はじめに
就職活動の中でも、特に苦手な人が多いのがグループディスカッションです。
初めて会った人たちと、限られた時間で議論を重ね、1つの結論を導き出すのは簡単なことではありません。
そんなときに知っていると便利なのが、フレームワークです。
フレームワークにはさまざまなものがあり、与えられたテーマに合わせて選ぶと議論がスムーズに進みます。
今回は、グループディスカッションで役立つフレームワークについて解説します。
フレームワークを理解して、グループディスカッションを効率良く進められるようにしましょう。
【グループディスカッションのフレームワークとは】グループディスカッションとは
グループディスカッションとは、学生を4~6人ほどのグループに分けて、1つの課題に対して議論をさせて答えを出すという選考方法です。
一般的に、選考フローの序盤で多く見られます。
グループディスカッションのテーマはさまざまで、身近な話題からビジネスに関係するものまで多種多様です。
「集団面接と同じようなものでは?」と思うかもしれませんが、面接官の質問に直接答える集団面接と違い、議論や発表の場を通じて自分をアピールする必要があります。
しかも、初めて会った人たちと議論をして、結論までまとめあげるのはなかなか大変な作業です。
グループディスカッションがどのようなものかしっかりイメージしたうえで、その過程で自分をアピールする準備や練習をしておきましょう。
【グループディスカッションのフレームワークとは】グループディスカッションの流れ
実際にグループディスカッションに参加する際に、そのおおまかな流れを知っておくと、本番でも焦らずに落ち着いて対応できます。
一般的なグループディスカッションの流れは、「自己紹介」→「役割決め」→「お題の定義確認」→「現状分析」→「施策立案」→「発表」となる場合が多いです。
実際には順番が前後したり、内容が違ったりしますが、基本を理解しておけばイレギュラーな形式でもスムーズに対応できます。
具体的にどのようなことを行うのか、詳しく説明していきましょう。
自己紹介
グループディスカッションを始める前に、まずはグループ内で自己紹介を行います。
ここでは名前と大学名、趣味などを述べましょう。
大切なのは、必要以上に長くなりすぎず、簡潔な内容で手短に済ませることです。
自分の自己紹介は簡潔に済ませ、ほかの方の自己紹介はしっかりと聞いて名前を覚えましょう。
グループディスカッションの際に名札を使わない場合もあるので、ほかの方が自己紹介している際は名前と座席をメモしておくと後で役立ちます。
役割決め
自己紹介の後は、役割決めになるケースが多いです。
グループディスカッションは、基本的に初めて会った人同士で議論を行うことになります。
そのため、ただ漠然と話し合いを進めるよりも、役割を決めた方がスムーズに進めることができます。
一般的なグループディスカッションでは、「ファシリテーター」「書記」「タイムキーパー」「発表者」を決めることが多いです。
それぞれの役割の人がどのようなことをするか、以下で説明していきましょう。
ファシリテーター
ファシリテーターとは、議論を前に進めるリーダー的な存在で、「議長」「司会」とも呼ばれています。
どんな会議や話し合いでも、中心になって取りまとめる方の手腕によって、議論がスムーズに進むかどうかが変わってくるものです。
ファシリテーターには、積極的に発言できる人や、議論の方向性が見えている人が適しています。
さらに、人の意見もよく聞いて理解し、全体の流れをつかんでそれをコントロールする能力も求められます。
そして皆の意見を集約して、最後に結論をまとめる力も必要です。
難しく感じられる役割ではありますが、リーダーシップを発揮できるポジションでもあります。
普段から周りをまとめる役割を担うことが多いなら、ぜひチャレンジしたい役割です。
書記
書記は、グループディスカッションにおいて議事録を取る人のことです。
議事録とは、議論のおおまかな内容を記した資料です。
これは、必ずしも一字一句漏れなく書く必要はありません。
グループディスカッションを進める中で、議論の要点を整理してまとめ、そこから出た結論を書きます。
そして、書いた内容はグループのメンバーと共有して、メンバーそれぞれの認識と擦り合わせます。
議事録は、ノートや専用の用紙を用いる場合もありますが、オンラインの場合はGoogle Docsを画面共有し、内容を可視化するのが一般的です。
この場合、タイピングしながらの議論になるため、タイピング技術が高い人や、マルチタスクができる人が適任です。
普段から文章を書いたり入力したりするのが得意な方が向いている役割と言えるでしょう。
