はじめに
広告代理店やインターネットサービス系の企業への就職や転職を考えるとき、インターネット広告市場の今後の動向をはじめ、今何がキーとなっているのかなど、業界のトレンドが気になるのではないでしょうか。
インターネット広告業界では、今、AdTechが注目を浴び、成長を加速させています。
AdTechについて、すでに理解を進めている人もいれば、仕組みがわからない、どんな企業で提供しているかわからないという方もいるでしょう。
これからのネット広告業界で外せないAdTechとは何なのか、市場規模や今後の動向はどうなるのか、広告×ITで課題解決する代表的な企業を紹介していきます。
【AdTechとは】AdTechとは
AdTechとは、「Advertising Technology」の略語で、ネット広告媒体において、広告枠の売買を最適化する技術を指します。
テレビCMやラジオ、雑誌広告などの従来のメディアと異なり、WebサイトやSNSなどのデジタル媒体で配信される広告は、オンライン上でデータを収集することが可能です。
データを蓄積したプラットフ ォ ー ムを活用して、個人の属性や行動パターンに応じた細かなターゲティング広告を打ち出せるのが強みとなっています。
この仕組みを金融工学やAIなどの最新技術を活用することで、広告枠を持つ媒体側と、広告を出稿する供給側とのマッチングを最適化させる仕組みが、AdTechです。
アドテックに関わる人物
アドテックに関わる人物は、広告主(広告代理店)、メディア(媒体)、ユーザーが挙げられます。
広告主とは、企業や個人事業主など広告料金を払って、自社の商品やサービスなどの宣伝をしたい人です。
メディアは、インターネット広告を配信する場所を提供する企業です。
ユーザーとは、広告を見る、ネットユーザーを指します。
アドテックは、広告主の広告配信効果最大化するために、最適なユーザーや場所に広告を配信することと、メディアが広告掲載効果最大化のために、最適な広告主に広告枠を買ってもらうことを両立できるシステムです。
アドテックの市場規模
アドテックの市場規模は、どのくらいあるのでしょうか。
アドテックの技術や仕組みが高度化するにつれ、インターネット広告市場における媒体費は、拡大成長を続けてきました。
2006年にはわずか3,630億円であったのが、10年後の2016年には1兆378億円に達しており、金額にして約3倍、年平均で10%もの勢いで拡大成長を続けてきたことになります。
2018年には1兆4,480億円であったのが、2021年には2025年には17,901円となり、2兆537億円の市場規模になるとの予測があります。
拡大成長期よりは成長率が鈍化するものの、年5%のペースで、今後も成長が見込まれているのです。
参考:http://souken.shingakunet.com/college_m/2020_RCM225_02.pdf
アドテックの将来性
ノンプログラマティック広告は、2018年度で2,007億円、2021年で2,407億円、2025年でも2,653億円とわずかに伸びても、横ばいが予想されています。
また、リスティング広告の推移予測も2018年度で4,818億円、2021年で5,436億円、2025年でも5,635億円と、成長幅は鈍化していく見込みです。
これに対し、ディスプレイ広告は、2018年度で7,655億円、2021年で10,058億円、2025年で12,249億円の予測と、まだ伸びしろがあります。
次第に成長が鈍化していくので、インターネット広告市場は先細りなのかと不安もありますが、どんどん新たな技術が開発され、トレンドの変化をつかみ、情報収集技術のさらなる進化やAIによる進化を通じて、広告効果が上がっていけば、市場はさらに開けていくことが期待できます。
参考:http://souken.shingakunet.com/college_m/2020_RCM225_02.pdf
【AdTechとは】アドテックを活用するメリットとは
アドテックは、最適なユーザーに対して迅速かつ最適な費用で広告を出せ、広告枠の無駄も作らない便利なシステムです。
広告主にとっても、メディアにとっても、広告を見るユーザーにとっても、広告配信の最適化や自動化による恩恵をもたらしてくれます。
アドテックを活用する代表的なメリットとして、効率的に売上を伸ばすことができる、顧客の取りこぼしを予防できる、コストを抑えた広告運用ができる点を詳しく理解しておきましょう。
効率的に売上を伸ばすことができる
アドテックを活用する代表的なメリットのひとつが、効率的に売上を伸ばすことができることです。
インターネット広告の最適化が望めるので、広告主にとっても、メディアにとっても効率よく売上を伸ばせるWin-Winの関係が期待できます。
