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・SaaS業界とは
・SaaS業界の特徴
・SaaS業界の職種
・SaaS業界の魅力
・SaaS業界に興味のある人
・SaaS業界の業界研究がしたい人
・SaaS業界をより詳しく知りたい人
・SaaS業界に向けた対策を知りたい人
はじめに
近年、ビジネスシーンで「SaaS」という言葉を耳にする機会が急激に増えています。
社会全体のデジタル化が加速する現代において、SaaSはもはや単なるITツールではなく、企業の競争力を左右し、成長を支える上で不可欠な存在となりました。
しかし、その言葉の認知度が高まる一方で、具体的にどのようなビジネスモデルで、どんな企業や職種が活躍しているのか、詳しく知らない方も多いのではないでしょうか。
本記事では、注目を集めるSaaS業界の全体像から、ビジネスモデルの特徴、代表的な企業、そして具体的な仕事内容や求められるスキルに至るまで、網羅的に分かりやすく解説していきます。
SaaS業界への就職や転職を考えている方はもちろん、現代のビジネスを理解する上での教養としても、ぜひご一読ください。
【SaaS業界とは】SaaS業界とは
SaaSとは「Software as a Service」の頭文字を取った略語で、直訳すると「サービスとしてのソフトウェア」を意味します。
従来のようにパッケージ製品としてソフトウェアを購入し、自身のパソコンやサーバーにインストールして利用する形態とは異なり、インターネットを経由してソフトウェアの機能を提供するサービスモデルを指します。
利用者は、月額や年額で利用料を支払うサブスクリプション形式で契約するのが一般的です。
このビジネスモデルを展開する企業が集まって形成されているのがSaaS業界であり、顧客管理や会計、人事労務、コミュニケーションといった、企業のあらゆる活動を効率化しています。
現代社会におけるデジタルトランスフォーメーションを根幹から支える、極めて重要な役割を担う産業と言えるでしょう。
- ビジネスモデル
- 平均年収
- 市場規模
- 就職難易度
ビジネスモデル
SaaSのビジネスモデルの根幹をなすのは、月額や年額で定額の利用料を支払うサブスクリプション方式です。
このモデルにより、企業は一度顧客を獲得すれば、継続的かつ安定的な収益を見込むことができ、将来の売上予測が立てやすいという大きな利点があります。
一方、顧客側も高額な初期投資やライセンス費用が不要で、比較的安価な月額料金で必要な機能だけを利用開始できます。
また、サービスは常に自動で最新版にアップデートされるため、自社で保守・運用を行う手間もありません。
さらに提供企業側は、顧客の利用データを詳細に分析し、サービスの改善点を発見したり、より上位のプランやオプション機能といった追加の提案に繋げたりすることで、顧客一人当たりの生涯価値を最大化していくことが可能です。
平均年収
SaaS業界の平均年収は、他の多くの産業と比較して高い水準にあります。
日本のSaaS業界全体における平均年収は約608万円前後とされ、これは国全体の平均給与を大きく上回る金額です。
この背景には、いくつかの要因が考えられます。
まず、業界自体が著しい成長を続けており、各社が事業拡大のために優秀な人材を積極的に採用しようとするため、人材獲得競争が激しくなり、結果として給与水準が押し上げられています。
また、サービスの開発を担うエンジニアや、顧客に高度なソリューション提案を行うセールス、データ分析を担うマーケターなど、専門的な知識やスキルが求められる職種が多いことも、年収が高くなる一因です。
特に外資系企業や、急成長中のスタートアップでは、より高い報酬が提示されるケースも少なくありません。
市場規模
SaaS業界の市場規模は、国内外で急速な拡大を続けています。
世界的に見ても、クラウドサービスの普及はとどまることを知らず、SaaSはその中心的な成長ドライバーとなっています。
