はじめに
最近の経済ニュースでは、スタートアップ企業という言葉を見聞きする機会が増えました。
既存の産業が伸び悩む中、新たな需要を掘り起こすことでビジネスチャンスを見出そうとする起業家が増えています。
多くの投資家も、スタートアップ企業への投資を進めてきました。
では、スタートアップ企業とは具体的にどのような企業を指すのでしょうか。
この記事では、スタートアップ企業の特徴や主な業界についてまとめました。
記事の後半では、代表的なスタートアップ企業についても簡単に紹介します。
スタートアップ企業とは
スタートアップ企業に明確な定義はなく、規模や業種などでスタートアップ企業かそうでないか分けることはできません。
今までにはない、革新的なビジネスを展開する新興企業全般を指す言葉です。
もちろん、今まで誰もチャレンジしたことない分野に挑むわけですからリスクがあります。
近年スタートアップ企業が注目されるようになったのは、IT系企業の成功が大きいです。
設備投資の必要が少ない・在庫を持つ必要がないビジネスモデルであるため初期段階での資金繰り悪化・倒産の可能性が低く多くの企業が成功してきました。
もちろん、IT業界以外でも革新的なビジネスモデルに挑戦する企業はスタートアップ企業と呼ばれます。
スタートアップ企業の特徴やそこで働く人材については、こちらの記事で詳しく解説していますのでぜひご参照ください。
https://shukatsu-venture.com/article/306325
ベンチャー企業との違い
スタートアップ企業と混同されがちな言葉が、ベンチャー企業です。
ベンチャー企業も起業して新規事業にチャレンジする点は共通していますが、ベンチャー企業はすでにあるビジネスモデルの中で新しいサービスを提供し勝負します。
流行の最先端を行く飲食店・新発売の美容コスメブランドなどは、画期的なアイデアが採用されていてもスタートアップ企業ではなくベンチャー企業に分類されます。
また、スタートアップ企業は短期急成長を目標に起業されることが多く、ベンチャー企業は長期的に安定的な成長を目指して起業されることが多いです。
ベンチャー企業・スタートアップ企業の違いや特徴については、こちらの記事で詳しく解説しています。
興味のある方は、こちらもぜひご覧ください。
https://shukatsu-venture.com/article/306025
注目されるスタートアップ企業の特徴
続いて、注目されるスタートアップ企業の特徴について紹介します。
毎年多くのスタートアップ企業が立ち上げられていますが、必ずしも成功しているわけではありません。
スタートアップ企業は短期・爆発的な成長を目指すので、まずは起業段階で注目されるかが成功・失敗を分けるポイントになることが多いです。
もちろん初期の注目度が低くてもユーザー評価の高さ・優れた広告戦略などで成功を収める可能性はあります。
しかし、以下の見出しで紹介する事柄が優れているほど、成功する可能性が高いのは間違いありません。
資金調達額が多い
注目されるスタートアップ企業の特徴として、資金調達額が多いことが挙げられます。
IT系企業は設備投資に必要な金額が少ないですが、それでも初期資金が潤沢なほど成功する可能性が高くなるのは当然です。
多くの資金を調達できただけ優れた人材をスカウトしやすい・プロモーションや営業にお金をかけられるなど多くのメリットを享受できるでしょう。
資金調達に成功した起業は、多くの方が投資家から可能性が高く評価されているとみなします。
そのため、資金調達の成功自体が強力な知名度・注目度アップにつながる点も見過ごせません。
特に大手企業・銀行などから支援を受けていることがわかると注目度が増し、経済ニュースなどで報じられる可能性も高くなります。
独自性が高い
商品・サービスの独自性が高いことも、注目されるスタートアップ企業の特徴です。
革新的であるほど、世間がそのビジネスが成功するか・自分も購入に値するかどうか注目します。
特に、今まで多くの消費者が「こんなサービスがあれば良かったのに」と思っていたニーズにマッチした商材を考え出せた企業は大成功を収めてきました。
多くの方が望んでいながら、まだ実現されていないサービスはまだまだたくさんあります。
特に新型コロナウイルスの感染拡大では、人々の生活様式や働き方が変化したことで新たなニーズが次々と生まれてきました。
目ざとく新しいニーズを発見し、実現までいち早く漕ぎつけたことで高い独自性を持ったサービスを発表できたスタートアップ企業もあります。
知名度が高い
ビジネスを成功させるためには、商品・サービスが優れているだけでは十分と言えません。
企業やブランドにある程度知名度があることも大切です。
