はじめに
コンサルタント業界や外資系企業に興味を持ち、これらの企業への就職活動を行うようになると、フェルミ推定という言葉を聞くことがあるでしょう。
しかし、実際の流れがわからず言葉だけを聞くと、難しそうだと感じるかもしれません。
今回は、フェルミ推定とその対策について解説します。
フェルミ推定面接では何を見られるのか、ポイントや面接中に意識しておきたい点なども触れていますので、興味をお持ちの方はぜひ参考にしてみてください。
フェルミ推定とは
フェルミ推定とは、郵便ポストの数など実際に正確な数値を出すことが難しいものを、必要最低限の知識のみで求めることです。
予想のつかない数字を、いくつかの手がかりをもとに論理的に推論し、短時間で概算します。
おおよその見積もりをざっと計算できればいいので、精密な量が求められているものではありません。
このフェルミ推定は、主にコンサルティングファームの選考で多く見られます。
コンサルティングファームは、事業戦略やシステム構築など、会社の抱える経営課題を解決へと導く企業のことです。
またフェルミ推定は、潜在市場規模などの不確実な要素が多い中でも素早く数値を求められるため、新しく事業を始める際にも役に立ちます。
では、以下の項目でフェルミ推定の流れを確認していきましょう。
フェルミ推定の流れ
フェルミ推定の流れを把握するために、1つのお題を例に挙げて解説していきます。
ここでは、「とあるカフェの一日の売上は?」という例を挙げます。
手順としては、まず前提を確認し、次に要素分解、最後に数字を代入します。
最初から計算しようとはせず、イメージを浮かべることから始めましょう。
「どのような特徴を持つカフェなのか」「立地はどんなものか」といったように、具体的にイメージした後でどのように計算するのかを決めます。
前提確認
「とあるカフェの一日の売上は?」という問題では、さまざまな点が明確にされていません。
計算するためには、「どんなカフェ?」「営業時間は?」「お客さんの数は?」「テイクアウトは?」という風に、そのカフェの定義から決めていくことが必要になります。
面接では、自分がどのような前提を置いたのか聞かれることもあるので、前提の確認は大切です。
また、フェルミ推定は知らない数値を仮定して計算しますが、常識的な数値として知っていると想定されたうえで出される問題もあるので、最低限の前提知識を持っていると良いでしょう。
要素分解
問題の前提を確認した後は、要素分解に入ります。
要素分解とは、計算の対象となる要素を複数の数値に分解する作業のことを指します。
一般的には、「売上=客数×客単価」という式を使って計算するため、「客数」と「客単価」の2つの要素を導き出しましょう。
客数と客単価という要素を掛け算することによって、カフェの一日における売上を算出します。
フェルミ推定における基本的な知識なので、試験本番で慌てることがないように確認しておきましょう。
数字を代入
次は、公式に具体的な数字を代入するフェーズに入ります。
これまでの経験や知識などを参考にして、大まかな数字を設定してください。
客数の数値は、1日にどのくらいの客が訪れるのか、また客単価の数値は一人あたりの金額がいくらくらいになるのかを予想してみると定められるでしょう。
今回の式は、「売上=客数×客単価」です。
たとえば、1日に100人、一人あたりの客単価が500円だとすれば5万円の売上が見込めることになります。
このように仮の数字を設定し、実際に計算して具体的な売上を確認しましょう。
評価
最後に、その数値が適切であるかを自己評価してください。
計算によって求められた数値が、おおよそ現実的なものであるかどうかという点を確認しましょう。
妥当性はフェルミ推定の数をこなすことで、感覚として身につけられます。
また、フェルミ推定では必ずしも正確な数値を出す必要はないので、細かい数字になったとしても四捨五入などをして、計算しやすいものに変えてもかまいません。
適切な数値がわかるようにするためにも、よく見られるものは覚えておきましょう。
フェルミ推定で見られていること
ここまで、フェルミ推定とは何か、またどのように数値を求めるのかを説明しました。
