はじめに
自己PRにおいて、自分自身をどうアピールするかは非常に悩ましいものでしょう。
発想力とは、機転の利くイメージがあり、人材としても活躍できそうな良い印象を与えるアピールの1つです。
しかし、面接で対峙する相手は、自分よりも人生経験を豊富に積んだ、やり取りも数段上手の社会人です。
この記事では、自己PRで発想力をアピールする場合の注意点や企業が見ているポイントについて解説しています。
「自分の何をアピールすれば良いかわからない」「うまい言い回しが知りたい」という方はぜひ参考にしてください。
【ベンチャー企業に発想力の自己PRは使えるのか】自己PRで何を見ているのか
面接の場で、採用担当が自己PRを聞いてくる理由は、学生が自社の求める能力や適性をもっているかどうか判断するためです。
企業やその採用担当は、一度の採用活動で、たくさんの学生の履歴書やエントリーシートに目を通し、面接をします。
募集人数や企業の規模にこそ左右されるものの、場合によっては数十名やそこらの数では足りません。
企業が採用活動をする理由はただ1つ、自社に入って活躍してくれる人材を見つけることです。
そのためには、社風や職務内容とマッチした学生を探し出すべく、自己PRという形で学生の長所を聞いてきます。
つまり、自己PRが簡潔でなおかつ的確にできるほど、企業とのマッチングは適正に行われ、内定へとつながるでしょう。
会社に入ったあと、どう活躍するかまでが伝えられれば完璧です。
【ベンチャー企業に発想力の自己PRは使えるのか】発想力をアピールする際の注意点
まずは、自己PRの内容を考える前に、発想力を自身のアピールポイントとする際の注意点を2つ解説します。
1つは、企業がそもそも学生に求めている能力の中に、発想力がないという点です。
もう1つは、自分では発想力が強みだと考えていたにもかかわらず、実は別の能力があったという場合です。
いずれも、自己PRの内容をしっかりと作り込まなければ気づけないポイントでしょう。
自己PRの構成・筋道を立てるためにも、今一度、ここでしっかりとアピール内容を整理しましょう。
企業は学生に発想力を求めていない場合もある
自己PRを作るには、会社の求める人材や業務に必要な能力について、事前に確認しておきましょう。
企業によっては学生に発想力を求めていない場合もあるからです。
新卒採用には、ゼロから自社のカラーで人材を育てられるという大きなメリットがあります。
人材の、仕事に対する姿勢や、業務の進め方など、働き方のすべてを1から自社のやり方に染められるからです。
こういった企業で好まれるのは、スポンジのような吸収力・臨機応変で柔軟性が高い学生です。
発想力のある学生は、自我が強く、組織の色に染まらないようなイメージをもたれてしまう可能性もあります。
つまり、自己PRを作る前に、今回応募しようとしている会社が発想力をアピールしても問題ない会社かどうか、事前のリサーチが重要です。
アピールすべき能力が発想力ではない場合も
自分のアピールすべき能力が、発想力ではなかったという失敗例もあります。
発想力とは、人の知見にもとづいて養われていきます。
過去に見聞きした情報をベースに、人はアイデアを考えていくといわれているのです。
つまり、学生が体験できるレベルでの発想力とは、どれだけ素晴らしいものであっても社会人には匹敵しないでしょう。
自分よりも、人生経験を積んだ大人相手に、自分の想像力を売り込むのはかなりハードルが高いと認識すべきです。
たとえば、具体的に以下のような自己PRがあったとします。
サークルのイベントにおいて、集客を任されたというエピソードがあり、発想力を活かして、企画を実施して20名を集めたという話をしたとしましょう。
この場合、イベントが発想力によってかなり斬新なものになったのであれば、発想力はアピールすべきポイントとなります。
しかし、企画が採用されるまでの試行錯誤の中に、粘り強さやチャレンジ精神といった、あなたの強みが隠れている可能性もあるでしょう。
発想力というキーワードは非常に有能で、人材としての価値が高まりそうなイメージもあります。
ところが、発想力につなげようとエピソードを考えていても、実は自分の中に今まで気づかなかった魅力がある場合もあるのです。
自己PRは他者にチェックをしてもらい、きちんと内容が発送力に結びつくのか、しっかりと確認しましょう。
【ベンチャー企業に発想力の自己PRは使えるのか】おすすめの自己PRの構成
自己PRを発想力にする際、おすすめの構成は以下の通りです。
冒頭で強みを伝え、発想力が発揮されたエピソードの概要を紹介、そこからあらわれた課題と目標について話し、具体的な行動と結果を伝えます。
そして最後は、自身の強みを会社の中でどう活かすかについても決意表明をして締めくくりましょう。
構成の中で見落とされがちなのが、課題・目標と、実際の行動についてです。
