はじめに
現在の社会はネットワークや通信技術が重要な基盤となる情報化社会であり、情報技術の開発や維持に関わるITエンジニアの需要も高くなっています。
IT分野は多方面に発展を続けているため、エンジニアの種類は多く仕事内容もさまざまです。
そこで今回は、ITエンジニアの中の一つ、セキュリティエンジニアに着目し、その仕事内容ややりがい、取得するべき資格などを解説します。
セキュリティエンジニアに興味のある方や具体的な仕事内容について知りたい方はぜひ参考にしてください。
セキュリティエンジニアとは
セキュリティエンジニアとは、ITエンジニアの一種であり、ネットワークやシステムを外部の攻撃から守ることに特化したエンジニアを指します。
情報伝達にインターネットなどのネットワークを用い、クラウドを用いてデータのやりとりを行う現代社会において、情報の秘匿性やシステムの安全性を保つことは非常に重要です。
システムに脆弱性が残ったまま運用していた場合、個人情報の流出やシステムの長期的なダウンなど大きな被害を出す可能性があるでしょう。
セキュリティエンジニアはこういった事態に備え、セキュリティを向上させる機器の導入やサイバー攻撃への対策などを行います。
また、サイバー攻撃の手段は日々新しいものが生まれているため、常に情報を更新し、新しいリスクへの対策を考えなくてはいけません。
セキュリティエンジニアの5つの仕事内容
次はセキュリティエンジニアの仕事内容について見ていきましょう。
セキュリティエンジニアは、システム構築の初期から完成まで関わり、安全面について確認しなくてはいけません。
そのため、ほかのエンジニアと連携しつつ、さまざまな業務に携わることになります。
今回はセキュリティエンジニアの仕事内容を5つの業務に分けました。
それぞれのエンジニアが特定の業務のみを担当しているケース、1人のエンジニアが複数の業務を担当しているケースなど、実際の運用は現場によってさまざまです。
①企画
1つ目の業務は企画です。
この業務においてセキュリティエンジニアは、まず関連部署やほかのエンジニアと連携し、ネットワークやシステムが抱えるセキュリティ上の弱点を把握しなければいけません。
そして、どのようなセキュリティ面の対処が必要なのかを分析し、その企画提案を行います。
ほかのエンジニアの業務の中では、顧客が必要とするシステムを分析、提案するシステムエンジニアと近い役割だと言えるでしょう。
セキュリティに関わる企画提案を行うエンジニアは、セキュリティコンサルタントとも呼ばれます。
②設計
2つ目の業務は設計です。
この業務では企画・提案された内容をもとに、顧客に適したセキュリティの設計を行います。
ここで設計対象となるのは、システム面のセキュリティ強化だけではありません。
ネットワークやサーバー機器、ハードウェア、アプリなどさまざまな側面を網羅し、脆弱性を排除していくことになります。
そのため、設計段階に関わるセキュリティエンジニアには、個別の分野についての知識だけでなく、それぞれの分野がどのように関連し機能しているかといった包括的な知識が必要です。
③実装
3つ目の業務は実装です。
この業務では企画をもとに設計されたプログラムをプログラミングによって作成するほか、各種機器の設定なども行います。
システムに関する部分は、プログラマー的な業務が多くなるでしょう。
ただ黙々と開発をするだけではなく、設計されたものが顧客の環境で動くかどうかをしっかり確認しながら、各種機器やOSに合ったプログラミングをしなければいけません。
近年ではクラウドを利用した情報伝達機会も増えており、求められるスキルも多様化しています。
④テスト
4つ目の業務はテストです。
入念に設計、実装したセキュリティでも実際に動かすと思わぬ脆弱性や、問題点が見つかる場合があります。
後から脆弱性が見つかった場合は大きな損失につながる可能性もあるので、運用前にテストを行い、適切な対処を施す業務は非常に重要です。
具体的には、ペネトレーションテストと呼ばれる擬似的なサイバー攻撃や侵入を試みることで、システムの脆弱性を発見します。
そのためセキュリティエンジニアは防御の手段だけでなく、攻撃の手段についても豊富な知識を身につけなければいけません。
⑤運用・保守
5つ目の業務は運用と保守です。
セキュリティエンジニアの仕事は、成果物を納品すれば終わりではありません。
セキュリティがきちんと働いているかを継続的に確認し、トラブルが発生した場合はすぐに対処することが求められます。
サイバー攻撃の種類や方法は日々新しいものが生まれているので、それに合わせてOSやアプリケーションをアップデートする作業も必要です。
この業務に携わる場合は、顧客と長期的に交流し関係を持つため、コミュニケーション能力や連携する能力が特に重要になるでしょう。
