【業界研究】物流業界はきついのか?理由や向いていない人の特徴を徹底解説!

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はじめに

就職活動を進める中で、「物流業界」に興味を持っているけれど、「きつい」「大変そう」といったイメージから一歩踏み出せないでいる方はいませんか?物流は私たちの生活を支える重要な社会インフラですが、その実態は外から見えにくい部分も多いですよね。

この記事では、物流業界の仕事内容や「きつい」と言われる理由、そして今後の展望や向いている人の特徴まで、皆さんの疑問や不安に答える情報を詳しく解説していきます。

【物流業界はきついのか】物流業界はきつい?

「物流業界はきつい」という声を、皆さんも一度は耳にしたことがあるかもしれません。

確かに、インターネット通販の拡大などで物流量が増え続ける中、時間指定や正確な配送へのプレッシャー、荷物を扱う体力的な側面など、大変な部分があるのは事実です。

しかし、「きつい」の一言で片づけてしまうのは非常にもったいない業界でもあります。

物流業界は非常に幅広く、自動化やDXが進むなど、大きな変革期を迎えている分野でもあります。

体力仕事ばかりではない多様な職種が存在し、社会貢献度の高いやりがいを感じられる場面も多いのです。

まずは、そのイメージの背景と実態を正しく理解することから始めましょう。

【物流業界はきついのか】物流業界の仕事内容

物流業界と聞くと、多くの人はトラックでの「配送」や倉庫での「荷物の仕分け」を思い浮かべるかもしれません。

しかし、それらは物流機能のほんの一部に過ぎません。

物流とは、生産者から消費者へ商品が届くまでの「流れ」全体を管理する仕組み(ロジスティクス)を指します。

この流れの中には、単にモノを運ぶだけでなく、適切な場所で、適切な量を、適切なタイミングで管理・提供するための多様な業務が含まれています。

例えば、大量の商品を安全に保管する「倉庫管理」、注文に応じて正確に商品を取り出す「ピッキング」、そしてそれらの情報を管理する「システム運用」など、非常に多岐にわたる仕事が連携して成り立っています。

このセクションでは、物流業界を支える具体的な仕事内容を、機能ごとに分けて詳しく見ていきましょう

輸送・配送

物流の「動脈」とも言えるのが、この「輸送・配送」の仕事です。

生産地から倉庫へ、倉庫から店舗や最終的な消費者のもとへ、モノを物理的に移動させる役割を担います。

輸送と配送は似ていますが、一般的に「輸送」は拠点間(例:工場から物流センター)の長距離・大量輸送を指し、トラックだけでなく鉄道、船、飛行機なども使われます。

一方「配送」は、物流センターから各家庭や企業へといった、比較的短距離の小口輸送を指すことが多いです。

この仕事の魅力は、社会の血液のようにモノを循環させ、経済活動や人々の生活を直接支えている実感を得られる点にあります。

しかし、天候や交通状況に左右されやすく、時間を厳守しなければならないプレッシャーも伴います。

特にドライバーは安全運転への高い意識が常に求められる、責任の大きな仕事です。

保管・在庫管理

「保管・在庫管理」は、物流センターや倉庫で商品を一時的に預かり、その品質や数量を適切に管理する重要な仕事です。

ただ単にモノを置いておくだけではありません。

商品がいつ、どれだけ入庫し、いつ、どれだけ出庫したか(入出庫管理)、現在庫がいくつあるか(在庫管理)、そして商品の品質が落ちないように温度や湿度を管理する(品質管理)といった、非常に緻密な管理が求められます。