日本国内においても、政府が主導するデジタルトランスフォーメーションの推進や、働き方改革の流れを背景に、驚異的な成長率を維持しています。
テレワークの普及でWeb会議システムやビジネスチャットの需要が急増したことは、その象徴的な出来事です。
ある調査によれば、日本のSaaS市場は今後も年率10%以上の成長が見込まれ、2025年にはその市場規模が1兆円を超えると予測されています。
これは、あらゆる業種・規模の企業で業務効率化や生産性向上へのニーズがますます高まっていることの表れと言えるでしょう。
就職難易度
急成長市場であるSaaS業界は、求人数が非常に豊富で、キャリアチェンジの機会も多い魅力的なフィールドです。
しかし、就職難易度は職種によって大きく異なります。
特に、サービスの根幹を開発するソフトウェアエンジニアや、膨大なデータを分析して事業戦略に活かすデータサイエンティストといった専門職は、高い技術レベルと実務経験が求められるため、難易度は高くなる傾向にあります。
一方で、業界未経験者でも挑戦しやすい職種が増えているのもSaaS業界の特徴です。
例えば、見込み顧客にアプローチするインサイドセールスや、契約後の顧客の成功を支援するカスタマーサクセスといった職種は、ポテンシャルやコミュニケーション能力を重視する採用も多く、業界への入り口は確実に広がっています。
【SaaS業界とは】SaaS業界の大手企業8選
SaaS業界は、革新的なアイデアで市場を切り拓く新進気鋭のスタートアップから、圧倒的な資本力と開発力を持つ世界的なIT企業まで、多種多様なプレイヤーがひしめき合い、日々競争を繰り広げています。
それぞれの企業が独自の強みを持ち、特定の領域で高いシェアを誇っています。
グローバル市場を牽引する巨大企業から、日本のビジネスシーンに深く根ざした国内企業まで、その顔ぶれは様々です。
ここでは、業界の動向や勢力図を理解する上で欠かせない、国内外の代表的な大手企業を8社ピックアップし、それぞれの特徴や主力サービスを紹介します。
これらの企業を知ることで、SaaS業界の今がより立体的に見えてくるはずです。
- Amazon
- Microsoft
- HubSpot
- Salesforce3
- サイボウズ
- ラクス
- freee
Googleは、検索エンジンや広告事業で知られる巨大IT企業ですが、SaaS業界においても圧倒的な存在感を放っています。
「Google Workspace」というブランド名で、Gmail、Googleカレンダー、Googleドライブ、Google Meetといった一連のクラウドネイティブなツールを提供。これらのサービスは、個人利用はもちろんのこと、スタートアップからグローバルな大企業まで、あらゆる組織の基幹システムとして深く浸透しています。
リアルタイムでの共同編集機能やシームレスな情報共有は、世界中の人々のコミュニケーションと共同作業のあり方を根底から変えました。
常に進化を続ける高い機能性と信頼性で、SaaS業界を代表する企業の一つとして市場をリードし続けています。
Amazon
AmazonといえばEコマースの巨人ですが、そのクラウドコンピューティング部門であるAWS(Amazon Web Services)は、現代のSaaS業界をインフラ面から支える最も重要な存在です。
多くのSaaS企業は、自社で物理的なサーバーを持たず、AWSが提供するサーバー、データベース、ネットワークといったサービスを利用して自社のSaaSアプリケーションを開発・運用しています。
これにより、企業は膨大な初期投資をすることなく、迅速かつ柔軟にサービスを構築・拡大できるのです。
AWSはSaaSを提供するための「土台」で圧倒的なシェアを誇るだけでなく、Amazon自身も多様なSaaSアプリケーションを提供しており、SaaS業界のエコシステム全体を支える中心的な役割を担っています。
Microsoft
Microsoftは、かつてのパッケージソフトウェアの王者から、クラウドファーストを掲げるSaaS時代の巨人へと見事な変革を遂げました。
