はじめに
新卒採用でSPIを取り入れている企業は、9割を超えるともいわれています。
SPIは、社会人として不可欠な資質を検査するものです。
資質とはおおまかにいうと、働くうえで必要な能力と性格のことです。
SPIが重視されているのには、個性の尊重や人材の多様化といった背景があります。
少子高齢化により人材不足が慢性化しつつある日本では、自社にマッチした人材のみを採用したり、全員に同じ指導をしたりといった、以前のようなやり方では時代にそぐわなくなっていきています。
SPIはこういった変化に対応すべく、今の時代に適した採用手法や、入社後の適切な人材育成が実行できるツールとして活用されているのです。
今回は、SPIの基礎知識や出題形式、対策方法について解説します。
【SPI】SPIとは
SPIとは「Synthetic Personality Inventory=総合適性検査」の略です。
つまり「能力適性検査」と「性格適性検査」の2つを合わせた検査をSPIと呼びます。
前者は仕事をするうえで必要な知的能力をはかる検査で、後者はその人がどんな人物か、何が適職なのかをはかるものです。
能力適性検査ではかる知的能力とは、職種に関わりなく共通して求められる能力のことで、業務をいかに効率よく処理できるかがポイントとなります。
性格検査では、日常の行動や考え方に関する質問を通して、人となりをはかります。
いずれの検査も、必ずしも高得点が要求されるというわけではありません。
SPIは、あくまでもその企業に適した人材か否かをはかるのが目的です。
【SPI】テスト方式
SPIのテスト方式には、4種類の受検方法があります。
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テストセンター方式:専用会場に行って受検する
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Webテスティング:自宅などのパソコンで受検する
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インハウスCBT方式:企業の会議室などで受検する
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ペーパーテスト方式:企業が用意した会場で受検する
SPIテストの主流はテストセンター方式で、半数以上がこの方法で受検しているということです。
ペーパーテスト方式のみが、紙ベースのマークシート方式となります。
パソコンを用いて受検するほかの方式ではテスト結果を即座に確認できるのに対して、ペーパーテスト方式では結果の把握にタイムラグが生じます。
各テスト方式の受検方法や、テスト方式別の対策について、以下で詳しく解説しましょう。
テストセンター方式
テストセンター方式は、企業が用意した外部会場でパソコンを使って受検するものです。
受検者自身が受検の予約をする必要があります。
あらかじめ性格検査を受けたあと、外部会場にて能力検査を受けるのです。
能力検査の言語問題と非言語問題では、受検者ごとに問題が異なり、その人に合わせたものが出題されます。
また、問題ごとに制限時間が定められているのも特徴で、未回答のままつぎに進んでしまうと間違いと判断されるため注意が必要です。
Webテスティング
Webテスティングは、自宅からオンラインで受験する方式です。
受検者は事前に専用サイトにアカウントを登録しておき、そのアカウントでログインをして受検します。
オンラインにて実施されるWebテスティングでは、回答のタイミングにより、出題される問題とされない問題があります。
いつでもオンライン環境があれば受検できるのが最大の特徴でしょう。
テキストや辞書、電卓などを使えるのも、受検者にとってのメリットといえます。
企業がWEBテストを導入する理由
今では当たり前に、多くの企業が選考過程でテストを採用している理由は、人材選定における精度の向上と効率化を図るためです。
たとえば、言語能力や数学的思考力、あるいは論理的な思考力があるかどうかなど、多岐にわたる能力を総合的に評価できるメリットがあります。
その段階において主観的な評価を排除することにより、性別や年齢などによる差別を回避でき、候補者間の公平な比較が実現することも利点として挙げられるでしょう。
ほかにも優れた人材を発掘するために、なぜ重要なツールとなっているのかを見ていきましょう。
足切りのため
業界によらず、幅広く導入されている理由のひとつは、選考プロセスにおける効率化が挙げられます。
応募者をじっくりと評価するには、膨大な時間と労力がどうしても必要になります。