最近では、WMS(倉庫管理システム)と呼ばれるITシステムを使って、ハンディターミナルなどでバーコードを読み取り、効率的かつ正確に管理するのが主流です。

この業務が正確に行われることで、企業は無駄な在庫(過剰在庫)を抱えるリスクを減らし、逆に必要な時に商品がない(欠品)という事態を防ぐことができます。

地味に見えるかもしれませんが、物流全体の効率とコストに直結する、専門性の高い分野です。

荷役・梱包

「荷役(にやく)」とは、物流拠点での荷物の積み下ろし、倉庫への入庫・出庫、仕分け、ピッキング(注文に応じた商品集め)など、モノを動かす作業全般を指します。

フォークリフトを使ったパレットの移動や、コンベアを使った仕分けなど、機械の力を借りることも多いですが、最終的には人の手による細やかな作業が欠かせません。

「梱包」は、ピッキングされた商品を配送に適した形に包装する仕事です。

商品が破損しないよう緩衝材を入れたり、サイズに合った段ボールを選んだりする技術が求められます。

特にEC(ネット通販)では、お客様が最初に目にするのが梱包された商品であるため、企業の顔とも言える丁寧な作業が重要視されます。

どちらの仕事も、正確性とスピード、そして商品を大切に扱う意識が求められる、物流現場の基盤となる業務です。

情報システム管理

現代の物流は、ITシステムなくしては成り立ちません

「情報システム管理」は、モノの流れと同時に「情報」の流れを管理し、物流全体を最適化する役割を担います。

具体的には、前述のWMS(倉庫管理システム)や、輸送トラックの運行状況を管理するTMS(輸送管理システム)、企業全体の受発注を管理する基幹システムなど、様々なITシステムの運用・保守・開発を行います。

現場スタッフが使うハンディターミナルやPCのトラブル対応から、より効率的な物流網を構築するためのデータ分析、新しいテクノロジー(AIによる需要予測やロボティクス)の導入検討まで、その業務は広範囲にわたります。

物流の現場知識とITスキルの両方が求められる専門職であり、物流業界のDX(デジタルトランスフォーメーション)を牽引する、非常に将来性の高い仕事分野と言えるでしょう。

【物流業界はきついのか】物流業界の主な職種

物流業界と一口に言っても、そこには非常に多様な職種が存在します。

先ほど紹介した「仕事内容」を実現するために、多くの人々がそれぞれの専門分野で活躍しています。

例えば、最前線でモノを運ぶ「ドライバー」や、倉庫内のオペレーションを支える「倉庫管理スタッフ」は、皆さんもイメージしやすいかもしれません。

しかし、それだけではなく、法人顧客に対して物流ソリューションを提案する「営業」や、国際物流に不可欠な「通関士」、さらには物流全体の効率化を設計する「物流企画」といった、専門性の高いデスクワークも多く存在します。

皆さんの強みや興味を活かせるフィールドが、きっと見つかるはずです。

このセクションでは、新卒の皆さんが目指すことのできる、物流業界の代表的な職種とその役割について、具体的に解説していきます。

ドライバー(トラック・配送)

物流業界の花形とも言える職種が「ドライバー」です。

トラックを運転し、荷物を指定された場所へ安全・確実・時間通りに届けることが主なミッションです。

長距離トラックドライバーのように、拠点間を数日かけて往復する仕事もあれば、ECサイトの荷物を個人宅へ届ける宅配ドライバー、企業向けのルート配送ドライバーなど、その働き方は様々です。

この仕事は、運転技術だけでなく、荷物の積み下ろしや時間管理、顧客対応なども求められます。

きついイメージがあるかもしれませんが、自分の裁量で休憩を取れたり、一人の時間を大切にできたりする側面に魅力を感じる人も多いです。

近年は、女性や若手ドライバーも増えており、労働環境の改善や、ナビシステム・ドライブレコーダーなどの安全支援技術の導入も進んでいます。

社会のライフラインを最前線で支える、やりがいの大きな仕事です。

倉庫管理スタッフ

「倉庫管理スタッフ」は、物流センターや倉庫内でのオペレーション全般を担う職種です。

入庫した商品の検品・格納、注文に応じた商品のピッキング・梱包・出庫(発送)作業、そして在庫数の確認(棚卸)などが主な業務です。

現場で実際に手を動かす「倉庫作業員」としての側面と、パート・アルバイトスタッフのシフト管理や作業指示を行う「現場管理者(リーダー・マネージャー)」としての側面があります。

新卒で入社する場合、まずは現場作業を経験しながら全体の流れを学び、将来的には管理者として、より効率的で安全な倉庫運営を目指すキャリアパスが一般的です。

WMS(倉庫管理システム)を使いこなし、作業の生産性向上やミスの削減に取り組むことも重要な役割です。

チームで協力して大量の出荷を時間内に終えた時の達成感は、この仕事ならではの魅力です。

物流企画・管理(ロジスティクス)

「物流企画・管理(ロジスティクス)」は、物流全体の流れを設計し、最適化・効率化を図る、いわば物流の「司令塔」とも言える職種です。

単にモノを運ぶ・保管するのではなく、「いかにしてコストを抑え、リードタイム(発注から納品までの時間)を短縮し、品質を高めるか」という経営課題に取り組みます。

具体的な業務としては、物流拠点の配置計画、輸送ルートの最適化、在庫管理方法の見直し、新しい物流システムやマテリアルハンドリング機器(マテハン)の導入検討、物流パートナー(運送会社や倉庫会社)との交渉・管理など、非常に多岐にわたります。