メディア側はアドテックを活用して広告の配信管理や分析をすることで、広告配信の最適化ができ、工数削減にもつながり、保有している広告枠を無駄にすることなく、効率よく広告料が得られるようになります。
広告主にとっても、自社にとって最適なユーザーや場所に効率よく広告配信ができるようになるので、広告効果も上がりやすくなり、コストパフォーマンスがアップし、効率よく、広告収益最大化が可能です。
顧客の取りこぼしを予防できる
アドテックを活用するメリットの2つ目は、顧客の取りこぼしを予防できることです。
主としてターゲティング広告を用いることで、漏れなく潜在顧客にアプローチすることができるようになります。
コストを抑えたいからと、とにかく広告配信料が安いところに広告を出しても、集客や販促につながる効果が得られないのでは意味がありません。
自社の商品やサービスのターゲット層がよく閲覧するサイトや商品、サービスの履歴をはじめ、検索キーワードなどを分析して、興味がある層に的確にターゲティング広告を出すことで、顧客の取りこぼしを予防し、集客や売上アップが期待できます。
適切なコストをかけることで、広告効果が上がるので、コストパフォーマンスが高くなるのがメリットです。
コストを抑えた広告運用ができる
アドテックを活用するメリットの3つ目は、コストを抑えた広告運用ができることです。
企業にとって、宣伝広告費は、コストの中でも大きな割合を締めています。
テレビCMや新聞広告など従来のメディアに比べれば、インターネット広告はコストが抑えられ、個人事業主でも利用が可能となりました。
ですが、さらにコストを抑えて、パフォーマンスを上げていくうえで、アドテックの活用が有利です。
ターゲットを絞り込めるため、無駄なコストがかかりません。
いくらコストが安くても、興味のないユーザーに配信するのは無意味です。
ターゲティング広告を配信することで、適材適所に広告を配信でき、広告効果も得られ、コストパフォーマンスがアップします。
【AdTechとは】アドテックの種類とは
アドテックとは、インターネット広告の広告枠の売買を最適化する技術であり、この先もどんどん進化が進んでいく技術です。
現在知られている、代表的なアドテックの種類として、アドネットワーク、アドエクスチェンジ、DSP(Demand-Side-Platform)、SSP(Supply-Side Platform)があります。
それぞれ、どのような仕組みなのか、概要と使用する目的、解決できる課題を確認していきましょう。
アドネットワーク
アドネットワークとは、WebサイトやSNSなどの複数のインターネット広告メディアを集結して広告配信ネットワークを形成し、広告主のニーズに合わせて各メディアに広告を一括して配信する仕組みです。
広告主が、それぞれのメディアを選んで、別々に広告を出稿するより、手間を省き、コストを抑えて、スピーディーかつ効率的に広告を配信することが可能です。
アドネットワークが登場する前は、広告主がそれぞれのメディアに問い合わせをして、料金や空き状況などを確認し、料金や配信方法などを比較検討して決めていました。
複数のメディアに広告を出したい場合は、それぞれ依頼する必要があります。
ですが、アドネットワークに出稿すれば、複数のメディアに同時に出稿することができ、手間が省けます。
アドエクスチェンジ
アドエクスチェンジとは、広告枠をインプレッションに応じて取引する広告取引市場です。
1インプレッションとはページを開いた際に、ひとつの広告が1回表示されることを指しており、インプレッション単価にインプレッション数をかけた金額が広告宣伝費になります。
アドエクスチェンジにおいては、メディアによる広告枠の供給と、広告主が広告を出したい需要とのバランスにより、インプレッションごとに広告枠の価格が決まるという仕組みが形成されています。
アドネットワークにおいてはインプレッション課金型やクリック課金型など、アドネットワークによって課金形態が異なるケースが少なくありません。
そこで、アドエクスチェンジという広告取引市場を通すことで、インプレッション課金型で統一されるので、広告主が利用しやすく、コスト面がわかりやすくなるのがメリットです。
DSP(Demand-Side-Platform)
DSP(Demand-Side-Platform)とは、デマンド側、つまり、広告配信を利用したい、広告配信を希望している広告主側のプラットフォームを指します。
企業や個人事業主などの広告主をはじめ、広告主を代理する広告代理店が利用するプラットフォームで、広告在庫を買い付け、ユーザーのターゲティングや広告配信など一連のプロセスを一括して行える仕組みです。
広告効果の最大化を支援するのが目的です。
従来、広告配信をするには、ターゲット層を検討したうえで、それに見合いそうな広告を枠ごとに購入していました。