しかし、テストを通じて能力や適性を効率的に評価すれば、それをもとに数を絞ることが可能になるのです。
もうひとつは、選考の対象外となる学生をあらかじめふるいにかけられ、求めているスキルや適正に満たない学生を早期に排除できることでしょう。
選考するレベルに達しているかを客観的に判断することで、適格な候補者を選び出し、プロセスを効果的に進められます。
こうして、資格の有無などでは判断がつきにくいことを客観的に評価することで、短期間でよりスムーズな採用プロセスの実行につなげているのです。
コスト削減のため
従来のペーパーテストでは、問題作成から答案用紙作成、印刷、さらに試験を実施したあとの採点までの作業に、どうしても手間がかかっていました。
時間だけではなく、会場を手配したり試験監督を臨時に雇ったり、費用の面における負担も決して軽いものではありません。
すべての回答を手作業にするにも人出を要し、採点ミスや評価の不正確さなども懸念されていました。
こうしたデメリットを改善できたのがWEBテストであり、採点にかかる時間も人件費も大幅に削減できました。
さらに自動で採点されるものはどれも正確で、効率的な成績評価が可能になったのです。
これらの要因から導入する企業は一気に増加し、とくに初期の段階におけるペーパーテストは姿を消していきました。
インハウスCBT方式
インハウスCBT方式は、企業のパソコンで受検する方式です。
企業で受検するので、自宅で受検するWebテスティングと比較すると不正が生じにくい環境といえます。
ただし現在では、インハウスCBT方式を取り入れている企業は少なくなっています。
出題傾向については、Webテスティングとほぼ同様と考えるとよいでしょう。
対策としては、SPIの問題集をたくさん解いて傾向を把握することです。
ペース配分も重要なので、時間をはかりながら練習するのが効果的です。
ペーパーテスト方式
ペーパーテスト方式は、紙ベースで試験が実施されます。
一般的な入学試験や資格試験と同様なので、受検生にとってはなじみのある方式といえます。
Webテスティングなどと比較すると、試験時間が長いのも特徴です。
試験時間は110分と長いので、集中力を維持しながら多数の問題に取り組む能力も求められます。
出題範囲も広く、総合的に難易度が高くなる方式という側面もあります。
対策としては、本番と同様の環境を用意して問題を解くのがポイントです。
【SPI】出題形式
SPIの出題形式は、企業によって異なります。
企業によって、実施する科目と実施しない科目が分かれています。
ただし、主に非言語・言語・性格検査を実施している企業が大多数です。
また、合格ラインも企業によって違います。
明確なボーダーラインを設定していない企業も多く、点数が低いから不採用というわけではなく、逆に高得点であれば必ず採用されるというわけでもありません。
ここでは、言語・非言語・英語・構造把握力検査、性格検査の5つの出題形式と内容、対策について解説します。
言語(基礎能力検査)
制限時間は35分で、問題数に制限はありません。
例年、正答率が上がるにつれて問題の難易度が上がっていく傾向にあるのが特徴です。
「言語」問題では、言葉の基本的な読みや意味、文章読解というように、主に国語力を試されます。
言語(基礎能力検査)で問われる内容は、以下のとおりです。
- 二語関係
- 熟語
- 語句の用法
- 文の並べ替え
- 空欄補充
- 長文読解
言葉の読みや意味については、知識として覚えておけば点数につながるので、比較的対策しやすい分野といえます。
文章読解に関しては、普段から本や新聞を読む習慣をつけておくなど、文章に触れる機会を設けておくとよいでしょう。
そういった習慣がないという人は、頻出問題や頻出語彙を中心に対策するのも有効です。
非言語(基礎能力検査)
「言語(基礎能力検査)」と同様に、制限時間は35分で、問題数に制限はありません。
例年、正答率が上がるにつれて問題の難易度が上がっていく傾向にある点も同様です。
「非言語」問題では、数学的な内容が出題されます。
基本的な計算問題から、知識を組み合わせて解く応用問題まで出題されるので、専用の対策が必要でしょう。
非言語(基礎能力検査)で問われる内容は、以下のとおりです。
- 推論
- 順列、組み合わせ、確率
- 割合と比
- 損益算
- 料金割引
- 仕事算
- 代金精算
- 速度算
- 集合
時間配分も重要なポイントとなります。
自宅で問題に取り組むときは、試験時間など、本番にそった環境で回答の練習をするのがおすすめです。
英語検査
制限時間は20分で、問題数に制限はありません。
英語検査においても、正答率が上がると問題の難易度も上がる傾向にあります。
オプション検査なのですべての企業で活用されているわけではなく、基本的には英語力が重視される企業で実施される検査です。
