はじめに
就職活動では、しっかり自己分析をおこなうことがとても大切です。
自己分析には、さまざまな方法があります。
今回はその中から「ジョハリの窓」と呼ばれる方法について解説するので、就活前の自己分析に興味がある方はぜひお読みください。
【ジョハリの窓は無料でできる】就活で用いるのはあり?
ジョハリの窓は、就活にとても効果的な自己分析方法のひとつです。
自己理解が深まり、面接での自己アピールをスムーズにしやすくなります。
また自己分析においては、他の方から自分がどのように見られているかを分析することも重要です。
ジョハリの窓は他者の視点から自分を見つめなおしやすい点が特徴で、自分の強みや弱みを客観的に把握できるメリットがあります。
自分でも見えていなかった性格や長所を知りたい方は、ジョハリの窓を試してみてはいかがでしょうか。
もちろん、ジョハリの窓だけでなく他の方法を組み合わせるのもおすすめです。
ジョハリの窓は少し時間がかかりますが、もっと短時間で簡単にできる方法もあります。
先に簡易的な診断を試してから、ジョハリの窓にチャレンジしてみるのも良いでしょう。
【ジョハリの窓は無料でできる】そもそも「ジョハリの窓」とは?
ジョハリの窓とは、1955年(昭和30年)にアメリカの心理学者ジョセフ・ルフトとハリー・インガムが発表した「対人関係における気づきのグラフモデル」を指します。
「ジョハリ」とは、このモデルを発表した2人の学者を組み合わせた名前です。
ジョハリの窓の特徴は、自分から見た自分の認識と、他人から見た自分の認識レベルを4つに分類することにより自己理解を深める点にあります。
この4つのレベルに関しては下記の見出しでより深く解説しているので、ぜひお読みください。
ジョハリの窓は、無料でできる自己分析方法のひとつです。
専門家のカウンセリングを受けるような方法ではなく、やり方を知っていれば就活生同士で集まってチャレンジできます。
特別なツールなどを購入する必要もありません。
【ジョハリの窓は無料でできる】「ジョハリの窓」を構成する4つの窓
ジョハリの窓は「開放の窓」「秘密の窓」「盲点の窓」「未知の窓」4つの部分に分かれています。
まずは4つの部分それぞれにどのような意味があるのか、理解しておきましょう。
人によって、どの部分に多くの情報が集まってくるかは変わります。
どの部分に多くの情報がありどの部分が少ないかも、その方の個性を示す情報のひとつです。
開放の窓
開放の窓は、自分も他者も知っている情報です。
ここにたくさんの情報が集まってくる方は、自分の内面や能力を積極的に開示する傾向が強い方と考えられます。
自己顕示欲が強いとも取れるほか、自分を飾らず正直に見せられる社交的な方と取ることもできるでしょう。
開放の窓が広がるほど、他の方とコミュニケーションを円滑に取りやすくなると言われています。
自分について相手がまったく知らないと、なかなかその方に信頼してもらうのは困難でしょう。
秘密の窓
秘密の窓とは、自分だけが知っており他の方には知られていない情報のことです。
他の人に明かしていないコンプレックスなどが、ここに該当します。
ここにたくさんの情報が集まってくる場合、自己表現がうまくできておらず、他の方に自分を理解してもらえていないことが考えられます。
ただし、トラウマや他の人には隠しておきたい過去の失敗といった情報も秘密の窓に当てはまるため、ここに情報があるからといってその方が秘密主義者であるとは言えません。
盲点の窓
盲点の窓は、他者は知っているのに自分は知らない情報のことです。
もしこの窓に当てはまる項目が多い場合、客観的な自己理解ができていない可能性があります。
他の方から見た自分と、自己認識がずれているとも言い換えられるでしょう。
他者から見た自分のイメージと自己認識に差があると、就職活動での自己アピールがうまくいかない可能性もあります。
認識の差に気づいた方は、面接が始まるまでにしっかりその差を埋めていくようにしてください。
未知の窓
未知の窓は、自分も他者も知らない情報のことです。
この領域には、潜在的な能力や未知の特性が含まれています。
ここの情報は、自分に足りていない性格や強みを見つけるきっかけになるでしょう。
就活生はまだ社会人としての経験がなく、仕事を始めてみると誰も知らなかった秘められた才能が開花することもあります。
もちろん、ここについて多くの情報を得るのは簡単ではありません。
開放の窓を大きく広げ、盲点の窓や秘密の窓を小さくすると、未知の窓が見えてきやすいとされています。
【ジョハリの窓は無料でできる】ジョハリの窓を用いるメリット
次に、ジョハリの窓を用いるメリットについて解説します。
自己分析にはさまざまな方法がありますが、ジョハリの窓は他者の認識を効率的に知りやすいのが大きな特徴です。
自分でじっくり取り組むタイプの自己分析だけでは得られなかった情報を得やすいでしょう。
