はじめに
就職活動における面接試験では、必ず志望動機をたずねられます。
ほかの質問に対する答えも重要ですが、志望動機に対する答えも、特に重要です。
明確な志望動機を答えられるかどうかで相手に与える印象も大きく変わってくるため、できるだけ明確に伝えなくてはなりません。
面接で志望動機を聞かれる理由は?
そもそも、なぜ面接で志望動機を聞かれるのかというと、理由はいくつか存在します。
限られた時間の中で時間を設けて訪ねるということは、何かしらの理由があるのです。
たしかに、志望動機は履歴書にも記載しているため、面接試験でわざわざ答えなくても良いと感じるかもしれません。
しかし、直接本人の言葉で聞くことにより、本気度が伝わるものです。
本人から直接聞くということは、履歴書に記載されている文字からでは伝わらないモチベーションも伝わってきます。
志望度の強さを知りたい
たとえ同じ言葉やセリフを言ったとしても、話す人によって、相手に与える感情は大きく異なります。
それと同様に、志望動機も直接声に出すことで、モチベーションの高さをうかがえるのです。
そのため、面接試験で志望動機を聞くことは、志望度の強さをはかっていると言えます。
また、社会人として働くうえで、思っていることを言葉にして伝えるというのは、非常に重要な能力です。
たとえば自社商品を営業する際やプレゼンの際など、言葉を使って人に何かを伝える機会は多いと言えます。
そのとき、相手にうまく伝えられるかどうかは企業の成果に大きく影響を与えるため、相手に伝える能力は高いに越したことはありません。
つまり、志望動機を言葉にして伝えるのは、非常に重要なスキルであると言えます。
自社にマッチしているか判断したい
せっかく時間や労力を費やして入社したとしても、入社してから「こんなはずじゃなかった」と後悔することは珍しくありません。
これは人材と企業のミスマッチであり、人材の思い描いていた企業像と、企業の思い描いていた人材像が異なることにより発生してしまいます。
人材と企業のミスマッチは人材にとってはもちろんリスクとなりますが、企業にとっても、同様にリスクとなります。
なぜなら、企業も採用活動には多額の経費を使っているからであり、人材の入社後の研修等にも大きな経費がかかっているからです。
このようなリスクを回避するためにも事前に志望動機を聞き出し、人材と企業のミスマッチが起きていないかどうかを確かめておく必要があるのです。
面接での志望動機の作り方
志望動機は採用試験において重要ですが、単に気持ちを伝えれば良いというものではありません。
志望動機を伝える際のポイントを押さえて、採用担当者へ的確に伝えなくてはなりません。
採用担当者はほかの就活生の面接を含め、1日に何度も同じ質問を繰り返すことになります。
そのなかから選ばれるためには、採用担当者にわかりやすく伝える必要があるのです。
以下に解説する内容をふまえ、ほかの就活生との差別化をはかり、採用につなげましょう。
先に論理的に結論から述べる
志望動機を伝える際は、最初に一番伝えたいことや結論を論理的に述べてください。
採用担当者は1日に何人もの面接を行っているため、回りくどい言い方では、想いを伝えることはできません。
最初にもっとも伝えたいことや結論を述べて、内容を印象付ける必要があるのです。
また、最初に結論を話すことにより、採用担当者に内容全体のイメージをしてもらえます。
全体のイメージをつかんでもらうことにより、そのあとの話も飲み込んでもらいやすくなるため、面接自体の印象もアップするでしょう。
人に物事をうまく伝えることは社会人として必要な能力です。
そのため、志望動機を確実に伝えることで、その能力があることをしっかりとアピールしましょう。
自分は今後どうなりたいか
志望動機を作るうえで、将来像から逆算する方法があります。
自分は今後どうなりたいと考えているのかという願望を述べ、そのためにどうしたら良いのかを明確にすることで、志望動機になります。
自分の思い描いている将来像を説明し、そのために企業でどのようなことを学び、どのように成長したいのかを伝えることで、モチベーションの高さもアピールできるでしょう。
ただ、企業は学校とは違うことに注意しなくてはなりません。
お金を払って学ぶ学校とは異なり、お金をもらって働く企業では、自分自身の成長を目的としたのでは、採用には結びつきません。
自分の成長が企業にとってもプラスになることを合わせて説明し、企業も人材として成長させる価値を理解してもらいましょう。
なぜその企業でないといけないのか
志望動機では、なぜその企業でないといけないのかを明確に伝える必要があります。
多くの場合、業界の独占企業ということはなく、同業他社の存在があります。
いくつもある同業企業の中からなぜ選んだのかを明確にしなくては、本気度は伝わりません。
自分の今後の願望・なりたいビジョンのためにどうしたらいいのか・そのためにはなぜその企業でないといけないのかなど、理由を具体的に述べましょう。
たとえ似たような業務内容の企業であったとしても、何かしらの特色があるはずです。
その特色を見つけ出し、志望理由に組み込むのがおすすめです。
そうすることで企業分析を丁寧に行っているアピールにもなり、面接時のネタとしても使うことができます。
その企業に入社することでどうなるのか・どんなメリットがあるのか
企業は学校とは異なり、仕事をしてその対価として賃金をもらう場所であり、人材と企業はそれぞれ利害関係を結ぶ立場にあります。
そのため、どちらか一方のみが得をする状態では、良好な関係を築けません。
つまり、人材を採用することにより、企業にとってもメリットがなくてはならないのです。
