はじめに
世の中には多種多様な仕事があり、その職種や業務内容によって何らかの業界に分類されています。
それぞれの業界に含まれる職種や活躍できる人材の適性、特徴などを詳しく把握できていれば、自分に合った仕事を探したり、効率的に就職活動の対策を考えたりすることも可能です。
今回は、数ある業界のなかからサービス業界に焦点を当て、含まれる業種や向いている人について解説します。
業界研究の重要性についても触れていきますので、これから就職活動を始める方もぜひ参考にしてください。
業界研究について
業界研究とは、その名前のとおり業界について情報を集め、分析・研究をおこなう活動のことです。
似ている言葉として、特定の企業について情報を集める企業研究がありますが、企業研究はある程度業界や業種の候補が絞られてからおこなったほうが効果が高くなります。
そのため、業界研究は就職活動の序盤で着手するべき重要度の高い活動だといえるでしょう。
今回は、なぜ業界研究をおこなうのか、その目的について解説します。
業界研究についてより詳しく知りたい方は、以下のページも参考にしてみてください。
業界研究の目的
先述のとおり業界研究は就職活動において重要な活動のひとつであり、なるべく早い段階から時間をかけておこなうことが大切です。
しかし重要度が高いからといって、目的があいまいなまま、闇雲に情報収集や分析を進めてもなかなか思うような結果は得られません。
そこで次は、なぜ業界研究をおこなうのか、その目的を3つピックアップしてご紹介します。
就職活動の段階によってどの目的の比重が大きいのかは異なるので、自身の現状を考慮し、適切な目的を意識しながら業界研究を進めてみてください。
志望業界を絞るため
就職活動において業界研究をおこなうひとつ目の理由は、志望業界を絞るためです。
世の中には数多くの職業があり、実際に就職が可能かどうかは別としても、無数の選択肢が存在します。
闇雲に自身が興味がある企業をリストアップしていってもキリがないだけでなく、就職活動の時間がなくなったり、目指す方向がどっちつかずになったりする可能性が高いでしょう。
志望する業界がバラバラな場合は、求められる人材や業務の傾向が異なるため、特定の業界を志望する場合に比べて、ES対策や面接対策の難易度が上がるケースも少なくありません。
そのため、就職活動の初期段階では、まず志望する業界をある程度絞ることが求められます。
業界研究によってさまざまな業界の情報を集め、どのような業界で働きたいと思えるか、どのような業界が自分に合っているのかを考えてみましょう。
各業界の特徴を知るため
業界研究をおこなうふたつ目の理由は、各業界の特徴を知るためです。
サービスやメーカー、商社、マスコミといった各業界は日々の暮らしに大きく関わる影響力の強いものですが、そこに含まれる職種や業務内容については深く知られていないケースも少なくありません。
実際の就職活動では、業界研究を始めてみたら当初志望していた業界よりも、それまで候補にしていなかった業界のほうが自身に合っていたというケースも多く見られます。
そのため就職活動では、特定の分野だけに限定せず、幅広い業界の特徴を知ることが大切です。
また、ある程度候補が絞れてきた段階であれば、それぞれの業界についてさらに深く掘り下げることによって、就職後のミスマッチを防ぎ効率的に就職活動が進められるようになります。
業界に対する適性を見極めるため
業界研究をおこなう3つ目の理由は、自身がその業界に向いているかどうか、適性や相性を見極めるためです。
就職活動のゴールは内定をもらうことですが、長い社会人生活の一部として考えると、内定をもらって入社することは始まりでしかありません。
目指している業界への適性が自身にない場合は、たとえ内定をもらって就職できても、モチベーションを保つのが困難になる、心身への負担が大きくなるといった理由で早期退職を余儀なくされる可能性もあるでしょう。
そのため就職活動では、しっかり業界研究をおこない、自身がその業界で長期的に働けるかどうかを判断することが大切です。
ただし、求める人材や適性は企業単位でも異なるため、業界研究と並行して企業研究を進めることも重要になるでしょう。
サービス業界とは
次は、サービス業界がどのような業界なのかについて解説します。
サービス業界とは、顧客となる消費者のニーズを満たすことによって利益を得る企業や団体の総称です。
定義だけ見るとぼんやりしており、今ひとつ実態がつかみにくいと感じるかもしれませんが、実際サービス業界には多様な消費者のニーズに合わせたさまざまな業種が存在しています。
今回は、サービス業界が扱うサービスを「商品を提供するサービス」「情報を提供するサービス」「快適を提供するサービス」の3つに分類し、それぞれの特徴について解説します。
商品を提供するサービス
サービス業界のひとつ目の分類は、顧客に商品を提供するサービスをおこなう業態です。