スタートアップ企業は起業直後がいきなり勝負どころで、知名度を得るために多くの起業家が苦心してきました。
そのため、多くのスタートアップ企業はなんらかの形で知名度を得ようとします。
資金調達を受ける企業・協力企業の知名度が高い場合、その知名度の高さを活かして初期の営業・マーケティングを展開できるでしょう。
IT業界のスタートアップ企業も、既存の有名サービスを利用する形で自身の知名度を上げることができます。
インスタグラムやTwitterといったSNS、YouTubeなど多くの方が目にする動画サービスで自然とサービスについて知る機会があれば有利です。
今注目のスタートアップ業界
次に、今特にスタートアップ企業が多い業界を3つ紹介します。
業界全体で見ても好調で成長が見込まれる業界であるため、これらの業界に就職・転職したいと考える方も多いです。
現在スタートアップ企業・ベンチャー企業に分類される企業が、10年後20年後には業界をリードする存在になっている可能性もあります。
興味のある業界・将来就職・転職を考えている業界については、できるだけ業界ニュースを仕入れ知識をアップデートさせていきましょう。
AI業界
AI(人工知能)は、ここ数十年で格段の進歩を遂げてきました。
そのため、スタートアップ企業でもAI技術を駆使したサービスを展開するところが非常に多いです。
単なるプログラムと違い、AIは自分で学習し成長していく点に特徴があります。
そのため、利用すればするほど賢くなりユーザーに優れたサービスを提供しやすくなるのが利点です。
ただし、AIはまだまだ課題が多く、結局最後は人間の知恵や判断が必要になっているシーンも多く見られます。
データが少ないと学習できない・倫理的な判断を任せるのが難しいなど、AIならではの課題も多いです。
高度なAIを管理できる人材が不足しているため、関心はあるものの導入に消極的な企業も少なくありません。
苦手分野の克服といった課題が克服された時は、さらにAIが本領を発揮する可能性があります。
医療業界
日本は特に少子高齢化の進行が顕著な国であるため、医療業界のスタートアップ企業も注目度が高いです。
最近は新しい医薬品や医療機器の開発などハードウェアの進歩だけでなく、ソフトウェアの進歩も目立ちます。
患者が最適な医療サービスを受けられるようにするためのシステム作りは、今後も模索が続くでしょう。
一方、医療従事者の負担を減らす方向のサービスも期待が寄せられています。
少子高齢化の社会ではどうしても医療・介護などの担い手が不足しやすくなるので、そこを新たなサービスがどのように助けてくれるかは注目に値するでしょう。
地域医療格差など社会課題とも強く結びつく分野だけに、ビジネスだけでなく私たちの暮らしを考えても注目したい領域です。
EC業界
ECサイトの「EC」とはElectronic Commerceの略であり、電子商取引を意味しています。
今はスマートフォンに決済機能があるのが当たり前で、今後生活していく中で現金を使った取引をするシーンはますます減る可能性が高いです。
電子決済が使えるなら必ず使いたい・現金はできるだけ持ち歩きたくないと考える方も、すでにたくさんいらっしゃいます。
さらに、新型コロナウイルスの影響で、人々が家にいる機会が増えました。
食事も外食ではなく宅配サービスを利用する割合が増えるなど、生活の変化で電子商取引を使うことも多くなっています。
そのため、現在EC業界は非常に注目されている業界の一つです。
新しいサービスが普及すると、私たちの普段の買い物の仕方そのものが変わる可能性もあります。
注目のスタートアップ企業
続いて、上記で紹介したAI業界・医療業界・EC業界の代表的なスタートアップ企業を見ていきましょう。
設立年度や事業内容・調達資金額(判明していれば)などを紹介します。
さまざまな企業を見ると、同じスタートアップ企業に分類される企業でも資金調達額や企業理念などに相当な違いがあることに気付くでしょう。
紹介する企業の中には、まだ決して知名度の高くない企業もあります。
スタートアップ企業は研究や開発をしながらサービスを洗練させている最中の企業も多いので、あるきっかけで突然爆発的な成長を遂げても不思議はありません。
AI業界編
最初はAI業界のスタートアップ企業として、プリファードネットワークス・atama plus・THINKCYTEの3企業を紹介します。
すでに大手で導入されているサービスもありますが、AIはまだまだ研究開発段階の技術です。
大手から多額の資金調達を得なければ参入の難しい分野ともいえ、すでに資金調達に成功した企業が大きなリードをしているのは間違いありません。
