はじめに
スタートアップ企業は高い成長性とやりがいが魅力だけど、離職率が高そう、ブラック企業も多いのではないか、そんな不安な気持ちを抱えてはいませんか?
今回はスタートアップ企業の離職率について深く知りたいとお考えの皆さんに、その離職率と、高いと思われている具体的な理由、さらには離職率を調べる方法を徹底解説します。
スタートアップ企業への就職、転職をお考えの皆さんに有益な情報となれば嬉しく思います。
ぜひ最後までお読みください。
スタートアップ企業の離職率はどのくらい?
個別に離職率を公表していない企業がほとんどであるため、スタートアップ企業の離職率を正確に推し量ることは難しいとも言えますが、アンケートの調査結果によって公表されている中小企業・小規模事業者の離職率が一つの参考になります。
中小企業・小規模事業者の採用後3年間の離職率は中途採用では約30%ですが、新卒採用では40%を超えています。
実に半数近くが3年間で離職しているのです。
小規模事業者は古くからの老舗企業なども含まれ、いわゆる必ずしもスタートアップ企業ではないという側面もありますが、規模や待遇、従業員数などからも、約30%から40%というのはスタートアップ企業の離職率における一定の数字として参考になるのではないでしょうか。
企業規模別の離職率平均
中規模企業や資本金が潤沢で従業員数も多い、いわゆる大企業の離職率はどうなっているのでしょう。
企業規模別の離職率では、1,000人以上の企業が14%、300人〜999人規模の企業が13.3%、100人〜299人規模の企業が17.4%、30人〜99人規模の企業が14.7%、5人〜29人規模の企業が13.6%となっています。
全企業規模別の離職率の平均は14.6%と、規模別での差はあまりないことが見て取れます。
にもかかわらず、スタートアップ企業の離職率が高いと思われているのは、年代別の離職率の数字が関係しているのかもしれません。
スタートアップ企業に就職、転職する年齢層はほかの企業に比べると比較的若い傾向にあり、若年層の離職率は一般的に高いと言われているからです。
スタートアップ企業の離職率が高い理由
スタートアップ企業の離職率が高い具体的な理由として、「待遇が整っていない」、「労働時間が長い」、「平均年齢が低い」などが挙げられます。
理想と現実のギャップということならまだしも、募集要項と実際の就業環境が大きく異なるということがあればこれは問題です。
スタートアップ企業にはこうした、入社前に採用者に提示した労働条件が実施にはきちんと守られない、ということが存在しているケースもあり、それが離職率を高める要因の一部になっている可能性も考えられます。
待遇が整っていない
スタートアップ企業では福利厚生や給与、社員の健康管理等のあらゆる待遇が整っていないことがあります。
「成長」を第一義に掲げることが多いスタートアップ企業では、売上と利益を重視していくことで会社を回そうとします。
攻めの側面である「営業」や「開発」に経営資源を集中的に投下しがちとなり、結果、守りの側面である社員への還元も含めた社内体制の構築は、どうしても後回しになってしまうのです。
部署の組織化も曖昧なことがあり、主に社員の健康やモチベーションに計画的に関与する社内体制と人材が圧倒的に不足しているのかもしれません。
給与面については相応のスキルがあればある程度は見込めるかもしれませんが、たいていは一定額となりやすいので、どうすれば昇給、昇格がなされるのかをあらかじめ確認しておくことも大切です。
労働時間が長い
スタートアップ企業は短期間で急成長を目指しているため、一人ひとりのタスク量が増え、労働時間が長くなる傾向があります。
圧倒的なスピードで大きな収益を上げるために新規事業を次々に展開するので、成長に人的リソースが追いつかないのです。
大企業に比べて圧倒的に社員数の少ないスタートアップ企業では、少人数で事業を行うので業務量がとにかく多く、業務範囲も多岐にわたります。
一つの業務だけに集中して取り組むといったマイペースな働き方はなかなか許容されないでしょう。
また、経営陣や創業メンバーが、社員に自分たちのような猪突猛進な働き方を求めることも労働時間が長くなる要因の一つかもしれません。
創業直後は、残業は当たり前で残業代を出す余裕もない、ということが常態化している企業もあるようです。
平均年齢が低い