データ分析に基づいて課題を発見し、論理的な思考で解決策を導き出す能力が求められます。

デスクワークが中心ですが、現場の状況を理解することも不可欠であり、物流業界のダイナミズムと奥深さを最も感じられる職種の一つです。

営業(法人向け)

物流業界の「営業」は、主にBtoB(法人対法人)の営業活動を行います。

自社が持つ物流サービス(輸送、倉庫管理、国際物流、システムなど)を、荷主企業(メーカー、商社、小売業など)に対して提案し、契約を獲得することがミッションです。

単に「安く運びます」といった価格競争ではなく、お客様が抱える物流面の課題(例:「在庫管理が煩雑で困っている」「ECの出荷をアウトソーシングしたい」「海外に販路を広げたい」)を深くヒアリングし、自社のリソースを組み合わせて最適な物流ソリューションを企画・提案する能力が求められます。

既存顧客との関係を維持し、さらなる取引拡大を目指すルート営業と、新規顧客を開拓する新規開拓営業があります。

お客様のビジネス成長を物流面からサポートする、コンサルティング的な要素の強い仕事です。

通関士(国際物流)

「通関士」は、国際物流(輸出入)において、国家資格を必要とする非常に専門性の高い職種です。

モノを輸出入する際には、必ず税関に対して「輸出申告」または「輸入申告」を行い、許可を得る必要があります。

この複雑な手続き(通関業務)を、荷主に代わって行うのが通関士の仕事です。

具体的には、輸出入される貨物の品目分類(HSコード)、関税や消費税の計算、各種法規制(食品衛生法、薬機法など)の確認、税関への申告書類作成などを行います。

法律や国際情勢の変化にも常にアンテナを張る必要があります。

間違いが許されないプレッシャーはありますが、日本の貿易を支える「国境のスペシャリスト」として、大きなやりがいと誇りを持てる仕事です。

物流会社だけでなく、商社やメーカーの物流部門で活躍する道もあります。

【物流業界はきついのか】物流業界がきついとされる理由

さて、物流業界の多様な仕事内容や職種を見てきましたが、それでもなお「きつい」というイメージが先行するのには、やはりいくつかの理由があります。

特にインターネット通販の急成長は、私たちの生活を便利にした一方で、物流現場への負荷を増大させている側面があります。

「送料無料」や「当日配送」といったサービスの裏側には、時間との戦いや、増加する小口配送への対応といった現実があります。

また、日本の産業全体が抱える人手不足の問題は、物流業界においても深刻です。

業務が特定の人に集中してしまったり、体力的な負担が大きくなりがちだったりする背景には、こうした構造的な問題も横たわっています。

このセクションでは、物流業界が「きつい」とされる具体的な理由について、もう少し深く掘り下げてみましょう。

体力的な負担が大きい

物流業界が「きつい」と言われる最も大きな理由の一つが、体力的な負担です。

特に倉庫内での荷役作業や、トラックへの積み下ろし作業は、重い荷物を運ぶことが日常的に発生します。

ピッキング作業も、広い倉庫内を一日中歩き回るため、相応の体力を必要とします。

また、ドライバー職も運転自体は座っていますが、長時間の運転による集中力の維持や、荷物の積み下ろし作業が伴う場合が多く、決して楽な仕事ではありません。

もちろん、最近はフォークリフトやパワードスーツ、自動仕分け機などの導入によって、作業者の負担を軽減する取り組みも進んでいます。

しかし、すべての現場で最新設備が整っているわけではなく、依然として「体力勝負」な側面が残っている職場も多いのが実情です。

勤務時間が不規則(早朝・深夜)

物流は「社会が動く前にモノを動かす」あるいは「社会が寝静まった後にモノを動かす」という側面を持つため、勤務時間が不規則になりがちです。

例えば、スーパーやコンビニに商品を並べるための配送は、開店前の早朝に行われることが多いです。

また、長距離トラックドライバーは、渋滞を避けるために夜間に長距離を移動することが常態化しています。

物流センターも、24時間稼働している場所が多く、日勤・夜勤のシフト制が一般的です。

こうした不規則な勤務形態は、生活リズムが崩れやすく、友人や家族と休みを合わせにくいといったデメリットがあります。

体力的なきつさに加え、こうした時間的な制約が「きつい」と感じられる大きな要因となっています。

時間厳守のプレッシャー

物流の仕事は、「時間を守ること」が絶対的な使命です。

「〇時までに荷物を届ける」「〇時までに入庫作業を終える」といった時間的な制約(デッドライン)が常に存在します。

特にECの「当日配送」や、工場の生産ラインに部品を供給するジャストインタイム輸送など、遅れが許されない業務も多いです。

天候不良や交通渋滞、機械の故障といった不測の事態が発生しても、知恵と工夫でリカバーし、時間通りにモノを届けなければならないというプレッシャーは、精神的な「きつさ」につながります。