そこで、志望理由に企業にとってのメリットを組み込むことで、より採用に近づけます。
メリットと一口に言っても、専門的な能力や、ほかの社員のモチベーションアップにつながるものなどさまざまですが、企業にとってのメリットを提示できるようにしておきましょう。
ただ、新入社員が最初から先輩社員よりも仕事ができるわけではないため、強気すぎる態度には注意が必要です。
NGな志望動機
志望動機をうまく伝えることで採用活動を有利に進められる一方、NGな志望動機ではかえって逆効果を与えてしまうため注意が必要です。
上記で解説したポイントを押さえて有利に進めることは大切ですが、それと同様にNGな志望動機を避け、減点項目を減らす工夫も必要です。
就職活動では、加点よりも減点が目立ってしまう傾向にあるため注意してください。
以下に解説するNG項目は避けることで加点を積み重ねつつ減点を減らし、志望動機を上手に伝えましょう。
経営理念やビジョンに共感したことだけを伝える
経営理念や「企業のビジョンに共感したから」だけでは志望動機としては弱く、抽象的すぎるため印象に残りません。
採用担当者の印象に残るためには、志望理由はできるだけ具体的に伝えることが重要です。
経営理念や企業ビジョンに共感することは大切ですが、それらは誰でも簡単に入手できる情報であることから、ほかの就活生も志望理由に組み込んでくる可能性があります。
残念ながらほかの就活生と似たような志望理由では印象に残ることは難しく、採用されない可能性も考えられます。
そのため、志望理由は人の言葉を使うのではなく、自分の言葉で具体的に表現しなくてはなりません。
もしも経営理念やビジョンに共感したことを伝えたいのであれば、具体的なポイントなどをあげましょう。
事業内容に興味をもったことだけを伝える
事業内容に興味があるだけでは弱く、なぜ・どんな点になど、具体的にする必要があります。
ほとんどの場合、その業界の独占企業ということはなく、同業他社の存在があります。
同業他社も同じような事業内容であることから、事業内容に興味を感じただけであれば「同業他社でも良い」ととらえられてしまうのです。
つまり、同じような事業内容の企業が複数社ある中で、なぜ選んだのかを明確にしなくてはなりません。
業界に興味をもつことは大切ですが、さらに一歩踏み込んだ志望理由を考えましょう。
たとえば、その企業の強みを志望理由に組み込むと「ほかの企業ではできないことができる」と伝えられます。
業界全体に興味があることを伝えつつ、独自性もアピールできる志望理由を作ることが大切です。
成長できると感じた
「成長できる」という志望理由は、成長志向な姿勢は良いと言えますが、成長させてもらう・学ばせてもらうといったスタンスでは、企業にとってメリットとは言えません。
人材の成長は間接的に企業の成長につながりますが、かなり長期的な話になってしまうため、好ましいとは言えないのです。
また、企業は学校とは異なり、学びの場ではありません。
成果をあげて利益を出す場所であるため、社会人として企業の利益に直結しなくてはなりません。
成果をあげるために自身のスキルや経験を活かす必要があるため、単に「成長できる」といった志望理由では、企業側の立場からするとメリットにはならないのです。
もしも、自身の成長を志望動機に組み込みたいのであれば、現状と理想のギャップを説明し、どのように成長できればどのような成果があげられるのかを明確に説明しましょう。
福利厚生面などにひかれた
「福利厚生面などにひかれた」という理由では「事業に興味があるのか」と疑われ、悪印象になってしまう場合があるため、好ましい志望理由とは言えません。
企業は社員により成果を出してもらうため、福利厚生に力を入れています。
たしかに福利厚生が魅力的な企業は存在しており、その企業の特徴になっていることもありますが、本質は社員の成長やそのあとの成果を目的としているため、最初から福利厚生が目的の社員は企業にとって必要と言えません。
福利厚生に力を入れているということは、企業としてはそれだけコストを掛けていると言えます。
そのコストに見合うだけのリターンを期待しているものであり、リターンに見合わない人材は必要ないのです。
そのため、志望理由では自身を採用することで、どれだけメリットが大きいのかを伝えることが重要と言えます。
例文
学生時代にアルバイトリーダーとして、マネジメントをする側になったときに、人のためになる仕事にやりがいを感じました。
この経験から、将来は人のためになることをしたいと漠然と思い描いていました。
御社は、やる気次第で若手社員にもマネジメント業務や、大きな役割を任せてもらえる環境があることを学び、その点にも魅力を感じています。
日本の伝統的な年功序列の制度は古き良きものもありますが、若手社員の力を発揮するためには、年齢に関係なく活躍できる環境も大切だと考えています。
御社はその環境が整えられており、私自身のマネジメント経験を活かすことで、御社にもメリットがあると感じました。
入社した際には、若手でも大きな役割を任せたいと思われるような人材になるよう、努力を惜しまず業務に励みたいと考えています。
まとめ
就職試験を受ける際、必要になるものが志望動機です。
目的意識をもっている社員と、そうでない社員では成果も大きく異なるため、企業も志望動機がしっかりした社員を積極的に採用します。
ただ、志望動機であればどのようなものでも良いかというと、そうでもありません。
企業はあくまでも営利組織であるため、成果に結びつく志望動機が必要です。
自身の志望動機と企業にとってのリターンを掛け合わせ、メリットをうまく伝えられるように工夫をしましょう。