はじめに
「FinTech(フィンテック)」の市場規模は拡大しつつあり、今後の動向が気になる方も多いでしょう。
金融と技術を組み合わせた造語でもあるFinTechは、キャッシュレス社会には必要不可欠存在です。
FinTechは、大きく11種のカテゴリーに分かれており、それぞれの役割が違います。
最新のテクノロジーと融合したことで、将来的にも成長を続けるシステムといえるでしょう。
導入の際には、どのシステムが有効かを確認しつつ、選ぶのがポイントです。
ベンチャー企業が参入する理由やメリットなど、今回はご紹介します。
ぜひFinTechを導入し、業務の効率化を目指してみてください。
【FinTechとは】FinTechとは
FinTechは、金融=Financeと技術=Technologyを組み合わせてできた造語です。
金融サービスと情報に関する技術を結びつけているさまざまな革新的な動きのことで、新聞やメディアなどの露出も多くなっています。
昔FinTechは、金融機関で使われる勘定系システムや営業店システムを指していました。
ただ昨今では、ICTを使った革新的な金融商品やサービスを指すことが多くなっています。
FinTechは、新しい言葉のようにも思えますが、ATMやネットバンキングなどは先駆けてシステムを使っていた具体例です。
キャッシュレスが注目を浴びている昨今では、無人レジなども広がりつつあり、FinTechの需要も高まっています。
特に働き手が減りつつある小売業界にとって、省人化が可能なFinTechは追い風となってくれるでしょう。
FinTechの市場規模
アメリカでは2000年代前半から使われていたFinTechですが、昨今日本でも市場規模が成長し続けています。
特に2018年度からの成長はめざましく、2017年には1,400万ドルほどだった市場規模が2018年には2,000万ドルほどに成長しました。
成長を続けているFinTech市場は、2022年には約110億ドルに達成すると予想されています。
日本政府はFinTechを国家戦略の1つに位置づけており、経済の発展と社会の課題解決をするために規制緩和も実施されています。
たとえば、異なる業種からの新規参入の壁となっていた規制体系の排除、出資規制の上限を超えた出資が可能になる方策、個人情報保護法が許す限りのデータ流通などです。
オンライン上で取り引きや決済が可能になれば、決済の簡略化も進んでいくでしょう。
FinTechの将来性
将来的に見てもFinTech市場は拡大すると予想されています。
ほかの地域では2015年をピークに減少しつつあるFinTech市場ですが、日本では逆に投資率が上昇しているからです。
2022年には110億ドルに達するとの予想もあると書きましたが、市場を見てみると2018年からの成長率はめざましいものがあります。
日本で一番大きなFinTech市場といえば金融関係で、市場規模は約1,400万ドルです。
今後、スマートフォンやタブレットを使用したキャッシュレス決済は増えていくと予想されています。
FinTechでは、ブロックチェーンやAI、APIやビッグデータなど技術面での進歩も見られ、これがFinTech市場にも影響を与えています。
ブロックチェーンの活用なども注目されており、現在では金融関係の市場規模には及ばないものの将来的には拡大していくでしょう。
【FinTechとは】FinTechのカテゴリー
FinTechのカテゴリーは、大きく11個に分類されます。
昨今注目を浴びている仮想通貨や、セキュリティや融資ローン、会計・財務などはご存じの方も多いでしょう。
以下に、FinTechが取り扱うカテゴリーについてそれぞれの特徴を見ていきましょう。
①仮想通貨
仮想通貨はビットコインなどの電子データでやり取りが可能な通貨です。
従来の紙幣やコインなどの現実の通貨は銀行から発行されますが、仮想通貨は専用の取引所が用意されています。
2019年には新たに仮想通貨取引所「Liquid by Quoine」が増え、将来的に仮想通貨の市場をけん引していくと期待されています。
②保険
保険の分野では、保険とテクノロジーを掛け合わせた、InsurTech(インシュアテック)がFinTechとして使われています。
AIを利用した業務の効率化、健康増進型保険などに期待が寄せられている分野です。
特にベンチャー企業の「justInCase」では、癌患者の保険料を契約者の数をもとに算出するシステム「わりかん保険」が話題になりました。
③決済ペイ・送金
QRコードやバーコードを使ったキャッシュレス決済では、アプリのユーザー同士なら無料で送金できるのはメリットでしょう。