お客様との約束を守るという責任感はやりがいにもなりますが、常に時間に追われる感覚がストレスとなる側面もあります。

事故やトラブルのリスク

物流の現場は、常に事故やトラブルのリスクと隣り合わせです。

ドライバーであれば、交通量の多い一般道や高速道路での運転が日常であり、どれだけ気をつけていても交通事故に巻き込まれる、あるいは起こしてしまう可能性はゼロではありません。

倉庫内でも、フォークリフトの操作ミスによる荷物の破損や、高所からの荷物の落下といった労働災害のリスクがあります。

また、商品を破損させてしまったり、違う商品を配送してしまったりする「物流ミス」は、お客様からのクレームに直結し、会社の信用問題にも発展しかねません。

こうしたヒューマンエラーを防ぐためのルールや確認作業は厳格であり、その緊張感が「きつい」と感じられることもあります。

人手不足による業務過多

日本の多くの産業と同様、物流業界も深刻な人手不足に直面しています。

特にドライバーや倉庫作業員など、現場を支える人材の不足は顕著です。

EC市場の拡大によって物流量自体は増え続けているにもかかわらず、働く人が足りないため、一人ひとりの業務負担が大きくなってしまいがちです。

少ない人数で現場を回さなければならないため、残業時間が増えたり、休日出勤が必要になったりするケースもあります。

また、ベテランのノウハウが若手に十分に継承されず、新人がすぐに辞めてしまうという悪循環に陥っている現場も少なくありません。

会社側も待遇改善や採用強化に努めていますが、需要の増加に供給が追いついていないのが現状です。

給与水準が仕事内容に見合わないと感じる場合がある

物流業界の仕事は、前述のように体力的・精神的な負担が大きく、社会的な責任も重い仕事です。

しかし、その仕事内容や負担の大きさに対して、給与水準が十分ではないと感じる人がいるのも事実です。

特に、現場作業を担う職種や、下請け構造の中で厳しいコスト競争にさらされている中小の運送会社などでは、給与が上がりにくい傾向が見られます。

もちろん、全日本トラック協会の調査などでは平均給与が他産業と遜色ないケースもありますが、それはあくまで平均値です。

不規則な勤務や体力的な負担を考慮すると、「割に合わない」と感じてしまうことが、「きつい」というイメージや離職につながる一因となっています。

物流業界の現状・課題

物流業界は今、まさに「100年に一度の大変革期」の真っ只中にあります。

皆さんの生活がインターネット通販なしでは考えられなくなったように、EC市場の急速な拡大は、物流業界に「取り扱う荷物量の爆発的な増加」をもたらしました。

これは業界にとって追い風であると同時に、これまでのやり方では対応しきれないほどの大きな負荷となっています。

一方で、働く人の数は減少し、特にトラックドライバーの高齢化は深刻な問題です。

需要は増え続けているのに、供給(=運ぶ力)が追いつかない。

このギャップこそが、物流業界が直面する最大の課題です。

このセクションでは、こうした業界全体の「今」と、解決すべき「課題」について、具体的に整理していきます。

EC市場拡大に伴う物流量の増加と小口化

最大の現状は、何と言ってもEC(電子商取引)市場の拡大です。

スマートフォン一つで何でも買える時代になり、コロナ禍を経てその流れはさらに加速しました。

これにより、物流業界が取り扱う荷物の総量は年々増加しています。

しかし、問題は単に量が増えたことだけではありません。

「小口・多頻度化」が急速に進んでいることが大きな特徴です。

かつては「企業から企業へ、大型トラックで大量に」という輸送が主流でしたが、今は「EC事業者から個人宅へ、小さな荷物を1つずつ」という配送が激増しています。

これは、配送先が分散し、一軒一軒を回る非効率な配送が増えることを意味し、ドライバーや物流センターの負担を著しく増大させているのです。

深刻な人手不足とドライバーの高齢化

物流量が増え続ける一方で、それを支える「人」は深刻な不足状態にあります。

特にトラックドライバーは、全産業の平均と比べても有効求人倍率が非常に高く、企業が求人を出してもなかなか人が集まらない状況が続いています。

さらに大きな問題は「高齢化」です。

トラックドライバーの平均年齢は他産業と比べて高く、若手の入職者が少ないため、このままでは将来の担い手がいなくなってしまうという危機感があります。

体力的な負担や不規則な勤務時間といった「きつい」イメージが、若者の物流業界離れを招いているとも言われており、業界全体のイメージアップと労働環境の改善が急務となっています。

