はじめに
ベンチャー企業という言葉を、最近よく聞くようになりました。
ベンチャー企業とは、新しいサービスや商品を提供し、さまざまな事業を展開していく先進的な企業のことです。
明確な基準や定義はありませんが、新しいビジネスモデルで、新たな価値の創造を目指す企業などが該当します。
ベンチャー企業への転職はリスク?
現在一般企業に就いている方の中には、ベンチャー企業に憧れを感じ、実際に転職を考えている方もいらっしゃるかもしれません。
ベンチャー企業は自身で積極的に動くことが求められるうえに、1人に任される仕事の幅が大きい傾向にあるため、成長志向の強い方にはうってつけの職場といえるでしょう。
そのほかにも、経営陣との距離が近く意見を言いやすいこと・最先端の開発に関われることなど、ベンチャー企業特有の魅力がたくさんあります。
一方で、ベンチャー企業への転職にはリスクとなることが多くあるのです。
今回は、そんなベンチャー企業への転職にあたってどのようなリスクが考えられるかに加えて、リスクの大きいベンチャー企業の見分け方や、後悔しないためにするべきことなどを紹介します。
どんなところがリスクなのか
まずベンチャー企業への転職において、実際にどのような点がリスクとなるのか解説していきます。
ベンチャー企業への転職がリスクとなる要因を知ることで、ベンチャー企業の実際や、転職活動において事前に考えるべきことを知れるのです。
ベンチャー企業の魅力だけではなくリスクを考えて転職活動を行うことで、後悔のないキャリアプランを立てることにつながるでしょう。
今回は、ベンチャー企業への転職の際に考えられるリスクを5つ紹介します。
給料が下がる可能性
ベンチャー企業に転職することで、給与が現在よりも下がってしまう可能性があります。
ベンチャー企業とは、これから事業の成長に力を入れていく段階にある企業です。
その段階で給与を高く設定してしまうのは、企業にとってかなりの痛手となってしまいます。
また、ベンチャー企業は一般的な中小企業や大企業に比べて資金面の整っていないことがほとんどです。
そのため、以前の職場よりも給与・年収が下がってしまうリスクを考えられるのです。
もちろん将来的に、転職前の企業にいるよりも給料が上がっていく可能性はあります。
企業によっては、固定給は低くてもインセンティブ制度を取り入れており、結果を残せば給与にプラスされることもあります。
職務経験の有無により固定給が変動することもありますので、一概に給与が下がるとはいえません。
しかし以上のことを考慮しても、職務経験があることや結果を残せることなど、自身の能力次第という点は注意するべき点です。
ベンチャー企業に転職することが、自分のスタイルに合っているかを見極めなくてはなりません。
環境の変化
ベンチャー企業は、これからいろいろな方向に向かって企業を大きくしたり、社内の基盤を整えたりしていく必要のある企業です。
そのため、さまざまな事業へ進出していくことや、人の入れ替わりが激しいこともあるなど、内部環境と外部環境のどちらも変化が激しい可能性もあります。
経営者が決断すれば今までと戦略が真逆になるようなこともり、柔軟に対応できる人材でなければ過酷な環境になるでしょう。
また決裁者の曖昧な業務が多いのも、ベンチャー企業における特徴の1つです。
決裁者が不明確な業務だと、担当部門の責任者も不明確になってしまいます。
また、部門の責任者が変わると戦略も変わるでしょう。
このような環境変化のスピード感はベンチャー企業特有のものなので、肌に合わないと感じる人も多くいるようです。
加えて経営陣と価値観が合わないと、仕事に対して大きなストレスを感じる人も出てきます。
転職後の早期退職を防ぐためにも、転職前には入念に下調べをしましょう。
倒産するリスク
ベンチャー企業は、経営面の安定性に欠ける企業が多く存在します。
新しいサービスを生み出そうとするベンチャー企業は、他企業が手がける既存のサービスに、信頼感・安心感で劣ってしまうこともよくあります。
ベンチャー企業は創業してから間もない企業も多く、長い間続いている企業のほうが選ばれやすいのです。
このようなことから、一般的にベンチャー企業が10年間経営していられる確率は、わずか10%とまでいわれています。