スタートアップ企業に入社するのはやはり20代〜30代の若年層が多い傾向にあります。
革新的なビジネスモデルや成長性に魅力を感じる場合や創業者、経営者のメッセージ、考え方に感化されやすいのは、感受性が豊かで自身の可能性を信じる若者が多いということなのでしょう。
数度の転職経験を有する、ある程度の年齢を重ねた転職希望者は、スタートアップ企業への転職に二の足を踏むケースも多いと考えられます。
スタートアップ企業に入社した若年層、特に20代の若者は転職にそこまで抵抗が少なく、また、入社した企業を足掛かりに独立を考えている人もいるため、必然的にスタートアップ企業の離職率が高くなっていると言えるのかもしれません。
離職率が高いスタートアップ企業で考えられるリスク
待遇面や労働時間、平均年齢が低いという点のほかにも、スタートアップ企業の離職率が高いと考えられる要因がいくつかあります。
就職、転職先の企業をリサーチする時やいざ応募する段階においては、これらのリスクを踏まえたうえで活動を行うようにするのが好ましいでしょう。
具体的なリスクとしては「社内の風通しが悪い」「ハラスメントがある」「教育体制が整っていない」「仕事と給料が見合わない」などが挙げられます。
具体的な例は次の通りです。
社内の風通しが悪い
ポジティブなことも、反対にネガティブなこともストレートに伝え合い、同僚や先輩、上司も含めて会議の席でもオープンに意見交換ができ、建設的な指摘をお互いにし合えるのが、いわゆる風通しの良い企業の良い例です。
スタートアップ企業は少数精鋭の企業が多いため経営者のワンマン化も起こり得ます。
そのため、トップダウンでプロジェクトが進行することが多くあり、現場の意見がまったく通らないということも散見されます。
それぞれが個々の業務に忙しく、相談したくてもなかなかできないということが、風通しの悪い社風につながってしまっているのかもしれません。
日々の業務に関して社員が持っている疑問や改善策、提案等をきちんと吸い上げて対応しようとする風土があるかどうかが一つのポイントです。
ハラスメントがある
あらゆる面で社員に負荷がかかりやすいスタートアップ企業では、ストレスが溜まりやすい職場環境であるため、ハラスメントが横行している可能性があります。
セクハラについては、社員間の男女比率が歪であったり、そもそも上司となる男性社員のモラルがなかったりということがその要因となっているケースがあります。
パワハラでは売上至上主義のもと、上司が部下の考え方のみならず、人間性をも否定して叱責してしまうことがあるようです。
マタハラ(マタニティハラスメント:妊娠、出産、育児に関することで不快な思いをさせられること)は、そもそも妊娠した女性への公的な制度を導入していない場合や社内的な理解がまったくないということが、それを生み出してしまっている背景にあるのかもしれません。
教育体制が整っていない
スタートアップ企業では教育に割く時間がなく、教育体制が整っていないという可能性があります。
業務マニュアルが準備されていない場合は、上司や先輩から直接指導を受け、見よう見まねで業務をこなしていくほかありません。
時には満足に指導を得られず、孤立して立ち止まってしまう場面もあるでしょう。
また、入社後、スキルアップをしたいと願うポジティブな方も多くいることと思います。
しかしながら、人材育成に割くお金と時間が潤沢にあるスタートアップ企業はそうそう多くはないと考えられます。
スタートアップ企業が事業活動で得た売上や利益は、さらに事業を成長加速させるために、営業力の強化や商品・サービス拡充などの投資に充てられるからです。
仕事と給料が見合わない
スタートアップ企業はハードワークであるにもかかわらず、給料がそれに見合わないという可能性があります。
大手企業からスタートアップ企業に転職した場合、給与が下がるケースが多いかもしれません。
本来、昇給、昇格に伴って給与も上がっていくというのが日本の古くからある年功序列の給与システムではありますが、スタートアップ企業の場合、創業メンバーが現在漏れなく要職を占めており、昇進の可能性がなく給与も安いまま、という例もあるようです。
ただし、企業の成長に伴って中長期的に得られる収入面の加速度的な増加や短期的であっても成果を出せば大きな見返りが得られる可能性が秘められている点は、スタートアップ企業の大きな特徴の一つであるとも言えます。
スタートアップ企業の離職率を調べる方法