「2024年問題」に直面する働き方改革

物流業界の現状を語る上で欠かせないのが「2024年問題」です。

これは、働き方改革関連法によって、2024年4月1日からトラックドライバーの時間外労働(残業)の上限が年間960時間に規制されたことを指します。

これまでは、長時間労働によってなんとか日本の物流網が支えられてきた側面がありましたが、今後はそれが法律で厳しく制限されます。

ドライバーの健康を守る上では当然の措置ですが、一方で、一人のドライバーが働ける時間が減るため、「モノが運べなくなる」という懸念が現実味を帯びています。

この規制を守りながら、増え続ける物流量に対応するという、非常に難しい舵取りを業界全体が迫られているのです。

物流業界の今後の動向

これまでの話を聞くと、物流業界の未来は暗いのではないかと不安に思うかもしれません。

しかし、課題が明確であるということは、そこには大きな変革のチャンスがあるということです。

人手不足や2024年問題といった喫緊の課題を乗り越えるため、物流業界では今、これまでにないスピードで「変革」が進んでいます。

旧来の「人海戦術」や「長時間労働」に頼るビジネスモデルは限界を迎え、テクノロジーの力で効率化・自動化を図ろうという動きが活発化しています。

いわば、「きつい」を「スマート」に変えるための取り組みが、業界全体で始まっているのです。

このセクションでは、物流業界が今後どのように変わっていくのか、その未来像と将来性について解説します。

DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進

今後の物流業界を牽引するキーワードが「DX(デジタルトランスフォーメーション)」です。

これは、単なるIT化ではなく、デジタル技術を使ってビジネスモデルそのものを変革していく取り組みを指します。

例えば、AI(人工知能)を活用した需要予測です。

過去のデータや天候、イベント情報などをAIが分析し、「いつ、何が、どれだけ売れるか」を高い精度で予測できれば、無駄な在庫や配送を大幅に削減できます。

また、トラックの配送ルートも、AIが交通渋滞や荷物の量を考慮して最適なルートを自動で算出するシステムが普及しつつあります。

アナログな伝票管理や電話連絡が中心だった業界に、データドリブンな意思決定が持ち込まれようとしているのです。

自動化・ロボティクスの導入

人手不足、特に体力的な負担が大きい現場作業の課題を解決する切り札として、「自動化・ロボティクス」の導入が急速に進んでいます。

皆さんも、倉庫内で棚が自動で動いたり、ロボットアームが商品をピッキングしたりする映像を見たことがあるかもしれません。

広い倉庫内を自動で走行し、荷物を運ぶAGV(無人搬送車)や、AIを搭載した高機能な仕分けロボットなどが、人間の作業をサポート、あるいは代替し始めています。

また、トラックの「自動運転」技術も実用化に向けた実証実験が進められています。

「きつい」とされてきた肉体労働がテクノロジーによって軽減され、人間はより付加価値の高い、管理や改善といった仕事にシフトしていく未来がすぐそこまで来ています。

サステナビリティへの取り組み(グリーン物流)

物流業界は、トラックや船、飛行機など、多くの輸送機器を使用するため、CO2(二酸化炭素)の排出量が他産業に比べて多いという課題を抱えています。

そのため、地球環境に配慮した「グリーン物流」への取り組みが、企業の社会的責任(CSR)として、またビジネスの競争力としても重要になっています。

具体的には、EVトラック(電気自動車)や燃料電池トラックの導入、輸送効率を高めて走行距離を短縮する「共同配送(複数の企業の荷物を1台のトラックで運ぶ)」、鉄道や船舶輸送への切り替え(モーダルシフト)などが進められています。