その中核を担うのが「Microsoft 365」です。多くのビジネスパーソンに馴染み深いWord、Excel、PowerPointといったOfficeアプリケーションをクラウド化し、サブスクリプションモデルで提供しています。
さらに、ビジネスチャットのTeamsやクラウドストレージのOneDriveなどを統合し、企業の生産性向上を包括的に支援するプラットフォームを構築しました。
長年にわたり世界中の企業で標準的に導入されてきた信頼と実績を武器に、クラウド時代においてもビジネスソフトウェアの分野で絶大な影響力を持ち続けています。
HubSpot
HubSpotは、マーケティング、セールス、カスタマーサービス、さらにはWebサイト管理までを一つのプラットフォームに統合して提供する企業です。
同社が提唱した「インバウンドマーケティング」の概念は特に有名で、広告などで顧客にアプローチするのではなく、顧客にとって価値のあるコンテンツを提供することで自然と見つけてもらい、惹きつけるという思想に基づいています。
ブログ作成、SEO、Eメールマーケティング、CRM(顧客関係管理)といった機能群をシームレスに連携させることで、見込み客の獲得から育成、顧客化までを一気通貫で支援します。
特に中小企業を中心に世界中で導入が進んでおり、マーケティングオートメーションやCRM分野の代表格とされています。
Salesforce
Salesforceは、SaaSという言葉を世に広め、そのビジネスモデルを確立した業界のパイオニアであり、現在も顧客管理および営業支援のSaaSで世界トップシェアを誇るリーディングカンパニーです。
企業の営業活動における顧客情報や商談の進捗を一元管理し、データに基づいた科学的な営業プロセスを可能にしました。
現在ではその領域をマーケティング、Eコマース、顧客サポート、アプリケーション開発などにも広げ、企業のあらゆる顧客接点を管理・強化する統合プラットフォームへと進化しています。
その圧倒的なブランド力とエコシステムで、SaaS業界全体の成長を力強く牽引してきた立役者と言えるでしょう。
サイボウズ
サイボウズは、日本を代表するSaaS企業の一つであり、国内のグループウェア市場で長年にわたり高いシェアを維持しています。
「サイボウズ Office」や大規模組織向けの「Garoon」といった製品を通じて、企業の円滑な情報共有やコミュニケーションを促進し、チームワークの向上を支援してきました。
近年特に注目を集めているのが、業務改善プラットフォーム「kintone(キントーン)」です。
プログラミングの知識がなくても、ドラッグ&ドロップの簡単な操作で自社の業務に合わせたアプリケーションを開発できるノーコード・ローコードツールとして、部署単位の細かな業務改善から全社的なDX推進まで、幅広いニーズに応え多くの企業で導入が進んでいます。
ラクス
ラクスは、経費精算システム「楽楽精算」や電子請求書発行システム「楽楽明細」など、企業のバックオフィス業務を効率化するSaaSを数多く展開している日本の企業です。
特に、紙や手作業が多く残り、非効率になりがちな経理・財務部門の業務に焦点を当て、クラウドを通じて劇的に生産性を向上させるサービスで高い評価を得ています。
テレビCMなどによる積極的なマーケティングも功を奏し、各サービスで圧倒的な知名度とシェアを獲得しています。
中小企業を中心に、日本の企業の働きやすさを支え、人手不足という社会課題の解決にも大きく貢献している、バックオフィス特化型SaaSの雄と言える存在です。
freee
freeeは、「スモールビジネスを、世界の主役に。」をミッションに掲げ、個人事業主や中小企業といったスモールビジネス向けの統合型経営プラットフォームを提供している企業です。
主力製品である「freee会計」や「freee人事労務」は、これまで専門知識が必要で煩雑だった会計処理や給与計算、年末調整といったバックオフィス業務を、テクノロジーの力で自動化・効率化しています。
銀行口座やクレジットカードの明細を自動で取り込み、仕訳を推測してくれるなど、直感的で使いやすいインターフェースが特徴です。
