はじめに
皆さんは「OB訪問」をご存じでしょうか。 OBとはOld Boy(卒業生、先輩)の略であり、OB訪問は皆さんの大学を卒業された先輩方や、会社の若手社員の方にお話を伺う機会のことを言います。
OB訪問は、企業の公式の選考フローの外で行われるものですが、 会社に対する理解を深めるといった点で、非常に重要なステップとなっています。
ここでは、そんなOB訪問の際の注意点や質問シートの例を解説いたします。 ぜひご覧ください。
OB訪問とは
先ほども少し触れましたが、OB訪問とは 「志望している業界や企業の先輩方を訪問すること」です。
OB訪問の形式としては、カフェなどでの対面形式ものや ZOOMやTeamsを用いたオンライン形式のものもあり、企業によって様々です。
OB訪問を通して先輩方から生の話を伺うことで、志望業界や志望企業の理解を深めることができ、
・入社後のミスマッチを防ぐことができる
などの効果が期待できます。 このようにOB訪問には大きなメリットがありますが、 特に初めてOB訪問をする方にとっては、ハードルが高く感じられるかもしれません。 ここからは、実際にOB訪問をする際の注意点について解説していきます。
OB訪問で質問する際の注意点
OB訪問は、基本的には自分からアポイントを取って、 インタビュー形式で進めていくことになります。 社員の方々には、皆さんのためにわざわざ時間を割いて頂くことになるので、 そのOB訪問は、お互いにより有意義なものとするべきでしょう。
そのためには、OB訪問の際の基本的な作法についてしっかりと理解しておかなければなりません。
ここでは、OB訪問の際に必ず押さえておきたい4つの作法について解説します。 決して高度なマナーではないので、必ずマスターしておきましょう。
調べてわかることは聞かない
第一に、「調べて分かることは聞かない」です。 わざわざ社員の方に直接お話を聞くわけですから、 社員の方の生の声、言い換えれば「ぶっちゃけ話」を聞き出すことが理想です。
それにも関わらず、ネットやHPを調べればすぐにわかるような内容を質問してしまうと、せっかくのOB訪問が台無しになってしまいます。 それでは、社員の方には「ちゃんと調べてきていない」と判断され、志望度を疑われることにつながりかねませんし、皆さん自身にとっても、時間の無駄になってしまいます。
その業界の一般的なビジネスモデルやサプライチェーン、業界動向、競合他社、企業の特徴などの基本的な情報は、ネットや業界地図などの書籍を通して事前に収集しておくようにしましょう。
5W1Hで聞く
第二に、「5W1Hで聞く」です。 繰り返しになりますが、OB訪問は相手の話をとにかく聞き出すことに重点を置かなくてはなりません。
OB訪問のように相手の自由で幅広い意見を聞きたい場面では、 「オープンクエスチョン」が有効であると言われています。 はい/いいえで答える「クローズドクエスチョン」とは異なり、 相手の回答を制限しないため、縛られない自由な回答が期待できます。
例えば、
などのように、「相手の話を聞き出す」ような質問をするように心がけましょう。
メモをとる
第三に、「メモをとる」です。 自分自身が話の内容を忘れないようにするためでもありますが、 相手に、「自分の話をしっかり聞いてくれている」という印象を与えることができます。
仮に、自分がインタビューを受ける立場だったとして 相手がメモを取ろうとしない場合、どのような印象を受けるでしょうか。 相手が「自分はメモを取らなくても話をしっかりと思い出すことができる」と言っているとしても、決して心地のいいものではないでしょう。
社員の方にとっても同様です。 OB訪問はただのおしゃべりではなく、インタビューですので、 ちゃんと聞いているという姿勢を相手にしっかりと見せましょう。
相槌や反応をしよう
第四に、「相槌や反応をしよう」です。 相手の相槌や反応があったほうが話しやすいというのは、 皆さんご自身の経験からも理解しやすいことだと思います。
しかし、メモを取ることに集中しすぎたり、緊張していたりすると、 相槌や反応がなおざりになってしまいがちです。 社員の方のお話に適切に反応しながら、タイミングを見計らってそれに派生する質問をしてみるなど、相手と会話のキャッチボールをすることを心がけましょう。
また、同じワードを繰り返すような相槌は、 相手に「この人は話を聞いていないのではないか」と思わせてしまう恐れがあります。