AIがどこまで進歩するのかはもちろん、どんな分野・サービスに応用されるのかにも注目していきましょう。
プリファードネットワークス
プリファードネットワークスは、深層学習(ディープラーニング)やロボットの研究や開発を行っているスタートアップ企業です。
さまざまな最先端技術の研究を同時進行で進めることにより、世界のさまざまな課題の解決を目指しています。
2014年3月に設立され、トヨタ自動車・ファナック・NTTなどから21億円の資金を調達することに成功しました。
この企業の特色として、かなり多くの分野の自動化に貢献していることが挙げられるでしょう。
資金調達先もさまざまな業種の大企業からなされています。
製造業・エンターテイメント・医療・教育・自動運転などさまざまな分野でプリファードネットワークスの技術開発が進められているので、今後ますます存在感を増す企業になる可能性が高いです。
詳しい企業情報・プロジェクトについては同社の公式サイトをご確認ください。
atama plus
この記事で取り上げるスタートアップ企業の中で、最も有名な企業はatama plusでしょう。
この企業は、AIを用いた学習システム事業を展開しています。
駿台予備校・Z会といった大手の教育業者でも導入しているため、一般の方でも多くの方が名前を知っているのではないでしょうか。
atama plusの設立は2017年と、非常に歴史の浅い企業です。
資金調達金額は51億円というデータがあります。
AIを使った教育のメリットは、勉強の得意な子にはどんどん先の分野を出題し苦手な子にはつまずいた原因からしっかり解決できるようAIが工夫してくれるところです。
一般的な教室だと生徒間にレベル差があり、勉強についていけない子・簡単すぎると感じる子が両方出ます。
この問題をAIが解決してくれる日が、遠くない将来に訪れる可能性もあるでしょう。
詳しい企業情報などは、atama plusの公式サイトをご覧ください。
THINKCYTE
AIといえば多くの方が教育やゲームのプログラムなどを思い浮かべますが、THINCYTEのAI技術は細胞の研究に役立てられています。
革新的な細胞技術を提供することで、より進んだ治療法・生物学的な発見を提供しようと努めている企業です。
同社が研究を進める単一細胞計測技術は「ゴーストサイトメトリー技術」と呼ばれます。
THINKCYTEは2016年に設立されており、資金調達額は28.5億円です。
また、2020年2月にはさらに16.5億円の資金調達したことが発表されました。
それだけTHINKCYTEの研究技術の価値が高く評価されており、今後に期待されていることがわかるでしょう。
今後も医療・技術関連のニュースで話題にのぼる可能性の高い企業です。
興味を持った方は、同社ホームページからさらに情報をご確認ください。
医療業界編
続いて、医療業界のスタートアップ企業からインフィック・ゼノマ・エアロシールドを紹介します。
医療業界のサービスはただ病気やけがを治すだけではありません。
QOLを高める・健康的な生活の維持に寄与するといったサービスも、医療業界のスタートアップ企業が大いに期待される分野です。
特に最近はコロナで運動不足・免疫低下などを不安視する方が多くいらっしゃいます。
withコロナでも健康的な暮らしを続けるためのサービスは、今後も続々と登場するでしょう。
インフィック
静岡県のインフィック株式会社は2002年に設立されており、資金調達額は不明です
在宅介護サービス・訪問介護サービス・人材派遣事業・コンサルティング事業などを手掛けています。
スタートアップ企業の条件には当てはまらない既存のビジネスモデルも展開していますが、この企業は高齢者見守りシステムの研究開発も進めてきました。
ナースコールだけでなく、人感センサーやベッドに設置する心拍数センサーなども活用するサービスです。
ネットワークを活用して高齢者の状態を定期的に確認することで、孤独死などの社会問題解決への寄与が期待されています。
JETRO主催のスタートアップシティ・アクセラレーションプログラム参加企業の指定を受けました。
詳しい情報は、こちらの公式サイトをご確認ください。
ゼノマ
ゼノマは2015年に設立された企業で、資金調達額は1億9,900万円です。
この企業の大きな特徴は、東京大学の研究室で得られた研究成果を実用化するために設立された点にあります。
シャツの中に電子回路を埋め込み、その生体情報や体の動きを計測する研究です。
公式サイトでは、「Smart Apparel Company」と表示があります。
見た目は普通の衣服であり、日常的に着用することができますし洗濯も可能です。
スポーツではユニフォームやインナーに計測機器を付けて走行距離などのデータを測ることがありますが、今後は衣服で生体情報を記録するのがもっと普遍的になっていく可能性もあります。