環境問題への関心が高い学生にとって、こうしたサステナビリティへの貢献を実感できる点も、今後の物流業界で働く魅力の一つとなるでしょう。

【物流業界はきついのか】物流業界に向いている人

ここまで物流業界のリアルな「きつさ」と、それを乗り越えようとする「未来」について見てきました。

業界が大きな変革期にある今、求められる人物像も変わりつつあります。

体力や根性だけではなく、むしろこれからの物流業界を支えるのは、変化に対応できる柔軟性や、課題を解決しようとする思考力です。

もちろん、社会インフラを支えるという仕事柄、昔から変わらず求められる「責任感」や「誠実さ」といった素養も非常に重要です。

自分にはどんな強みがあり、それがこの業界でどう活かせるのか。

自己分析と照らし合わせながら読み進めてみてください。

ここでは、これからの物流業界で特に活躍できる人の特徴を5つご紹介します。

体力に自信があり、体を動かすのが好きな人

やはり、というべきかもしれませんが、体力に自信があることは物流業界で働く上で大きなアドバンテージになります。

特にドライバー職や倉庫管理スタッフとして現場の第一線で働く場合、重い荷物を扱ったり、広い施設内を動き回ったりすることが日常茶飯事です。

デスクワークよりも、実際に体を動かして働く方が性に合っている、という人にとっては、非常に適した環境と言えるでしょう。

ただし、前述の通り、自動化やロボット導入によって体力的な負担は軽減される傾向にあります。

今後は、単に体力があるだけでなく、そうした新しい機器を使いこなすスキルや、安全に作業を進めるための知識もあわせて求められるようになります。

責任感が強く、ルールを守れる人

物流の仕事は、お客様の大切な「荷物」と、配送日や時間といった「約束」を預かる仕事です。

そのため、何事も最後までやり遂げる強い責任感は、最も重要な資質の一つです。

また、物流の現場は「安全」がすべてに優先されます。

交通ルールを守ることはもちろん、倉庫内での作業手順や、フォークリフトの操作ルールなど、決められたことを愚直に守れる「規律性」が不可欠です。

「これくらい大丈夫だろう」という気の緩みが、大きな事故やお客様の信用失墜につながりかねません。

決められたことをコツコツと、真面目に実行できる誠実な人は、物流業界で高く評価されます。

チームワークを大切にできる人

物流の仕事は、決して一人では完結しません。

ドライバー、倉庫スタッフ、事務スタッフ、営業担当者など、多くの人がリレーのように連携し、バトンをつなぐことで、初めて荷物はA地点からB地点へと無事に届きます。

例えば、倉庫スタッフの出荷作業が遅れれば、ドライバーの出発が遅れ、お客様との約束の時間に間に合わなくなってしまいます。

そのため、自分の持ち場だけでなく、前後の工程を意識し、仲間と積極的にコミュニケーションを取りながら協力する姿勢が求められます。

「自分が楽をしたい」ではなく、「チーム全体で仕事をスムーズに進めたい」と考え行動できる人は、物流現場において不可欠な存在です。

効率化や改善を考えるのが好きな人

物流の現場は、「ムリ・ムダ・ムラ」の宝庫と言われることがあります。

これは裏を返せば、それだけ「改善の余地」がたくさんあるということです。

変革期にある今、業界が求めているのは、「昨日と同じことを繰り返す」人ではなく、「もっと良いやり方はないか」と常に考える人です。

例えば、「この棚の配置を変えれば、ピッキングの歩数が減るのではないか」「この配送ルートは、こっちの道を通った方が早いのではないか」といった、日々の小さな「気づき」が、現場の生産性を大きく向上させることがあります。

現状に満足せず、常に「なぜ?」と考え、改善策を実行できる人は、物流企画や現場管理といった職種で大いに活躍できるでしょう。

社会インフラを支える仕事にやりがいを感じる人

物流は、電気・ガス・水道と並ぶ、私たちの生活に欠かせない「社会インフラ」です。

もし物流が止まってしまったら、コンビニやスーパーから商品が消え、病院に薬が届かず、工場は生産を停止してしまいます。

あなたが物流業界で働くということは、この社会の「当たり前」を最前線で支えるということです。

自分の仕事が、誰かの生活や経済活動に直結しているという実感は、大きなやりがいと誇りにつながります。

目立つ仕事ではないかもしれませんが、「縁の下の力持ち」として社会に貢献したい、人々の役に立つ仕事がしたい、と強く願う人にとって、物流業界は最高の舞台となるはずです。

