はじめに
就職活動の準備段階で、ベンチャー企業を視野に入れてリサーチしているという方も多いでしょう。
自分に裁量が任せられ、新しいことにチャレンジできる環境のベンチャー企業に魅力を感じるけれど、福利厚生や待遇に不安があるという声も多く見受けられます。
中でも、近年定着したリモートワークが可能かどうかは、多くの学生の気になるポイントとして挙げられているようです。
今回は、ベンチャー企業のリモートワーク事情について解説していきます。
【ベンチャーでもリモートワークある?】リモートワークとは
まずは、リモートワークの定義について説明します。
リモートワークとは、オフィスではない場所を使用して遠隔で仕事をする、いわゆる在宅勤務を指します。
2020年における新型コロナウイルスの蔓延の影響を受け、感染拡大防止のために急速に広まった新しい働き方です。
会社に出社することなく、自宅やカフェなどの会社以外の場所で業務を行えるため、通勤時間の短縮、出産・育児などのワークライフバランスの確保がしやすいなどの観点から、多くのオフィスワーカーから支持を集めています。
その影響を受け、時間貸しや月極のレンタルオフィスなど、リモートワークに適した場所を提供する企業も目立つようになってきました。
【ベンチャーでもリモートワークある?】テレワークとの違い
リモートワークとともにテレワークという言葉も浸透してきましたが、違いはあるのでしょうか。
結論からいうと、両者に違いはほとんどありません。
テレワークは、テレ(tele=離れたところ)・ワーク(work=働く)が語源です。
「ICTを活用し、場所や時間を有効に活用する柔軟な働き方」と定義されていますが、リモートワークと同義で使用する企業が多く見受けられます。
【ベンチャーでもリモートワークある?】テレワークの種類
ひと言にリモートワークやテレワークといっても、さまざまな働き方があります。
企業の業務体系やその人のライフスタイルに合わせて、多様な働き方が認められるようになっているのです。
ここでは、大きく3つの就業形態に分けて、テレワークについて踏み込んで紹介していきます。
在宅勤務
在宅勤務は、企業に勤めている従業員が自分の自宅で業務を行うという労働形態を指します。
主にノートPCなどのIT機器を使って作業し、会社との連絡はインターネットを使ったコミュニケーションツールや電話、FAXなどが用いられます。
毎日、在宅勤務を導入しているフルリモートスタイルの企業もありますが、週に〇日など出社する日とバランスを考え、導入する企業が目立つようです。
在宅勤務は、2020年・2021年の感染拡大防止を目的とした出勤抑制のため、政府先導による一時的な働き方改革として導入されました。
しかし、労働者の継続希望の声が多く、人材確保にも効果があるという見方もあり、今後も継続していくものと見られています。
子育てや介護などで退職を検討していた方も、効率的に業務に臨めることは在宅勤務の大きな魅力です。
モバイルワーク
モバイルワークとは、テレワークの中でPCやスマートフォン、タブレットなどを活用して、自宅やカフェ、移動中などで業務を行う労働形態を指します。
オフィスや自宅など勤務場所を指定されず、自由にどこでも仕事が可能であるために、外出や出張が多い営業職を中心に導入されています。
モバイルワークのメリットは、移動中や外出先などの隙間時間を有効に活用できることといえるでしょう。
たとえば、新幹線の中やアポイントまでの数十分の間に、資料作成や打ち合わせが可能になるのです。
また、オフィスに戻るための交通費や残業代の削減も可能になります。
しかし、セキュリティ面でのリスクや勤怠管理が複雑化する、コミュニケーションが不十分になるなどのデメリットも発生するため、導入に慎重になる企業も目立つのが現状です。
サテライトオフィス
サテライトオフィスとは、通常時に出社している企業の本社、拠点から離れた場所にある別のオフィスのことを指します。
本社などに出社せず、サテライトオフィスに出社して業務を行うという労働形態も近年浸透してきました。
支社や支店と同じように聞こえますが、事業や業務内容によって区分された支店と異なり、サテライトオフィスはあくまで「所属している組織の業務を別拠点で行う」ために作られたものです。
そのため、少人数が勤務できるスペースと通信環境の整った、小規模な施設であることが多いのが特徴です。
自社のLANやシステムが使えるサテライトオフィスもあれば、複数の企業で共同運営するオフィスも見受けられます。
働き方改革にマッチしているだけでなく、地方にサテライトオフィスを作れば地方の再建にも貢献できるため、注目されているテレワークスタイルです。
【ベンチャーでもリモートワークある?】リモートワークのメリット
ひと言にリモートワークといっても、さまざまな働き方が生まれていることが分かりました。
もはやリモートワークは世間に大きく浸透しており、マイナーな働き方ではなくなっているのです。
リモートワークを導入するメリットを、大きく3つに分けて紹介していきます。
ワークライフバランスを保てる
まず、ワークライフバランスを保てることが大きなメリットです。