相手の話に同意する相槌にも
・そうですね
・おっしゃる通りです
・たしかに
・言葉を発せず頷くだけ
などバリエーションがあるので、これらを織り交ぜるようにしましょう。
ベンチャーのOB訪問で聞くべき質問例
さて、ここからはベンチャー企業のOB訪問の際に聞くべき質問例について解説していきます。
特にベンチャー企業の場合は、大企業・有名企業の場合と異なり、業界地図などの書籍やネット上の記事で紹介されていなかったり、口コミが少なかったりと、 ネットや書籍などでは会社の情報を十分集めることが難しいことがあります。
そのためOB訪問が貴重な情報源となります。 積極的にお話を伺うようにしましょう。 ここからは実際の質問例について解説していきます。
就職活動に関する質問
まずは就職活動に関する質問です。 OB訪問では、先輩方の就職活動についてのお話を伺うことができ、 皆さんご自身の就職活動のヒントになる情報を集めることができます。
例えば
・御社に提出するESを添削していただけませんか
・企業選びの軸はどのように設定しましたか
・なぜベンチャーを志望しましたか
・大手は見ましたか?
・私はガクチカとして○○の経験をアピールしようと考えていますが、アドバイスを頂けますか
・最終的に御社を選ばれたのはなぜですか
などです。
例えばその企業がニッチな業界であった場合、業界情報や競合他社の情報を集めるのが難しくなることが予想されるので、先輩方にその研究方法を尋ねることが重要になる場合があるでしょう。
また、ベンチャー企業の場合は、「なぜ大手ではなく弊社なのか」という質問が飛んでくることがあるため、その際のヒントを得ておくことも重要でしょう。
業務内容に関する質問
次に、業務内容に関する質問です。 実際の個人レベルでの業務の進め方は、HP等に紹介されていない場合があります。 ぜひ先輩方の生の声を伺いましょう。
例えば、
・今まで仕事をする中で、やりがいや達成感を感じたエピソードについて教えてください
・御社に在籍中、これは大変だった、つらかった、ということはありますか
・御社の業務上、どのようなところに弱点や問題点があるとお考えでしょうか
・仕事をしている上で意識していることはなんですか
・〇〇さんが描いているキャリアプランを教えてください
・今後挑戦してみたい仕事はありますか
・なぜその職種を選ばれたのですか
などの質問が挙げられます。 これらの質問を通して、業務の進め方や、勤務時間などを確認しておくことは、 入社後のミスマッチを減らすことにつながります。
また、業務理解が深ければ、選考において「志望度が高い」「弊社との相性が良い」などの判断につながり、有利に働くことも期待できます。
福利厚生に関する質問
第三に、福利厚生に関する質問です。 福利厚生は皆さんが長く安心して働くために、非常に重要な要素となります。 「体が資本」というように、心身ともに健康でなければ、まともに仕事もできません。
しかし、会社の福利厚生についてHPなどで公開されていない場合もあり、 OB訪問で「ぶっちゃけ話」を聞きだすのが重要です。
福利厚生やワークライフバランスに関する質問は、業務や企業のことについての質問が一通り終わり、ある程度お互いに緊張がほぐれたことにするのが適切でしょう。
質問の具体的な例としては、
・転勤の頻度はどのくらいですか
・産休育休を取得されている社員の方はいますか
・新人の教育制度は十分でしたか
・労働時間の実態はどうですか
・人事評価の透明性
・公平性はどうですか
などです。 これらの質問は面接時の「逆質問」で尋ねるには不適切なので、 OB訪問のタイミングで明らかにしておく必要があります。 入社した後に「こんなはずではなかった」と後悔しないために、 このタイミングでしっかりと聞いておきましょう。
会社に関する質問
最後に、会社に関する質問です。 これらの質問をしておくことで、企業の特徴や社風が明確になり、 面接に活かせる情報を集めることができます。
例えば、
・御社にしかない特徴はありますか、どのようなものですか
・〇〇さんの考える御社の強みと弱みはなんですか
・御社で活躍されている社員の方の特徴を教えてください
・これだけは覚悟しておけという心構えなどはありますか
・御社の○○は他社サービスとの差別化を図ったものと存じますが、しっかりと競争優位につながっているという実感はありますか?
