はじめに
転職を成功させるためには、前職の退職理由をどう伝えられるかが鍵であるといっても良いでしょう。
転職の面接では、企業が退職理由を聞くことは普通であり、これを避けて通ることは出来ません。
転職理由は、中途採用者を募る企業側にとって、選考する上での重要な材料となります。
なぜ前の仕事を辞めようと思ったのか、その理由を上手く伝えることが出来ないままでは、転職活動は進みません。
本音での転職理由は人それぞれさまざまあるでしょうが、採用につながる答え方を考えてみましょう。
【転職面接の退職理由はどう答える?】企業は退職理由でどこを見ているのか
中途採用者の選考をする際に、企業は必ず前の職場を辞めようと考えた理由を聞いてきます。
それは企業にとって、採用者を決める際のとても重要な判断材料となります。
新卒の就職活動の時には、志望動機をいかに採用につながるものにするかを考えることに頭を悩ませたことと思いますが、転職の場合にはそれに加えて退職理由の答え方にも留意しなくてはならないのです。
企業への転職理由の伝え方をどのようにすべきか、それを考えるために、企業が転職理由から何を知ろうとしているのか考えてみましょう。
入社後同じ理由ですぐ辞めない
どこの企業でも、採用選考の際には、せっかく採用した社員が早期退職してしまわないかどうかは非常に重要なポイントとなります。
より優秀な人材を採用したいと思うのと同じ位、企業は、長く働いてくれる人材を求めているのです。
中途採用者を募集しているのですから、応募者はもちろん他の企業を退職して入社してくるわけです。
その退職理由が自社にもあてはまってしまう場合は、また同じ理由で辞めてしまう人である可能性があります。
そのため退職理由を聞いて、自社では長く働いていけそうかどうかを確認したいのです。
たとえば、前職を辞めた理由が「休日出勤をしたくなかった」というものだった場合、転職先の企業が休日出勤を求めた場合には、それを理由に辞めてしまうことが心配されます。
通常は休日出勤が無い企業の場合でも、繁忙期やトラブル発生時などやむなく休日に出勤しなくてはならない事態にならないとは限りません。
退職理由を述べる際には、その企業で同じ事態になる可能性はないか十分に注意しなければなりません。
人柄・仕事に対する価値観を知るため
退職理由には、その人の仕事に対する価値観が表れます。
転職に限らず採用の際には、企業はその応募者が自社で働くことに合っているのかを限られた情報の中から判断しようとします。
新卒採用の場合には、志望動機や自己PRなどで人柄や価値観を見極めるしかありません。
しかしとくに仕事に対する価値観についていえば、新卒の時点ではまだ想像でしかなく、実際に仕事を経験してみた後では、また違った価値観が生まれることもあるでしょう。
転職の場合には、実際に他社で仕事を経験していることから、転職理由を聞くことで仕事に対するその人なりの価値観をより具体的に知ることが出来るのです。
その価値観が、その企業で働く上でマイナスにならないか注意深く見られます。
また、退職理由はその人がどのような人物であるのか、人柄を見極めるための材料としても重要視されます。
たとえば、前職で人間関係が上手くいかなかったことが退職理由であると聞けば、企業はその人はコミュニケーション能力が低い人だと判断するでしょう。
【転職面接の退職理由はどう答える?】退職理由の伝え方のポイント
企業が退職理由から応募者の何を見ようとしているのかを考えながら、採用につながる退職理由を考えてみましょう。
ただし、採用されたいがために実際の理由とまったく異なる退職理由を作ってしまうことは、逆効果です。
退職理由については、志望動機と同じく、面接で詳しく聞かれることが考えられます。
そして多くの応募者を見てきている面接官との対話の中では、必ず作り話は見抜かれてしまいます。
本音の退職理由を採用につながるものにするために、伝え方を工夫することが大切なのです。
志望動機との一貫性を意識する
志望動機と退職理由が一貫しているかに注意しましょう。
キャリアプランに関することや労働環境、労働条件など、退職理由は人によってさまざまですが、転職することでそれらを理想とする状態に近づけられているか、が大切です。
退職理由と志望動機のつじつまが合っていないと、退職理由も志望動機も説得力を持ちません。
とくに前の職場を辞めた理由が、志望企業にあてはまるものでないかどうかは入念に確認しておきましょう。
先で述べているように、志望企業で働くことになった場合に前職を辞めるに至った状況と同じ状況になってしまうことが考えられる場合は、「同じ理由ですぐ辞めてしまう人」になってしまいます。
これでは採用につながらないばかりか、たとえ採用されたとしても、何のために転職したのかわからなくなってしまいます。
前職を辞めた理由や原因が、その企業に入社することで解消できるのか、入念な企業研究をして確認しておくことが必要です。
前職を退職した理由が解消できること、それが転職先の企業の志望動機になっているか、それを意識することが大切です。
前向きな内容に変換する
職場や仕事の内容に何の不満もない場合に、転職を考えることはあまりありません。
前職に何らかの不満があったことは、企業側でも承知しているでしょう。
しかし、本音はどうあれ、ネガティブな理由を前面に出して転職活動を行うことは、あまりおすすめできません。
不満を理由に仕事を辞める人物であるという印象を持たれてしまうと、せっかく採用しても、また同じように不満が湧いてきて辞めてしまう人なのではないかと判断されてしまいます。
どこの企業に就職したとしても、意に沿わないことは多少なりともあるものです。