2025年に世界のクレジットカード総取引件数の10%を占めるだろうと予想されているのが「Apple Pay」です。
Apple Payは一括管理できる利便性が特徴で、人気があります。
④セキュリティ
ITにおけるセキュリティは、金融機関でも重要な課題の1つです。
サイバー攻撃や不正ログインへの対策として、生体認証技術を使う企業も多くなりました。
たとえば、ベンチャー企業で有名な「Liquid」による、顔認証を利用した本人確認サービス「LIQUID eKYC」などは例の1つでしょう。
⑤融資・ローン
金融機関で外せない業務といえば、融資やローンです。
たとえば、不動産テックの1つ「モゲチェック」では、住宅ローンのオンラインワンストップを提供しています。
借り入れ可能額の判定、最適な住宅ローンの提案、借り換え手続きの代行などにFinTechのサービスが活躍しています。
⑥個人資産運用
個人資産運用では、「THEO」「folio」「WealthNavi」などのサービスに、AIによるロボットアドバイザーが活用されています。
ポートフォリオやリスクの提示など、運用の自動化が進められており、初心者でも資産運用をはじめられると人気のサービスです。
⑦クラウドファンディング
クラウドファンディングは、個人からオンライン上で資金を集め、商品の開発や社会活動の支援などができると人気のサービスです。
「購入型」「寄付型」「融資型」「投資型」の4種に大別され、目的は多岐にわたります。
特に、国内最大級の「CAMPFIRE」は、2019年に流通額が150億を突破しており、今後の成長が期待される企業です。
⑧ソーシャルレンディング
ソーシャルレンディングは、クラウドファンディングの融資型の位置づけです。
個人間の金銭の貸し借りに利用され、主に仲介を務めるサービスともいえます。
アメリカでは「Lending Club」が2020年にFinTech企業で初めて銀行の買収を発表しました。
キャッシュフローの効果的な管理方法など、今後も成長が期待されます。
⑨会計・財務
会計・財務では、個人と法人の差がなく、会計・経理業務を支援するサービスが提供されています。
たとえば、クラウド会計の「freee」などでは、請求書などの取引情報の自動化、入金管理や資金繰りなどのサポートも可能です。
会計や財務では、有料課金ユーザーの企業が16万人を超えるなど成長を続けています。
⑩PFM(個人財務管理)
PFM(個人財務管理)は、家計簿アプリなどの個人財務管理をメインにしたサービスです。
具体例としては、オンライン家計簿サービス「Zaim」では、銀行の口座やクレジットカードと連携させることで、財務に関する情報を集めてくれます。
給付金やキャンペーン情報の通知など、個人で利用するには最適のサービスでしょう。
⑪金融情報
金融情報に関するFinTechでは、「経済情報」「物価指数」「消費動向」などの情報が得られるサービスです。
たとえば「SPEEDA」では、業界レポート(3,000部)や企業情報(800万社)、2,000媒体を超える情報の集積や分析で話題となりました。
ターゲット企業のリスト化や市場のトレンドを知るうえでも便利なサービスといえるでしょう。
【FinTechとは】FinTechに用いられる最新のテクノロジーとは?
FinTechには、以下のような最新テクノロジーが使われています。
・AIによるビッグデータの解析や管理
・APIによる利便性の向上や生体認証によるセキュリティ
以下に、それぞれの仕組みや目的、用途などをご紹介します。
ブロックチェーン
ブロックチェーンの主な役割は、コスト削減や安定運用です。
オンライン上で端末を介してデータ共有されますが、その際、中央管理者を介さないでシステムを維持できます。
「P2Pネットワーク」では、端末同士で直接情報は送受信されるので、サーバーを通さない分、大幅にコストの削減が可能です。
IoT
loTでは、PCやスマートフォンに限らず、医療機器や電化製品などをオンライン上でつなげることが可能です。
Webサイトデータ、オペレーションデータ、ソーシャルメディアデータなどのビッグデータがリアルタイムで蓄積されるようになります。
これにより、ビッグデータの多種多様化が実現されました。
AI
従来の金融システムでは、企業の財務データや株価などを融資の判断としてきましたが、膨大な量に膨れ上がり、人間の手では負えない状態になりました。
そこで登場したのがAIです。
ロボアドバイザーを介してビッグデータの解析や管理が可能になります。
AIを使えば、人間でも発見できない規則性なども簡単に発見できるでしょう。
API