特に説明したい気持ちが出てしまい、エピソードの概要が長くなってしまわないよう注意してください。
強み
最初に結論として「私の強みは発想力です」と、簡潔に自身のアピールポイントを伝えましょう。
人は、思っている以上に相手の話を延々と聞くことができません。
さらに相手は、1日に何人もの就活生を相手している面接官です。
アピールしたい結論については、冒頭で簡潔に述べましょう。
話し始めるタイミングの冒頭に伝えることで、ほかの内容やエピソードが邪魔することなく、聞き手の耳にすんなりと入ります。
誰でも強みを聞き取りやすいほか、エピソードや自分自身を相手に印象づけるのにも効果的です。
発揮されたエピソードの概要
続いて、自身の強みである発想力が発揮されたエピソードについて紹介します。
ここで注意したいのは、この質問はあくまでも自身の強みについて聞かれているという点です。
ガクチカのように詳細すぎる内容は必要ありません。
どういった場面で、何があって自分の能力が発揮されたか程度に留めておきましょう。
「なぜその力が発揮されるに至ったか」もしくは「能力を鍛えるために意識的にしていた行動は」といった内容はいりません。
むしろ、能力について詳細に話す内容は、このあとに続く課題・目標や行動、どう活かすかの3つの構成に入れた方が無難です。
自己PRのゴールは、会社での活躍する姿を相手に想像してもらうことです。
話の重点を置くポイントが間違っていると、ガクチカやほかのエピソードと混同されやすくなってしまうので注意しましょう。
自己PRは、あくまでも働いたときの活躍する姿をベースに話を進めていきます。
課題・目標
課題・目標のパートでは、数字などを用いて、どのような問題があったのかをわかりやすく相手に伝えましょう。
漠然とした問題意識、課題感でも構いませんが、数字で言い表した方が良い理由は以下の2つです。
1つ目は、課題・目標に取り組む前の問題と、解決後に得られた結果における成果を明確にしやすいからです。
数値で言い表せる成果は、具体的な結果を相手に示せるため、非常に有効といえます。
2つ目の理由は、論理的思考力をアピールするきっかけにもなるからです。
自己PRとは、自分の良い部分をプレゼンテーションする場ですが、数字を使ったロジカルな話し方の披露ができる場でもあります。
話の聞きやすさ、具体性によって面接官に「この学生は、論理的に会話ができる」と思ってもらえるでしょう。
さりげなく能力をアピールできるのでおすすめです。
行動
行動のパートでは、課題や目標に向けて取り組んだ、具体的なアクションについて説明します。
たとえば、以下のような例文があったとします。
「毎年イベント勧誘の宣伝が弱すぎたため、今年は毎日朝8時~夕方18時まで屋外でビラ配りを実施し、200人近い枚数を配り、91人の観客を動員しました。」
とにかく、課題と目標の設定、結果のあいだにあるプロセスをこと細かく伝えましょう。
特に自己PRを発想力とする場合、頭の中で考えをめぐらせるだけではなく、実際の行動に移して実行できることも非常に重要です。
頭でっかちにならない、謙虚かつ考えたことを自分が率先して、責任をもってやり遂げられると示しましょう。
さらに、行動取った理由まで付け加えられると、より論理的に自身をアピールできます。
ただ時系列に話を進めるのではなく、要点を絞り、自分自身の行動原理を相手に伝えます。
結果
自己PRで話すエピソードには、結果も必ず付け加えましょう。
こちらもできれば、雰囲気が良くなったというような漠然としたものではなく、数字で言い表せる結果を伝えます。
たとえば、アルバイトの接客業務で、自分の発想力を発揮してサイドメニューの提案をしたというエピソードを話したとします。
結果、新しく提案したサイドメニューがとても売れて、店の売り上げが2倍になったと伝えたとしましょう。
この場合、店の売り上げが伸びたことと、サイドメニューの因果関係がしっかりと証明できるとベストです。
ときとして、売り上げのあがった理由が単に、時期的な需要や外的要因が絡んでいる場合もあるからです。
結果については、行動に対して妥当な成果かどうかにも気を配りましょう。
自分で、結果だと思い込んでいても、他者が聞いて違和感を覚えるような内容にしてはいけません。
どう活かすか
自己PRを発想力とするのであれば、結論の最後に付け加える「強みを活かせる具体例」も非常に重要です。
冒頭からお伝えしている通り、自己PRでは自分が会社に入った際、どう活躍できるかを具体的にアピールする必要があります。
「私には発想力があります」というだけのゴールでは、企業も学生をどう人材として活用すべきかイメージできないでしょう。
企業は学生に対し、入社してからの活躍をもっとも期待しています。