経営者が本来集中すべき創造的な活動に時間を使えるようにすることで、日本の開業率向上やスモールビジネスの成長を力強くサポートしています。
【SaaS業界とは】SaaS業界の特徴
なぜ今、SaaS業界はこれほどまでに多くの企業や投資家から注目を集め、急成長を遂げているのでしょうか。
その背景には、従来のソフトウェア販売の常識を覆す、SaaSならではのユニークなビジネス上の特徴が存在します。
それは単に技術的な革新だけにとどまらず、企業と顧客の関係性や、IT投資のあり方そのものを変える力を持っています。
これらの特徴を理解することで、SaaSビジネスの強みと将来性が見えてくるでしょう。
- 顧客の課題解決に貢献するサービス
- 高品質のサービスを手軽に使える
- 市場が成長を続けている
- 投資家からも注目を集めている
顧客の課題解決に貢献するサービス
SaaSビジネスの核心は、単にソフトウェアという「モノ」を売ることではなく、ソフトウェアを通じて顧客が抱える様々な課題を解決するという「コト」を提供することにあります。
営業の生産性を上げたい、経理業務を効率化したい、チームの連携を強化したいといった、企業の具体的な悩みに寄り添い、その解決策をサービスとして提供します。
そして、ビジネスモデルが月額課金制であるため、顧客に継続して利用してもらうことが企業の生命線となります。
そのためには、顧客がサービスを最大限に活用し、目に見える成果を出せるよう能動的に支援する「カスタマーサクセス」の視点が不可欠です。
このように、顧客と長期的なパートナーシップを築き、その成功に貢献し続けることがSaaS業界の最大の特徴と言えるでしょう。
高品質のサービスを手軽に使える
従来のパッケージソフトウェアは、導入時に数百万円、時には数千万円以上もの高額なライセンス費用が必要でした。
さらに、自社でサーバーを管理し、定期的なアップデートやメンテナンスを行う手間とコストもかかりました。
しかしSaaSであれば、インターネット環境とブラウザさえあれば、月額数千円といった低価格から、大企業が利用するのと同じレベルの高品質なサービスをすぐに使い始めることができます。
これにより、これまで資金力の問題で高度なITツールを導入できなかった中小企業やスタートアップでも、最新のテクノロジーを活用して業務を効率化し、大企業と対等に競争する土壌が整いました。
IT活用のハードルを劇的に下げ、あらゆる企業にDXの機会を提供した点は、SaaSの大きな功績です。
市場が成長を続けている
SaaS市場は、現代の大きな潮流であるデジタルトランスフォーメーションの波に乗り、著しい成長を続けています。
企業は競争力を維持・強化するために、業務プロセスの見直しや効率化を常に求められており、SaaSはその最も有効な手段の一つと認識されています。
また、リモートワークの普及をはじめとする働き方の多様化や、深刻化する人手不足といった社会的な課題も、場所を選ばずに業務を可能にし、省人化に貢献するSaaSの需要を強力に後押ししています。
今後も、AIやIoTといった新たなテクノロジーを積極的に取り込みながら、解決できる課題の幅を広げ、市場は安定した成長を続けることが確実視されている、非常に将来性の高い分野です。
投資家からも注目を集めている
SaaSビジネスは、そのユニークな収益構造から、多くの投資家にとって非常に魅力的な投資対象と見なされています。
最大の特徴は、サブスクリプションによる安定した継続収益です。
毎月決まった額の収益が積み上がっていくため、将来のキャッシュフローが非常に予測しやすくなります。
この収益の安定性と予見可能性の高さは、事業計画の精度を高め、堅実な経営を可能にします。
さらに、市場自体の高い成長性も相まって、企業の価値が飛躍的に高まる可能性を秘めています。
こうしたビジネスモデルの優位性から、世界中のベンチャーキャピタルや株式市場から潤沢な資金が流れ込み、業界全体の成長をさらに加速させる好循環が生まれています。
【SaaS業界とは】SaaS業界には将来性はある?
