しかし医療が進歩した現代では、より詳細な個人の体質・要望に合う薬の開発が求められています。
より少額のコストで研究開発をするスピードが重要視されるようになったのです。
ここに製薬ベンチャーの勝機があるといっても過言ではありません。
利益変動の激しい業界ではありますが、企業ごとに得意分野の商品をいかに開発できるかが勝負どころとなっています。
製薬ベンチャーのこれから
今まで大手製薬しか活躍のなかった研究開発市場ですが、ここにきて製薬ベンチャーにもスポットライトが当たりつつあります。
しかし、グローバル化やIT化はベンチャーに限らずこれからの製薬業界の課題となっているのも事実です。
低分子以降の新しい医薬品材料のサーチについては、小回りのきく製薬ベンチャーが主体となって進めています。
ところが流通先を確保できないようであれば費用の回収はおろか、新たな研究開発も始められません。
また、IT化に関しては研究開発とはまた別で費用が発生します。
この点に関しては既存の製薬会社と同様の問題があります。
グローバル化やIT化に耐えうる資金調達のためにも、M&Aなどを駆使して資金調達と規模の拡大に努めているのです。
【製薬ベンチャーって何するの?】製薬ベンチャーの仕事内容
製薬ベンチャーに入ったとして、具体的にはどういった業務が待ち受けているのでしょうか。
製薬ベンチャーにおける4つの職種から、詳細な仕事内容について見ていきましょう。
・研究開発
・生産技術・品質仮
・営業・マーケティング
・事務職
現状ではどの分野の職種が働き手として求められているかについても言及します。
製薬ベンチャー特有の仕事などがないかも見ていきましょう。
必要とされる人材の人物像にも迫ることで、就活の参考となる情報を得られます。
研究開発
製薬ベンチャーの研究開発は、さまざまな技術の研究をおこなって世の中のニーズに対応した製品を作る役割があります。
現状、この仕事が製薬ベンチャーのなかで一番多く求められています。
既存の製薬会社における研究開発職が一点集中で点の仕事をするのに対し、製薬ベンチャーの研究開発職は面でジャンルの垣根を越えた業務も担うケースが多いようです。
それだけフレキシブルにさまざまな業務と触れるチャンスがあるため、今まで持ち合わせていなかった能力や自己の成長が実現できるでしょう。
生産技術・品質管理
製薬ベンチャーの生産技術・品質管理職は、製品を効率的に、高品質で生産できるかを研究しています。
そして、働きやすい職場環境の構築を担っています。
上記でも触れたように、生産ラインやグローバル化については今後、解決すべき課題が散見される部分でもあるのです。
したがって、生産技術・品質管理職は自社の職場環境の改善だけに目を向けるのではなく、業界全体を俯瞰的に見渡して根本的な改善策を常に模索する必要があるでしょう。
営業・マーケティング
製薬ベンチャーの営業・マーケティング職は、自社の製品を世に売り出していくための営業など担います。
医学的な知識ももちろん必要となりますが、事務職と合わせて専門的な知識がなくとも対峙できる仕事でしょう。
他業種からの転職も可能です。
しかし、既存の製薬会社によるルートが構築されているなかに営業として飛び込む必要があるので、粘り強さや高い折衝力は必要となります。
業務に携わるなかで専門的な医学知識を身につける必要もあるでしょう。
事務職
製薬ベンチャーにおける事務職は、書類の作成であったり、営業職のサポートであったりと幅広く活動します。
こちらも研究開発職と同様、まだまだ発展途上のベンチャー企業に籍を置くため、対応する業務は非常に幅広くなると想定できます。
ただ単純な事務作業をこなすというよりは、営業事務のようなプレイヤーとしてのフットワークの軽さを求められる場面もあるでしょう。
裏方に徹するというよりは、しっかりと表にも立ち事務処理を円滑に進めるための陣頭指揮をとれる人材が望ましいとされています。
【製薬ベンチャーって何するの?】製薬ベンチャーの特徴
製薬ベンチャー業界で、ほとんどの会社で共通する特徴について見ていきましょう。
その多くは、期待が寄せられる製薬ベンチャーという存在ではなく、これから発展を遂げていく会社によくある特徴と類似しています。
・キャリア採用が多い
・専門以外の仕事もする
・高収入なわけではない
仕事にやりがいを感じて、能動的に仕事へ食らいついていきたいタイプの人に向いているといえるでしょう。
製薬ベンチャーの特徴を以下にまとめます。
キャリア採用が多い
製薬ベンチャーは、キャリア採用を取り入れている企業がほとんどです。
キャリア採用とは中途採用とほぼ変わらない採用形態ですが、もとから医療業界で働いていた経験者を獲得する採用方法です。
なぜなら会社として後発で製薬業界に飛び込んでいくため、最初からある程度の製薬業界や医薬品に対する知識が求められています。
営業だとしても医療業界における勢力図や知識があらかじめ頭に入っており、そのなかで自社の強みを訴求する能力が必要でしょう。
また、研究開発職や生産管理部門では、ある程度近しい業務を経験してきた人材がキャリア採用として入社してくるケースが多いようです。
周りもキャリア採用であることが多いため、社内には新卒がほぼいない独特の風土があるといえるでしょう。
専門以外の仕事もする
製薬ベンチャーは大手と違い、少数精鋭で業務を遂行します。