顧客に対して目に見えるもの、形が見えるものを提供するのが特徴であり、飲食店や小売店などが該当します。
BtoCで顧客と直接触れ合うタイプの販売業は、基本的にこの分類に該当すると考えて良いでしょう。
ファーストフード店やコンビニエンスストア、スーパーマーケットなど日常的に利用する店舗も多く、最も身近な業態といって良いかもしれません。
ただし一部の飲食店においては、受付や配膳における従業員の立ち居振る舞い、食事をするその場所そのものが一定の価値を持つとみなされる場合があります。
そういった業態においては、3つ目の分類である「快適」を同時に提供しているケースも少なくありません。
情報を提供するサービス
サービス業界のふたつ目の分類は、「顧客に情報を提供するサービス」をおこなう業態です。
この分類は、データやプログラムを提供する「情報提供サービス」と、データを分析して情報を提供する「情報処理サービス」に大別されます。
具体的な業種としては、携帯電話会社や通信業、放送業などが該当します。
情報通信業として分類する場合は基本的にIT関連事業のみを指しますが、広義の文類ではマスメディア関連事業もこの情報を提供するサービス業の一部です。
インターネットを用いた情報収集や情報発信の重要性が増し、AIによる情報処理といった技術が発展している現代においては、とくに変化が激しい業態です。
すでに生活の一部に深く根付いているため、意識せずにこのサービスを利用しているケースも少なくありません。
快適を提供するサービス
サービス業界の3つ目の分類は、「顧客に快適を提供するサービス」をおこなう業態です。
この分類はさらに、飛行機や鉄道といった移動を快適にするサービスを提供する輸送業、水道や電気、ガスなどを供給するインフラ関連事業、学習、医療などに細分化されます。
また、遊園地などの娯楽施設や、ホテルなどの宿泊施設もこのタイプのサービス業界に分類される場合があります。
形のある食事や商品を提供する最初の分類や、情報を提供するふたつ目の文類に対して、「情報以外の形のないもの」を提供する業態だと認識すれば良いでしょう。
この分類に含まれる業種は幅広いため、場合によっては「航空業界」「運送業界」「医療業界」「ホテル業界」など、より細分化した業界にフォーカスしたほうが仕事のイメージがつかみやすくなるかもしれません。
サービス業界の職種
次は、サービス業界に存在する職種について見ていきましょう。
サービス業界は社会におけるさまざまな分野で重要な役割を果たす業界であり、そこで働く人々の職種も多岐にわたります。
なかには、消費者としてサービスを利用しているだけではその存在に気づきにくい、裏方的な職種も存在します。
サービス業界という大きな目標だけを目指すのではなく、自身のスキルや専門性、キャリアプランなどを考慮したうえで、どのような職種で働きたいのかを考えると就職活動を成功させやすいでしょう。
販売職
販売職は、文字通り顧客に対して商品を販売する職種です。
ただし、ここで定義される商品は、食品や雑貨といった形のあるものだけを指す言葉ではありません。
前述した分類の3番目、「快適を提供するサービス」で言及したような形のないサービスを扱う職種も販売職に含まれます。
形のある商品を販売する職種としては、スーパーマーケットやコンビニエンスストア、家電量販店といった店舗の接客・販売スタッフが挙げられます。
一方、形のないサービスを扱う職種としては、ホテルスタッフなども販売職のうちのひとつです。
サービス業界のなかでも、消費者が直接触れる機会が多い職種なので、この販売職をイメージしてサービス業界を志望する方も多いかもしれません。
商品を販売するまでの過程では、ほかの職種との連携が重要になるケースも多く見られます。
販売職の詳細につきましては、以下の記事もご覧になってみてください。
技術職
技術職は、身につけた技術を顧客に提供する職種です。
業務内容としては自らの技術を活かして商品の製造・開発などに関わったり、顧客に直接技術を用いてサービスを提供したりすることが挙げられます。
具体的な職業としては、操縦技術を用いて顧客を目的の場所に送り届ける運転手、乗り物の万全な状態を維持する整備士などが挙げられるでしょう。
運転手などの直接顧客に関わる職業以外では裏方としての仕事が多く、その場合はほかの業界における技術職と大きな違いはないかもしれません。
そのため、最初からサービス業界の技術職に的を絞るのではなく、自身の専門的なスキルを活かして働ける技術職の業界としてサービス業界が含まれる可能性がある、といった認識をしておいたほうが良いでしょう。
技術職の詳細につきましては、以下の記事もご覧になってみてください。
専門サービス職
専門サービス職は、専門学校や大学で身につけた専門性の高い知識を用いて、顧客のニーズを満たす職種です。