結論から言えば、SaaS業界の将来性は極めて高いと言えます。
その根拠は、社会や企業の構造的な変化にあります。
企業のデジタルトランスフォーメーションは一過性のブームではなく、今後あらゆる業種でさらに加速していく不可逆的な流れであり、業務効率化やデータ活用を実現するSaaSは、その中心的な役割を担い続けます。
また、AIやIoT(モノのインターネット)といった最新技術との連携は、SaaSが提供できる価値を飛躍的に増大させています。
例えば、AIが営業活動を分析して次の最適なアクションを提案したり、IoTデバイスから収集したデータを活用して新たなサービスを生み出したりと、可能性は無限に広がっています。
リモートワークをはじめとする働き方の多様化も、場所を選ばないSaaSの普及を後押しする強力な要因であり、今後もSaaSは社会に不可欠なインフラとして成長を続けるでしょう。
適職診断ツールを用いよう
ここまでSaaS業界の魅力や将来性について解説してきましたが、「自分の強みはSaaS業界で活かせるだろうか」「数ある職種の中で、自分には何が向いているのだろうか」といった疑問や不安を感じる方も多いと思います。
SaaS業界は職種の幅が広く、それぞれに求められるスキルや素養も異なります。
そこで有効なのが、客観的な視点で自己分析を助けてくれる適職診断ツールの活用です。
いくつかの質問に答えるだけで、自分の性格的な強みや思考の傾向、価値観などを分析し、どのような仕事環境や職種で能力を発揮しやすいかを判断する手助けをしてくれます。
SaaS業界への一歩を踏み出す前に、まずはこうしたツールを使って自分に合っているかどうかを判断し、キャリア選択の軸を明確にしてみましょう。
【SaaS業界とは】SaaS業界の職種
急成長を続けるSaaS業界では、プロダクトのアイデアを形にするエンジニアから、その価値を顧客に届けるマーケターやセールス、そして顧客の成功を支援するカスタマーサクセスまで、多岐にわたる専門職がそれぞれの役割を果たし、事業の成長を支えています。
従来のIT企業とは異なり、特に「The Model」に代表されるような分業型の営業プロセスや、顧客との長期的な関係構築を重視する職種が注目されています。
ここでは、一般的なSaaS企業を構成する代表的な職種を取り上げ、それぞれの具体的な仕事内容と、そこで得られるやりがいや魅力について詳しく紹介していきます。
自分の興味やスキルがどの職種で活かせそうか、想像しながら読み進めてみてください。
- エンジニア
- フロントエンドエンジニア
- バックエンドエンジニア
- インフラエンジニア
- マーケティング
- インサイドセールス
- フィールドセールス
- カスタマーサクセス
エンジニア
SaaS業界におけるエンジニアは、プロダクトそのものを創造し、成長させていく、まさに事業の心臓部を担う中核的な存在です。
彼らの仕事は、単に仕様書通りにコードを書くことだけではありません。
顧客が抱える課題を深く理解し、それを解決するための新機能を設計・開発したり、日々増え続けるアクセスやデータ量に耐えうる、安定したシステム基盤を構築・運用したりと、その役割は多岐にわたります。
常に最新の技術トレンドを追いながら、より良いユーザー体験を追求し、自らの技術力でプロダクトの価値を直接的に高めていくことができます。
自分の作った機能が顧客の業務を効率化し、喜ばれている声をダイレクトに感じられるのは、SaaSエンジニアならではの大きなやりがいと言えるでしょう。
フロントエンドエンジニア
フロントエンドエンジニアは、Webブラウザ上でユーザーが直接目にし、操作する部分、いわゆるユーザーインターフェースの開発を専門に担当します。
デザイナーが作成したデザインを、HTML、CSS、JavaScriptといった技術を用いて正確にWebページとして再現し、ユーザーがストレスなく快適に操作できるようなインタラクティブな動きを実装する役割を担います。
SaaSにおいて、サービスの使いやすさや見た目の美しさ、つまりユーザーエクスペリエンスは、顧客がそのサービスを継続して利用するかどうかを決定づける極めて重要な要素です。
そのため、フロントエンドエンジニアの仕事はプロダクトの評価に直結し、ビジネスの成功を左右する非常に重要なポジションと言えます。
バックエンドエンジニア
バックエンドエンジニアは、サーバーサイドの処理やデータベースの管理など、ユーザーの目には直接見えないシステムの裏側部分の開発を担当します。
