はじめに
ベンチャー企業で働く場合、福利厚生に関する制度について気になる方は少なくありません。
特に育児休暇(育休)が取れるかどうかは、自身やパートナーの出産・子育てを考えるうえで悩みの種となりがちです。
少数精鋭のベンチャー企業においては育休を利用する社員自体が少ないため、制度があるかどうかを知ることが難しいと感じる方は多いでしょう。
当記事では、ベンチャー企業の育休制度について、導入の状況や育休が利用できる企業を探す際のポイントについて解説します。
【ベンチャー企業の育休制度】育休が取れるかは企業による
ベンチャー企業は会社設立からまだ年月が経っていないことや、社員数が少ないといった理由から、育休制度について実態を把握しづらい環境にあります。
今まで育休自体を用意する必要がなかったために、申請者自身がはじめての適用対象になることもあるのです。
また、そもそも育休に関するノウハウがない可能性もあることには、注意する必要があります。
ベンチャー企業は、大企業のように明確なロールモデルが設定されているわけではありません。
そのため、実際に育休を利用できるかどうかは企業によります。
ここからは育休という制度を取り巻く環境について、くわしく解説していきましょう。
ベンチャー企業を志している方は、ぜひご一読ください。
法の整備により進みつつはある
2021年6月に「育児・介護休養法」の法改正が成立しました。
この改正法により、男性が育休を取得しやすくなる制度が定められたのです。
改正法は2022年の10月から施行され、それに合わせ、各企業には男性の育休や、産後8週間以内に4週間休暇(産後パパ育休)取得する制度に対応することが求められています。
また、法整備によって、企業の責任や従業員の権利が法律で規定されたことにより、育休取得の障壁は低くなってきているといえるでしょう。
育休の導入は企業側にもメリットがある
育休制度を導入することが義務化される一方、こうした制度を取り入れることは、企業側にとってもメリットがいくつか存在するのです。
育児と両立して働きやすい環境をアピールし、企業のイメージアップをはかれますし、出産にともなう退職が少なくなることで、長期的に安定した人材育成に取り組むことが可能となります。
また、育休にともなって業務のローテーションが行われることで、ほかの社員に新たな視点をもたらし、イノベーションにつながることが期待できるでしょう。
さらに、時短勤務などの新たな制度があわせて導入されることにより、業務自体の効率化をはかることが可能となります。
まだ勤務先の企業に育休の制度がなく、また育休に対して理解を示してもらえない場合は、以上のようなメリットを訴えてみても良いでしょう。
ベンチャー企業ならではの子育て制度も
社員の数が少ないベンチャー企業では、大企業と比べて柔軟に制度を設計できるという特徴があります。
その特徴に加えて、ITや風通しの良さを活かした、独特の子育て制度を導入している場合があるのです。
たとえば、育休中の家庭と会社を社内ツールで結び、育児についての相談をできるようにしている企業や、週に一度の間隔で仕事と育児の両立について上司と相談できる企業も存在します。
こういった育休に関する独自の制度を導入できるのは、ベンチャー企業ならではのメリットともいえます。
同じ制度を利用できるとは限りませんが、育休の取得に際しては、そういった独自の仕組みを利用できるかどうか、社内の担当者と相談してみると良いかもしれません。
【ベンチャー企業の育休制度】企業の探し方のポイント
就職や転職にあたって、ベンチャー企業で育休制度が導入されているところを探すうえで大事なことはなんでしょうか。
先に述べたように、ベンチャー企業は社員数が少ないことから制度の利用者が少なく、まだ明確な仕組みが確立していない場合もあります。
したがって、すでに育休制度があるところを探すというよりも、制度に対応できる環境が整っているかどうかや、働き方の多様性に理解のある社風かどうかを見て判断することが大切です。
くわしく見ていきましょう。
リモートワークが可能である
乳幼児期の育児においては、毎日会社に行き勤務するというスタイルを維持することが難しくなります。
したがって、自宅から会社との連絡やリモートワークができるよう環境を整えている企業の方が、心身への負担が少なく、子育てと勤務の両立がしやすいといえます。
また、フルタイム勤務から時間短縮での勤務に切り替えられるよう制度を用意している企業も、子育てにかける時間をしっかりと確保できるため、働きやすい環境といえるでしょう。
多様性を歓迎する社風
社員の多様性を歓迎し、認める社風がある企業は、育休を申請する際に事情を受け入れてもらいやすいという利点があります。
一人ひとりの働き方に対して寛容な職場なら、夫婦で代わる代わる休暇を取りながら子どもの面倒を見たり、まとまった休暇を取ったりすることに対しても理解を示してくれる可能性が高いといえます。