では、このフェルミ推定を応募者に課すことで、企業は何を知ろうとしているのでしょうか。
フェルミ推定は、主に応募者の論理的思考力や説明力が見られます。
企業は、調査することが難しい問題に対し、応募者がどのようにアプローチするのかを知ることにより、視野の広さや適性などを把握します。
ここからは、具体的に企業に見られるポイントを紹介していきますのでそれぞれ確認してみてください。
論理的思考力
1つ目は、論理的思考力です。
論理的思考力は、コンサルタントとして特に重要なスキルでしょう。
企業は、応募者がクライアントから与えられた課題に対し、どのように取り組むのかを選考の際に知りたいのです。
正確なデータが存在しなくても、いくつか解決案を出さなければいけません。
フェルミ推定では、限られた情報から結論を導きます。
仮説を立て、具体的な数字を設定し、計算によって検証します。
出された問題から解答にいたるまでに筋道を立てて述べられれば、物事を論理立てて考えることができると判断されるでしょう。
企業は、なぜそのような数字になるのか、論理的に考えられているかどうかを見ています。
正確な数字よりも、解答過程が納得できるものにすることを意識してください。
視野の広さ
2つ目は、視野の広さです。
納得のできる数値を出すためには、複数の着眼点が必要になることもあります。
たとえば郵便ポストの数を調べたい場合は、日本の面積や人口、郵便局の数などさまざまな観点から見ると導きやすいでしょう。
コンサルタントは、物事を広い視野で捉える力が必要とされます。
クライアントに納得してもらうには、あらゆる可能性を探らなければいけません。
また、問題を解決するには知識や経験の豊富さなどが強みになります。
それは、フェルミ推定の問題を解く際にも言えるので、日ごろからあらゆる物事に対して興味や関心を抱くようにしてみてください。
偏狭にならないように視野を広く持つことで、知的好奇心は自ずと高まり、企業から評価されるポイントが増えます。
説明力
3つ目に見られているものは、説明力です。
説明力とは、相手に結論を理解させることができる能力です。
フェルミ推定の面接中には、さまざまな質問が飛んできます。
なぜそのように考えるのか、このほかに方法はないのかなど論理的に詰められますが、それを切り抜ける説明力が高ければ好評価につながります。
相手に上手に伝えるために、根拠や理由は明らかにしておきましょう。
フェルミ推定によって、わずかな手がかりでも推論を重ねて結論を導き出せると伝われば、応募者が持つ課題解決力は高いと判断されます。
しかし、過程を自分自身が把握できていないと、筋の通った考え方だったとしても説得力が生まれません。
そのためフェルミ推定では、結論を説明できるプレゼンテーション能力も求められていると言えるでしょう。
フェルミ推定面接で意識するべきこと
次に、面接で注意しておきたい点について見ていきましょう。
これは、主に「根拠を持つこと」「時間配分に気をつける」の2点です。
特に理系の学生は、コンサルティングファームで必要とされる仮説検証を日常的に行っています。
そのため、論理的思考力が高いイメージを持たれることが多いですが、正確な数字を重視しないフェルミ推定では苦戦してしまうかもしれません。
時間は限られているので、綿密な計算にとらわれないよう、注意しましょう。
根拠を持つ
フェルミ推定では、「何となくこのような数値になりました」は通用しません。
数値が多少違っていても、企業は思考プロセスを評価するので、プロセスそのものを明確に示してください。
また、そのプロセスにいたった理由もはっきりとさせ、矛盾が生じないようにしましょう。
フェルミ推定は、常識や知識をよりどころに数値を求めます。
しかし、計算に重きを置きすぎると、前提の確認がおろそかになるかもしれません。
前提の確認が曖昧なものだと、気がつかないうちに勘によって数値を設定してしまうことがあります。
フェルミ推定は、面接官とのやり取りの中で推論を修正・改善することができます。
的確に述べていくために、根拠を持って問題に対する軸を決めましょう。
時間配分に気をつける
フェルミ推定は問題を解く時間が少なく、制限時間内に完璧な解答を出すのが難しいです。