例えば、ユーザーが入力した情報の登録・更新・削除といった処理、膨大なデータの高速な検索、外部のサービスとのAPI連携機能の実装などが主な役割です。
サービスの性能、データの安全性、そして将来の利用者増にも耐えうる拡張性を担保するなど、システムの根幹を支える非常に重要な職種です。
フロントエンドが「舞台の役者」だとすれば、バックエンドは「舞台装置や脚本」そのもの。ユーザーが快適かつ安全にサービスを使い続けられるのは、バックエンドエンジニアの高度な技術力があってこそなのです。
インフラエンジニア
インフラエンジニアは、SaaSというサービスが稼働するための土台となる、サーバーやネットワーク、データベースといったIT基盤の設計、構築、運用を専門に担当します。
SaaSビジネスは、サービスが止まることが許されないため、24時間365日、システムを安定して提供し続けることが至上命題です。
インフラエンジニアは、サービスのパフォーマンスを常に監視し、障害が発生した際には迅速な復旧作業を行うほか、サイバー攻撃からシステムを守るためのセキュリティ対策も行います。
近年はAWSやAzureといったクラウドプラットフォームを扱うスキルが必須となっており、サービスの信頼性を根底から支える、縁の下の力持ちとして不可欠な役割を担っています。
マーケティング
SaaS業界におけるマーケティングの主なミッションは、自社サービスの認知度を高め、製品に興味を持ってくれる可能性のある見込み顧客を獲得することです。
その手法は多岐にわたりますが、特にWebを中心としたデジタルマーケティングが主流です。
検索エンジンで上位に表示されるためのSEO対策を施したブログ記事を作成したり、ターゲット顧客に直接アプローチできるWeb広告を運用したり、製品の活用方法を解説するオンラインセミナーを開催したりします。
これらの活動を通じて、効率的に商談の機会を創出し、営業部門へと繋いでいく重要な役割を担います。
データ分析に基づき、常に施策の効果を測定・改善していく、科学的なアプローチが求められる職種です。
インサイドセールス
インサイドセールスは、電話やメール、Web会議システムといったツールを活用し、オフィスの中から営業活動を行う職種です。
その主な役割は、マーケティング部門が獲得した見込み顧客に対して、いち早くアプローチすることにあります。
顧客が抱えている課題やニーズを電話などで丁寧にヒアリングし、自社サービスによって解決できる可能性があるかを見極め、信頼関係を構築していきます。
そして、顧客の関心が高まり、具体的な導入検討の段階に入ったと判断した時点で、より詳細な提案を行うフィールドセールスへとバトンを渡します。
訪問することなく効率的に多くの顧客と接点を持ち、商談の精度を高める、現代のSaaS営業プロセスにおいて起点となる重要なポジションです。
フィールドセールス
フィールドセールスは、インサイドセールスが設定した商談機会を引き継ぎ、実際に顧客に対して具体的な提案を行い、契約締結を目指す役割を担います。
かつては顧客先を直接訪問するスタイルが主流でしたが、現在ではWeb会議システムを使ったオンラインでの商談も一般的です。
顧客が抱える業務上の課題をさらに深く掘り下げ、それに対する最適な解決策として自社サービスをどのように活用できるかを、デモンストレーションを交えながら分かりやすく提示します。
製品知識はもちろんのこと、顧客の業界や業務に関する深い理解に基づいたコンサルティング能力が求められます。
企業の売上に直接的に貢献する、まさに営業の花形と言える職種です。
カスタマーサクセス
カスタマーサクセスは、SaaSビジネスの成功に不可欠な、比較的新しい職種です。
その名の通り顧客の成功をミッションとし、契約後の顧客がサービスを最大限に活用し、導入目的であった事業上の成果を出せるように能動的に支援します。
サービスの導入支援や操作トレーニングの実施、活用度が低い顧客への利用促進の働きかけ、新機能の紹介やさらなる活用方法の提案など、その活動は多岐にわたります。
顧客満足度を高めることで、サービスの解約率を低く抑え、契約の継続や、より上位のプランへのアップグレード、関連サービスの追加契約に繋げます。
顧客と長期的な関係を築き、企業の安定的な成長を支える、SaaSビジネスの要となる役割です。
【SaaS業界とは】SaaS業界の魅力
SaaS業界で働くことには、高い成長性や年収水準だけでなく、日々の仕事を通じて得られる経験や、柔軟な働き方といった面でも多くの魅力があります。
変化の速い業界だからこそ、常に新しい知識やスキルを吸収し、自分自身を成長させることができる環境が整っています。