また、自分だけが育休を取っている……という負い目を感じにくいことから、育休と仕事の両方に集中しやすいという点も魅力の1つです。
逆質問で様子をうかがう
企業の採用面接において、採用担当者や役員に対して逆質問をする機会があります。
そういった場で育休制度についてたずね、相手の様子をうかがうのが効果的です。
たとえば「女性の従業員は何人いるのか」「将来妊娠・出産を希望するが、御社に理解はあるか」「育休を取得している女性社員はいるか」といった質問を投げかけてみてはどうでしょうか。
これらの質問について理解がなさそうであれば、育休を利用することになった際、満足のいく条件が提示されない可能性も高いといえるでしょう。
そして、その企業に入社するのは避けた方が無難かもしれません。
採用担当者や役員に対して直接質問をする貴重な機会ですので、遠慮せずに聞いてみましょう。
【ベンチャー企業の育休制度】子育てと仕事を両立させるポイント
ここまで、ベンチャー企業で育休を利用する際に注目すべきポイントを解説しました。
それでは、育休制度を使いながら子育てと仕事を両立させることについて不安を覚える場合、どういったことを心がけるべきでしょうか。
何よりも大切なのは、企業や同僚に対して気兼ねなく相談できる状態を作ることです。
単に休みを取って職場を離れてしまうのではなく、子育てに必要な時間を確保しながら仕事をこなしていくためにどうすれば良いか、密にコミュニケーションが取れる環境を整えましょう。
ほかの従業員と良好な関係を築いておく
子育てにおいては、子どものことで急に呼び出されたり用事が発生したりすることが多々あります。
幼稚園や保育園に預ける場合、発熱やケガといったことで早退することがあり、周りの人に頼らざるを得なくなることもしばしばです。
いざというとき、安心して子どもの面倒を見るためにも、同僚やチームメンバーとは良好な関係を構築することが望ましいといえます。
また、ベンチャー企業はスピード感のある職場です。
自身が休んでいる期間に、新しいツールやアプリケーションが導入されることも考えられます。
ツールの利用に慣れ、円滑に業務を進めるためにも、周りの人に教えてもらうなどのサポートが必要です。
普段から人間関係を大事にし、いざというときお互いに頼り合える環境を構築しておきましょう。
時短勤務は給料が減る
勤務時間が減る以上当然のことではありますが、時短勤務体制ではフルタイムの仕事と比べて給与は安くなります。
また、勤務時間が減っても求められる仕事量はそこまで変わらず、子育てに時間を割いている分、より短期間で業務をこなしていくことが求められます。
仕事量や金銭の面できびしいと感じた場合は、上司に相談するなどして、自分で悩みをため込まず周りに頼った方が良いでしょう。
また、育児は何年にもわたって続きます。
そのため、育休や時短勤務中の稼ぎの少なさが家庭環境に深刻な影響をおよぼす場合もあるのです。
将来の見越しを立てるためにも、パートナーとよく話し合い、妊娠・出産の前から貯金をしておくなどの工夫が必要といえるでしょう。
報連相をおこたらない
育休や時短勤務によって、企業と連絡を取れるタイミングは少なくなります。
また、リモートワークの場合には社内ツールを通して進捗状況や課題を頻繁にやり取りすることとなります。
円滑に仕事を進め、企業との関係を維持するために、報告・連絡・相談は常におこたることのないよう心がけましょう。
特に、子どもの送り迎えや呼び出しの際は、業務に支障をきたさないよう、速やかな連絡が求められます。
現場を混乱させないためにも、わかった時点で連絡をするようにしましょう。
家族でルールを作る
夫婦で家事を分担したり、子どもの送り迎えをこなしたりするためには、家庭内で明確なルールを作ることが効果的です。
食事や洗濯・掃除などをそれぞれで担当したり、送迎の曜日などを基準に交替制としたりすることで、子育てがよりしやすくなります。
また、家事を分担するにあたっては、お互いに感謝の気持ちを伝えることがポイントです。
やって当たり前と考えず、どちらの頑張りも評価して感謝することで、やることのストレスを和らげられます。
感謝の気持ちを述べることは常に心がけましょう。
まとめ
当記事ではベンチャー企業の育休制度について、現在の状況や企業探しのポイント、仕事と育児を両立するためのポイントについて、くわしく解説しました。
法律が改正されたことや、以前よりもリモートワークが浸透したことで、育休や時短勤務を選択するハードルは下がってきているといえます。
一方で、ベンチャー企業では制度自体の適用対象が少ないことから、ノウハウがまだなかったり育休に対する理解が乏しかったりする場合があります。
これから就職を考えている方は、育休の申請に向いた企業かどうかを、社風やITの導入状況などを見ながら判断すると良いでしょう。