専門的なスキルを用いてサービスを提供する点では前述の技術職と共通する部分も多く、実際に「技術・専門サービス職」といった形で分類されるケースも少なくありません。
専門サービス職には、医師や弁護士、保育士などが該当します。
人間の健康や生死に関わる医師、法律的な知識が必要になる士業など、国家資格が必要なものも多く見られます。
また、後述する公共サービス職の一部も、専門サービス職の一部とみなされる場合があるでしょう。
新卒で専門サービス職に就くためには、大学の時点である程度将来のビジョンを固め、専門性が高い学校への進学や資格取得といった長期的な準備が必要になります。
公共サービス職
公共サービス職は、税金によって運営されている公的な機関でサービスを提供する職種です。
今回は、運営主体や財源によって区別していますが、その点を重視しない場合は技術職や専門サービス職としてまとめられるケースも多いでしょう。
具体的には、消防士や警察官、自衛隊職員、公立学校の教員などが、この公共サービス職に該当します。
公共サービス職は多くの場合、公務員やそれに準じる立場として募集されており、選考を受けるまでのプロセスや、求められる人物像がほかのサービス職とは異なる可能性があります。
地域性が高い職場も多いので、通常の企業に就職する場合とは異なるアプローチが必要になるケースも多いでしょう。
公共サービス職を目指す場合は、メリット・デメリットをしっかり把握し、ほかの職種と比較検討することが大切です。
公共サービス職の詳細につきましては、以下の記事もご覧になってみてください。
事務・営業職
事務・営業職は、企業や団体において事務作業や営業、経理などを担当する職種です。
基本的にはどのような業界の企業でも必要になるタイプの職種であり、あまりサービス業界の仕事というイメージはないかもしれません。
しかし、サービス業界には形のないものを提供する仕事も含まれるため、事務作業によって労働をサポートしたり、営業活動によってより良い製品やサービスを提供したりするこれらの仕事もサービス業とみなされます。
小売店や飲食店、ホテルといったサービス業界の代表的な職場においても、これらの職種は必要不可欠です。
そのため「飲食店で働きたい」「ホテルで働きたい」といったビジョンを持って就職活動を進めた結果、自身の適性や人材の需要を考慮してこれらの職業に就くことになるケースも多いでしょう。
事務・営業職の詳細につきましては、以下の記事もご覧になってみてください。
クリエイティブ職
クリエイティブ職とは、自身の創造力を発揮して対価を得る職種です。
イラストレーターやミュージシャンといったいわゆるアーティストだけでなく、テレビ番組や雑誌の編集、俳優などもこのクリエイティブ職に含まれます。
クリエイティブ職に該当する職業は幅広く、そのポジションや収入体系、働き方なども多種多様です。
とくに、個人での情報発信やコンテンツ販売が普及した昨今では、企業や事務所に所属せずに一定の収入を得るケースも少なくありません。
就職活動におけるアプローチもそれぞれ大きく異なってくるため、しっかり情報を集めたうえで自身のキャリアプランや将来像を考えることが大切です。
仕事の内容によっては、創造力だけでなく音楽や美術といった分野の専門的な知識が必要になる場合もあります。
サービス業界に向いている人
次は、サービス業界にどんな人が向いているかについて解説します。
ただし、先述のとおりサービス業界には多種多様な職種があり、業務内容や向いている人の特性もさまざまです。
そこで今回は、サービス業界特有の業務といえる接客業に主に焦点を当て、向いている人の特徴について解説します。
まだ志望する業界を極めていない方は、以下の特徴に一致するようであればサービス業界を候補に入れてみても良いかもしれません。
今回はサービス業界に向いている人の特徴として、6つのポイントをピックアップしました。
コミュニケーション能力がある人
サービス業界の多くの職種では、顧客に対して直接サービスを提供することが求められます。
日々の業務のなかで多くの人と接することになるので、基本的には人と接することが好きなことが働くうえでの前提となるケースが多いでしょう。
コミュニケーション能力が高い方は、その強みをさまざまな場面で活かせる可能性があります。
ちょっとした気配りができる方は顧客から信頼されやすく、継続的なサービスの利用や受注の獲得につながりやすくなります。
また、相手の話をしっかり聞く傾聴力や、相手の要望をくみ取って適切な提案をおこなう能力も重要です。
加えて、現時点ではコミュニケーション能力が高くない方でも、人と接してさまざまな事柄を学ぶ姿勢があれば、経験を積むことによって成果が出せるようになります。
臨機応変に対応できる人
顧客に直接サービスを提供するサービス業の現場では、マニュアルが適用できない突発的なトラブルや、予想外の事態に遭遇するケースは少なくありません。
時には、顧客や従業員の生命に関わるような予断を許さない緊急事態が生じる可能性もあるでしょう。