また、SaaSというサービスの特性そのものが、働く場所や時間の自由度を高め、先進的なワークスタイルを実現しやすくしています。
ここでは、数ある魅力の中から、特にSaaS業界ならではと言える点を掘り下げていきます。
- 最新の技術や社会の動向に基づくサービスを使える
- 社内外を問わずどこでもサービスを使える
最新の技術や社会の動向に基づくサービスを使える
SaaS業界で働く大きな魅力の一つは、常に最先端の技術や社会のトレンドに触れながら仕事ができることです。
SaaSプロダクトは、クラウドコンピューティングはもちろん、AIによるデータ分析や業務自動化、モバイル対応など、最新のIT技術を積極的に活用して開発されています。
また、働き方改革や電子帳簿保存法といった法改正、リモートワークの普及といった社会の変化に迅速に対応し、それを解決するためのサービスが次々と生まれます。
このような環境に身を置くことで、自然と新しいテクノロジーやビジネストレンドへの感度が高まり、社会全体の進化を肌で感じることができます。
自身のスキルを常にアップデートし、市場価値の高い人材へと成長していける刺激的な環境です。
社内外を問わずどこでもサービスを使える
SaaSのほとんどは、インターネットに接続できる環境さえあれば、会社のパソコンだけでなく、自宅のパソコンや個人のスマートフォン、タブレットからも、時間や場所を問わずにアクセスできるという大きな特徴を持っています。
このサービスの特性は、そのまま働き方の柔軟性に直結します。
SaaS企業自身も自社や他社のSaaSを積極的に活用しているため、リモートワークやフレックスタイム制度が浸透している場合が多く、効率的な働き方を実践しやすい環境が整っています。
また、チーム内での情報共有もリアルタイムかつスムーズに行えるため、離れた場所にいても円滑な共同作業が可能です。
自身のライフスタイルに合わせて働き方をデザインしやすい点は、大きな魅力と言えるでしょう。
【SaaS業界とは】SaaS業界に求められるスキル
急成長し、変化の速いSaaS業界で活躍するためには、プログラミングやマーケティングといった各職種の専門知識に加えて、職種を問わず共通して求められるポータブルなビジネススキルも同様に重要視されます。
SaaSビジネスは、データに基づいて意思決定を行い、顧客や社内関係者と密に連携しながら、常に新しい価値を創造していくことが求められるからです。
ここでは、特に重要とされる3つのスキルをピックアップし、なぜそれらがSaaS業界で働く上で不可欠なのかを具体的に解説します。
これらのスキルを意識して磨くことが、業界での成功の鍵を握ります。
- 論理的思考力
- プレゼンテーションスキル
- 発想力
論理的思考力
SaaSビジネスのあらゆる場面では、感覚や経験則だけに頼るのではなく、データに基づいた客観的な意思決定が求められます。
例えば、マーケティングでは広告の費用対効果を分析し、セールスでは顧客データを基に成約率の高いアプローチを考え、カスタマーサクセスでは顧客の利用状況データから解約の兆候を読み取ります。
そのため、目の前にあるデータを正しく読み解き、そこから課題や改善点を発見し、次にとるべきアクションを導き出す論理的な思考力が不可欠です。
仮説を立て、実行し、結果を検証するというサイクルを回すこの能力は、エンジニアから営業まで、SaaS業界で働くすべての職種に共通して求められる基本的な素養と言えるでしょう。
プレゼンテーションスキル
自社の製品やサービスの価値、あるいは顧客の課題に対する解決策を、相手に分かりやすく、かつ的確に伝える能力は、SaaS業界で働く上で非常に重要です。
フィールドセールスが顧客に提案を行う場面や、カスタマーサクセスが活用方法をレクチャーする場面はもちろんのこと、エンジニアが新しい技術の導入をチームに提案したり、マーケターが企画の予算を獲得したりする際にも、このスキルは不可欠です。
社内外の様々な関係者に向けて、複雑な事柄を整理し、論理的で説得力のあるプレゼンテーションを行うスキルは、自身のアイデアを実現し、周囲を巻き込んで仕事を進めていくための強力な武器となります。
発想力
競争の激しいSaaS市場で他社との差別化を図り、持続的に成長していくためには、これまでにない新しいアイデアを生み出す発想力が求められます。
それは、単に奇抜なアイデアを思いつくことではありません。顧客との対話やデータ分析の中から、顧客自身もまだ気づいていない潜在的な課題やニーズを鋭く見つけ出し、それを解決するための新しい機能やサービス、あるいはビジネスモデルを構想する力です。