ジョハリの窓自体が他者とのコミュニケーションになることも、大きな特徴です。
効率的に自己理解が深められる
ジョハリの窓を用いる大きなメリットは、効率的に自己理解を深めやすい点です。
ジョハリの窓を使うと、自己分析と他己分析が一度にできます。
ほとんどの分析方法は自己分析がメインで、なかなか他の人から見た自分について知ることができません。
また自分1人でおこなう自己分析は、考えに詰まってしまうとそこからなかなか動けなくなり分析が進まなくなってしまうこともあります。
しかし、ジョハリの窓は複数人が集まっておこなうのが基本であるため、分析に詰まった場合でも、複数人で話し合い状況を打開できるチャンスが生まれるのがメリットです。
効率的に自己分析を進めたい方、自分1人の自己分析に限界を感じる方は、ジョハリの窓を試してみてはいかがでしょうか。
自己認識のギャップを埋めることができる
ジョハリの窓を用いると、自分と他者の認識のギャップを埋められることもメリットです。
とくに自分は知らないのに他の人は認識している「盲点の窓」について知ると、そのギャップがどこにあるか明確になりやすいでしょう。
ジョハリの窓で他者からの視点を取り入れると、その後にロジックツリーなど別の方法で自己分析をしたときにより客観的な分析を進めやすくなります。
さまざまな方法で自己分析をしたいと思っている方は、まずジョハリの窓で他の方の意見を聞いてみるのもおすすめです。
自己認識と他の方の認識を埋めることは、仕事でのコミュニケーションでもしばしば重要になります。
ジョハリの窓をうまく進められた場合、その成功体験は他の場所でも活きるかもしれません。
自分を言語化できるようになる
ジョハリの窓は自分の性格や特徴に向き合い、周りの方とそのことについて共有することにより進められます。
その過程で、必然的に自分自身について言語化しなければいけません。
このジョハリの窓のやり方は、就職面接で自己アピールをしたり、自分の長所に関する質問に答えたりすることにも通じます。
どんなに友人から人柄が良いと言われる方、社風と人柄がマッチしている方でも、言語化が苦手でそのことが相手に伝わらなければなかなか面接に通りません。
自分をうまく言語化できるようにしておけば、自分自身の良さを100%面接官に伝えやすくなります。
自分の考えを言語化するのが苦手な方は、ジョハリの窓を自己分析だけでなく面接対策としてもとらえてみてはいかがでしょうか。
【ジョハリの窓は無料でできる】ジョハリの窓を用いるデメリット
次に、ジョハリの窓を用いるデメリットについても考えましょう。
ジョハリの窓は自己認識と他者の認識の差を埋めるのにとても適した方法ですが、他の自己分析にはない「他の方と協力しておこなう必要がある」という特徴にデメリットが潜んでいます。
ジョハリの窓を試してみたい方は、このデメリットに十分注意しなければいけません。
他者の協力が必要になる
ジョハリの窓を効果的に活用するためには、どうしても他者からのフィードバックが必要です。
そのため、ある程度長いスケジュールを確保できる友人・知人を集めなければいけません。
ジョハリの窓は5分や10分で終わるものではないため、事前に予定を決めて集まる必要があります。
協力者なしでジョハリの窓を進めることもできなくはありませんが、効果が限定されてしまうのであまりおすすめできません。
とくに自分が他の方からどう思われているか知りたい方、自分でも気づけなかった長所・短所を見つけたい方は、他の方に協力を募ってジョハリの窓をおこなう必要があります。
就活が本格化してくるとなかなか予定を合わせるのが難しくなるので、ジョハリの窓をやりたいなら早めに友人に声をかけましょう。
人間関係を悪化させる可能性がある
ジョハリの窓は、自分の性格について他者からフィードバックを受けられるのが特徴です。
もちろん、自分も他の方についてフィードバックをおこないます。
フィードバックがネガティブな内容である場合、人間関係を悪化させてしまう可能性があるので注意が必要です。
しかし、ネガティブな内容なしで相手を褒めるだけでは、正確な分析につながりません。
ネガティブな内容を言わないようにするのではなく、意見の言い方・受け止め方に注意しながら進めていくことが大切です。
より客観的に自分を知りたいなら、誘う方の人選にも注意しなければなりません。
ある程度自分を知っている方でなければ意味がありませんが、仲が良すぎる方、上下関係がある方だと忖度が働いてしまうこともあります。
【ジョハリの窓は無料でできる】無料で実施する手順
続いて、ジョハリの窓を実施する手順を解説します。
ジョハリの窓は、特別な道具などを必要としません。
専門家に依頼する方法でもないため、無料で実施できます。
ただし数人が集まる必要があり、ジョハリの窓に情報を書き出すための筆記用具も必要です。