そこまでの重大な事態でなくとも、顧客がマニュアル外の行動をしたり、想定していないサービスを求められたりするケースは多く見られます。
そのため、サービス業界で働く人材には、状況に合わせて臨機応変に対応する能力が求められます。
基本的にはマニュアルを遵守する誠実さは持ちつつも、必要であればマニュアルの枠を外れて自分で物事を考えられる方、必要に応じてすぐに行動できる方はサービス業界で働く適性が高いといえるでしょう。
気配りのできる人
サービス業界で働くためには、気配りや心配りといった相手に寄り添うスキルも欠かせません。
顧客の状態をしっかり観察し、相手がアクションを起こす前に適切な対応ができれば、サービスに対してより高い満足度を感じてもらえます。
飲食店であれば、食事の進み具合に気を配り、適切なタイミングで料理を運んだり、オーダーを聞いたりすることが重要です。
また、困った様子の顧客がいた際に積極的に要望を聞きにいく、商品の減り具合をチェックして少ないものを補充するといった自主的な行動も、業務を円滑に進めるために役立ちます。
そのため、普段から広い視野を持って状況を冷静に見られる方や、観察力が高く細かいことにも気づきやすい方はサービス業界で働く適性が高いといえるでしょう。
協調性がある人
サービス業界で働く際には、顧客に対して上質なサービスを提供するだけでなく、同僚やほかのスタッフとも良好な関係を築くことが大切です。
直接顧客と触れ合うのが一部のスタッフだけだとしても、その仕事は裏方を支える技術職や事務職など、多くのスタッフに支えられていることを忘れてはいけません。
仲間と円滑に仕事が進められる高い協調性を持つ方は、サービス業界において活躍できる可能性が高いでしょう。
また、前述した気配りや心配りは、顧客だけでなく仲間に対して発揮することも大切です。
誰かが困っていたらそれを積極的にサポートし、解決する手段を一緒に考えることによって、結果的に顧客が受けるサービスの質が向上します。
協調性はさまざまな業界・業種で重要なスキルなので、自信のある方は積極的にアピールすると良いでしょう。
マナーのある人
サービス業界の仕事、とくに接客業などの顧客と直接関わる仕事では、きちんとしたマナーを身に着けていることが大前提となっています。
スタッフの立ち居振る舞いや相手に与える印象もサービスの一部であり、それを向上させるためにはマナーが必要不可欠であると言い換えても良いかもしれません。
提供される商品や料理がどれだけ品質の良いものだったとしても、それを提供している人間の素行が悪く、不快にさせられるようなものだった場合、顧客が良い印象を持つことはないでしょう。
また就職活動においても、面接では社会人として必要最低限のマナーを身に着けていることが求められます。
自信がない方は、なるべく早い段階からマナーを身につけることを意識して行動してみると良いでしょう。
体力がある人
サービス業のなかでも、販売職を中心とする接客業は立ち仕事が多く体力を使います。
また、職種によっては顧客の荷物の移動や物資の搬入といった力仕事をともなうケースも少なくありません。
どんな状況であっても顧客に適切なサービスを提供しなければいけないので、想定していたタイミングで休憩が取れず、意図せず長時間の連続した労働が発生することも多いでしょう。
そのため、サービス業界には体力がある人のほうが向いています。
ただし、これは体力があるほうが有利というだけであって、学生時代にスポーツで優秀な成績を残した、週3回ジムに通って体を鍛えているといった特別なアピールが必須というわけではありません。
アルバイトで立ち仕事の経験がある、趣味でサイクリングをしている、といったエピソードでも十分アピールになるでしょう。
就活エージェントを利用しよう
サービス業界への就職を成功させるためには、時間をかけて業界研究と企業研究をおこなうだけでなく、自己分析やES作成、面接対策も並行して進めなければいけません。
しかし、学校の勉強やアルバイト、インターンなど、就活生にはすることが多いので、時間が足りないと感じる方もいるかもしれません。
そういった方におすすめなのが、就活エージェントの利用です。
就活のプロに相談に乗ってもらいたい方、就職活動を効率的に進めたい方は、就活エージェントの利用も検討してみてください。
まとめ
サービス業界は、消費者に対して商品や情報などを提供する業界であり、販売職や技術職など多種多様な職種の方が働いています。
そのため、「サービス業界で働きたい」という漠然としたイメージだけで就職活動を始めると、なかなか焦点が絞りきれず苦労するかもしれません。
サービス業界で内定を得るためには、自身がどのようなサービスを提供するサービス業で、どのような職種で働きたいかを明確にイメージすることが大切です。
しっかり業界研究をおこない、ぜひ自分が目指すサービス業界の企業から内定を勝ち取ってください。