英語検査で問われる内容は、以下のとおりです。
- 同意語
- 反意語
- 英英辞典
- 空欄補充
- 長文読解
レベルとしては中学~高校(大学受験)レベルですが、出題範囲は広範囲にわたるので、専用の対策が不可欠です。
問題ごとに時間制限が設けられているので、回答スピードも求められます。
英語を読むことに慣れる必要があるので、中高時代の教科書やSPIの参考書で英文にたくさん触れるのが対策としては効果的です。
構造把握力
制限時間は20分で、問題数に制限はありません。
「構造把握力」とはロジカルシンキング能力に関する検査で、物事の大きな枠組みをとらえられるか否かを測定します。
構造把握力で問われる内容は、以下のとおりです。
- 非言語
- 言語
基礎能力検査と同様に非言語と言語に分かれるのですが、両者の違いは簡単にいうと、計算問題の有無です。
そのため「非言語」では、文章計算問題を用いた問題となります。
計算の目的が似ている問題を、グループ分けするというものです。
一方「言語」では、文章の内容を、テーマにそってグループ分けします。
思考力が必要で、回答にかけられる時間も限られるので、さまざまな問題パターンを知っておくことが有効な対策です。
性格検査
性格検査には約300もの問題があり、その内容は多岐にわたります。
以下のような4つの側面によって、基本の性格から適職、ストレス耐性などをはかります。
- 行動的側面
- 意欲的側面
- 情緒的側面
- 社会的側面
その人の性格や考え方をはかるものなので、正直な回答をするのが基本です。
SPIの性格検査による結果と面接でのイメージがかけ離れていたのでは、マイナス評価ともなりかねません。
素直に回答する姿勢は必要です。
ただし対策はまったく不要かというと、そうではありません。
まずは、企業が求める人材像を把握することです。
無理に回答を合わせる必要はありませんが、イメージをもっておくことでよい結果となる可能性が高まります。
そのほか、素早く回答することや、回答に一貫性をもたせることが重要です。
検査に慣れるためにも、模擬練習に取り組んでおきましょう。
【SPI】Webテストでカンニングはバレる?
Webテストでのカンニングは、ある条件下ではバレる可能性が高いことを理解しておきましょう。
たとえば、回答速度や正答率が通常よりも異常に高い場合、監視システムや管理者に疑念を抱かせる可能性があります。
回答に矛盾や不自然なパターンが見られる場合も、カンニングの兆候として検出されることがあるのです。
そんな行為が発覚すれば、当然ながら厳しい結果が待っています。
内定が取り消されるだけではなく、ブラックリストに入れられる可能性も考えられるでしょう。
そうなれば、他の企業でも就職活動をする際に、大きな障害となります。
仮に入社が許可されても、カンニングの事実が明るみに出れば信頼性に欠けるため、活躍するのが難しくなるはずです。
カンニングは一時的な利益をもたらすかもしれませんが、その代償は非常に高いことを覚えておいてください。
【SPI】SPIを実施している企業
選考で最初に実施されることも多いのが適性検査であり、そのなかでも多くの企業でSPIが活用されています。
SPIの対策として何より大事なのが、早めの対策です。
時間配分も重要なため、さまざまな問題に多く触れておくのが重要だからです。
そのためまずは、志望する業界や特定の企業において、SPIが実施されているかどうかの確認が必要といえます。
実施方法や出題形式も企業によって異なるので、早めにリサーチしておきましょう。
一般的にほとんどの企業でSPIが実施される業界としては、以下があげられます。
- 総合商社
- メーカー
- マスコミ
- インターネット通信
- サービス・インフラ
上記に限らず、また企業の規模を問わずSPIは実施されています。
SPIのWebテストの実施企業について知りたい方は、詳しい記事を執筆中ですので完成次第リンクを掲載いたします。
【SPI】SPI以外のWebテスト
SPIは、主に個人の性格や社会的な特性を評価するためのテストであり、一般的に企業の採用プロセスに使用されます。
それ以外にもさまざまな種類があり、技術的なスキルを測定するものや、認知能力を評価するものもあります。
あるいは、コミュニケーション能力をテストするものなどもあり、それぞれ異なる内容であるため、異なる対策が必要です。
それぞれ職種やポジションに応じて異なる要件を持ち、それに合わせた適切な対策をすることが成功への鍵といえるでしょう。
玉手箱
SHL社が提供する、豊富な経験と信頼性に裏打ちされた玉手箱は、自宅受験型としては市場でトップシェアを誇ります。