【物流業界はきついのか】物流業界に向いていない人

一方で、物流業界の特性が、どうしても自分の性格や価値観と合わない、という人も当然いるでしょう。

大切なのは、「きつい」というイメージだけで判断するのではなく、その「きつさ」の正体が自分にとって耐え難いものなのかどうかを見極めることです。

例えば、人と話すのが好きな人が、一日中一人で運転する長距離ドライバーになったら苦痛かもしれません。

逆に、一人で黙々と作業するのが好きな人が、常にチームワークを求められる現場に配属されたら、ストレスを感じるでしょう。

ミスマッチは、自分にとっても企業にとっても不幸な結果を招きます。

ここでは、一般的に物流業界の仕事が「向いていない」とされる可能性のある人の特徴を、あえて挙げてみます。

臨機応変な対応が苦手な人

物流の現場は、「計画通りにいかないこと」の連続です。

ドライバーであれば、突然の交通渋滞や、配送先が不在といった事態に日常的に直面します。

倉庫内でも、急な大口注文が入ったり、機械が故障したりすることもあります。

そんな時、「マニュアルに書いていないから分かりません」という姿勢では、仕事は回りません。

限られた情報の中で最善策を判断し、関係者と連携しながら柔軟に軌道修正していく能力が求められます。

あらかじめ決められたことを、決められた通りにだけやりたい、予期せぬ変化やトラブル対応は極力避けたいという人にとっては、ストレスの多い環境に感じられるかもしれません。

体力に自信がなく、体を動かすのが嫌いな人

これは非常に分かりやすい特徴ですが、根本的に体力に自信がない、あるいはデスクワークを好み、体を動かすことに抵抗がある人にとっては、物流の現場は厳しい環境です。

もちろん、物流企画や情報システム、経理といった、主にデスクワーク中心の職種もあります。

しかし、総合職として入社した場合、まずは現場を知るために、一定期間ドライバーの横乗り研修や倉庫内作業を経験することが一般的です。

「体力仕事は絶対に嫌だ」と固く拒否してしまうようでは、その後のキャリアにも影響が出かねません。

業界の特性として、ある程度の体力的な負荷は避けられない部分があることを理解しておく必要があります。

単調な作業や地道な仕事が苦手な人

物流の仕事には、華やかさとは対極にある、地道で単調な作業も多く含まれます。

例えば、何時間もかけて同じ商品をひたすらピッキングする、トラックの荷台に荷物をきれいに積み上げる(テトリスのような技術が要ります)、WMSの画面でひたすら在庫データを確認するなど、です。

こうした作業は、一つひとつの積み重ねが物流全体の品質を支えているのですが、クリエイティブな仕事や、日々新しい刺激を求める人にとっては、「退屈」と感じてしまう可能性があります。

ルーティンワークを正確にこなし続けることに喜びを見いだせない人、地道な努力を継続するのが苦手な人には、向いていない側面があるかもしれません。

時間やプレッシャーに弱い人

前述の通り、物流業界は「時間厳守」が絶対です。

常に時間に追われるプレッシャーの中で、正確性も同時に求められます。

朝の配送が遅れれば、その後のスケジュールがすべてずれ込み、多くの人に迷惑がかかります。

「マイペースに仕事がしたい」「時間に縛られるのは息苦しい」と感じる人にとって、この時間的なプレッシャーは大きなストレスとなるでしょう。

また、「荷物を絶対に破損させてはいけない」「事故を起こしてはいけない」という責任の重さも常につきまといます。

適度な緊張感はパフォーマンスを高めますが、プレッシャーに極端に弱い自覚がある人は、慎重に検討した方が良いかもしれません。

物流業界に行くためにすべきこと

物流業界のリアルな姿や、求められる人物像が見えてきたところで、次に「では、具体的に何を準備すれば良いのか」という就活対策についてお話しします。

物流業界は、社会インフラとしての重要性から、いつの時代も安定した人材ニーズがあります。

しかし、変革期にある今だからこそ、企業側も「ただの人手」ではなく、「これからの物流を一緒に作っていける人材」を求めています。

「きつい」というイメージを理解した上で、それでもこの業界で成し遂げたいことがある、という熱意と論理的な志望動機を伝えることが、内定への一番の近道です。

ここでは、物流業界を目指す皆さんに、ぜひ取り組んでほしい準備を3つのステップでご紹介します。

業界研究と企業研究の徹底

まずは基本中の基本ですが、「物流業界とは何か」を徹底的に研究してください。

この記事で読んだような「物流の6大機能(輸送、保管、荷役、包装、流通加工、情報)」を理解することはもちろん、「メーカー物流(自社物流)」「物流子会社」「3PL(サードパーティ・ロジスティクス)」といった業界構造の違いを説明できるようにしましょう。

3PLとは、荷主企業の物流業務全般を一括して請け負う業態のことで、近年の主流です。

その上で、興味を持った企業の立ち位置(例:国際物流に強いのか、EC特化なのか、倉庫業がメインなのか)を明確にし、他社ではなく「なぜその企業」なのかを語れるように深掘りしてください。