ハローワークに求人募集を出しているような企業の場合、求人票には過去3年分の応募者数や採用者数、離職者数が書かれています。
しかし、ハローワークで求人募集を行っていない企業は離職率を公開していないケースが多く、スタートアップ企業も例に漏れず離職率を公開していない企業が多いでしょう。
それに加えて、スタートアップ企業は新興の企業であるためデータ数が少なく、情報収集が難しいという側面もあります。
そのような中でも、工夫次第では離職率を調べることができる方法がいくつかあります。
口コミサイトで調べる
会社の評判を、現役社員や離職した社員が匿名で書き込みをすることができる口コミサイトがあります。
「会社の評判」等のキーワードで検索できます。
会社に対して個人の忌憚のない意見を述べることができる口コミサイトは、現社員や元社員が発信する貴重な内部情報を知ることができる便利な情報ツールです。
その口コミの中で離職率を述べている場合があります。
口コミ情報を投稿した投稿者が、リサーチしたい企業に実際に勤めている、または勤めていたという前提は盲目的に信じるほかありません。
ただ、企業が離職率を公開していない以上、その企業の社員であろう口コミ情報は大変有益な情報源として参考にできるのではないでしょうか。
ただし、個人的な意見であるということは頭の隅に入れておき、複数の口コミを客観的に判断するのが好ましいと言えます。
社員に直接聞く
面接時や研修時に実際に働いている社員から離職率を聞く方法もあります。
確実に情報が手に入りますが、まだまだ面識の少ない応募者にどこまで本音を語ってもらえるかは未知数であることも確かです。
また、離職に関することはやや聞きづらい面もあるでしょう。
そこで、直接ではなく、離職に関する情報が得られるとっておきの質問の仕方をいくつかご紹介します。
「転職者も含めて新入社員は年間何人ぐらい入社されますか?」「〇〇さんはこちらで何年ぐらい働いていらっしゃいますか?」「求人募集というのはどれぐらいの間隔で行っていらしゃいますか?」
このように聞くと、どのぐらいの離職者がいるのかということを直接的には聞かずとも、ある程度の離職率を判断することができるのではないでしょうか。
SNSを用いる
スタートアップ企業では企業のSNSアカウントを運用していることもあるため、DMを送ることやフォロワーなどからつながって情報を得ることができる可能性もあります。
思い切って「○○というスタートアップ企業に転職を考えているのですが、離職率がわかりません。○○社の離職率や社内体制について教えてください」と投稿するのも一手です。
もしかすると内部事情に詳しいユーザーが離職率や参考になる情報を返信してくれるかもしれません。
また、FacebookやInstagram、Twitterに企業が社内の様子をアップしている場合もあり、その情報から確認する方法もあります。
一概に離職率とは直接結びつけられない部分もありますが、自分の性格に合った職場かどうかを知ることはとても重要です。
離職率だけで一概にブラック企業とは言い切れない
これまでスタートアップ企業の離職率が高いことについて述べてきましたが、実際のところスタートアップ企業は採用人数が大手企業に対してとても少ないため、1人離職した時の離職率が高くなりやすい傾向があります。
離職率だけでなく、仕事内容や適性、目的を考えることも大切なことだと言えます。
注意していただきたいのは、「離職率が高い=ブラック企業」ではないということです。
社内体制もしっかりして法令ももちろん順守、給与面も高水準で福利厚生も充実しているが離職率が高い、そんな企業が果たしてブラック企業と言えるでしょうか?
その企業が求めている人材への要求水準と転職者の意識、目的のギャップが大きければ大きいほど、長続きはしないはずです。
まとめ
スタートアップ企業の離職率が高いと想定されることは間違いではないでしょう。
その離職率の高さは、新しい会社ゆえ、いくつもの体制が整っていないことに起因します。
しかしながら、スタートアップ企業は世の中に大きな変革をもたらし、新たな市場を創造してとてつもない成長を実現する可能性を秘めているのも事実です。
そんな成長性とやりがいに魅力を感じ、自信のスキルアップと共に大きな果実を手にしたいと思う方にとっては、多少の離職率の高さには目を瞑り、新たな環境に飛び込んでみるのも一考ではないでしょうか。