前職で不満があったことをストレートに伝えてしまうと、我慢の出来ないわがままな人の印象を持たれてしまう可能性もあります。
退職理由は、できる限り前向きに伝わるように伝え方に工夫が必要です。
たとえば前職の給与に不満があって転職を考えた場合には、「給料が低い」とネガティブに言わずに「より成果が給料に反映される環境で働きたい」など、前向きに変換して伝えるのです。
退職理由を「〜が不満だったため」から「〜したいため」と置き換えられないか工夫してみましょう。
周りのせいにしない
退職理由を、自分以外の周りのせいにすることは避けましょう。
実際の転職理由が上司や職場環境などだったとしても、それをストレートに周りのせいとしてしまうと、すべてを他人や周りのせいにしてしまう幼稚な印象を与えてしまいます。
転職先の企業でも、一緒に仕事をするメンバーや将来上司が変わるなど、環境が変わることはいくらでもあり得ます。
今は良くても、将来にわたって、ずっと同じ環境で仕事が出来るとは限りません。
環境が不本意に変わった場合、また同じように周りのせいにして辞めてしまうと思われては、採用を勝ち取ることはできません。
どんな状況にあっても、主体的に考え行動することで改善しようとする姿勢は、一般的に広く社会人に求められるものです。
ただ不満に思うだけでなく、環境を改善するために自分が何をしたのかなど行動したことを伝えるようにしましょう。
自分にとって仕事がしづらい環境を、安易に他人のせいにして辞めてしまう人物であると思われないか、注意が必要です。
具体的に答える
面接では、聞いている相手にわかりやすく具体的に答えることも重要です。
詳細まで質問された場合にも、具体的に答えられるように準備をしておきましょう。
答え方が曖昧になってしまうと、はっきりした退職理由が伝わりません。
前職を退職した理由について企業が納得出来ない状態のままでは、志望動機も熱意が伝わりにくいものとなってしまいます。
退職理由は、具体的なわかりやすいエピソードであればあるほど伝わりやすくなり、説得力を増します。
たとえば、社風が合わなかった場合には、ただ「社風が合わなかった」というだけでなく、前職のどのような部分がどのような理由で合わなかったのかを伝えましょう。
また、どのような環境で仕事がしたくて転職を決意したのかなどできるだけ具体的に伝えると、転職に自分が何を求めているか伝わりやすくなります。
【転職面接の退職理由はどう答える?】NGな退職理由の例
以下に退職理由として、ふさわしくない例文を紹介しましょう。
はじめの例文は、残業が多いこと、休日が少ないことを退職理由としていますが、この理由は伝え方を工夫しないと労働意欲が低い人だと思われてしまいます。
2つ目の例文は、社風が合わなかったことを理由に挙げている例文です。
これでは同じ理由で退職を繰り返してしまうのではと思われてしまうため、このままではNGです。
どちらも不満が前面に出ているため、前向きに伝わる工夫をする必要があります。
残業が多い・休日が少ない
前職では、残業が多い上休日が少なかったため退職を決意しました。
自分自身を成長させられる企業であると思い入社した会社でしたが、事前に聞いていた残業時間と異なり、実際に入社してみると定時に帰れることは滅多にありませんでした。
営業を担当していたのですが、外回りをした後にデスクに戻り報告書作成などの事務作業やスケジュール管理もやらなければなりません。
また、就業時間外にもかかわらず会議の予定を入れられることも多く、理不尽さを感じていました。
毎朝出勤して、前日にやり残した仕事を片付けるところから始めるため、その日の分の仕事を始めるのが遅くなり悪循環になっていることも原因でした。
週末に休日を返上して、その週の分の仕事を片付けることも多く、友達との平日の約束だけでなく休日の約束も毎回キャンセルをせざるを得なくなってしまいました。
たまの休みの日も、日々の疲れから遊びに行く気力もなくなり、このままでは人間らしい生活が出来ないと思い、残業の無い会社に転職しようと考えました。
前職では、人手不足に加えて、すべての事務作業が紙ベースでしたので、それも作業に時間が取られる理由のひとつだったと思います。
デジタル化の進んだ会社で効率的に仕事をしたいです。
社風が合わなかった
社風が合わなかったことが前職を退職した理由です。
前職では営業職でしたが、営業マン同士は皆ライバルだという意識が強く、個人主義の社風でした。
入社前は、そのような社風の中で自分の力を試したいと強く思っていたのですが、だんだんその社風が合わないと感じてきました。
皆自分の成績を上げることに精一杯で、仕事のやり方などのアドバイスをし合ったり、お互いに協力したりなどする雰囲気はまったくありませんでした。
足の引っ張り合いというほどではありませんが、自分以外の営業マンの成功を会社の一員として一緒に喜ぶという雰囲気はなく、他の営業マンの失敗をチャンスと考える風潮がありました。
ですから、これまで仕事をしてきて営業職の同僚と仲良くなることはありませんでした。
また、頼りにできる先輩もいないため、だんだん孤独を感じるようになり、仕事に対する意欲も薄れていってしまいました。
始めは好きだった営業の仕事も、自分には合わないのではないかと感じはじめ、一人でノルマ達成に向けて頑張ることに限界を感じて退職を決めました。
今では、自分にはもっと暖かい社風が合っているのではないかと思っています。
今度は、和気あいあいとした雰囲気の中で協力しながら仕事を進めていきたいです。
【転職面接の退職理由はどう答える?】セクハラ・パワハラは正直に言ってもいい?