APIは、ウェブ上のアプリケーションソフトと外部アプリケーションをつなげるための仕組みです。
アプリの連携により、新たなアカウント作成なしにUXの向上がはかれ、ユーザーの利便性がアップしました。
企業も新規ユーザーが獲得しやすく、また管理や保護コスト削減にも役立っています。
生体認証:セキュリティ対策
生体認証は従来のパスワードによるセキュリティよりも、安全性が高いと注目されているシステムです。
生体認証の活躍の場は広く、特に中国では早い時期から使われ、顔認証や指紋認証の本人確認の方法が広まっています。
2016年では約10兆円だった市場も、2026年には50兆円まで拡大するといわれており、将来的にも技術は進んでいくでしょう。
【FinTechとは】金融×ITの代表的なベンチャー企業
FinTechの代表的なベンチャー企業には、「PayPay株式会社」「TORANOTEC株式会社」「freee株式会社」などがあります。
なぜ、FinTechのベンチャー企業が増えているかといえば、メリットがあるからです。
たとえば、PDCAサイクルを短期に回せる点、収益性・成長性の高い領域に参入しやすい点、中立のポジションを取れる点などがあります。
ユーザーがスマートフォンなどの端末からより早くサービスを利用できる点は、FinTechにおいても重要な要素です。
ほかにも、既存サービスの制約を受けづらい、消費者の味方になりやすい点などはベンチャー企業ならではのメリットでしょう。
背景にも複数の理由はありますが、メリットがあるからこそベンチャー企業も参入しています。
PayPay株式会社
「PayPay株式会社」が目指しているのは、スマートフォン1つで簡単に支払いを完結することです。
店舗での支払いもバーコードを見せるか、QRコードを読み取れば決済ができるので、現金を持ち歩く必要もありません。
また登録が無料なこと、チャージ方法も銀行口座、クレジットカード、ATMからの現金支払いなどの選択肢があることも選ばれる理由です。
登録ユーザー数はすでに4,0000万人を突破しており、これからも需要が増えていくと予想されます。
またPayPayでは、全国の店で使えて購入時にはボーナスが貯まる、セキュリティ面も安心で、友人や家族に送金できることや公共料金の支払いにも使えるなどもメリットです。
使える店も328万か所以上あり、今後も増えていけば、よりPayPayも普及していくでしょう。
TORANOTEC株式会社
「TORANOTEC株式会社」は「すべての人を投資家に」をビジョンに掲げ、消費から投資へ向かうためのサービスを提供しています。
資産運用子会社のサービスを介して、誰でも投資可能な社会実現を目指す会社です。
TORANOTEC株式会社での有名なサービスには「マネーステップ」や「おつりで投資 トラノコ」があります。
「おつりで投資 トラノコ」では、5円から投資をはじめられ、簡単な分散投資も可能です。
また歩くだけで投資ができる「マネーステップ」などは、アンドロイドでも利用可能なアプリとして人気です。
貯めたポイントを投資に回せる新しいスタイルは、今後成長を続けていくと予想されます。
freee株式会社
「freee株式会社」は「スモールビジネスを、世界の主役に。」をビジョンに掲げ、統合型経営プラットフォームの開発や提供をしています。
個人事業主や中小企業の方に向けて、スモールビジネスの経営を助けるためのソフトなどを提供し続けているのです。
freee株式会社の代表的な商材には「freee会計」「freee人事労務」「freee申告」などがあります。
もっとも代表的なのはクラウド会計ソフトでしょう。
中小企業の経理業務が効率化されれば、帳簿や決算書作成、請求業務などにも対応できます。
数値はリアルタイムで把握でき、スモールビジネスの中小企業や個人事業主の労務軽減も可能です。
また、人事労務では給与計算や労務管理効率化の実現、申告では税務申告書作成業務の効率化の実現を可能にしています。
まとめ
FinTechの目的や内容、FinTechのカテゴリーの種類、参入しているベンチャー企業などご紹介してみました。
FinTechの発展により、書類作成や業務の効率化ができます。
FinTechと一口に言っても、カテゴリーは複数に分かれ、それぞれ得意分野は違いますが、中小企業や自営業の助けになってくれる貴重な存在です。
市場規模も拡大しつつあるFinTechですが、キャッシュレス社会の実現のためにも需要はさらに高まっていくでしょう。
参入しているベンチャー企業は、企業のサポート役として活躍中で、これからの開発にも期待が高まります。
ぜひ、FinTechの内容やメリットを押さえ、取り入れるときの参考にしてみてください。