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はじめに
就職活動の際に、ベンチャーという言葉を耳にする機会があります。
学生のなかには、オリジナルのアイデアや技術を武器として、新しいビジネスを展開するベンチャー企業に憧れをもつ方も多いことでしょう。
近年では、事業内容やその自由なイメージに惹かれて、ベンチャー企業への就職を希望する学生だけでなく、自分でベンチャーを立ち上げる学生も増えています。
しかし、いざベンチャーを立ち上げようと思っても、どのように始めれば成功するのか、不安や悩みも多いのが現実です。
そこで今回は、安心して起業への大きな一歩を踏み出せる、ベンチャーの成功条件や注意点を詳しく紹介します。
【成功するベンチャーとは?】成功するベンチャーの特徴
成功するベンチャーには、共通するいくつかの特徴があります。
その事業内容はもちろん、変化し続ける社会に対応する柔軟さや計画の丁寧さ、すぐれたチームワークや十分な資金確保といった部分は、特に重視しなければなりません。
どれほど革新的なアイデアやテクノロジーがあっても、それを活かすビジネス力がなければ、そのベンチャーは失敗してしまいます。
起業を急ぐ前に、まずは、成功するベンチャーの特徴をしっかり把握して、事業内容や起業までのプランを練ってみましょう。
市場などの環境変化を把握できる
起業家として欠かせないのが、市場などの環境変化を把握する分析力やセンスです。
商品やサービスを売る市場は、消費者の動向・政治の局面・経済の先行き・競合企業の動きといった経営環境によって大きく変動しています。
たとえば、以下の4点が環境変化把握の大切なポイントとしてあげられるでしょう。
・少子高齢化が進む消費者のニーズをつかめているか
・政策転換による規制緩和のチャンスを逃していないか
・為替相場の経済変動はチェックしているか
・仕入れ先や販売先も含む他社の競合状況を把握しているか
こうした環境は日々変わるため、常にアンテナを張り巡らせて情報に対して柔軟な対応を的確に行い、自分のビジネスを社会にフィックスさせていかなければならないのです。
ビジョンが明確で正確である
ベンチャービジネスのビジョンが明確かつ正確であることも、成功の大きな特徴です。
ビジョンとは、経営理念や行動目標などとも呼ばれ、起業家の哲学的思想も含んだ大切な柱となります。
さまざまなバックグラウンドや経験をもつ人材が集まるベンチャーだからこそ、その事業の現在と将来を見据えた明確なビジョンが必要となるでしょう。
成功しているベンチャー企業のビジョンはとても明確です。
将来どのようにビジネスを成長させていくかについて、透明性のあるブレない信念をもっているベンチャーには、その事業や社会を正確に見通す力があります。
明確で正確なビジョンを描けるのであれば、ベンチャーの方向性や立ち位置が定まるでしょう。
まずは、自分の持つ商品・サービスと、その強みを客観的に把握して、力強いビジョンを打ち出してみてください。
ターゲットが精査されているか
具体的に事業を進めていくためには、ターゲットが精査されていることも大切です。
特に、ニッチな隙間産業をその市場として活動することの多いベンチャーでは、想定される購買層をいかに絞り込むかが重要です。
ターゲットがあいまいなまま事業を展開すると、競合他社に負けてしまうケースもあるでしょう。
子ども・大人といった大きな年齢の区分や、男性・女性といった性別だけでなく、さらに踏み込んだターゲットの精査が必要です。
同じ商品やサービスでも、売り込み方が違えば、売り上げも格段に変わります。
開発や企画段階からターゲットの精査をし、ターゲットの購買意欲をかき立てるような売り方ができれば、競合他社などのライバルとの差別化と自社ブランドに有利な市場の確立ができるでしょう。
技術やビジネスモデルが革新的であること
ベンチャーの成功に不可欠なのが、その技術やビジネスモデルが革新的であるということです。
大企業が乱立する市場に参入する以上、その主力商品やサービスが革新的であるという点は当然求められるものでしょう。
ベンチャー立ち上げの際に温めているアイデアや技術が革新的であれば、つぎにそのビジネスモデルも革新的となるよう工夫が必要です。
誰に何を売るのかといった方向性が定まったら、それをどのように提供していくのか、そしてそれがどのように価値や利益を生み出すのかを考えてみましょう。
これまでに、販売利益や、販売手数料・サービスの利用料といったビジネスモデルが確立されてきました。