転職を考える人の中には、パワハラやセクハラが原因で前職を退職した人もいるでしょう。
その場合は「パワハラ」、「セクハラ」という言葉を使わずに、ポジティブに言い換えられないか、工夫が必要です。
退職理由がパワハラやセクハラの場合、それをストレートに理由として伝えることは、ストレス耐性の無い人物と思われてしまう可能性もあります。
デリケートな問題であるため、ポジティブに言い換えられない場合には、自分から話す必要はないでしょう。
話の流れで避けられなくなった場合は、マイナスなイメージを持たれてしまわないために、その被害が自分だけでなく社内全体の業務におよんでいた旨を伝え、主体的に状況を改善した旨を伝えられると良いでしょう。
【転職面接の退職理由はどう答える?】面接官からの高評価な退職理由の例
前向きな姿勢が感じられ、志望動機と一貫性のある内容であり、具体的でわかりやすい説得力のある退職理由であれば、採用につながりやすい退職理由です。
ここでは、面接で高い評価を得られる退職理由の例を紹介しましょう。
以下は、「職種を変えたかった」ため転職を考えた場合の退職理由です。
やむを得ない事情で理想のキャリアプランを実現出来なかったため、それを実現するための前向きな転職であることが伝わるものになっています。
また、前職でも実現に向けた行動をしていることを述べており、ポジティブな姿勢が伝わる例といえるでしょう。
職種を変えたかった
前職の営業職から職種を変え、御社で募集しているマーケティング職で働きたいというのが退職理由です。
前職は営業職を担当しており、業務の中で顧客からニーズを聞き取ることも多くあり、聞き取ったニーズを開発チームにフィードバックすることも私の仕事でした。
ある時、私が顧客から直接聞き取ったニーズから新商品を開発することになり、一時的に社内のマーケティングチームに混ざって、その新商品のマーケティングを行うことになりました。
今まで携わったことのなかったマーケティングの仕事は、業務自体もとても面白く魅力的に感じられましたし、自分がチームで仕事をすることに向いていることを発見できました。
そのときの新商品は、今では会社の主力商品のひとつとなっています。
以後、マーケティング職で働きたいと強く思うようになり、人事に希望を伝えてきましたがなかなか叶わず、今は自分でマーケティングについての勉強を始めています。
営業の仕事も疎かにしないよう、マーケティング戦略を意識して活動した結果、営業成績もトップの成果を得られました。
今回改めて人事と話し合った際に、マーケティングの部署の人員が足りていることから、当分異動は実現しないことが分かり退職を決意しました。
【転職面接の退職理由はどう答える?】面接突破・内定獲得にはアゲルキャリアがおすすめ
転職活動では、ここで解説した退職理由の答え方をはじめ、新卒の時の就職活動とは異なることが多くあります。
新卒の就職活動は同じ時期に一斉に活動を行うため、友達と悩みを共有したり相談したりも出来ますが、転職の場合はわからないことも多く、心細く感じている人がほとんどではないでしょうか。
転職活動に不安を抱えている場合には、転職エージェントを活用することも有効な方法です。
退職理由を含む面接対策をはじめ、企業探し、履歴書の添削など転職を成功させるためのあらゆるサポートを受けることが出来ます。
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まとめ
転職の際の面接では、退職理由をどう志望企業に伝えるかが重要になってきます。
なぜ前職を辞めようと考えたのか、なぜ転職を決めたのか、その理由は前向きのものである必要があるでしょう。
同じ理由でも、伝え方によって受け取る側のイメージは、大きく異なります。
本音ではネガティブな退職理由であっても、できる限りポジティブな言葉で伝えられるようにしましょう。
自分一人で考えた退職理由が有効であるか自信が持てない場合は、転職エージェントの利用なども視野に入れてみましょう。