はじめに
就職活動が本格的にスタートする前に、インターンへの参加を希望する学生は年々増えています。
短期インターンやサマーインターンなどさまざまな種類のものがあり、なかでも6ヶ月前後の長期にわたり、有給で実務に携わる長期インターンは人気を集めています。
企業研究とスキルアップを目的に、現場で社会人と肩を並べて実務に携わる長期インターンを選ぶ学生も多くいますが、内定に直結するパターンがあることをご存じでしょうか。
内定直結型のインターンについて説明していきましょう。
長期インターンにはそのまま就職できる内定直結型がある
内定直結型インターンとは、長期インターンシップの参加者の中に企業が「今後も働いてほしいと」判断した学生がいた場合、学生もすればそのまま内定となり、卒業後入社できるというものです。
「インターンが選考や採用に関係しない」と明言されているインターンもありますが、そうでない限りは、採用に影響は少なからずあると考えて良いでしょう。
本来、長期インターンは学生にとっては職業体験の意味合いも強くありますが、企業にとっては優秀な人材を早期に見つけるまたとない機会です。
インターンと本選考の開始の間にはかなりのタイムラグがあるため、なんらかの形で学生に内定までの優遇ルートを与えなければ、ほかの企業に流れてしまう懸念があります。
長期インターンに参加した学生への優遇ルートは、本選考の面接のフローが簡略化される・早期に選考が行われる・リクルーターと面談が設けられるなどさまざまなパターンがあり、一番の近道が内定直結型のインターンシップなのです。
内定直結の長期インターンに参加するメリット
内定直結インターンは、現在それほど多くの事例が見られません。
行っているのは外資系企業と一部の日系のコンサルティング企業やIT・ベンチャー企業がメインです。
しかし企業にとっては評価の高い学生に、内定を早期に出すことで有能な新入社員をキープする最良の方法とも言えるのです。
そして、学生にとっても参加することで非常に大きなメリットを得られます。
学生が内定直結インターンに参加することで得られるメリットを3つ紹介しましょう。
入社前に社内の雰囲気や人間関係がわかる
実際の入社前に社内の環境や雰囲気・人間関係を知れるのは大きなメリットと言えます。
どんなに入念に企業研究をしても、実際に働く人の雰囲気や社風というのはなかなかわからないものです。
基本的に採用活動で企業は自社の良いところしか伝えないため、なかなか実情は把握できません。
しかし、長期インターンで継続的に実務へ携わることで、社員の素顔や企業が社員に求めるスキルのレベルがわかり、自分に合っていて今後も勤務できるかを冷静に判断できるでしょう。
企業にとっても学生にとっても、入社後に一番避けたいリスクは、ミスマッチによる早期離職です。
企業のありのままの姿を見ることで、入社後のイメージの違いに苦しむことはなくなるため、安心して内定に合意できるでしょう。
入社後の仕事内容に理解が深まる
次に、入社後の業務内容をイメージしやすくなるというメリットがあげられます。
就職活動へ意欲的な長期インターンに参加する学生の多くは、どのような業種でどのようにステップアップしていきたいか、キャリアプランを考えているでしょう。
通常の就職活動のフローでは、説明会や面接でしか企業の社員と触れ合えないために、業務に携わるイメージができないまま内定を受け、入社後の業務の内容にミスマッチを感じるというケースが年々増えています。
しかし、長期インターンでは入社前から実際に業務を行えるので、自分が今後どんな業務内容を担当するのかなど自分の今後の仕事に理解が深まるでしょう。
そのため、実務の内容が自らのキャリアプランと大きく違いはないか、入社前に擦り合わせが可能になります。
新卒1年目から活躍できる可能性がある
最後に、新卒1年目から即戦力として活躍できる可能性もメリットの1つとしてあるでしょう。
通常の場合、新入社員はスキルや経歴ではなく、ポテンシャルを重視して採用されます。
そのため、入社してから数ヶ月は新入社員研修やOJT制度を通じて、社会人としてのマナーや業務の基礎知識・PCの基本スキルなどを学びながら、あくまで半人前として業務に携わります。
しかし長期インターン経験者は、学生時代に業務に携わっていて実務経験があるため、そのステップは割愛して、新卒1年目から一人前として活躍できる可能性があるのです。
特に実力重視の外資系企業ではその傾向が強いようです。
早く成長したいという向上心の強い学生には、願ってもないことでしょう。
内定直結の長期インターンに参加するデメリット
入社前から企業の内部に深く携われ、なおかつ入社後は即戦力として配属される可能性もある内定直結型の長期インターンは、メリットしかないように感じますが、デメリットも存在します。
懸念すべきポイントを3つ紹介しますので、参加する際は充分に理解したうえで決断してください。
ほかの業界や企業を知らずに入社してしまう
ほかの業界や業種・企業について、くわしく知らないまま入社してしまう可能性があるのは大きなデメリットといえます。
長期インターンの多くは大学2~3年次で、本格的に就活がスタートするより数ヶ月前の段階です。
長期インターンにエントリーする時点で業界研究はしていると思いますが、その時点では情報が出そろっておらず、少ない情報の中活動しているのも事実です。
そのため、インターン後に内定が出て承諾しても、就職活動がスタートしてほかの企業の説明会を見て「こちらのほうがやりがいはあったかもしれない」「同じような業務内容でも待遇が違う」など、後悔してしまう可能性もあります。
企業にとっても優秀な学生を早期に囲い込む目的の内定直結型インターンなので、学生は目移りせず、内定が出たら入社する覚悟をしなければなりません。
就活に時間が割けない可能性もある