タイムキーパー
タイムキーパーは、議論を時間通りに進めるのが主な役割です。
リーダーを補佐して、議論が予定の時間通りに進行するよう、コントロールしていきます。
自分も議論に参加しつつ、タイムキーパーの役割もこなさないといけないので、時間配分に気を配りながら議論に参加できる器用さが求められます。
また、ただ時計を見ているだけではなく、時間を見ながら何をすべきか先を読み、状況に応じて的確な指示を出すことも必要です。
仮に議論が盛り上がっている場合でも、時間を見て「5分以内に結論をまとめましょう」などと声をかけ、議論の進行を促すのも重要な役目です。
時間配分が考えられる人や、臨機応変な対応ができて的確な指示が出せる人などが向いています。
発表者
発表者は、グループディスカッションで議論して出した結論を、最後に発表する方のことです。
グループディスカッションの発表形式は企業によってさまざまで、口頭で行うのはもちろん、パワーポイントや模造紙などを使いながら発表をするケースもあります。
メンバーだけでなく採用担当者も聞いているため、人前で発表することに苦手意識がなく、自信を持って話せる人が向いています。
グループの人数にもよりますが、発表者は必ずしも1人である必要はなく、発表の内容別に担当を決めて、交代しながら発表しても構いません。
たとえば、「発表の進行担当」「結論と理由担当」「質疑応答担当」などの分担方法があります。
もし2人で行うなら、「発表担当」と「質疑応答担当」で分けるパターンもあります。
お題の定義確認
いよいよ議論に入っていきますが、まずやっておきたいのが「お題の定義確認」です。
人事担当者から提示されたテーマについて、初めにグループ全員で共通認識を持つことが必要です。
グループディスカッションのテーマは抽象的なものが多いので、何も決めずに議論を進めてしまうとメンバーの間で認識の齟齬が発生する可能性があります。
たとえば、「企業の売上をアップせよ」というテーマの場合、アプローチの方法は多岐にわたるため、まとまらないことがほとんどです。
まずはどんな企業か、具体的にどれくらいの売上を出せば良いのかといった共通認識を取ることで、議論がスムーズになります。
その際には、5w1hを活用して、与えられたテーマを掘り下げて、メンバー全員で共通認識を持てるようにしましょう。
現状分析
お題の定義確認をして、メンバー全員が共通認識を持ったら、次にやりたいのは現状分析です。
「企業の売上を向上せよ」という問題だった場合、定義した項目に沿って、現在の売上はいくらかなど、状況分析を進めていきましょう。
ここで定められた現状分析も、メンバー全員が共通して理解することが大切です。
もしオンラインなら、共有している画面を活用するなどの方法も有効ですし、実際に顔を合わせているなら、お互いに口頭で確認し合いながら進めていくと良いでしょう。
課題把握
次に、これまで行った状況分析から、課題を設定していきます。
ここからは、グループの全員が議論に積極的に参加して、活発な意見や多くのアイデアを出していくことが必要です。
ファシリテーターは、全員がアイデアを出せるように、まだ発言をしていない人にも話を振ってみるなどのアクションを起こすと良いでしょう。
もし複数の課題が挙げられたときは、その中で優先順位をつけ、最も優先順位が高いものを課題として設定しましょう。
施策立案
課題が設定できたら、「その課題に対して何をすべきか」を決めます。
ここでは、なるべく多くのアイデアを出し合うことが大切です。
ただし、導入部分が長くなると、本当に伝えたい内容が伝わりにくくなるので注意しましょう。
まず結論を述べてから、理由や具体例を挙げて、最後にもう一度結論を述べると、聞いている人に伝わりやすいです。
またできるだけ多くのアイデアを集めて、その中から良いものを選ぶことが目的なので、自分の考えと違っていても、ほかの人の意見を否定するような発言は避けましょう。
複数のアイデアが出た場合、グループ全員で話し合って、そのアイデアの中から優先順位をつけて絞っていきます。
この際に、書記がアイデアをタイプ別に分類し、論点をまとめておくとスムーズに結論を導き出せます。
発表
グループとしての結論が出せたら、最後は発表です。
結論で出た内容を簡潔にまとめ、役割分担で決めておいた発表者が代表で発表します。
発表の際は、パワーポイントや模造紙などを使って、視覚的にもわかりやすく伝えることがポイントです。
議論中にある程度資料を作成しておくと、最後の発表の際に慌てずに済みます。
発表者は1人でも構いませんし、複数で「発表の進行担当」「結論と理由担当」「質疑応答担当」などのように担当を分けるのも良いでしょう。