しかし、ジョハリの窓はオンラインでも実施できるため、別の学校に在籍しており、なかなか同じ場所に集まれない方を誘っても問題ありません。
手順①:参加者を募る
まずは、ジョハリの窓を実施するためにメンバーを集めましょう。
必要な人数は4〜8名です。
ジョハリの窓は他の方から自分がどう見えているかを話す必要があるため、参加者全員が相手のことを知っていなければなりません。
また相手の良くない部分についてもフィードバックしなければいけないため、ある程度信頼関係ができている方を選ぶ必要があります。
信頼できる学校やサークルの友人・アルバイトの同僚などに声をかけましょう。
参加者のメンバー1人ずつにフィードバックしていく作業は、多くの時間がかかります。
人数が多いとそれだけ時間がかかるため、大人数で実施する際は十分な時間を確保しましょう。
手順②:ジョハリの窓シートを用意する
次に、ジョハリの窓シートを用意します。
テンプレートはインターネットから無料でダウンロードできるので、これを使うと良いでしょう。
テンプレート自体は決して複雑ではなく、大きめの紙を4分割してそれぞれに4つの窓を書けば自分ですぐ作ることもできます。
この場合左上に「開放の窓」、右上に「盲点の窓」、左下に「秘密の窓」、右下に「未知の窓」を書きましょう。
さらにわかりやすくしたいなら「開放の窓」「盲点の窓」の上に「自分が知っている」など、どの窓を誰が知っているか書きます。
各窓には複数の項目を箇条書きにするため、ある程度のスペースが必要です。
手順③:自分に該当する性格を書き出す
シートを用意したら、まずは自分に該当する性格や特徴を書いていきます。
この際、正直に記入することが大切です。
スムーズに進行させられるよう、事前に自分の性格についてはある程度自己分析を済ませておくことをおすすめします。
自己分析をしっかりできていれば、それほどの時間はかからないでしょう。
ここで書き出した性格を相手も認識していれば、それは「開放の窓」に分類される内容です。
しかし、相手が認識していないものは「秘密の窓」に分類されます。
どの性格が「開放の窓」に入り、どの性格が「秘密の窓」に入るかが、ジョハリの窓では非常に重要です。
手順④:相手に該当する性格を書き出す
次に、他の参加者に該当する性格や特徴を書き出していきましょう。
遠慮せず、素直に回答するほうが相手のためになります。
良いところばかりではなく、直したほうが良いと思う部分も書いていきましょう。
ただし、それをどのように相手に伝えるかも考えてください。
相手の人格を否定するような言葉を使ってしまうと、トラブルの原因になります。
この自分に該当する性格・相手に該当する性格を書き出すステップまでは、参加者同士で集まる前にやっておくことも可能です。
忙しいメンバー同士で集まる場合、時間を節約するため先に参加者個々でこの作業をおこなっておくようにしてください。
手順⑤:回答データを「4つの窓」に分類する
次に、回答データを集め、自分と他者の認識を「開放の窓」「秘密の窓」「盲点の窓」「未知の窓」に分類していきます。
ジョハリの窓では、この分類作業がとても重要です。
この作業を通して自己理解を深め、他者との認識のギャップを明確にしていきましょう。
参加者が多いと、それだけ集まるデータも多くなります。
分類に時間がかかるものの、それだけ精度の高いデータを集めやすくなるので、ジョハリの窓をやるなら8人程度人数を集めるのがおすすめです。
4人程度だと、自分は認識できていないのに他者が認識している「盲点の窓」のデータが十分出揃わない可能性もあります。
手順⑥:結果を共有する
最後に、分類した結果を参加者同士で共有します。
共有の中で自分や他者の性格や長所・短所について話し合うことにより、他者から寄せられたフィードバックを受け入れやすくなるでしょう。
フィードバックを受け入れることは自己成長につながり、参加者同士の相互理解を深める効果も期待できます。
しかし、フィードバックの伝え方に失敗すると、逆に人間関係に悪影響を与える可能性もあるので注意が必要です。
性格を書き出すところから結果の共有までトータルでおこなうと、ジョハリの窓は多くの時間がかかります。
時間に余裕があるときにおこなうようにしてください。
【ジョハリの窓は無料でできる】個人で実施する方法
ジョハリの窓は、個人で実施することも不可能ではありません。
他者からのフィードバックを受けるのが困難になる弱点がありますが、参加者を集める手間は省けます。
診断ツールやアプリを利用すると、個人でおこなう場合の弱点をカバーしやすいでしょう。
個人でジョハリの窓を実施する際のポイントを解説するので、ぜひ参考にしてみてください。
①ジョハリの窓シートを埋める
個人で実施する場合、まずはジョハリの窓シートを自分で埋めていかなければなりません。