つまり、自己PRの場面においても、自身の良いところを言いっぱなしにするのではなく、結論として会社でどのように活躍できるかを伝えましょう。
「発想力を活かして企画チームから出す立案件数を倍にします」や「新規事業で作るプロダクトのサポートに徹します」といった決意表明をするのがおすすめです。
【ベンチャー企業に発想力の自己PRは使えるのか】自己PRの例文3選
それでは、実際に自己PRに使える例文3つを紹介します。
1つ目の例文は、大学の学祭実行委員で発揮された発想力のエピソードです。
2つ目の例文は、長期インターンにおける集客イベント企画で活かされた発想力についての話となります。
3つ目の例文は、アルバイトでの発想力が活きたエピソードです。
いずれも、学生にとって身近な経験から発想力をアピールしていきます。
自分自身のエピソードから自己PRが思い浮かばない人は、まずこういった例文を参考にしてみてください。
例文①
大学祭の実行委員で、柔軟に視点を変えながらの発想力を活かし、50年続く学祭ではじめての体験型イベントを成功させました。
私の大学は、学祭での出し物が多いことで知られています。
しかし、出店に向けての審査がきびしく、毎年同じような催ししかできませんでした。
そこで私は、持ち前の発想力を活かし、柔軟に今までの出し物イベントからヒントを得た、融合型の出し物を企画しました。
出店審査もクリアしつつ、今までの出し物とはまた違った感覚の催し物ができたことで、学祭は非常に大きな盛り上がりを見せたのです。
実際、学祭中は外部からも多くの人が大学に訪れます。
今年の動員数は、例年の2倍だったそうです。
目玉となった融合型の出し物の事前告知をしていたことが功を奏したのか、イベント2日目がもっとも盛り上がりを見せました。
このことから、私は貴社に入ってからも発想力を活かし、前例などを活かしながら、新しい取り組みや企画を実現していきたいと思います。
例文②
集客に苦戦し、盛り上がりに欠けていたイベントの企画を、持ち前の発想力を活かして企画立案し、過去最高の集客数を動員しました。
私は、●●社の企画部で長期インターンとして働いていました。
●●社では、毎年インターン生が中心となって企画から運営を担うイベントがあります。
しかし、学生インターンが指揮を執るイベントということもあり、かけられる予算も時間にも制約があったのです。
そのため、盛り上がりに今一つ欠けていました。
さらに、課題となったのは、入場規制です。
特に今年は、例年と比べてもインターン生の数が少なかったため、運営型のスタッフ人数を確保できませんでした。
そこで私は、イベントを二部制にして、一部オンラインで参加できるようシステムを構築してもうことにしたのです。
関係各所に依頼を投げて、期日までに構築が完成するよう打診と進捗確認を徹底しました。
結果、イベント当日では観客動員数500人をマークしました。
オンラインでの参加を可能にしたことが大きく、遠方の地域からの参加も見られたことで、新しいイベントの企画も進行中です。
私はこの能力を活かし、貴社でも新しいイベントの企画立案に尽力し、新しい需要の創出に貢献したいと考えています。
例文③
居酒屋のアルバイトで、持ち前の発想力を活かし、課題解決に直結するアイデアを提案、閑散期と呼ばれる時期の売り上げアップに貢献しました。
私がアルバイトをしている居酒屋では、メイン料理が鍋だったので、夏など暑い季節になるとどうしても集客が伸び悩んでいました。
さらに、アルバイトとなるとシフトの数が減らされるなどしていたため、私たちにとっても閑散期は大きな問題だったのです。
そこで私は、暑い時期の客数減少という課題に対し、スタンプラリー形式のビアガーデンを企画しました。
夏でも食べたい鍋として、新しいメニューを考案し、ビアガーデン期間中の目玉として打ち出しました。
結果、例年の夏と比べものにならないほど、連日予約で席が埋まるなどの盛況ぶりを見せたのです。
実際に毎年の夏場の売り上げと比較しても、売り上げが2倍近く伸びていたそうです。
私はこの発想力を活かし、貴社に入ってからも課題解決に向けて行動していきます。
特に、新しい企画やシステムを導入する際は、率先して先頭に立ち、軌道に乗るまでのサポートを徹底して行っていきます。
まとめ
自己PRの内容を発想力にする際の注意点、構成、さらに具体的な例文を3つ紹介しました。
発想力を自分の武器にすることは、人材としてもかなり魅力的だとアピールできる反面「大したことない」と思われてしまうリスクもあります。
自己PRの内容、骨子が決まったあとは、何度も文章を読み返し、必要に応じて第三者に話を聞いてもらうなどして内容を精査していきましょう。
特に、自分のアピールすべき長所が発想力ではない可能性も十分に考えられます。
他者の目線や意見もしっかりと参考にしながら、ご自身のアピールポイントを構築していってください。