そのため、自身の専門外の仕事を一通りこなすことも多く、幅広い視野での勤務が求められます。
たとえば、営業であれば自身の事務処理は自分でこなし、必要とあらば研究開発の進捗管理などもするでしょう。
一方、研究開発職であっても営業への中継ぎをし、新薬のプレゼンテーションに同行する場合もあります。
職種の住み分けこそあるものの、それぞれ垣根が設定されていないのは、大手や既存の製薬会社にない大きなポイントです。
つまり、どの職種に就こうとも自分たちの職種以外への配慮が必要になります。
俯瞰的に自分たちの会社がどこへ向かっているかをしっかりと把握し、一社員としてそれを支える行動ができるかがカギとなるでしょう。
高収入なわけではない
製薬会社勤務と聞けば高給取りというイメージもありますが、製薬ベンチャーはそうとは限りません。
実際、大手製薬会社に勤める社員の給料は高い水準をキープしています。
同じ新卒でも月収にして10万円、ボーナスなどを加算すると年収で倍近くの差がつくこともあるでしょう。
しかし、製薬ベンチャーの社員はそうとは限らないのです。
大手製薬ベンチャーの社員給料は高収入といわれていますが、まだまだ規模の小さい製薬ベンチャーの給料はそこまで高くありません。
すべては会社の業績によって左右されるといってよいでしょう。
もし仮に、高収入を求めて製薬ベンチャーへの就職を考えているのであれば、会社選びは慎重にしなければなりません。
【製薬ベンチャーって何するの?】製薬ベンチャーの事業例
今、話題となっている製薬ベンチャーはどのような仕事をしているのでしょうか。
製薬ベンチャーとしてよく名前を耳にする企業5社の主な事業例を紹介していきます。
・アンジェス株式会社
・ブライトパス・バイオ株式会社
・サンバイオ株式会社
・ジーンテクノサイエンス(現:キッズウェル・バイオ株式会社)
・シンバイオ製薬株式会社
設立の背景から、主に取り組んでいる研究内容、他社と比較した場合はどのような強みがあるかを一緒に紹介しましょう。
それぞれの製薬ベンチャーの比較などに役立ててください。
アンジェス
「アンジェス株式会社」は、遺伝子医薬のグローバルリーダーを目指す製薬ベンチャーであり、大阪大学発の創薬ベンチャー企業です。
なんらかの理由で機能しなくなってしまった遺伝子を、別の正常な遺伝子の細胞を使って補う研究に力を注いでいます。
遺伝子の異常で今までは先天性として治療の手立てがなかった患者さんに対してもアプローチできるので、今注目されている治療法の1つです。
1999年の創業で、2002年に東京証券取引所マザーズに上場を果たしています。
ブライトパス・バイオ
「ブライトパス・バイオ株式会社」は、がん免疫療法の1つである、がんペプチドワクチンの創製をミッションに興った製薬ベンチャー企業です。
2003年に株式会社グリーンペプタイドという社名で創業しましたが、開発領域はどんどん拡大しています。
ここ最近のがん治療を取り巻く環境の変化をふまえ、新しくブライトパス・バイオ株式会社と社名を改めました。
2015年に上場を果たしておりし、コロナ禍における自社独自のワクチン開発にも取り組んでいる企業です。
サンバイオ
「サンバイオ株式会社」は再生細胞医薬品の開発をミッションとして定めている、2001年創業の製薬ベンチャー企業です。
特に脳こうそくや外傷性脳損傷といった、脳にまつわる関連の研究開発をおこなっています。
新薬の開発で治療法の見つかっていない医療ニーズである、アンメットメディカルニーズを満たすことが使命とされています。
グローバルリーダーとしての役割も担っており、量産化技術の開発にも取り組んでいて、再生細胞薬をより多くの患者に届けようとしている企業です。
ジーンテクノサイエンス(現:キッズウェル・バイオ株式会社(KWB))
「株式会社ジーンテクノサイエンス」は、2001年に創業した北海道大学発の製薬ベンチャー企業です。
2021年の7月1日より、社名を新たにキッズウェル・バイオ株式会社と改めており、バイオ新薬と再生事業領域においてさらなる発展を志しています。
社名にもあるように、同社は創業より難病に苦しむ子どもたちを助けることが使命の1つとして掲げられています。
バイオシミラー事業を基盤に、新たな医薬品の供給と治療法の開発に努めている製薬ベンチャーです。
シンバイオ製薬
「シンバイオ製薬株式会社」は2005年に創業した、血液がん治療薬の研究開発をおこなう創薬ベンチャー企業です。
アステラス社製抗がん剤の日本における独占的開発と販売によるナレッジをもっており、自社オリジナルの抗がん剤、トレアキシンを開発しました。
国内の大手製薬会社が参入しづらい小規模な市場での事業拡大を根底に据え、今まで治療法の確立されていなかった領域に新薬で応えています。
新薬供給まで独自のパイプラインも形成しているスピード感が特徴の企業です。
【製薬ベンチャーって何するの?】まとめ
製薬ベンチャー企業は、大手製薬会社がなかなか参画できなかった医療ニーズに切り込む社会的意義の高い企業です。
新型コロナウイルスのワクチンを独自製造する企業もあり、バイオシミラーによる新たな開発で今後も注目度は上がる一方といえるでしょう。
将来的に解消しなければならないIT化やグローバル化については、既存の製薬会社と変わりません。
ベンチャーと大手の垣根を越えて手を取り合うことで今後よりいっそうの発展が見込めるでしょう。