セキュリティエンジニアのやりがいとは
次はセキュリティエンジニアのやりがいについて解説しましょう。
セキュリティエンジニアは、システムやネットワークのセキュリティを大きく向上させる仕事です。
その成果により情報の秘匿性は保護され、人々は安全な社会生活が可能になります。
情報化社会が進展し、個人情報の流出や機密情報の漏洩が問題視される昨今、その存在意義は非常に大きなものだと言えるでしょう。
このように、社会を裏から支える重要な役割を担い、大きく貢献できることがセキュリティエンジニアのやりがいです。
また、セキュリティに関連する業務に携わるため、幅広い知識やスキルを身につけられる点もやりがいの一つでしょう。
活発に動き続ける情報化社会の最先端で仕事をするため、常に新しい学びを得ることも可能です。
セキュリティエンジニアの厳しい点とは
一方、セキュリティエンジニアについて解説するのであれば、その厳しさにも触れておかなくてはいけません。
特に厳しい点として語られるのは、その責任の重さです。
先述の通りセキュリティエンジニアは社会的に重要性の高い仕事ですが、その裏返しとして常に大きな責任が伴います。
企画、設計、運営、実装、テスト、保守といった業務のどこか一つでもミスがあれば、その結果として甚大な被害が引き起こされる可能性もあるでしょう。
場合によっては数万人規模の個人情報流出、多くの人々に利用されているシステムの破壊など、社会的に大きな問題となるケースも存在します。
セキュリティエンジニアは、そういった事態を防ぐために常に責任感を持ち、大きなプレッシャーに耐えながら仕事をしなくてはいけません。
また、セキュリティエンジニアはその立場上、日常的にセキュリティに対して敏感であることが求められます。
自身のセキュリティ環境だけではなく、家族や会社のセキュリティ環境についても常に目を光らせることになるでしょう。
セキュリティエンジニアの将来性とは
次はセキュリティエンジニアの将来性についても触れておきましょう。
まず、IT関係のエンジニアは全体的に今後も需要が伸びると予想されており、将来的な人材不足の解決が大きな課題の一つにもなっています。
セキュリティエンジニアも例外ではなく、高い将来性を持つ職業だと考えて良いでしょう。
また、IoT化の普及に伴い、これまで情報セキュリティと無縁だった分野においても、サイバー攻撃やシステム障害、ネットワークトラブルへの対策が必要となってきています。
そのため、セキュリティエンジニアが必要とされるフィールドは、より広くなっていくでしょう。
情報に関するテクノロジーは日々進歩しており、近年ではクラウド型のネットワークに移行する企業も増えてきています。
そういった企業のセキュリティを担当するエンジニアは、新しい知識を身につけなくてはいけません。
将来のセキュリティエンジニアは、クラウドやIoTに関する知識と高い技術を身につけた、先端IT人材となることが求められているのです。
専門性の広いエンジニアになるにはベンチャー企業がおすすめ
すでにご紹介したように、セキュリティエンジニアの仕事内容は多岐にわたり、それぞれの分野について専門的な知見やスキルが求められます。
しかし、大手企業ではセキュリティエンジニアの人数も多く、縦割りのようなシステムになっている現場も少なくありません。
その場合、それぞれエンジニアがどれかの分野に特化する形になり、特定領域の仕事しか経験できないケースも多いでしょう。
幅広い経験を積み、多くの専門性を身につけたい場合は、個人の裁量が大きいベンチャー企業への就職をおすすめします。
セキュリティエンジニアの平均年収とは
次は、働くうえで大切な収入面についての確認です。
セキュリティエンジニアの年収はスキルや環境によっても異なりますが、30歳前後で600万円程度と言われています。
十分なスキルを持ち、そのスキルが必要とされる外資系企業などに転職すれば、年収1,000万円にも手が届くでしょう。
より高収入を目指すのであれば、社内で規定された、特定の資格の取得が必要になる可能性もあります。
また、エンジニアとしてのスキル以外にも、コミュニケーション能力や語学力を磨くことも重要です。
セキュリティエンジニアに向いている人は
次はどんな方がセキュリティエンジニアに向いているのかを解説します。
セキュリティエンジニアはITやセキュリティの豊富な知識、実践的な技術が求められる職業ですが、それらのスキルだけで適性を測ることはできません。
性格や仕事に何を求めているかといった点も、職業を選ぶ際には重要な基準です。
たとえスキルが十分でも相性が悪い場合には、仕事に満足感が感じられず、ストレスを感じてしまうこともあるでしょう。
今回はセキュリティエンジニアに向いている方の特徴を3つピックアップしました。