ベンチャー企業はこれから急成長する可能性がある一方で、業績次第では破産・倒産してしまう可能性も拭えないのです。
またベンチャー企業は、企業として残した実績もまだ少ないため融資を受けることも難しく、資金調達の段階から不安が募ることも少なくありません。
前例のないサービスや商品を提供することに挑戦する企業もあるため、ベンチャー企業の将来性、安定性を予測するのは非常に難しいのです。
志望しているベンチャー企業の過去の業績や資金面をしっかりと調べたうえで、転職を考えるのが良いでしょう。
待遇面が悪くなる場合もある
ベンチャー企業は、中小企業・大企業に比べて、福利厚生や教育制度などが充実していない場合もあります。
そのため、待遇面が転職前よりも悪くなってしまう可能性が高いのです。
給与体系がまだ整っておらず、水準が下がってしまうかもしれないというのは先ほども紹介しました。
それに加え、発展途中にあるベンチャー企業では、教育体制や研修制度なども整っていないことが多いのです。
一般企業では、新入社員への研修制度・スキルアップ制度などが整備されています。
しかしベンチャー企業は、限られた人数で業務を行っています。
研修のために必要な社員数が足りておらず、先輩の仕事を見て、実際に現場で覚えていくことが多いようです。
そのため、教えてもらうことを前提に入社してしまうと、大きなギャップを感じることになるかもしれません。
ベンチャー企業では自ら考えること、行動することが何より重視されるからこそ、自身の成長につなげられます。
しかし合わない人にとってはストレスの要因にもなり得ますので、注意が必要です。
働き方のギャップ
ベンチャー企業は社員数が少ないため、中小企業・大企業と比較して、1人の仕事の負担が大きいのも特徴です。
組織が整備されていない状態の企業が多いため、1人で複数の業務を担当したり、担当業務で大きな責任を負ったりする可能性が高いのです。
また創業して間もないベンチャー企業では、研修制度があまり重質していないことや、先輩社員が少ないこともあります。
そのため、自分で考えて能動的に働く必要があるのです。
転職前の職場環境に慣れてしまっていたり、教えてもらうことやマニュアルをこなすことの方が得意だったりする方は、転職後に大きなギャップを感じてしまうかもしれません。
そもそもベンチャー企業での働き方に自分が合っていないことに、転職後に気がつくことも珍しくないのです。
さらにベンチャー企業は一般的な企業に比べて、社員同士や役員との距離感が近い傾向にあります。
距離の近さや人間関係に居心地の悪さを感じたときに、「異動」という手段を取れないことも考慮する必要があるのです。
リスクの高いベンチャー企業の特徴と見分け方
ベンチャー企業への転職を考えている方が、事前に考えておくべきことを紹介しました。
転職前の企業よりも給与が下がってしまう可能性もあることや、働き方がベンチャー企業特有のもので、ギャップを感じてしまう可能性もあることなどがリスクとしてあげられました。
一方で、ベンチャー企業でしかできない経験もあり、リスクをふまえてもベンチャー企業への転職に魅力を感じる方もいると思います。
それでは転職をする際に、リスクの高いベンチャー企業を見分けるには、どのような点に注意すれば良いのでしょうか。
次は、リスクの高いベンチャー企業の特徴を紹介します。
業界の業績
ベンチャー企業に限らず、将来性にある安定した企業を選ぶには、企業の属している業界がどれだけ安定しているかという視点が必要不可欠です。
ただでさえ「安定している」とは言いがたいベンチャー企業で、そのうえ業界自体の業績が良くないのであれば、将来性や安定性に欠けるといえます。
そのような業界に属するベンチャー企業は、倒産のリスクが高いのです。
そのため業界自体が安定しているか、また事業の業績は伸びているかどうかを確認しなければなりません。
また、最先端のサービスやシステムを取り入れ始めている業界など、時代のニーズに合わせている業界は、これからの成長が見込めるといえます。
これらのことを考慮すれば、倒産するリスクの低いベンチャー企業を選べるといえるでしょう。
コスト削減の仕方が極端
リスクの高いベンチャー企業における特徴の1つとして、コスト削減の仕方が極端であることもあげられます。