睡眠時用の衣類も販売されているので、健康のために睡眠データを取ることもできるでしょう。
さらに詳しい情報は、同社公式サイトをご確認ください。
エアロシールド
エアロシールドは創業2001年・設立2006年の企業で、資金調達額は不明です。
「世界の空気を美しく」という経営理念で運営されています。
この企業が研究開発を進めているのは、紫外線を活用した殺菌装置です。
特にここ数年は新型コロナウイルスの感染対策が必須となったことで、空気をよりきれいにしたいと考える方が増えました。
もちろん、病院や福祉施設では空気の環境対策をしなければクラスターなどのリスクが高まってしまいます。
エアロシールドは、紫外線の中でも殺菌効果の高い波長である「UV-C」という光を用いた製品です。
紫外線は天井付近で水平に照射され、人間の頭上に紫外線ゾーンを作るので人間の居住空間でも利用できます。
興味を持った方は、同社公式サイトをご覧ください。
EC業界編
続いて、EC業界のスタートアップ企業からスターフィールド・ACROVE・エアクローゼットの3企業を紹介します。
EC業界の大きな特徴は、日本国内にとどまらずグローバルな事業展開の可能性が高いところです。
インターネットでつながっていれば世界中どこにでもサービスを提供できる可能性があるので、思わぬ国・地域に需要が転がっている場合もあります。
今後日本で急成長を遂げるスタートアップ企業の中には、国外の企業・消費者をメインターゲットにするところも出てくるでしょう。
スターフィールド
現在は中小企業や個人でも、ECサイトで日本中・世界中を相手にビジネスができます。
スターフィールドは、日本だけでなく世界に向けて価値を発信したい方向けにアジア向けのECサービスを提供している企業です。
資金調達額は114億円、2007年に設立されました。
中国とミャンマーに子会社の現地法人を持っています。
中心サービスは、越境ECサイト運用システム「LaunchCart」です。
ECサイトを用意する時に壁となるのが決済システムで、グローバル市場に個人や中小企業が打って出るにはサポートが欠かせません。
LaunchCartは中国の決済システムなどにも対応し、アジア圏の消費者にアプローチしたい方を助けてくれます。
さらに詳しい情報を知りたい方は、同社公式サイトをご参照ください。
ACROVE
ACROVEは2018年に設立され、2020年に株式会社アノマから現在の名前に変わりました。
資金調達額については不明です。
同社は自らを「EC・D2Cのプラットフォームカンパニー」としており、独自のEC最適化エンジン「ACROVE FORCE」を提供しています。
また、管理販売費を自動化で節約することで自社ブランドの開発にも力を注いできました。
後継者の不安がある方などに、Amazon・楽天・YahooといったサイトでECショップを運営する方の事業承継・M&Aの手助けも行っています。
ECサイトを運営する方の多くが、管理費の節約や手間の少ないシステム構築などに頭を悩ませてきました。
現在はACROVEのようにECサイト運営のサポートで実績ある企業が増え、より参入しやすくなったと言えます。
ACROVEのさらに詳しい情報は、こちらの公式サイトをご覧ください。
エアクローゼット
最近のトレンドに「サブスク」がありますが、エアクローゼットが提供してくれるサービスはその中でも特殊なファッションのサブスクです。
2014年に資金調達額9.5億円で設立されました。
エアクローゼットのサービスでは、プロのスタイリストが選んでくれた服を毎月自宅にレンタルで届けてくれます。
もちろん無料診断でユーザーの好みや体型などを事前に質問しており、ユーザーの好みに合いそうな服が選ばれる仕組みです。
その服に対するユーザーの感想をもとに、また翌月は新た服が届きます。
ライトプランで月額7,480円(2022年5月現在)からと手軽に試せるところもポイントです。
オプションでスタイリストの指名などもできます。
さらに詳しいサービスの情報などは、公式サイトをご確認ください。
まとめ
今後、スタートアップ企業で働きたいと考える労働者はますます増えるでしょう。
革新的なサービスの開発や営業に携われることは大きな喜びですし、事業が軌道に乗った時にはキャリアや収入の点でもメリットが大きいです。
スタートアップ企業への就職・転職を考える方は、まず自分がどんな分野でやりがいを見出せるか考えてみましょう。
実はスタートアップ企業は社会課題解決に寄与できる可能性も大きく、人のために立ちたい・社会貢献したいと考える方もやりがいを感じやすい企業が多いです。