ワークライフバランスとは「仕事と仕事以外の生活との調和を取り、双方が充実している生き方」を指します。
リモートワークの導入により、オフィスに出社するための通勤時間がカットされるようになりました。
そしてその分、自宅で自由に使える時間が増えるようになったのです。
その時間を健康のための睡眠時間の確保や適度な運動に充てることもできますし、家事や買い物に使えるようにもなりました。
さらに、趣味や家族と過ごす時間に充てられるようになったことから、ストレスを感じにくくなったという声が非常に多いのです。
その結果、多様な人材を確保や早期離職の防止などにつながるといえるでしょう。
業務効率の向上
リモートワークは、業務効率を向上させる効果があります。
先ほど述べたワークライフバランスを改善することは、仕事に対する意欲を高める効果があるといわれており、結果として業務効率の向上にもつながるといわれているのです。
プライベートが充実することで、心身ともにリフレッシュした状態で業務に取り組めるようになるからでしょう。
また、自宅やサテライトオフィスで仕事をする場合は、他の社員の会話や電話の音など周りの雑音なども気にならない環境であることも多いため、自分の業務に集中できるという効果もあります。
また、在宅勤務の場合は自分の好きなアロマを用意する、ワークスペースの周りに植物やアートを飾るなど、自分がリラックスして作業ができる環境を整えられることも魅力の1つです。
育児・介護などとの両立が可能
育児や介護など、ライフステージの変化に対応できるのもリモートワークを導入する大きなメリットです。
従業員の中には育児や介護などにより、やむなく離職することになってしまうケースが少なくはありません。
とくに、子どもの体調不良が続く、遠方の保育園しか確保できないなどの理由で通勤が難しくなり、キャリアを断念する女性は多く見受けられました。
しかしリモートワークを導入すれば、時短勤務を選択しなくても保育園のお迎えにも余裕を持っていけるようになりますし、在宅で介護しながら業務に携わることも可能になります。
在宅勤務という働き方があるおかげで、育児や介護という家庭の事情があっても、仕事との両立を選択しやすくなるといえるでしょう。
【ベンチャーでもリモートワークある?】リモートワークのデメリット
ワークライフバランスが充実しながら、業務効率も上がるとメリットばかりのように聞こえますが、当然リモートワークを導入するうえでのデメリットも存在します。
リモートワークの問題点を、2つピックアップして紹介します。
社内コミュニケーションの機会の減少
社内のコミュニケーションが少なくなることは、問題視されています。
出社しないとなれば、他の社員と対面で接する機会が減るため、コミュニケーションを取る場面そのものが減ってしまいます。
その結果、情報の共有ができなくなり、認識のずれや結束力が低下したりするなど、マイナス面の要素が出てくる場合も見受けられるのです。
また社員によっては、リモートワークを続けていると孤独感や閉塞感を覚える人がいるのも現状です。
そのようなリスクを回避するために、Web会議ツールやコミュニケーションツールを積極的に活用することが大切といわれています。
業務の進捗確認や報告、相談などはチャットツールで、会議や打ち合わせ、面談などはWeb会議ツールを使用するなど、用途に合わせてうまく使い分けることで、コミュニケーション不足を補えるようになるでしょう。
自己管理能力が必要
自己管理能力が求められるのも、リモートワークの課題といえるでしょう。
とくに在宅勤務の場合は、自己管理能力が問われる傾向にあります。
なぜなら、会社に出社しているときとは環境が異なるため、プライベートと仕事の切り替えが難しく感じ、仕事モードにうまくスイッチできない人も見受けられるからです。
業務に集中できない、また受け身の仕事スタイルの人は、帰宅時間がないため働きすぎてしまうなどの弊害が生まれています。
改善のために、業務時間の前に散歩をしてオフィスに適応した服装に着替えるなど、気持ちを切り替える工夫をする、タスク管理ツールなどを活用して優先順位をつけて仕事をするなど、自分自身でモチベーションや業務の舵をとることが求められます。
【ベンチャーでもリモートワークある?】テレワーク・リモートワークの普及状況
リモートワークのメリット、デメリットについて説明してきました。
現在、リモートワークはどれほど普及しているのでしょうか。
新型コロナ感染症の影響もあって急速に普及拡大したリモートワークは、2021年3月時点では大企業が69.2%、中小企業が33.0%普及と高い数字になっています。
最も高い緊急事態宣言の発令時には、大企業83.3%、中小企業51.2%にまで上がりました。
しかし、医療・福祉介護事業や飲食サービス業では、10%以下の普及率となっています。
このように職種によって導入が難しいケースもありますが、コロナ禍が明けても、テレワーク・リモートワークを取り入れた働き方は今後も継続していくと見られています。
【ベンチャーでもリモートワークある?】リモートワークを採用しているベンチャー企業
普及状況を見ると大企業が中心となっているため、ベンチャー企業ではまだ導入が浸透していないのではないかと考える方もいるかもしれません。