これは言語、非言語、性格テストといった要素から成り立っており、まれに英語の問題が出題されることもあります。
問題数がほかよりも多く、解答するのにあてられる時間が短いため、SPIに比べてスピードと正確性が求められるのも特徴のひとつです。
一方で、出題範囲はSPIよりも狭いため、対策自体は比較的容易であるといえるかもしれません。
また、職場での適性を客観的に評価し、個々のキャリアの方向性を導き出すための重要なツールでもあります。
したがって、これを受験することで自己理解を深め、適切なキャリア選択やスキル向上につなげられるでしょう。
Web-CAB
SHL社が提供するこのテストは、技術者向けの特別なものです。
多くのIT技術者が求職活動をする中で、採用プロセスの重要な一環となっています。
こちらは性格診断テストなどとは異なり、スピードと正確性が求められる四則逆算、論理的な思考を問う命令表が出題されます。
さらに、法則性や暗号解読など独自の要素を含んでおり、個人の技術的なスキルや問題解決能力を総合的に評価することが特徴です。
内容そのものは、他の形式と違ってとても個性的ですが、問題形式に慣れてコツを掴みさえすれば、回答するのはそれほど難しくありません。
ただし、信頼性の高いソリューションとして業界で高く評価されているので、IT技術者などを志しているなら、しっかり力を注いで準備しておかなければなりません。
Web-GAB
Web-CABと同様に、論理構造の理解や非言語的な情報の読解、さらに性格特性の評価を行います。
このテストでは英語の問題を含んでおらず、主に言語問題や非言語問題を通じて、候補者の職務適性や能力特性を評価します。
出題は、文章の論理的な構造を理解するための言語問題からはじまり、与えられた文章を読んで、その論理的な構造や主題を把握しなければなりません。
質問に対する正確な答えを選択する必要があり、これにより文章理解能力や論理思考能力といったものが判定されます。
さらに非言語問題も含まれており、表やグラフから情報を読み取って、それに基づいた適切な解答を選択しなければなりません。
それによって、数値データの解釈能力や視覚的な情報の理解能力が評価されるほか、性格検査が実施され、性格特性や行動傾向が分析されます。
ENG
リクルート社が提供するこのテストは、英語科目のみです。
英語力を評価するための有力なツールとして、外資系企業などで広く導入されています。
読解力や文法、語彙力など、幅広いスキルを試されます。
採用試験だけでなく、昇進試験に利用されていることもめずらしくありません。
内容は、主に空欄補充や和訳、さらに長文読解などの形式で出題されるため、文章理解だけでなく、表現力を鍛えておかなければなりません。
一方で、リスニングテストが実施されない点が特徴です。
テストの焦点は主に読み書きに置かれており、英語の文章を理解し、適切に表現するスキルを測定するのが目的です。
いずれにしても、英語がビジネス環境でますます重要視される中、このテストは英語力向上を目指す企業にとって貴重なツールといえるでしょう。
TG-Web
ヒューマネージ社が提供するこのテストには、旧型と新型が存在します。
それぞれ異なる出題範囲を提供しているため、注意が必要です。
内容はSPIと同様で、非言語、言語、英語、性格検査などが含まれているため、対策はそれほど特別なものにはならないでしょう。
ただし、旧型はとくに難易度の高さで知られており、高度な認知スキルと判断力が要求されます。
問題は非常に厳しいものであり、初めて問題を目にした際には、深い知識がなければ問題が解けないと感じるかもしれません。
一方の新型は、難易度自体が比較的低く、数多くの問題が出題されて、一般的なスキルと能力を評価するように設計されています。
旧型が、より高度なスキルを持つ候補者を見つける手助けになっているのに対し、新型は広範囲の層の候補者を対象にしているものといえるでしょう。
まとめ
今や多くの企業で活用されているSPIには、4つの出題形式があります。
テストセンター方式・Webテスティング・インハウスCBT形式・ペーパーテスト方式、どの方法で実施されているのかは、企業によって異なります。
また出題形式についてもさまざまで、多くの企業で実施されているのは、基礎能力検査(言語・非言語)と性格検査です。
業務内容や求める人材像に応じて、英語検査や構造把握力が測定されることもあります。
そのためSPI対策の第一歩としては、志望する業界や企業においてどのようなWebテストなどが実施されているのかを調べることです。
出題内容が多岐にわたり時間制限もあるため、SPIは時間配分がカギとなります。
早期に対策を始めて、少しずつ継続的に取り組み、たくさんの問題に触れておきましょう。