そもそも一般的なベンチャー企業は、コスト削減を積極的に行っている企業が多いのも現状です。
ベンチャー企業は成長途中にあることに加えて、創業からあまり時間が経っていないことも多く、融資を受けにくい場合が多いのです。
そのためベンチャー企業の経営陣は、試行錯誤しながら資金を確保しなくてはいけません。
そのような状況では、できるだけコストを削減したいと考えるのが一般的な考えでしょう。
しかし一部のベンチャー企業は資金面を事業拡大に回すために、人件費などのコストを大きく削減している場合があるのです。
あまりにコスト削減が極端な企業は、転職後に人件費が減らされる場合もありますので、注意しなくてはいけません。
離職率の高さ
転職するにはリスクの高いベンチャー企業の特徴として、離職率が高いこともあげられます。
ベンチャー企業に限らず離職率が高い企業は、従業員もそれだけ何か不満があると想定されます。
転職前には必ず、志望企業の離職率を調べましょう。
また離職率の高さから、人員の入れ替わりが激しい職場であることも予想できます。
人員の入れ替わりが激しいということは、それだけ職場環境が安定していないということもわかってしまうのです。
一般的にベンチャー企業では、年間の離職率が10%を切っていれば安定した職場であるといえるようです。
しかしあまりに離職率が低すぎても、ベンチャー企業特有の良さである風通しの良さが損なわれている可能性もありますので、注意しましょう。
後悔しないために
ベンチャー企業への転職は、リスクがともなうことだとおわかりいただけたかと思います。
しかし、それを考慮してもベンチャー企業への転職を強く志望する方もいらっしゃるでしょう。
新しいことに挑戦していきたい・自身で成長していきたいと考える方は、特にベンチャー企業への転職に強い想いがあるのではないでしょうか。
ベンチャー企業への転職で後悔しないためには、事前にどのような対策を講じるのが良いのでしょうか。
転職を決めた方が入社後に後悔しないために、今からできることを2つ紹介します。
企業の情報を研究する
ベンチャー企業への転職後に後悔しないためには、事前にしっかりと志望企業の研究をすることが重要です。
企業の経営理念・方針をよく知っておかなければ、役員との距離が近くワンマンになりやすいベンチャー企業では、人間関係や仕事内容に不満を感じやすくなってしまいます。
また事業の業績・給与面をよく調べることで、転職前とどれだけ経済面の変化があるか、将来性はあるかを予想できます。
そのほかにも福利厚生や離職率など、志望企業に関する情報をできるだけ多く集めましょう。
企業研究をしっかり行うことで、事前に企業とのミスマッチを防げるのです。
入社後にギャップを感じての早期退社を防ぐためにも、入念な企業研究が必要だといえます。
自己分析をする
転職後に後悔しないためにするべきこととして、入念な自己分析が必要不可欠であるといえるでしょう。
経営者のカラーが色濃く反映されるベンチャー企業で、自身の優先したいことが企業理念と合致していないと大きなストレスになってしまいます。
自分にとって優先したいことや譲れない条件・その企業でやりたいことなど、企業だけではなく自身のこともよく知る必要があるのです。
自身が何をしたいのか・志望企業で何ができるのかを事前に整理しておきましょう。
また自己分析をすることで、本当に転職の必要があるのかも見えてくることがあります。
もし転職したい理由が、現職で解決できることであれば、考え直す余地もあるかもしれません。
このようなことから、自己分析を行うことでベンチャー企業への転職のリスクを減らせるといえます。
まとめ
ベンチャー企業への転職を考えている方に向けて、考えられるリスクやリスクの高いベンチャー企業の特徴を紹介しました。
ベンチャー企業は、今までにないサービスや商品を作り出し、新しい事業を展開していく企業です。
能動的に動くことが求められるため、自身の大きな成長につながることが魅力であるといえます。
しかし転職の際には、どうしてもリスクを考えてしまいがちです。
どうしてもやりたいことがあるのであれば、後悔しないためにも事前にしっかりと準備をし、前向きに転職活動を行いましょう。