単に「生活を支えたい」だけでは、どの企業にも言えてしまいます。

インターンシップへの参加で現場を知る

机上の研究だけでは分からない、現場の「空気感」や「リアルなきつさ」を知るために、インターンシップへの参加を強くお勧めします。

特に、倉庫内作業やドライバーの同乗体験ができるような、現場密着型のプログラムがあれば絶好の機会です。

そこで働く社員の方々が、どんな表情で、どんなことにやりがいを感じ、何に困っているのかを肌で感じることは、何物にも代えがたい企業研究になります。

また、自分が「きつい」と感じた点を、その企業の面接で「課題」として捉え、「自分ならこう改善したい」と提案できれば、他の就活生と圧倒的な差をつけることができます。

体力的な不安がある人も、インターンシップで「自分にもできそうだ」あるいは「やはり無理そうだ」と判断する良い材料になるはずです。

志望動機の明確化(なぜ物流か、なぜその企業か)

業界研究と現場体験を経たら、最後に「志望動機」を研ぎ澄ませます。

面接官が知りたいのは、「なぜ数ある業界の中で、あえて『きつい』イメージもある物流業界を選ぶのか」という、あなたの本気度です。

ここで「社会インフラを支えたい」と言うだけでは不十分です。

「ECで買い物をした際、時間通りに届く裏側でどれだけの人が動いているのかに感動し、その『当たり前』を、今度は自分がテクノロジー(あるいは〇〇)の力で支え、進化させたい」というように、具体的な原体験と、業界の課題、そして自分のやりたいことを結びつける必要があります。

さらに、「その『進化』を実現するために、貴社の〇〇という強み(例:先進的な物流センター、独自のITシステム)に惹かれた」と、企業研究の成果を織り交ぜることで、説得力のある志望動機が完成します。

適職診断ツールを用いる

ここまで物流業界について詳しく解説してきましたが、「自分に物流業界が向いているか、まだ自信が持てない」という方も多いでしょう。

そんな時は、客観的な視点で自分を見つめ直すツールを活用するのも一つの手です。

「適職診断ツール」は、いくつかの簡単な質問に答えるだけで、あなたの性格的な強みや弱み、価値観、そしてどのような仕事や業界に向いているかの傾向を分析してくれます。

もちろん、診断結果がすべてではありませんし、それだけで進路を決めるべきではありません。

しかし、自分では気づかなかった意外な側面や、言語化できていなかった自分の特性を「見える化」してくれる、自己分析の強力なサポーターとなります。

例えば、診断結果で「責任感が強い」「コツコツと努力できる」「計画性がある」といった項目が高く出れば、それは物流業界で求められる素養と一致するかもしれません。

逆に、「変化を好む」「ルーティンワークが苦手」と出た場合は、物流業界の中でも現場作業よりは、変化の激しいIT部門や新規事業開発の方が向いている可能性を探る、といった使い方ができます。

【物流業界はきついのか】適性がわからないときは

物流業界に興味はあるけれど、この記事を読んでも「きつい」部分が気になって、本当に自分に合うのか判断できない。

そう悩んでいるなら、焦って結論を出す必要はありません

就職活動は、自分と社会との接点を探す旅のようなものです。

大切なのは、イメージだけで判断せず、多角的な情報から「自分なりの答え」を見つけることです。

もし適性がわからないと悩んだ時は、もう一度「自己分析」の原点に立ち返ってみましょう。

例えば、就活市場が提供しているような自己分析ツールや、先ほど紹介した適職診断ツールを複数試してみるのも良いでしょう。

異なるツールを使うことで、共通して指摘される「自分の軸」が見えてくることがあります。

また、大学のキャリアセンターで専門のカウンセラーに相談したり、物流業界で働くOB・OG訪問を積極的に行ったりして、第三者のリアルな意見を聞くことも非常に有効です。

自分一人で悩まず、様々なツールや人を頼って、自分と物流業界との相性を見極めていきましょう。

おわりに

物流業界の「きつい」という側面にフォーカスしつつ、その仕事内容や未来の可能性について詳しく解説してきました。

確かに大変な部分もありますが、それ以上に、社会を根底から支えるという大きなやりがいと、業界全体がダイナミックに変わろうとしている「面白さ」に満ちた業界でもあります。

もしあなたが、この記事を読んでもなお物流業界に心を惹かれる何かを感じるのであれば、ぜひその直感を信じて、さらに一歩踏み込んでみてください。

あなたの「責任感」や「改善意欲」が、これからの物流業界を、そして私たちの未来の生活を、より良く変えていく力になるかもしれません。

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