フェルミ推定を解く時間は、おおよそ5〜10分程度しか与えられません。
そのため、正確さを求めるあまりに時間が足りなくなり、結論が出ないというケースも多いので気をつけましょう。
時間切れによる失敗を避けるためには、推定にかかる時間をあらかじめ見積もるのが有効です。
基本の手順の中から自分が苦手なものに時間をかけられるようにし、得意なものとの時間配分を考えておきましょう。
そもそも、フェルミ推定には明確な正解が存在しません。
飛躍しすぎない結論ならば特に問題はないので、制限時間に注意し、論理的に答えを導き出すことに力を入れましょう。
フェルミ推定の対策方法
フェルミ推定について把握した後は、いよいよ本格的に対策の準備に入るでしょう。
しかし、どのように対策を練れば良いのかわからない方も多いでしょう。
フェルミ推定は、対策をしないとやり方が思いつかない難問が多いです。
面接の際に、突然「日本にあるマンホールの数は?」と質問されたときも冷静に対処しなければなりません。
最後に、フェルミ推定の対策方法について紹介していきますので、就職活動にぜひ役立ててください。
しっかり対策をすれば、フェルミ推定に苦手意識を持つこともなくなるでしょう。
参考書を活用する
まずは、参考書を用いて実際に問題を解いてみましょう。
短い制限時間内で結論を出すためには、さまざまな問題を知って慣れていかなければいけません。
フェルミ推定は、例題をこなすほど考え方のアプローチがわかるようになります。
フェルミ推定の参考書はたくさんありますが、何冊もの本に手を出す必要はありません。
一冊の参考書をマスターし、繰り返し練習するようにしてください。
また、参考書は練習問題と答えだけでなく、解説が掲載されているものを選ぶと良いでしょう。
その解法を見て、解き方の流れやコツを掴むことが大切です。
なかには図解が用いられていたり、暗記できれば有利な数字などが載っていたりするものもあるので、自分に合う参考書で具体的な解き方を覚えましょう。
壁打ち練習をする
問題に慣れたら、友達や先輩、社会人の方などと壁打ち練習をしてみましょう。
壁打ち練習と聞くと、テニスの練習方法として思い浮かべるかもしれません。
壁に向かってボールを打ち、跳ね返ってきたボールを打ち返すという一人でできる練習方法です。
一方、フェルミ推定の対策における壁打ち練習は、一人でするものではなく、壁打ち役としての相手を見つけて実践する必要がある点に注意しましょう。
壁打ち練習では、自分と友人の双方が面接官を務めるので、見え方や話し方について共有することができます。
これにより、一人ではなかなか気がつかなかった修正点も見つかるでしょう。
思考プロセスを振り返って何度も検証を行い、面接官役を納得させられる解答を目指してください。
フレームワークを知る
コンサルタント業界の就職活動では、フレームワークという言葉がよく使われます。
フレームワークは、広く共通して利用できる考え方のことを指す言葉です。
フェルミ推定でも、特定の型に落とし込んで考えられると思考が整理しやすくなります。
フェルミ推定は、その場の状況を整理して自分で前提を確認しますが、基本の計算式を勉強することは問題解決の手助けとなります。
たとえば、本記事の前半部分でご紹介した「売上=客単価×客数」という式も、売上を導く知識のひとつとして覚えておくと良いでしょう。
ほかにも、家電などの年間売上を求める際に使われる「年間売上=年間販売数×1つ分の商品の平均価格」という式が挙げられます。
フレームワークにこだわりすぎるのはおすすめできませんが、どのようなものがあるのか把握していると便利です。
おわりに
今回は、フェルミ推定について詳しく解説しました。
フェルミ推定は、特にコンサルトの適性を知るのにふさわしい問題です。
日ごろからさまざまな領域に関心を持ち、視野を広げていきましょう。
フェルミ推定の流れを知り、問題の解き方がわかった後は、実際に対策に取り組んでみてください。
いざ就活するというときに慌てないために、前もって準備することが大切です。
フェルミ推定は、慣れてしまえばさほど難しいものではありません。
面接の際に見られるポイントを意識して、就職活動を成功させましょう。