【グループディスカッションのフレームワークとは】フレームワークを使うメリット
グループディスカッションでフレームワークを使うメリットは、主に「流れが見やすくなる」「思考時間を短縮できる」「発言量を増やすことができる」の3つと言えます。
フレームワークを活用すると、より早く課題を整理することができるため、中身の議論に多くの時間を割くことが可能です。
ただし、フレームワークを使うこと自体を目的にはせず、あくまで結論を導くためのツールとして活用しましょう。
ここからは、3つのメリットについて詳しく説明していきます。
流れが見やすくなる
フレームワークに沿って議論を進めていくと、話の流れが見やすくなります。
そうなると、グループのメンバー全員で共通認識を取りやすくなるので進行がスムーズです。
初めて会ったメンバーで、それぞれの個性もわからないままにグループディスカッションを行う場合、なかなかお互いの感覚がつかめず、同じ方向性で話を進められるようになるまで時間がかかることがほとんどです。
しかし、フレームワークに当てはめて考えていくことで、皆が同じイメージを持ちながら話を進めていけるようになります。
ただし、フレームワークに当てはめることを目的にしないよう、意識することが重要です。
フレームワークはあくまで手段なので、周りのメンバーの話をよく聞き理解することを優先させましょう。
思考時間を短縮できる
フレームワークをグループディスカッションに活用すると、フレームワークに沿って物事を当てはめて考えていくことになるため、思考時間の短縮になります。
思考パターンは人によって異なるため、一人ひとりの意見を理解するには時間がかかります。
限られた時間で議論を進めて、結論まで出さなくてはいけないグループディスカッションでは、意見を出す際にはできるだけ時間を短縮し、後半の作業に時間を回すことが重要です。
フレームワークに当てはめて考えていけば、それぞれの考えが簡単に整理でき、思考時間の短縮が叶います。
時間に余裕が出れば、発表の準備もスムーズに行えるようになるでしょう。
また、時間切れのリスクも抑えられるので、フレームワークの活用は有効と言えます。
発言量を増やすことができる
フレームワークを使うことで、流れがわかりやすくなった結果、それぞれの発言量を増やすことができるのもメリットのひとつです。
流れがわかりやすくなると余裕ができ、自分の意見についてより深く考えることができるようになります。
これによってより多くの意見が出せるようになり、発言量のアップが叶うのです。
グループディスカッションにおいて、発言は非常に重要です。
採用担当者は、グループディスカッションで導き出された結論だけでなく、そこに至るまでの過程をしっかりと見ています。
よく発言している人は、「積極性がある」「コミュニケーション能力がある」など高い評価を受けやすい傾向にあります。
その観点から見ても、フレームワークを使うメリットは非常に大きいと言えるでしょう。
【グループディスカッションのフレームワークとは】使えるフレームワーク
グループディスカッションに使えるフレームワークは、主に5つあります。
具体的には、「3C分析」「4P分析」「SWOT分析」「MECE(ミーシー)」「AIDMA」です。
初めて聞くものも多いでしょうが、フレームワークには「5w1h」などのように、普段から私たちが無意識に使っているものもあります。
それぞれのフレームワークに特徴があり、また使うのに向いている分野が異なります。
これらのフレームワークの特徴をよく理解して、適切なものを使ってグループディスカッションを効率的に進めましょう。
3C分析
3CとはCustomer(顧客)・Company(自社)・Competitor(競合)の言葉の頭文字を取って作られた造語です。
これらの観点から物事を見ることで、多角的な視点から見ることができます。
3C分析は、顧客・自社・競合他社という3つの論点から事業を分析して、今後の経営に活かす方法です。
まずはCustomer(顧客)を分析しましょう。
自社製品を購入する顧客の規模やニーズ・成長率・トレンドなどを分析することが必要です。
Competitor(競合)では、自社と競合する要因や競合他社との強み・弱み、経営資源、クライアントの差異などを分析します。
3Cでは、Company(自社)の分析は最後に行うのがおすすめです。
自社の問題は、顧客や競合の分析によって明らかになることが多いからです。
自社については、売上や利益、賃金・人材、ノウハウなどの観点から分析します。
この3つの観点で深く分析することで、取り組むべき課題の顕在化が叶います。