しかし、リモートワークを導入しているベンチャー企業も存在します。
さっそく、代表的な2社を紹介します。
リクルート
リクルートは、人材紹介をメインに多様な業務を行っているベンチャー企業です。
代表的なサービスは、リクナビやスタディサプリ、ゼクシィなどです。
多様性を重視するリクルートは、積極的にリモートワークを推進しており、一部の職種を除いて理由・回数を問わないリモートワークを全社導入しています。
そして出社しないことを前提とした働き方へシフトしているため、フルリモートの社員も多く見受けられます。
交通費は月額ではなく、日額上限5000円で実費支給する制度になりました。
その結果、遠方での勤務も可能になったため、通勤を前提とした住まいである必要がなくなりました。
ライフスタイルに合わせて柔軟に働く場所を設計できる新しい働き方は、時代を先取りしているといえるでしょう。
株式会社ディー・エヌ・エー
株式会社ディー・エヌ・エーは、ゲーム事業やスポーツ事業などを幅広く展開しているメガベンチャー企業です。
モバゲーやSHOWROOMなどが代表される事業として知られています。
IT企業ということもあり、リモートワークを原則として推進しており、2022年4月時点では8割の社員がリモートワークで業務にあたっていました。
会議や打ち合わせなどもオンラインをメインとして、紙ベースの業務や社外の人との打ち合わせなど、業務内容によって出社とリモートワークを使い分ける社員が多く見受けられます。
また、社員がリモートワークをする際の環境整備などにかかる費用を支給する、リモートワーク手当があるのも特徴といえるでしょう。
アフターコロナとなっても、リモートワークの文化は継続させるという意向です。
【ベンチャーでもリモートワークある?】リモートワークの多い業界
ベンチャーで、積極的にリモートワークを導入している2社を紹介しました。
リモートワークにはコミュニケーションが取りづらいというデメリットもありますが、個人の業務は生産性が上がるという声が多いため、課題を解決しながら今後も導入していくという企業が目立っています。
中でも、リモートワークを積極的に導入している業界を3つピックアップします。
IT業界(インターネット関連、通信、情報処理)
IT業界では、他の業界に比べてかなり高いリモートワークの普及率を誇っています。
リモートワークの導入には、インターネット環境、クラウド、セキュリティ対策などの整備が必要です。
それらがすぐに整いやすいIT業界は、リモートワークを導入しやすく、積極的に採用している企業が多いことが理由に挙げられます。
また、先鋭のIT企業であれば、コロナ禍以前からテレワークを通常で行っていたというケースも珍しくないのです。
中でも、ITエンジニアを採用している9割の企業がリモートワークを導入しており、その中の4割以上が週5日以上のフルリモートをしているというデータも存在します。
IT企業では、リモートワークがごく一般的な選択肢として浸透しているのです。
マスコミ・広告
マスコミ・広告業界も、多くの企業でリモートワークを導入しています。
IT企業と同様に、リモートワークを導入する際に必要な環境をすぐに整えることができるため、コロナ禍によってリモートワークを導入する企業が増加したのです。
大手広告代理店や新聞社は早くからリモートワークを積極的に導入し、多くの社員が導入して在宅やサテライトで業務を行っています。
さらに、現場での仕事が多いために「リモートワークは不可能」といわれていたテレビ局も、リモートワークを取り入れるようになりました。
5Gを導入した次世代放送プラットフォームを利用して、リモートで番組制作をするなどの試みが見られており、現場にいなくとも番組制作ができるシステム作りがはじまっています。
金融・保険
ハンコ仕事の多いイメージがあるため意外に思われるかもしれませんが、金融・保険業界にもリモートワークは導入されています。
金融業界はマスコミ・広告に比べると、対面で営業や接客を行ったりする業務が多いことと、厳しいコンプライアンスの観点から、フルリモートへの移行は難しいのが現状です。
そのため、IT業界やマスコミ・広告業界ほどの導入率ではありませんが、Web会議ツールやチャットツール、電子文書決済システムなどの充実により、以前より導入しやすくなりました。
実際にみずほフィナンシャルグループでは、グループ6社の正社員を対象に週休3~4日制が導入されています。
このようにコロナ禍の影響も受けて、従来の勤務体系を大きく変更し、リモートワークを導入する企業が増えてきているのです。
まとめ
首都圏を中心にリモートワークは定着しており、ベンチャー企業もその例外ではありません。
大企業に比べてスピード感を持って物事を決定できるからこそ、時代の流れに沿ったリモートワークを柔軟に取り入れている企業が多いのが現状です。
リモートワークには、社員間のコミュニケーションの不足、オンオフの切り替えがしづらいなどの課題もありますが、多くの社員が生産性の上昇やストレスの緩和など肯定的な意見を抱いています。
ワークライフバランスを重視するのなら、リモートワークを導入している企業を選ぶというのも、判断材料の1つになるでしょう。