市場のニーズを先読みし、常識にとらわれずにどうすればもっと顧客のビジネスを良くできるかを考え抜く姿勢は、競争の激しいSaaS業界で勝ち抜くための重要なスキルであり、新たな価値を創造する源泉となります。
【SaaS業界とは】SaaS業界に行くためにすべきこと
その高い将来性と魅力から、多くの就活生や転職者にとって人気の高いSaaS業界。
しかし、ただ漠然と憧れるだけでは、内定を勝ち取ることは難しいでしょう。
業界への就職を本気で考えるのであれば、計画的かつ戦略的な準備が成功の鍵を握ります。
まずは業界や企業の動向を深く理解し、その上で自分に合った職種を見つけ、そこで求められるスキルや経験を意識的に身につけていくことが重要です。
ここでは、SaaS業界を目指すにあたって、具体的に何をすべきか、具体的なアクションプランを紹介します。
- 業界・企業研究をする
- インターンシップに参加する
- OB/OG訪問をする
業界・企業研究をする
SaaS業界への第一歩は、徹底した業界・企業研究から始まります。
SaaSと一括りに言っても、その事業領域はCRM、会計、HR、セキュリティなど多岐にわたります。
また、ターゲットとする顧客も、大企業向けか中小企業向けかで、製品の価格帯や営業スタイルは大きく異なります。
各社がどのような課題を解決しようとしているのか、どのような強みを持っているのか、そして社風や働き方はどうか、企業のウェブサイトや採用ページ、ニュース記事などを読み込み、深く理解しましょう。
自分自身の興味や価値観と照らし合わせ、どの領域、どの企業で働きたいのかを明確にすることが、その後の活動の軸となります。
インターンシップに参加する
業界や企業についてある程度の知識を得たら、次はインターンシップに参加して、実際の業務や社風についての理解を肌で感じてみましょう。
ウェブサイトや説明会だけでは決して分からない、リアルな情報を得られる貴重な機会です。
実際の業務に触れることで、仕事内容の解像度が格段に上がり、自分がその仕事に向いているかどうかを判断する材料になります。
また、現場で働く社員の方々と直接交流することで、企業の雰囲気や価値観を肌で感じることができます。
特に長期のインターンシップでは、具体的な成果を求められることもあり、その経験は選考過程で大きなアピールポイントになるでしょう。
積極的に参加し、SaaS業界で働くことのイメージを具体化させましょう。
OB/OG訪問をする
他の就活生と差をつけ、より深い企業理解を得るためには、OB/OG訪問が非常に有効な手段です。
インターンシップが企業の公式な顔に触れる機会だとすれば、OB/OG訪問は、よりパーソナルで本音に近い話を聞けるチャンスと言えます。
大学のキャリアセンターなどを通じて、志望する企業で働く先輩を探し、コンタクトを取ってみましょう。
仕事の具体的なやりがいや大変なこと、キャリアパス、社内の雰囲気など、インターネット上では決して手に入らない生きた情報を得ることができます。
そこで得た気づきは、志望動機を深め、面接で説得力のある話をする上で大きな助けとなるはずです。
【SaaS業界とは】就活エージェントを利用しよう
自分一人での業界研究や企業選び、選考対策に行き詰まりを感じた時は、就活のプロである就活エージェントに相談してみるのも一つの有効な手段です。
就活エージェントは、数多くの学生の就職を支援してきた経験から、SaaS業界の最新動向や各社の特徴、選考のポイントなどを熟知しています。
客観的な視点からあなたに合った企業を提案してくれたり、一般には公開されていない求人を紹介してくれたりすることもあります。
ジョブコミットであれば、より専門的なサポートが期待できるでしょう。
業界研究の壁打ち相手として、あるいはエントリーシートの添削や面接対策のパートナーとして、専門家の力を借りることで、あなたの就活をより効率的かつ有利に進めることができます。
おわり
本記事では、SaaS業界の全体像からビジネスモデル、国内外の代表的な企業、そして花形となる多様な職種や求められるスキル、働く魅力に至るまで、幅広く解説してきました。
SaaSはもはや一過性のトレンドではなく、私たちの働き方やビジネスのあり方を支える、現代社会に不可欠なインフラとなっています。
その市場は今後も成長を続け、そこでは多くの挑戦の機会が待っています。
この記事が、SaaSというダイナミックな業界への理解を深め、皆さん自身のキャリアを考える上での一助となれば幸いです。