などです。 これらの質問をすることで、面接時に、 「数ある同業他社の中からどうして御社を志望するのか」 「御社で活躍できる素質を備えている」 などのアピールをする際、自身の主張に説得力を増すことができます。
特に、志望動機として「御社の○○という社風に惹かれたからです」というフレーズはよく使われるため、これらの質問をしておくことのメリットは大きいといえるでしょう。
質問シートの作り方
では実際に、質問シートの作成例を紹介いたします。
メールに直接文章を打ち込む形で問題ありませんが、 質問内容は簡潔に、箇条書きで書くようにしましょう。
・○○様の就職活動時の就活の軸、業界、企業選びのポイント
・一日の業務の流れ ・仕事のやりがいや、大変だったこと
・休日や終業後の過ごし方
・御社の社風 などについて30分から1時間程度お話を伺えたら幸いです。
OB訪問前に質問シートを送付しよう
OB訪問をする場合、事前に質問シートを送付しましょう。 社員の方にとって、質問の内容が事前に提示されていた方が、 より良い回答を用意しやすく、負担が軽減されるためです。
また、質問の内容が提示されていることで、時間配分がしやすくなり、 聞きたいことを過不足なく聞くことができるようになります。
最後に、OB訪問の際の質問シートの送るタイミングや質問項目の数の目安について説明します。
送付するタイミングは?
OB訪問の許可を得ることができたら、訪問日の三日前くらいには質問シートを送付しましょう。
社員の方が質問の答えを考えるのに十分な時間があれば、質問の答えが過不足なく得られる可能性が高まり、OB訪問当日の流れもよりスムーズになることが期待できます。 また先ほど述べた通り、「自分で調べればわかること」はOB訪問の際の質問として不適切です。OB訪問を実施する前に、自分でしっかりと基礎知識を身に着けておきましょう。
さらに、OB訪問前日にはリマインドメールを送付すると、より親切です。 社会人の方は業務で忙しく、質問シートを見逃していたり、OB訪問自体を失念していたりすることがあります。 念のため、前日にこちらからリマインドメールを送付し、OB訪問の日時等を確認しておきましょう。
質問はいくつ送るべき?
OB訪問の際の質問は、5〜7個程度に絞りましょう。 少なすぎると、やる気がないという印象を与えかねないので、30分以上は会話が続くような質問の量がよいでしょう。
しかし、多すぎるのもまた、社員の方の負担が大きくなるという問題が生じてしまいます。 就職活動関連、業務内容関連、福利厚生関連、会社関連の質問があると先ほど紹介いたしましたが、そのうち自分の知りたい内容を優先的に、バランスを考えて質問シートに組み込みましょう。
OB訪問でお会いする社員の数に制限がない場合は、自分の興味ある職種の方には業務内容についての質問を重点的に、年齢が近い社員の方には就職活動に関する質問を重点的に質問するなど、自分の知りたいこと、社員の特徴を考慮しながら、OB訪問を実施しましょう。
おわりに
いかがでしたか。 ここまでで、OB訪問をする際の注意点や、特にベンチャー企業のOB訪問の際に聞くべき内容、 質問シートの送付タイミングなどについて解説してきました。 OB訪問に対する不安を解消することができたでしょうか。
OB訪問は通常の選考フローとは異なり、自分から積極的にアプローチしなければ 実施することはできません。OB訪問自体も、インタビュー形式のため、主体性が問われます。 慣れていない学生にとってはハードルが高く思われるかもしれませんが、 現在多くの学生が行っており、社員の方々も非常に協力的に就活生を応援してくれます。
抑えるべきマナーをきっちりと抑えつつ、 他では聞けない「生の声」を聞きに行ってはいかがでしょうか。