しかし、現在では、定額のサブスクリプションや、使った分だけ支払う従量課金制、マッチングによる手数料収益など、新しいビジネスモデルが次々と成功を収めています。
すぐれたチームであること
ベンチャー企業は起業者・創業者のカリスマ性が話題となりやすいです。
しかしその事業を支えているのは、すぐれた人材の集団です。
すぐれた製品やビジネスモデルがあっても、それを動かしていく人材が確保できなければ、事業は失敗してしまうでしょう。
すぐれたチームを作り上げるには、すぐれた人材の採用のほかに、将来を担う人材の教育も大切です。
創業者を中心とした経営チームは、事業内容やビジョンに魅力を感じて入社してくるスタッフに対して、そのビジョン・ミッション・バリューを共有しながら、チームと社会に対する責任感をもたせるよう心がける必要があります。
業績とモチベーションの高いすぐれたチームにはよい人間関係が生まれ、離職率の低下と新しい優秀な人材を呼び込むだけの魅力があります。
チーム作りが人を作り、最終的には会社を成功へ導くと心得ましょう。
資金調達ができていること
ベンチャーを軌道に乗せるためには、十分な資金調達が必要です。
どんなによい商品・サービスを用意してすぐれたビジネスモデルを構築しても、継続させる資金力がなければ、事業計画を遂行するのは難しいでしょう。
必要となる資金額は、展開するビジネスによってもさまざまです。
ネット上で完結するサービスならば、比較的低予算で始められます。
しかし、商品の製造や流通を必要とするビジネスの場合、ある程度の運転資金を考えなければなりません。
資金調達としては、銀行やベンチャーキャピタルからの融資を受ける方法もありますが、学生に多額の融資をしてくれるケースは少ないでしょう。
親から借りたり、友人との共同起業をして1人当たりの負担を減らしたりするのも1つの方法です。
起業してから資金不足に陥らないように、資金調達については事前によくシミュレーションしておきましょう。
【成功するベンチャーとは?】失敗するベンチャーの特徴
成功するベンチャーに特徴があるように、失敗してしまうベンチャーにも共通の特徴があります。
特に、ニーズの見極め・広い視野での判断・社内環境といった点は、社会経験の少ない大学生起業家にとって、つまずきやすいポイントだといえるでしょう。
こうした失敗しやすいポイントを事前に押さえておけば、計画段階から着実に事業を成功に向へと進められます。
ベンチャーを起業する前には失敗例も参照して、自分の計画に落とし穴はないか、今一度チェックしてみましょう。
ニーズが理解できていない
失敗パターンに多いのが、市場のニーズを理解していなかったというケースです。
自分のアイデアや技術を過信するあまり、ニーズを考慮しなくても利益を出せると思い込んでしまうことはよくあることでしょう。
こうした自社の製品を中心にして展開するビジネスは、プロダクトアウト型と呼ばれます。
プロダクトアウト型のビジネスは、とにかくよいものを作れば売れるという考え方に基づくもので、現代の多様化するニーズにマッチするものではありません。
この反対が、マーケットイン型と呼ばれるニーズ前提のビジネスの形です。
ニーズだけでなく製品について考えることも必要ですが、思い込みは捨てて、広い視野でバランスよく両方を見渡すことが大切になります。
ビジネスを展開する前には、自己中心的な考え方に陥っていないか、そこにニーズはあるのかについてよく考えてみましょう。
自分たち目線の判断しかできない
失敗するベンチャーには、自分たち目線の狭い視野の判断に終始しがちだという特徴もあります。
新しいサービスを売り込むためには、社会や市場の変化を敏感に感じ取り、タイムリーで的確な判断を下さなければなりません。
特に、1人で起業するケースや、友人同士で起業するケースの多い学生起業者にとっては、広い視野をもつことは困難です。
若い学生だからこその目線は大切にしつつ、マーケティングデータや市場分析を丁寧に実施し、ときには周囲の先輩や専門家のアドバイスを仰ぎながら、視野を徐々に広げて成長していきましょう。
起業の際には、自分たちだけに都合がいい考え方に陥っていないか、現実的な考え方から逃げていないか、よく振り返ってみてください。
社内での人間関係
社会経験の未熟さゆえに、社内での人間関係が悪化してしまうのも、ベンチャーが失敗しやすいポイントです。
特に、自分のアイデアや技術に絶対的な自信のある起業者は、独りよがりなワンマン経営となりやすいでしょう。