次に、ほかの企業の選考を受けたくても時間を割けないリスクがあることも、デメリットの1つとしてあげられるでしょう。
そもそも、学業と長期インターンを両立するだけでも、想像以上に毎日が忙しくなります。
スケジュール上は可能でも、授業が終わったら公共の交通機関に乗り、オフィスに行き、実務に携わる緊張感のある生活を継続するのは心身共に疲弊します。
そこにさらに就職活動の本採用の時期が重なれば、スケジュールはかなり過密なものとなるかもしれません。
また、インターン先のシフトと他企業の説明会が重なり、気になる企業の選考を諦めなければいけないことも出てくるでしょう。
長期インターンは給与が発生しているため、無断欠席や遅刻は当然許されません。
ほかの企業の選考よりもインターン先の実務を優先するという意識が、内定直結型のインターンでは求められるのです。
内定を辞退しにくい可能性がある
最後に、内定を承諾してしまうと辞退しにくい可能性があることも、デメリットとして理解しておく必要があります。
内定直結型の長期インターンからの内定辞退は、法律的には違反ではなく、学生の権利として許されています。
しかし、インターン期間を通じて部署の社員や人事と関係性がある程度構築されている場合は、伝える際に少なからず気まずさは発生するでしょう。
もしかしたら、社員との話し合いの機会を設けられ引き留められるかもしれませんし、最悪の場合いわゆる「オワハラ」という自社への入社を強要するような、荒々しい言動が見られるかもしれません。
どちらにしろ、内定辞退は学生の一方的な心境の変化により起こるものです。
一度合意した決定を覆すのですから、当然素直に受け止められない可能性があるということを心に留めておかなければなりません。
内定直結の長期インターンに参加してもほかの企業の選考を受けてもいいのか?
そもそも、内定直結型インターンに参加しながらも、ほかの企業の選考にエントリーして良いのか疑問に思う学生も多いでしょう。
結論から言うと、内定直結の長期インターンに参加しても、ほかの企業の選考を受けること自体は問題ありません。
夏のインターンの時期・冬のインターンの時期、どちらも経団連に参加していない外資系企業やベンチャー企業、一部マスコミの本選考の時期と重複する可能性があります。
内定直結型インターンに参加したからといって、その企業から内定が出ても、必ずしも入社する必要はありません。
気になる企業があればエントリーしましょう。
ただし、先ほども述べたように、就職活動とインターンシップの両立はスケジュール的にかなり過酷なものになります。
どちらもおろそかにしないためには、徹底したスケジュール管理能力が求められるでしょう。
たとえば、あらかじめ企業に、選考と重なった場合はどれだけ忙しくなるかを具体的に伝え、シフトを調整するなどしてインターン先の実務に支障をきたさないように対策をしましょう。
内定直結の長期インターンに参加する前に確認したいポイント
内定直結型の長期インターンは、メリットだけでなく「他企業の情報の供給量が少ない早期に内定を承諾する」また「スケジュールも過密になり、ほかの選考を受けづらい」「内定辞退がスムーズにいかない可能性があるな」どのデメリットがあることを理解しなくてはなりません。
そのため「ただ就活に有利そうだから」と軽い気持ちで参加してはいけません。
それでも参加したいという方に、インターン参加前に確認してほしいポイントを2つにまとめましたので、ぜひご覧ください。
インターン先の企業についてしっかりと調べる
まず、内定直結の長期インターンへ参加する前に、参加する企業についての情報を事前にしっかりと調べておく必要があります。
インターネットで企業のHPや採用情報をさっと見るだけでエントリーしていませんか。
企業の基本情報を知ることはもちろん大切ですが、それだけでは不十分です。
その企業が業界全体でどの立ち位置にいるかも把握しておく必要があります。
そのうえで他社に勝っているところ、劣っているところなどを把握し、自分の言葉でまとめておけば、面接の対策にもなるでしょう。
新聞やニュースを見るのはもちろんのこと、OB・OG訪問をして現場で働く人の「生の声」を聞けば、より自分のキャリアが想像できるようになり、インターン参加後のミスマッチの防止にもなります。
自己分析を行う
企業研究と同様、自己分析もしておきましょう。
自己分析とは過去の出来事を振り返り、何を感じたか考え、記録していくことで、自分の深層心理や強みを理解する方法です。
就活の出来は自己分析をどれだけやれたかに左右されると言って良いほど、自己分析は大切だと言えます。
企業を選ぶ際に自己分析を入念に行っておくことで、自分にとってやりたいことや優先したいことなどが理解でき、企業とのミスマッチを防げるからです。
まず、楽しかったこと・頑張ったことなどテーマを決め、小学校~大学まで、そのテーマに沿った出来事をピックアップしていきます。
そして「なぜそう感じたか?」を1つの出来事につき最低5回は繰り返し問い、出来事を深掘りしていきます。
そうすることで、自分でも気づかなかった価値観が浮き彫りになるのです。
自己分析にもさまざまな方法はありますが、まずはオーソドックスなこの方法からトライしてみてください。
まとめ
コロナ渦を迎えてから、就職活動に危機感を覚えて先手を打とうと、インターン参加への意識をもつ学生が非常に増えました。
しかし、前のめりになるあまり、長期インターンにアルバイト感覚で応募する者も多く見受けられるようになったのです。
内定直結型の長期インターンは、企業にとっては採用活動の一端であり、学生にとっても職業体験の枠を超え、一社会人として企業の実務に携わる希少な機会です。
参加を希望する際はメリット・デメリットを充分に把握し、企業についてもきちんと理解したうえで「今後長期にわたって勤務するかもしれない」という心構えで臨んでください。