ですが、DSPを利用することで、どのようなユーザーがアクセスしているかをタグ設置により計測でき、リアルタイム入札で広告の売買を行うことができます。
自社に合うターゲットに対して、必要なときに必要なだけ広告配信ができるので、無駄がありません。
従来のディスプレイ広告における課題を解決し、伝えたい情報を最適なユーザーに、適性価格で効率よく配信できるのがメリットです。
広告出稿のコストパフォーマンスを高めたい、広告主のためのサービスです。
SSP(Supply-Side Platform)
SSP(Supply-Side Platform)は、広告枠をサプライする、つまり、広告枠を供給するメディア向けのプラットフォームで、広告枠販売や広告収益最大化などをサポートするための仕組みが整っています。
インプレッションごとに、もっとも高額と判断された広告が配信される仕組みとなっており、手間をかけずに広告収益最大化が目指せるサービスです。
需要側といちいち交渉する必要もなく、SSPがインプレッションごとにどれだけの費用がかかるかを瞬時に算出し、もっとも高額と判断された広告が配信されます。
もっとも収益性高い広告主の中から、自動で選択して配信してくれるのが便利です。
【AdTechとは】アドテックを提供している代表的な企業
アドテックを提供している代表的な企業として、株式会社オプト、株式会社サイバーエージェント、Supership株式会社についてご紹介していきます。
それぞれの企業の特徴や、ウリにしているアドテクノロジーについてご紹介します。
アドテックに興味があり、就職や転職を志望している方をはじめ、アドテックという分野で、どのような企業が活躍しているのか知りたい方も参考にしてください。
株式会社オプト
株式会社オプトは「デジタルで、この国の新しい基本をつくる。」をミッションに掲げ、企業の事業成長や事業支援サービスを提供している企業です。
アドテックをはじめ、提供サービスを革新しつづけながら、広告代理市場の構造改革を目指しています。
メディアや広告商品の特性を知り尽くした広告代理サービスの提供により、広告主のマーケティング効果の最大化をサポートする企業です。
アドテクノロジーを中心に自社プロダクトの開発を行う専門のエンジニア組織を持ち、ソリューションサービスも提供しています。
MEOをはじめ、ローカル店舗検索に対応したメディアへの店舗情報やコンテンツ配信、分析業務を一括でサポートできるコネクトムも提供しています。
株式会社サイバーエージェント
株式会社サイバーエージェントは、インターネット広告事業、ゲーム事業をはじめ、2016年4月に開局した新しい未来のテレビ「ABEMA(アベマ)」を中心としたスマートフォン発のマスメディア事業などを展開しています。
中でも、1998年の創業以来、展開しているインターネット広告事業では国内トップシェアを走る企業です。
広告効果を高める運用力と、多彩なメディアに応じて適切な広告を制作する技術やノウハウ、AIを活用したアドテクノロジーといった先端技術を活かし、総合的なソリューションを提供しています。
CA Dashdoardは、インターネット広告に特化したBIツールで、すべての広告掲載メディアの配信データが統合できるレポーティング機能が搭載されています。
広告主からもメディアからも、インターネット広告市場成長を上回る成長率が期待できると高い評価を得ているツールです。
Supership株式会社
Supership株式会社はアドテクノロジー、デジタルマーケティング、インターネットメディアといった、最先端の事業を展開するスタートアップ企業が合併して誕生した会社です。
それぞれの強みと技術を融合させたサービスの提供で、主な顧客である大手企業を中心に、データを活用しビジネスを拡大していく、DX化の支援を行っています。
国内屈指の広告配信技術を基に開発された広告主と、メディア向けのアドプラットフォームの運営を行っています。
蓄積された精度の高いキャリアデータと、国内最高レベルのブランドセーフティ技術により、企業のデジタルマーケティングをサポートしてくれる企業です。
まとめ
AdTechは、ユーザーが求める広告を的確かつスピーディーに最適な費用で配信できる仕組みを提供できる技術で、広告主にとっても、メディアにとっても収益の最大化が目指せます。
アドテックの種類には、アドネットワーク、アドエクスチェンジ、DSP(Demand-Side-Platform)、SSP(Supply-Side Platform)などがあります。
アドテックの市場規模は、技術の進化とともに拡大してきました。
成長率は鈍化傾向にあるものの、新しい技術や仕組みが開発されれば、まだまだ伸びしろがあり、アドテックの将来性も期待できます。
アドテックを活用するメリットは効率的に売上を伸ばすことができ、顧客の取りこぼしを予防でき、コストを抑えた広告運用ができることです。