ベンチャービジネスを成功させるためには、チームワークが不可欠です。
高圧的な上司がいると部下は萎縮してしまい、当然のことながらチームワークは乱れかねません。
行動力・決断力といった自分の実力を試せるのが、ベンチャーの魅力でもあります。
しかし、事業を成功させるには、良好な人間関係は欠かせません。
若いスタッフを中心に大学生がベンチャー起業するならば、謙虚さを忘れずにお互いの経験不足を補い合って、新しい仲間を温かく受け入れる雰囲気作りができるよう心がけましょう。
【成功するベンチャーとは?】起業の際に知っておくべきこと
大学生のベンチャー起業を成功に導くためには、知っておきたい情報がいくつかあります。
事前の情報収集を怠ってしまうと、ライバルに後れを取るばかりか、事業自体が頓挫してしまうでしょう。
起業支援情報や資金調達方法など、ベンチャー起業を後押しする情報がキャッチできれば、有利に事業を進められます。
また、リスクへの対処を事前に練っておけば、もしものときも冷静に対処できるでしょう。
起業の際には、知っておくべき情報をしっかりとチェックしてください。
起業インフラを活用しよう
ベンチャー起業が一般的になった現在では、起業するための基盤である「起業インフラ」も整備が進んでいます。
チャレンジ精神旺盛なベンチャー起業家を支援する動きは、地方自治体を主体とする公的なものから、一般企業を主体とする民間のものまでさまざまです。
地方自治体では、補助金での金銭的な支援以外にも、起業相談会・専門家のアドバイス・各種セミナーや講座などの支援をしているところも珍しくありません。
また、ビジネスプランのコンテストなどを実施して、すぐれた案の事業化を支援するといった動きも活発です。
民間企業も同様に、起業家を育成するプログラムの実施や、事業をマッチングさせる活動が盛んに行われています。
予算や知識面で不安を覚えている学生起業者は、事業をうまく基盤に乗せるまで、こうした支援があることを頭に入れておきましょう。
リスク対策を常にしておく
ビジネスを進めるうえでは、さまざまなリスクを見極め、常に備えなければなりません。
特にベンチャーの起業では、比較的簡単にスタートを切れることから、リスク対策が不十分なケースも多く見受けられます。
また逆に、将来的なリスクの不安を考えすぎるあまり、事業展開の妨げとなってしまうこともあるでしょう。
ビジネス上のリスクとして、もっとも不安を覚えやすいのは金銭面です。
起業費用や起業後のランニングコストのリスクに備えるためには、ビジネスプランをしっかり立てることが大切になります。
また人材に起因するリスクも、場合によっては事業に大きなダメージを与えかねません。
業務中の事故や、スタッフによる個人情報漏えいのリスクへ備えるためには、労災保険の加入や、機密保持契約やコンプライアンス研修の充実などが必要です。
さまざまな危機に直面した場合に備えて、防止策や対処法をよく考えておきましょう。
資金調達には実績なども見られる
起業する際によく利用される資金調達方法として、事業の実績がなくても借りられる地方自治体の制度融資があります。
自治体によって融資の上限金額や金利は異なります。
そうした金額は事業計画や自己資金額を元に決められるため、事業計画の準備は入念に行いましょう。
また、制度融資以外にまとまった資金を調達したい場合には、銀行や信用金庫、商工会議所の融資などを利用する方も多いかもしれません。
これらの融資を受けるには、ある程度の期間の実績を示す事業報告書などが必要です。
銀行や信用金庫といった民間の金融機関では、これから起業するベンチャーを対象とした融資をしているところも多く存在します。
ベンチャーならではのお金の相談や、ベンチャーに強みのある弁護士や、公認会計士などの専門家紹介といったサービスを実施しているところもありますので、チェックしてみましょう。
【成功するベンチャーとは?】まとめ
成功するベンチャーとは、時代の先を読んで的確な判断を下し、有能な人材を育てられる会社です。
またそれを実現させるためには、さまざまなトラブルやリスクを回避するための備えも欠かせません。
こうした成功を収めるためには、起業前の入念な準備とシミュレーションがカギとなります。
経験の少ない学生起業家ならば、先人の成功例や失敗例から学ぶことも多いでしょう。
さらに、有利にビジネスを起こすための支援や制度の情報収集も必要です。
丁寧に準備して、素晴らしいアイデアや技術を形にしてみましょう。