最初は自己分析を実施し、自分の性格や特徴を具体的に書き出していきます。
このやり方では他者からの客観的な意見を取り入れるのが困難なため、親しい方に自分の性格について尋ねてみるのも良いでしょう。
自分が書き出したのに相手がほとんど言わなかった内容は「秘密の窓」に分類できます。
逆に自分が書いている内容を相手も話してくれた場合、その内容は「開放の窓」に書きましょう。
この際、就活の自己分析をしていること、ネガティブな内容も伝えてほしいことをはっきり伝えることが大切です。
「自分の性格についてどう思っているか教えてほしい」とだけ伝えると、相手が遠慮して良いところだけを話す可能性もあります。
②診断ツールやアプリを利用する
個人でジョハリの窓を利用する場合、診断ツールやアプリを利用して自分の性格を書き出していくのも有効です。
手軽に自己分析をおこなえる、オンラインで友人からも分析してもらえるといったメリットがあります。
ただし診断ツールで自分の性格を診断する場合、それがすべて本当の自分を表しているとは限らない点に注意が必要です。
診断ツールで指摘されて「たしかにその通りかもしれない」と思ったことに絞り、秘密の窓に書くようにしましょう。
診断ツールやアプリを利用しても、他者からのフィードバックをじっくり聞くことはできません。
フィードバックやコミュニケーションを重視したいのであれば、多少手間がかかっても、個人ではなく参加者を集めてジョハリの窓を実施するほうが効果的です。
【ジョハリの窓は無料でできる】実施する際の注意点
最後に、ジョハリの窓を実施する際の注意点を2点ご紹介します。
ジョハリの窓はとても有用な自己分析ツールですが、万能ではありません。
また自己分析の結果が自分の想定しているものと違ったとき、それに引きずられて自分をかえって見失わないように注意する必要があります。
これはジョハリの窓だけでなく、他の自己分析法を使う場合も同様です。
結果を過信しない
ジョハリの窓は自分と他者の、自分の性格に対する認識の差を発見するのに有用です。
しかし、結果をあまり過信しすぎないようにしましょう。
フィードバックは参考程度に受け止め、自分の判断力を持つことが大切です。
たとえば「あなたは~~な性格を直すともっと能力を発揮できるのではないか」と言われても、それは長所の裏返しかもしれません。
就職活動では、どうしてもうまくいかず失敗したり不採用になったりする経験をするでしょう。
その際に「どこが良くなかったか」を延々と考えるのではなく「縁がなかった」「合わない会社だった」と受け止め、次に気持ちを切り替えることも重要です。
良くない結果を受け止める真摯さと「良い意味での」鈍感さのバランスを取るようにしてください。
嘘をつかない
ジョハリの窓をおこなう大前提は、正直であることです。
自己分析やフィードバックで、嘘をつかないようにしましょう。
相手にフィードバックを伝えるときも、相手に遠慮して嘘をついてしまうと逆に相手のためになりません。
正直な情報をもとに行動することにより、いっそう正確な自己理解がしやすくなります。
とはいえ、自分の短所・弱点を正直に書いたり話したりするのは、決して簡単なことではありません。
まずは自分の長所について考え、その裏側が自分の弱点になっていないか考える方法もあります。
たとえば自分が好奇心旺盛な性格だとすると、逆に「飽きっぽいのではないか」と考えることもできるでしょう。
ポジティブすぎず、ネガティブすぎず客観的に自分を見つめることが大切です。
人間性を否定しない
ジョハリの窓は他者とのコミュニケーションが重要な自己分析で、どうしても他者の短所・弱点について話さざるを得ない場面も出てきます。
その際は、相手の人間性を否定しない言い回しを心がけましょう。
たとえば相手が「人の話を聞かない」ことを伝える場合「全然人の話を聞いてくれない」と伝えると、相手は良い気持ちにならないでしょう。
「もう少し人の話を聞いてほしい」「行動する前に相手に確認・相談をするようにしたら良いのでは」といった表現にするほうが、相手もフィードバックを受け入れやすくなります。
このような言い回しの工夫は、就職面接やエントリーシートのアピールでも役立つスキルになるでしょう。
就職活動の練習だと思って、相手への「伝え方」を意識したコミュニケーションにチャレンジしてみてください。
まとめ
ジョハリの窓は自分1人ではなく、多人数でおこなう点が特徴の自己分析法です。
他の方が自分についてどう思っているか、自分では意識できていなかった自分の性格はないかなどを確認できます。
就職活動前におこなっておくと、自分の長所や短所を認識するのに大いに役立つでしょう。
ただし、ジョハリの窓はどうしても時間と手間がかかるデメリットもあります。
就職活動や卒業論文などが忙しくなる前に参加者を集め、じっくり腰を据えて取り組むのがおすすめです。