責任感の強い人
すでに述べたように、セキュリティエンジニアは重い責任が伴う仕事です。
仕事の内容にわずかでもミスがあれば、顧客の企業や団体に迷惑をかけるだけでなく、社会的な混乱へとつながる可能性もあるでしょう。
セキュリティエンジニアとして働くためには、この重い責任をしっかりと受け止め、プレッシャーに耐えて仕事をしなくてはいけません。
そのため、責任感の強さは、セキュリティエンジニアとしての適性を図る際に重要な指標となります。
特に、責任の重さをやる気に変え仕事の原動力にできる人は、セキュリティエンジニアの適性が高いと言えます。
セキュリティエンジニアを目指す方は、重い責任を背負った経験やプレッシャーがかかった場面での行動などを思い返して、自身の適性を測ってみてください。
縁の下の力持ちとして動くことが苦にならない人
セキュリティエンジニアは、情報化社会の安全を影から守る非常に重要なポジションです。
しかし、多くの人々にとってその安全は守られている状態が自然なものであり、セキュリティエンジニアの仕事が表立って評価される機会は多くありません。
言い方を変えれば、きちんと仕事をして当然であり、失敗した時に悪い意味で目立ってしまう職業だと言えるでしょう。
そのため、あくまで自身は裏方であると割り切って、企業やユーザーを支えるために仕事ができる方がセキュリティエンジニアには向いています。
逆に自身の成果を世間に公表し、なんらかの反応を得たいと考えている方は、同じエンジニアでもほかの職種を目指したほうが良いかもしれません。
自身が仕事に何を求めるか、何をやりがいとするかを言語化し、適性を測ってみてください。
几帳面な人
サイバー攻撃や物理的なトラブルなど、システムやネットワークに障害を引き起こす原因にはさまざまなものが考えられます。
安全性の高い盤石なセキュリティを構築するためには、わずかな脆弱性や、小さな課題も見逃さずに対策を施さなくてはいけません。
テスト業務を担当する場合には、あらゆる攻撃手段を想定し、一つひとつの可能性を潰していく作業が必要です。
そのため、基本的にセキュリティエンジニアの仕事には注意深さと丁寧さが要求されます。
細かいところにも手を抜かず、コツコツと確実な仕事ができる几帳面な性格の方は、セキュリティエンジニアの適性が高いと言えるでしょう。
勉強や仕事でどのようなミスをどの程度しているか、普段時間や約束をしっかり守れているといった点を自己分析し、適性を測ってみてください。
セキュリティエンジニアとして働きたい人におすすめの資格
最後に、セキュリティエンジニアとして働きたい方に向けて、取得しておくと便利な資格を紹介します。
セキュリティエンジニアはITの安全面に関する知識と技術が要求される職業であり、就職や転職の際には自身の能力を示すことが大切です。
資格は能力の高さを客観的に示すことが可能な指標であり、企業によっては所有している資格の種類が給与や昇進にも関係してきます。
特に未経験からの転職など、実績を示すのが難しいケースでは資格の有無がより重要になるでしょう。
情報セキュリティマネジメント
情報セキュリティマネジメント試験は2016年に作られた比較的新しい国家資格であり、IPA(独立行政法人情報処理推進機構)によって実施されています。
試験内容は情報セキュリティの基本的な知識を問うものであり、情報系の資格としても難易度はそこまで高くはありません。
実際に平均合格率を見ると、50%以上の数値を保っています。
セキュリティエンジニアを目指すのであれば、その入門資格として、情報セキュリティマネジメント試験の取得を目指すのも良いでしょう。
シスコ技術者認定
シスコ技術者認定は、アメリカのネットワーク機器メーカーであるシスコシステムズが提供している資格です。
企業が独自に提供しているベンダー資格に分類されますが、世界共通基準の資格でありエンジニアとしての知識やスキルを示す重要な指標となっています。
特にネットワークに関わるエンジニアを目指すのであれば、必須レベルの資格といっても良いでしょう。
シスコ技術者認定は技術力を証明する5つの認定レベルと、9つの専門分野に分かれており、ネットワークの知識やシスコ製品の扱い方に関する問題が出題されます。
おわりに
セキュリティエンジニアは高度情報化社会の安全面を支える職業であり、今後も高い需要が見込まれています。
日々新しい技術やスキルをアップデートし社会に貢献することは、大きなやりがいになるでしょう。
一方、自身のミスで重大な損害やトラブルを引き起こす可能性もあるため、常に重い責任と隣り合わせの状態で仕事をしなくてはいけません。
セキュリティエンジニアに興味がある方は、自身のスキルだけでなく性格や仕事のスタイルも考慮して適性の有無を考えてみると良いでしょう。