4P分析
4Pとは、Product(製品)・Price(価格)・ Place(流通)・ Promotion(販売促進)の言葉の頭文字を取ってできた造語です。
4P分析は、主にマーケティング戦略を検討する際に用いられるフレームワークで、大学生の方なら聞いたことがある方も多いかもしれません。
サービスや製品の強み・弱みを考える際に有効です。
視点は商品を売る側にあり、売り手目線から見た「売れる要素」を分析します。
Product(製品)は、製品やサービスの価値を表し、品質・特徴・デザイン・サービス・保証などさまざまな要素がありますが、顧客の悩みを解決することが製品の価値と言えるでしょう。
Price(価格)は販売価格や割引率などを分析します。
Place(流通)は販売場所や物流などで、 Promotion(販売促進)は広告やプレスリリースなどのプロモーション活動全般を指します。
この4つを分析して、どこに課題があるかを洗い出すのが4P分析です。
SWOT分析
SWOTとは Strength(強み)・ Weakness(弱み)・ Opportunity(機会)・ Threat(脅威)のそれぞれの単語の頭文字を取って作られた造語です。
事業戦略の立案の際に有効なフレームワークで、競合を加味した戦略立案が可能になります。
SWOTのフレームワークで効果的なのは、これらの4つの要素をクロスで組み合わせて考えることです。
たとえば、Strength(強み)とOpportunity(機会)をクロスして考えると、自社の強みを活かした新製品の生産・販売などにつながります。
また、Weakness(弱み)とOpportunity(機会)をクロスして考えた場合は、弱みを克服する機会として、販売パートナーと連携するなどの方法が考えられます。
一方、Weakness(弱み)とThreat(脅威)をクロスして考えると、撤退する戦略として、将来性が見込めない製品の生産・販売を中止するという選択肢が出てくるでしょう。
自社を取り巻く環境と、それに対する今現在の自社の現状から、市場で勝つためのビジネスチャンスを見つけるヒントが得られます。
MECE(ミーシー)
MECE(ミーシー)は、Mutually(お互いに)・Exclusive(重複せずに)・Collectively(全体に)・Exhaustive(漏れがない)という4つの単語の頭文字を取って作られた造語です。
MECE(ミーシー)そのものは「漏れなく、ダブりなく」と訳されており、ロジカルシンキングの基本となる考え方です。
図表にしてみると、重なる部分がなく、そして隙間もない図となります。
何か課題を考えるとき、正しい答えを導き出すためには、必要な要素を漏れなく網羅しながらも、かつそれらが重複しないようにすることが重要です。
総合的な視点から必要な事実を分類して、課題に対して正しいアプローチをすることができる、論理的な問題解決に必要な手法ということで、ビジネスシーンでよく使われています。
AIDMA
AIDMAとは、Attention(気づき)・Interest(興味を持つ)・Desire(欲望)・Memory(記憶する)・Action(行動する)という単語の頭文字からなる造語です。
AIDMAは、広告宣伝に対する消費者の心理的プロセスを表すものとして使用されており、プロモーションの具体的な対策を考える際に効果的なフレームワークと言えます。
具体的には、製品を認知する→製品への興味・関心を持つ→製品への購入欲求が生まれる→その製品を記憶する→購買行動につながる、というプロセスです。
AIDMAは、カスタマージャーニーに沿って、お客様のニーズや行動を探るためのフレームワークです。
商品やサービスの宣伝広告や、PR活動、販売促進方法を検討する際に活用できるため、グループディスカッションでこれに近いテーマが出た際には効果的に使えます。
おわりに
グループディスカッションを進めるにあたって、フレームワークは非常に便利なツールです。
限られた時間で協力して課題を検討し、答えを導き出すときに、フレームワークを使えば効率良く議論を進めることができます。
しかし、フレームワークを知らない人もいるため、こだわりすぎないように注意しましょう。
グループディスカッションは、採用のための重要な機会ではありますが、決して相手を蹴落として自分だけを主張する場ではありません。
グループ全体で議論を良い方向へ導くために、フレームワークの知識を活かしていくことが重要です。
自分の意見も述べつつ、グループの仲間の意見を引き出し、チームとしての結論を導き出せるように意識して取り組んでみてください。